第2章 国語科の組織
1 国語科の科目
高等学校の国語科には,各課程のすべての生徒に履修させる科目と,生徒の個性や進路に応じて履修させる科目とがある。この両者の区別に関連して,国語科の学習の根幹をなすことばの働きについて,考えてみる必要がある。ことばは,互に意志を通じ合うのに必要であり,考えを進め,情操を豊かにするのに役だつものである。また,学問や技術を学んでいくにも媒介となり,文化の享受や創造に欠くことのできないものである。そして,このことばの働きを身につけさせることは,心身の発達に伴って,絶えず留意すべきであり,各教科の学習の中で,特に聞くこと,話すこと,読むこと,書くことの面に寄与することが大である。したがって,高等学校においては,国語の学習を,各課程のすべての生徒に,共通に全学年にわたって,履修させるための科目として,「国語(甲)」がある。なお,高等学校の段階では,国語科の学習は広くなり,かつある程度分化する。また,生徒は心身の発達に伴い,将来の進路に対する自覚が深まり,社会への意識も高まるとともに,各自の個性が大きく伸びる時期に達する。したがって,「国語(甲)」の学習をもとにし,これを分化,発展させた科目として,「国語(乙)」と「漢文」とがある。
2 各科目の単位数とその学年配当
国語料には,「国語(甲)」・「国語(乙)」・「漢文」の3科目があって,その単位数は,次のとおりである。
教 科 |
科 目 |
単位数(指導時間数) |
国 語 |
国 語(甲) |
9単位(315)ないし10単位(350) |
国 語(乙) |
2単位(70) ないし6 単位(210) |
|
漢 文 |
2単位(70) ないし6 単位(210) |
(1)「国語(甲)」は,各学年になるべく均分して単位数を配当する。10単位として計画する場合は,下学年に単位数を多く配当するてとを原則とする。
(2)「国語(乙)」および「漢文」の1個学年における単位数は,それぞれ2または3とすることを原則とする。
(3)「国語(乙)」および「漢文」を1個学年において,同時に履修させる場合の単位数の計は,5以下とする。
3 国語科の運営とその留意事項
国語科の計画は,各学校において,その学校の教育課程全体を見渡した上で,その一環として立てることが必要である。それとともに,高等学校を卒業するまでの全学年の間に,学年を追って,国語科の目標を,どのように達成するか,生徒の個性や進路にどのように適応させるかを考慮して,計画を立てるべきである。「国語(甲)」は,毎学年履修させるものであり,国語科の基本であることに留意することは言うまでもない。そして,「国語(甲)」に国語科の他の科目を組み合わせて計画する場合には,それぞれの目標,内容をよく見定め,生徒の実情に応ずるようにして,無理がなく、しかも国語科全体としての調和を考えて,必要な学習ができるように配慮する。
国語科の計画には,「国語(甲)」のみを履修させる場合と,「国語(甲)」に「国語(乙)」や「漢文」を組み合わせて履修させる場合との二つがある。なお,個人差に応じて自由に選択履修させる科目としての考慮が必要である。(高等学校学習指導要領一般編第3章「教育課程の編成」参照)
(1)国語科国語(甲)のみを履修させる場合
ア 「国語(甲)」には,9単位の計画と10単位の計画との二つあるが,そのいずれを選ぶかは,各学校の教育計画の立て方,生徒の個性や進路などによって決定される。9単位または10単位の計画のいずれにしても,指導の目標は同一であって,いずれかの一つが基本になるのではない。
イ 10単位の計画の場合,全日制の課程においては,4単位は第1学年に設けることを原則とする。ただし,職業に関する課程などでやむをえない場合は,上学年において4単位として計画することができる。
(2)国語科国語(甲)に,国語科国語(乙)や国語科漢文を組み合わせて履修させる場合 この場合,「国語(甲)」が基本であることに留意し,なお,この科目を履修きせた上に,一般教養をきらに高めるため,生徒が将来従事する学問や技術に役だてるため,文学や創作に対する特別な自己の能力を高めるためなど,それぞれの個性や進路に応じて,「国語(乙)」・「漢文」の履修を適切になしうるようにする。
ア 「国語(乙)」や「漢文」は,必ず「国語(甲)」に組み合わされるのである。この場合,「国語(乙)」および「漢文」のそれぞれについて,次の三つの計画のうち,どれを採るかを考えて,その履修の単位数の計を定めるようにする。
(ア)1個学年で履修させる計画の場合
2単位または,3単位を履修させることができる。
(イ)2個学年で履修させる計画の場合
各学年に,2単位または3単位を配当しうる結果,2個学年で,計4,5,6単位を履修させることができる。
(ウ)3個学年で履修きせる計画の場合
各学年に2単位ずつ配当して,3個学年で計6単位を履修させることができる。
イ 第1学年において,「国語(甲)」に「国語(乙)」や「漢文」を組み合わせる場合には,第1学年は基礎的な段階であるから,周到な配慮が必要である。すなわら,この場合,「国語(乙)」や「漢文」の内容は,入門的,基礎的なものが主となると考えられる。したがって,「国語(甲)」の内容と重複しやすいから,互によくその調和をさせ,かつ学習が効果的であるように特に配慮する。
ウ 「国語(甲)」に,「国語(乙)」・「漢文」を組み合わせて計画を立てる場合,単位数の配当について,次の二つの観点に留意する。
すなわら,学年ごとに,各科目を,それぞれどのような単位数で組み合わせればよいか,また,全学年間に履修させる各科目の単位数を,それぞれどのように学年別に配当すればよいか,この二つの観点に基いて,いろいろな組合せの種類が考えられるから,そのうち最も適切なものを選ぶようにする。