1 第一外国語の目標
「第一外国語」は次のことを目標とする。
b 現代の外国語を話したり,書いたりする技能を伸ばすこと。
第一外国語の学習指導においては,まず機能上の目標を達成しようと努めるけれども,人間形成を目ざす学校教育の一環として行われるものであるから,機能上の目標を達成することをとおして,教養上の目標を達成しようと努めるべきである。単に機能上の目標だけを達成しようとすることも,また,機能上の目標をおろそかにして教養上の目標を達成しようとすることも,ともに誤りである。
現代の外国語を指導しようとするにあたっては,著作権やその他いろいろな事情から,現代の著作物や資料を取りあげるのがむずかしい場合もあるかもしれないが,それだからといって古い外国語ばかりを指導するのは望ましくないのであって,できるだけ現代の外国語を指導するように努めるべきである。
機能上の目標をaとbとに分けたのは,外国語の機能を便宜上理解の面と発表の面とに分けたものであって,いずれか一方が他方よりも重要であるという意味ではない。
みずからの教養を高めるということの中には,生徒の視野を広めることや,国語に対する関心,ひいては言語一般に対する関心を深めることなどが含まれてくる。
第1章外国語科の目標において述べた望ましい態度としては,いろいろなことが考えられるけれども,それらのうちで,外国語の教養をとおして,わが国自身のことにもどってくる態度が最も重要なものと考えられるのである。
話し方の分野においては,読み方における言語材料よりもやさしい言語材料を用いて,英語の発音,アクセント,強形,弱形,くぎり,抑揚などに慣れさせるとともに,基本的な語・句・文,パラグラフ,短い作品,やさしい詩や歌の暗しょう(recitation),置き換え(substitution)・転換(conversion)・完成(completion)・和文英訳などによる口頭作文(oral composition),実物・絵画・地図・動作などについての説明,教室英語(classroom English)を用いること,読み方の作品についての問答,対話文や劇の本読みなどを指導する。また,発音記号や短い演説を指導することも望ましい。
発音を指導する手段としての発音記号については,中学校の英語においては,これを指導してもよいし,また,指導しなくともよいことになっている。高等学校の英語において,発音記号を指導しようとする場合は,どのような種類の発音記号を用いてもよいし,また,これを読むことができるようになるための指導はよいが,これを用いて書くことができるようになるところまで指導しなくともよい。
また,学年の程度よりもやさしい言語材料で書かれたものを多く読むことや,英和辞書ばかりでなく,やさしい英英辞書や英語で書かれた百科事典の利用のしかたを指導することも望ましい。
〔注〕
1 言語材料の範囲を次のとおりとする。
(2)語いのうち新出語は,全日制の課程を基準にしていえば,基幹語,派生語,合成語などを含めて,第1学年においてはおよそ600語ないし1,000語程度,第2学年においてはおよそ700語ないし1,200語程度,第3学年においてはおよそ800語ないし1,400語程度とする。
(3)連語(collocation)はひん度の高いものを主とする。
(4)文法事項は,文の種類・構造・要素,句,節,省略,倒置,強意表現,およびさまざまな品詞の形や働きとする。
英語の学習指導においては,語をできるだけ多く習得させればよいというものではなくて,ひん度の高い語いを精選して,それらを聞き方,話し方,読み方および書き方の活動において運用できるように指導するのがねらいである。このような考え方に基いて,中学校の英語においては,語いのうち新出語は,第1学年においてはおよそ300語ないし600語程度,第2学年においてはおよそ400語ないし700語程度,第3学年においてはおよそ500語ないし800語程度と定められている。
また,口問筆問に対する筆答,荒筋(summary), ,自由英作文などを書くことを指導することも望ましい。
毎週一定の時間に文法教材を用い,課を追って指導して,聞き方,話し方,読み方および書き方の分野にはまったく触れないような指導計画を立てることは望ましくない
2 読み方の作品の選定にあたっては,教師の好みに陥らないようにするとともに,指導にあたっては単に訳読や解釈だけにとどまらないで,運用度の高い言語材料について,聞き方,話し方および書き方の練習をする。
3 書き方の分野において示した内容のうち,いずれかひとつに片寄らないで,さまざまな学習活動をくふうする。
4 文法事項は,既習の実例を用いて帰納的に指導するのが望ましい。
5 2人以上の教師が分担して学習を指導する場合は,つりあいのとれた学習ができるように,指導内容,学習指導法およびその他必要な事項について密接な連絡をとる。
話し方の分野においては,読み方における言語材料よりもやさしい言語材料を用いて,英語の発音,アクセント,抑揚などに慣れさせるとともに,暗しょう,置き換え・転換・完成・和文英訳などによる口頭作文,読み方の作品についての問答などを指導する。
標準的な発音については,中学校から継統して履修させる場合に同じ。
〔注〕
1 言語材料の範囲を次のとおりとする。
(2)語いのうち新出語は,全日制の課程を基準にしていえば,基幹語,派生語,合成語などを含めて,第1学年においてはおよそ500語ないし800語程度,第2学年においてはおよそ600語ないし1,000語程度,第3学年においてはおよそ700語ないし1,200語程度とし,基本的なものから配列する。
(3)連語はひん度のきわめて高いものを主とする。
(4)文法事項は,文の種類・構造・要素,句,節,省略,倒置,強意表現,およびさまざまな品詞の働きとし,基本的なものから配列する。
語いのうち新出語の数については,生徒がかなり成長発達しているので,中学校の場合よりも多く習得することはできるが,高等学校においてはじめて英語を履修させる場合なので,中学校から継続して履修させる場合ほど多く習得することはむずかしいと考えて,上のように定めたものである。
はじめて英語を履修させる場合であっても,生徒の興味や関心や努力によっては,ある分野においては,中学校から継続して履修させる場合にかなり近づくことができる。
2 言語材料はある程度組織的に提示しても,外国語科および第一外国語の目標にかんがみて,単に読解や訳読だけに陥ることなく,さまざまな学習活動をくふうする。
3 第一外国語(ドイツ語)
a 読み方の分野
〔注〕
1 言語材料の範囲を次のとおりとする。
(2)語いのうち新出語は,全日制の課程の場合を基準にしていえば,単一語,複合語,派生語などを含めて,各学年およそ1,000語ないし1,500語程度とする。
(3)文法事項は,詞論および文章論の大要とする。すなわち,名詞的品詞とその変化,動詞とその変化,および不変化詞,ならびにそれらの用法の大要とする。
現代ドイツ語を主とするというのは,言語材料が必ずしも20世紀のものに限るというのではなくて,適当なものであれば,19世紀または18世紀にさかのぼってもよいという意味である。
単一語,複合語,派生語などを含めてとはいうものの,複合されている要素を簡単に分解して,一定の明らかな原理によって直接的に理解することができる複合語とか,派生の関係が一見して明らかな語などは別語とする必要はないであろう。たとえばについては,-heitが抽象名詞を作る後つづりであることを指示すれば,あえて2語とみなす必要はなく,arbeiten,Arbeiter,Arbeitも1語とみなしてよい。ただし,bilden,Bild,Bildungは3語と見るべきである。
また,標準字体(Normalschrift)とともに,ドイツ字体(Deutsche Schrift)も書くことができるように指導することが望ましい。
留意事項
2 書き方の分野においては,和文独訳ばかりに片寄ることなく,さまざまな学習活動を通じて,つりあいのとれた学習を指導する。
書取はしばしば行って,つづりを正確に記憶させるとともに,聞き方にも慣れさせる。
和文独訳においては,初めはあらかじめ必要なドイツ語を与えて独訳させ,これに慣れてきたところで,辞書を用いて独訳させる。この場合,和独辞書ばかりでなく,独和辞書も使用させる。また,既習の語,句,文などを応用するような問題をくふうする。
3 聞き方と話し方の分野においては,まとまった内容をもつ短い話,または簡易な詩などを読んで聞かせた後,その内容を日本語で言わせ,次にそのドイツ語を暗しょうさせ,さらにそれを書かせることも考えられる。
また,レコードやテープレコーダーなどの教具を用いて指導することが望ましい。
a 読み方の分野
〔注〕
1 言語材料の範囲を次のとおりとする。
(2)語いのうち新出語は,単一語,複合語,派生語などを含めて,およそ3,000語ないし4,000語程度とし,基本的なものから配列する。
(3)文法事項は,詞論および文章論のうち基本的な事項とする。
単一語,複合語,派生語などの定め方については,中学校から継続して履修させる場合に同じ。
語いのうち基本的なものとは,複合語に対して単一語,派生語に対して語幹となる語など,および個別的,特殊的な語に対する一般的な語をさす。
詞論および文章論のうち基本的な事項には,ひん度の低い外来語およびその他の特殊な用法は含まれないものとする。
また,標準字体とともに,ドイツ字体も書くことができるように指導することが望ましい。
短縮とは,たとえばdass,damit,statt dass,ohne dassなどの接続詞を含む副文をzuをもつ不定詞を用いて短縮することなどである。拡張とは,たとえば主語と述語とから成る単一文を目的文や状況文などを補って理解したり,また,文の一成分を関係文などを用いて書き換えたりすることなどである。完成とは,たとえば文中の欠けている部分に適当な語句を補って文を完成したり,また,適当な一群の語を与えて筋道のとおった文を作らせたりすることなどである。
留意事項
2 読み方,書き方,話し方と聞き方の分野における指導上の留意事項は,中学校から継続して履修させるの場合に同じ。
4 第一外国語(フランス語)
a 読み方の分野
また,わが国において入手できるフランス語の新聞,雑誌を読むこと,学年の程度よりもやさしい言語材料で書かれたものを多読すること,仏和辞書ばかりでなく,やさしい仏仏辞書やフランス語で書かれた百科辞典の利用のしかたを指導することも望ましい。
〔注〕
1 言語材料の範囲を次のとおりとする。
(2)語いのうち新出語は,全日制の課程を基準にしていえば,単一語,合成語,派生語などを含めて,第1学年においてはおよそ1,000語ないし1,500語程度,第2学年においてはおよそ1,000語ないし1,500語程度,第3学年においてはおよそ1,500語ないし2,000語程度とする。
(3)文法事項は,各品詞の用法,特に動詞の時,法および文章論の大要とする。
各品詞の用法には,名詞の性および数の変化,定冠詞・不定冠詞および部分冠詞,形容詞の性および数の変化,比較級および最上級,数詞,代名詞,動詞の種類および形態,時法の大要,動詞の変化および過去分詞の一致などが含まれる。
動詞の活用については,avoir,,tonnerおよびplacerなどer動詞のうち注目すべきもの,ならびにaller,asseoir,attendre,boire,connaitre,conduire,courir,craindre,croire,cueillir,devoir,dire,dormir,,envoyer,faire,fa11oir,fuir,lire,mettre,mourir,naitre,ourir,partir,plaire,pleuvoir,pouvoir,prendre,recevoir,rendre,rire,savoir,sentir,servir,sortir,se souvenir,se taire,tenir,vaincre,venir,vivre,voir,vouloirなどの不規則動詞およびそれらの派生語などが含まれる.
文章論のうちには,否定文・疑問文・感嘆文・命令法を含む文,能動態および受動態,直接話法および間接話法,現在分詞・過去分詞を含む分詞構文,倒置法,従属文における時制一致などが含まれる。
また,日記,手紙,要約,自由作文などを書くことを指導することも望ましい。
また,対話,劇,短い演説を行うことを指導することも望ましい。
発音のうちには,強勢,連読,抑揚などが含まれるものとする。
留意事項
2 ひん出する縁語,同音異義語,同義語,反意語などを整理することは,語いの記憶に役だつものである。
3 基本時から各種時法を構成する練習は,動詞の活用の記憶を助けるものである。
4 たとえばのような,フランス語特有の言いまわしに慣れさせることはたいせつである。
5 生徒のうちには,文学的あるいは実用的な面に特に興味をもつようになるものも出てくるから,このような傾向に留意して指導する。
6 書き方の分野においては,フランス語の原文を和訳し,それをさらに仏訳することも手近な練習である。
7 書取と和文仏訳は,フランス文法を習得する上で,欠くことのできない学習である。
8 聞き方と話し方の分野においては,レコード,テープレコーダー,ラジオなどの教具を用いて指導することが望ましい。
a 読み方の分野
〔注〕
1 言語材料の範囲を次のとおりとする。
(2)語いのうち新出語は,全日制の課程を基準にしていえば,単一語,合成語,派生語などを含めて,第1学年においてはおよそ800語ないし1,000語程度,第2学年においてはおよそ1,000語ないし1,500語程度,第3学年においてはおよそ1,500語ないし2,000語程度とし,基本的なものから配列する。
(3)文法事項は,各品詞の用法および文章論の大要とし,基本的なものから配列する。
各品詞の用法のうちに含まれるもの,動詞の活用のおもなもの,および文章論のうちに含まれるものについては,中学校から継続して履修させる場合を参照。なお,接続法については,きわめて簡単に各種の用例を示す程度とし,慣用句については,ひん出するものにとどめて,特異なガリシシム(gallicisme)は適当に制限するものとする。
和文仏訳の内容のうち,接続法を用いる構文は,きわめて簡単なものにとどめる。
発音のうちには,母音,子音,強勢,母音省略,連読,抑揚などが含まれるものとする。
2 動詞の変化については,その練習の時間に限りがあるので,基本時を活用するようにする。
3 聞き方と話し方の分野においては,レコード,テープレコーダー,ラジオなどの教具を用いて指導することが望ましい。
4 中学校において他の外国語を履修した生徒については,フランス語の発音に慣れさせるために,発音に重点をおいた指導が必要である。