第3章 外国語科第一外国語

 

1 第一外国語の目標

「第一外国語」は次のことを目標とする。

(1)おもな機能上の目標 a 現代の外国語を聞いて理解し,読んで理解する技能を伸ばすこと。

b 現代の外国語を話したり,書いたりする技能を伸ばすこと。

(2)おもな教養上の目標  その外国語を常用語としている人々の生活や文化について,理解を深めるとともに,それをとおして,みずからの教養を高め,わが国の文化の向上を図ろうとする態度を養うこと。

 第一外国語の学習指導においては,まず機能上の目標を達成しようと努めるけれども,人間形成を目ざす学校教育の一環として行われるものであるから,機能上の目標を達成することをとおして,教養上の目標を達成しようと努めるべきである。単に機能上の目標だけを達成しようとすることも,また,機能上の目標をおろそかにして教養上の目標を達成しようとすることも,ともに誤りである。

 現代の外国語を指導しようとするにあたっては,著作権やその他いろいろな事情から,現代の著作物や資料を取りあげるのがむずかしい場合もあるかもしれないが,それだからといって古い外国語ばかりを指導するのは望ましくないのであって,できるだけ現代の外国語を指導するように努めるべきある。

 機能上の目標をaとbとに分けたのは,外国語の機能を便宜上理解の面と発表の面とに分けたものであって,いずれか一方が他方よりも重要であるという意味はない。

 みずからの教養を高めるということの中には,生徒の視野を広めることや,国語に対する関心,ひいては言語一般に対する関心を深めることなどが含まれてくる。

 第1章外国語科の目標において述べた望ましい態度としては,いろいろなことが考えられるけれども,それらのうちで,外国語の教養をとおして,わが国自身のことにもどってくる態度が最も重要なものと考えられるのである。

 
2 第一外国語(英語)  

3 第一外国語(ドイツ語)

 

 

4 第一外国語(フランス語)

 

(1)中学校から継続して履修させる15単位の場合

 a 読み方の分野

 読み方の分野においては,次に示す範囲内の言語材料で書かれた物語,伝記,劇,詩,小説,随筆,論文,演説文などの作品を読むことを指導する。

 また,わが国において入手できるフランス語の新聞,雑誌を読むこと,学年の程度よりもやさしい言語材料で書かれたものを多読すること,仏和辞書ばかりでなく,やさしい仏仏辞書やフランス語で書かれた百科辞典の利用のしかたを指導することも望ましい。

〔注〕

 1 言語材料の範囲を次のとおりとする。

(1)言語材料は現代フランス語を主とする。

(2)語いのうち新出語は,全日制の課程を基準にしていえば,単一語,合成語,派生語などを含めて,第1学年においてはおよそ1,000語ないし1,500語程度,第2学年においてはおよそ1,000語ないし1,500語程度,第3学年においてはおよそ1,500語ないし2,000語程度とする。

(3)文法事項は,各品詞の用法,特に動詞の時,法および文章論の大要とする。

 2 作品については具体例は示さないが,フランス語を常用語としている人々の生活,風俗習慣,思想感情,およびその国の地理,歴史,制度など,題材内容に変化をもたせるとともに,特に文学的のものや,特定の考え方,グループ,著者,著作物などに片寄らないようにする。なお,専門的でない科学論文なども望ましい。

 各品詞の用法には,名詞の性および数の変化,定冠詞・不定冠詞および部分冠詞,形容詞の性および数の変化,比較級および最上級,数詞,代名詞,動詞の種類および形態,時法の大要,動詞の変化および過去分詞の一致などが含まれる。

 

 動詞の活用については,avoir,,tonnerおよびplacerなどer動詞のうち注目すべきもの,ならびにaller,asseoir,attendre,boire,connaitre,conduire,courir,craindre,croire,cueillir,devoir,dire,dormir,,envoyer,faire,fa11oir,fuir,lire,mettre,mourir,naitre,ourir,partir,plaire,pleuvoir,pouvoir,prendre,recevoir,rendre,rire,savoir,sentir,servir,sortir,se souvenir,se taire,tenir,vaincre,venir,vivre,voir,vouloirなどの不規則動詞およびそれらの派生語などが含まれる.

 文章論のうちには,否定文・疑問文・感嘆文・命令法を含む文,能動態および受動態,直接話法および間接話法,現在分詞・過去分詞を含む分詞構文,倒置法,従属文における時制一致などが含まれる。

 b 書き方の分野  書き方の分野においては,読み方における言語材料よりもやさしい言語材料を用いて,大文字の用い方,つづり字記号の用い方,句とう点の用い方,音節の切り方などに慣れさせるとともに,書取や和文仏訳などを書くことを指導する。

 また,日記,手紙,要約,自由作文などを書くことを指導することも望ましい。

 c 聞き方と話し方の分野  聞き方と話し方の分野においては,読み方における言語材料よりもやさしい言語材料を用いて,フランス語の発音に慣れさせるとともに,作品の朗読や説明を聞くこと,基本的な語,特に動詞の変化や,句,文,やさしい詩や歌を暗しょうすること,口頭作文や問答などを指導する。

 また,対話,劇,短い演説を行うことを指導することも望ましい。

 発音のうちには,強勢,連読,抑揚などが含まれるものとする。

 指導計画を立てるにあたっては,読み方の分野に最も大きな重点をおくようにする。

 留意事項

 1 読み方の分野においては,単に訳読や解釈だけにとどまらないで,さまざまな学習活動を通じて,つりあいのとれた学習を指導するようにする。

 2 ひん出する縁語,同音異義語,同義語,反意語などを整理することは,語いの記憶に役だつものである。

 3 基本時から各種時法を構成する練習は,動詞の活用の記憶を助けるものである。

 4 たとえばのような,フランス語特有の言いまわしに慣れさせることはたいせつある。

 5 生徒のうちには,文学的あるいは実用的な面に特に興味をもつようになるものも出てくるから,このような傾向に留意して指導する。

 6 書き方の分野においては,フランス語の原文を和訳し,それをさらに仏訳することも手近な練習である。

 7 書取と和文仏訳は,フランス文法を習得する上で,欠くことのできない学習である。

 8 聞き方と話し方の分野においては,レコード,テープレコーダー,ラジオなどの教具を用いて指導することが望ましい。

 

(2)高等学校においてはじめて履修させる15単位の場合

 a 読み方の分野

 読み方の分野においては,次に示す範囲内の言語材料書かれた問答や練習を主とする文,物語,伝記,劇,詩,小説,随筆などを読むことを指導する。また,仏和辞典の利用のしかたを指導する。

〔注〕

1 言語材料の範囲を次のとおりとする。

(1)言語材料は平易な現代フランス語とする。

(2)語いのうち新出語は,全日制の課程を基準にしていえば,単一語,合成語,派生語などを含めて,第1学年においてはおよそ800語ないし1,000語程度,第2学年においてはおよそ1,000語ないし1,500語程度,第3学年においてはおよそ1,500語ないし2,000語程度とし,基本的なものから配列する。

(3)文法事項は,各品詞の用法および文章論の大要とし,基本的なものから配列する。

2 作品の内容については,中学校から継続して履修させる場合に同じ。

 各品詞の用法のうちに含まれるもの,動詞の活用のおもなもの,および文章論のうちに含まれるものについては,中学校から継続して履修させる場合を参照。なお,接続法については,きわめて簡単に各種の用例を示す程度とし,慣用句については,ひん出するものにとどめて,特異なガリシシム(gallicisme)は適当に制限するものとする。

 

b 書き方の分野  書き方の分野においては,読み方における言語材料よりもやさしい言語材料を用いて,大文字の用い方,つづり字記号の用い方,句とう点の用い方,音節の切り方などに慣れさせるとともに,書取や和文仏訳などを書くことを指導する。

 和文仏訳の内容のうち,接続法を用いる構文は,きわめて簡単なものにとどめる。

c 聞き方と話し方の分野  聞き方と話し方の分野においては,読み方における言語材料よりもやさしい言語材料を用いて,フランス語の発音に慣れさせるとともに,作品の朗読や説明を聞くこと,基本的な語,特に動詞の変化,句,文,やさしい詩や歌を暗しょうすること,口頭作文や問答などを指導する。

 発音のうちには,母音,子音,強勢,母音省略,連読,抑揚などが含まれるものとする。

指導計画を立てるにあたっては,基本的な文法事項とともに,読み方の分野に重点をおくようにする。  フランス文法を習得するには,書取と和文仏訳とは欠くことのできない学習であるからこれらにまとまった時間を当てることが必要である。 留意事項 1 入門から学習するので言語材料が比較的に平易であること,生徒が比較や分類や類推のできる発達段階にあることなどから,言語材料をある程度組織的に提示することができる。

2 動詞の変化については,その練習の時間に限りがあるので,基本時を活用するようにする。

3 聞き方と話し方の分野においては,レコード,テープレコーダー,ラジオなどの教具を用いて指導することが望ましい。

4 中学校において他の外国語を履修した生徒については,フランス語の発音に慣れさせるために,発音に重点をおいた指導が必要である。