1 第二外国語の目標
「第二外国語」は,「第一外国語」のほかに,他の外国語について,次のことを目標とする。
(1)おもな機能上の目標
b 現代の平易な外国語を話したり,書いたりする技能を養うこと。
第二外国語の学習指導においては,第一外国語の学習指導と同じように,まず機能上の目標を達成しようと努めるけれども,人間形成を目ざす学校教育の一環として行われるものであるから,機能上の目標を達成することをとおして,教養上の目標を達成しようと努めるべきである。単に機能上の目標だけを達成しようとすることも,また,機能上の目標をおろそかにして教養上の目標を達成しようとすることも,ともに誤りである。
現代の外国語を指導しようとするにあたっては,第一外国語の場合と同じように,著作権やその他いろいろな事情から,現代の著作物や資料を取りあげるのがむずかしい場合もあるかもしれないが,それだからといって古い外国語ばかりを指導するのは望ましくないのであって,できるだけ現代の外国語を指導するように努めるべきである。
機能上の目標をaとbとに分けたのは,第一外国語の場合と同じように,外国語の機能を便宜上理解の面と発表の面とに分けたものであって,いずれか一方が地方よりも重要であるという意味ではない。
みずからの教養を高めるということの中には,第一外国語の場合と同じように,生徒の視野を広めることや,国語に対する関心,ひいては言語一般に対する関心を深めることなどが含まれてくる。
第1章外国語科の目標において述べた望ましい態度としては,第一外国語の場合と同じように,いろいろなことが考えられるけれども,それらのうちで,外国語の教務をとおしてわが国自身のことにもどってくる態度が最も重要なものと考えられるのである。しかも第二外国語においては,第一外国語だけ履修する場合よりも,いっそう深くこのような態度を養い育てることになる。
(1)中学校に継続して履修させる4単位の場合
a 聞き方と話し方の分野
標準的な発音については,第一外国語(英語)の場合に同じ。
〔注〕
1 言語材料の範囲を次のとおりとする。
(2)語いのうち新出語は,基幹語,派生語,合成語などを含めて,およそ500語ないし800語程度とする。
(3)連語はひん度の高いものを主とする。
(4)文法事項は,文,句,節,および品詞のさまざまな働きのうち,基本的なものを主とする。
2 学習の時間数が少ないのであるから,むりな言語材料を提示しないようにする。
a 聞き方と話し方の分野
標準的な発音については,第一外国語(英語)の場合に同じ
〔注〕
1 言語材料の範囲を次のとおりとする。
(2)語いのうち新出語は,基幹語,派主語,合成語などを含めて,およそ600語ないし800語程度とし,基本的なものから配列する。
(3)連語はひん度のきわめて高いもののみとする。
(4)文法事項は,文や品詞のさまざまな働きのうち,きわめて基本的なもののみとする。
指導計画を立てるにあたっては,聞き方,話し方,読み方および書き方の分野にわたって総合的に進めるが,進度が進むに従って,読み方の分野に重点をおくようにする。
外国語としては初めてではないが,英語としてははじめて履修させる場合であるから,英語の音声面に慣れさせるために,最初の数週間は,聞き方と話し方の分野に重点をおくように指導計画を立てるのが望ましい。
2 既習の他の外国語と関連して指導するので便利な場合もある。
(1)中学校に継続して履修させる4単位の場合
a 読み方の分野
〔注〕
1 言語材料の範囲を次のとおりとする。
(2)語いのうち新出語は,単一語,複合語,派生語などを含めて,およそ1,000語ないし2,000語程度とする。
(3)文法事項は詞論および文章論のうち基本的な事項とする。
単一語,複合語,派生語などの定め方ならびに詞論および文章論のうち基本的な事項の意味については,第一外国語(ドイツ語)の項を参照。
指導計画を立てるにあたっては,読み方の分野に重点をおくようにする。
生徒にとっては,ドイツ語の学習を一時中断しているわけであるから,その進度や学力を診断した上で,指導計画を立てる必要がある。
2 学習の時間数が少ないのであるから,むりな言語材料を提示しないようにする。
3 書き方の分野において,学習期間の後半には,未習の作品の書取もできるし,平易な和文独訳もできる。
a 読み方の分野
〔注〕
1 言語材料の範囲を次のとおりとする。
(2)語いのうち新出語は,単一語,複合語,派生語などを含めて,およそ1,000語ないし2,000語程度とし,基本的なものから配列する。
(3)文法事項は,詞論および文章論のうち,最も基本的な事項とする。
単一語,複合語,派生語の定め方ならびに基本的なものについては,第一外国語(ドイツ語)の項を参照。
詞論および文章論のうち最も基本的な事項については,複数形の名詞から単数形を類推させることはよいが,単数形から複数形を作らせることは一般的にいって望ましくなく,また,やer nimmtなどにおいて,不定詞がhaltenやnehmenであることは強調しなければならないけれども,逆に,たとえばtretenを与えてer trittを作らせることは求めるべきではない。
指導計画を立てるにあたっては,平易な読み物を読みながら,最も基本的な文法事項を習得させるようにする。
最も基本的な文法事項といえない事項,たとえば,いわゆる後置しないhabenなどが出てきた場合に,それは特殊な例ではあるが,決して不規則な現象ではなく,この現象が起るための一般的な規則があることを示すにとどめて,その用法を習得することは求めないことにする。
2 読み方の分野における作品について,たとえば,副文や接続法がまったく含まれていないものは望ましくない。
3 書き方の分野における和文独訳については,和独辞書を必要としないほど多くの用語を与えるのが望ましい。
4 聞き方と話し方の分野として,授業の初めまたは終りにおいて,すでに解釈した教材をくぎって生徒に連続して読ませる。
5 既習の他の外国語と関連して指導するのが便利な場合もある。
(1)中学校に継続して履修させる4単位の場合
a 読み方の分野
〔注〕
1.言語材料の範囲を次のとおりとする。
(2)語いのうち新出語は,単一語,合成語,派生語などを含めて,およそ1,000語ないし2,000語程度とする。
(3)文法事項は,各品詞の用法および文章論のうち,基本的な事項とする。
基本的な文法事項としては,冠詞の用法の大要,名詞および形容詞の性および数の変化,各種形容詞の大要と比較形,各種代名詞の大要,動詞の種類および形態,数詞などを含み,特に動詞の時法については各種の用法を指導し,少なくとも直説法の時を識別し理解することができように指導する。
作品については原作でもよいし,やさしく書き換えられ要約されたものでもよい。
その他の作文とは,名詞,冠詞,形容詞などの性および数の転換および文の転換,たとえば普通文を否定文,疑問文,感嘆文,命令文に,能動態を受動態に,直接話法を間接話法に書き変えさせること,ならびに簡単な質問に答を書かせたり,文の一部を補足完成させたりすることである。
聞き方と話し方の分野における文法事項は,書き方の分野における文法事項の程度とする。
2 学習の時間数が少ないのであるから,むりな言語材料を提示しないようにする。
3 書取や和文仏訳においては,なるべく既習の語を用いて,日本語とフランス語との語順の相違や,フランス語特有の言いまわしに慣れさせるようにする。
4 聞き方と話し方の分野においては,第一外国語として履修している他の外国語の発音とフランス語の発音とを比較したり,また,レコード,テープレコーダー,ラジオなどの教具を用いて指導することが望ましい。
a 読み方の分野
〔注〕
1 言語材料の範囲を次のとおりとする。
(2)語いのうち新出語は,単一語,合成語,派生語などを含めて,およそ1,000語ないし2,000語程度とし,基本的なものから配列する。
(3)文法事項は,各品詞の用法および文章論のうち,最も基本的な事項とする。
仏和辞書の利用については,少なくとも教材となっている語や句をひくことができるように指導する。
語いのうち基本的なものから配列するとは,ひんぱんに用いられ,覚えやすいものを選択し,これを反復することを意味する。
最も基本的な文法事項としては,冠詞の用法の大要,名詞および形容詞の性および数の変化,各種形容詞の大要と比較形,各種代名詞の大要,動詞の種類と形態,数詞などを含み,特に動詞の時法については直説法の時を識別し理解することができるように指導する。
作品については,原作よりも,やさしく書き換えられ要約されたものを用いるのがよい。
動詞の時法については,直説法の現在,半過去,単純未来および複合過去の文を書くことができるように指導する。
その他の作文とは,名詞,冠詞,形容詞などの性および数の転換および文の転換,たとえば普通文を否定文,疑問文,命令文に,能動態を受動態に書き換えさせること,ならびに簡単な質問に答を書かせたり,文の一部を補足完成させたりすることである。
発音のうちには,母音,子音,強勢,連読,抑揚などが含まれるものとする。
聞き方と話し方の分野における文法事項は,書き方の分野における文法事項の程度とする。
留意事項
2 聞き方と話し方の分野においては,レコード,テープレコーダー,ラジオなどの教具を用いて指導することが望ましい。
3 既習の他の外国語と関連して指導するのか便利な場合もある。
昭和30年12月23日 印刷
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