第1章 工業科の目標

 

1.高等学校における工業教育の目標  高等学校における工業教育は,中学校教育の基礎の上にたち,将来わが国工業界の進歩発展の実質的な推進力となる技術員の育成を目的とし,現場技術にその基礎をおいて,基礎的な知識・技能・態度を習得させ,工業人としての正しい自覚をもたせることを目ざすものである。これをさらに分けてみると,次のようになる。 (1) それぞれの工業分野における基礎的な技能を習得させる。

(2) それぞれの工業分野における基礎的な知識を習得させ,工業技術の科学的根拠を理解させる。

(3) それぞれの工業分野における運営や管理に必要な知識・技能を習得させる。

(4) くふう創造の能力を伸ばし,工業技術の改善進歩に寄与する能力を養う。

(5) 工業技術の性格や工業の経済的構造およびその社会的意義を理解させ,共同して責任ある行動をする態度と,勤労に対する正しい信念をつちかい,工業人としての自覚を得させる。

 しかしながら,高等学校における工業に関する課程は非常に種類が多く,それぞれの課程が関連をもつ工業の業種や業態にも差異があり,さらに学校の地域的特性や実情などにも相違があるから,工業教育の目標を一律に設定することは適当でない。工業教育の具体的な目標は各学校,各課程ごとに設定するのが妥当である。

 各学校におけるそれぞれの課程の目標を定める場合には,その課程を卒業した生徒が将来しめる現場の職務をもじゅうぶん考慮する必要がある。

 卒業した生徒が将来しめる職務には,次のような部門が考えられる。

a.現場作業の指導監督部門

b.設計・企画・研究などの計画部門

c.保守・修理などのサービス部門

d.販売などの営業部門

 以上は,専門教育としての立場から工業教育の目標を述べたのであるが,上に掲げだ(1)〜(5)の目標は,濃淡の差はあるにしても,普通課程において行う一般教養としての工業教育の目標ともなるものである。

 

2.工業に関する各課程の目標  工業教育の目標を,工業に関する各課程についてやや具体的にあげると,次のとおりである。

 

(1) 機械課程の目標

 この課程は,将来機械技術者としての使命と責任とを全うし,産業の発展に寄与する資質をそなえて,現場作業の指導監督,工場の保守管理,設計・企画・研究などの各部門に従事するものの養成を目標とし,次の事項の達成を目ざすものである。

1) 機械技術の科学的根拠を理解させ,研究的・計画的な活動を行い,技術の改善進歩に寄与する素地を養う。

2) 機械・器具の設計・製図,素材の製作・加工や組立・検査などの基本的な知識・技能を習得させる。

3) 機械の操作・調整・修理・試験に従事するために必要な能力を習得させる。

4) 工場の経営・管理に関する基礎的な知識を理解させ,能率的な生産手段を計画・実践する能力を養う。

 

(2) 機械工作課程の目標

 この課程は,機械技術の生産的価値を認識させ,正しい勤労精神をもって責任を遂行する実践的態度と習慣とを体得させて,将来機械工場における現場作業の指導監督あるいは企画管理などの部門に従事するものの養成を目標とし,次の事項の達成を目ざすものである。

1) 機械工作ならびに生産に関する技術の科学的根拠を理解させ,技術の改善進歩に寄与する素地を養う。

2) 機械工作についての基礎的な知識・技能を習得させ,現場作業に応用できる能力を養う。

3) 機械工具の製作に必要な設計・製図の基本的知識・技能を習得させる。

4) 機械工場において必要な試験・検査の知識・技能を習得させ,製品の品質向上に寄与する能力を養う。

5) 機械工場の経営・管理に関する基礎的な知識を理解させ,能率的な生産手段を計画・実践する能力を養う。

 

(3) 自動車課程の目標

 この課程は,将来自動車工業界における企画・設計・整備・サービスまたは管理部門において,実質的な推進力となる技術員を養成することを目標とし,次の事項の達成を目ざすものである。

1) 自動車に関連する工業についての一般的知識を理解させる。

2) 機械工作に関する基礎的知識・技能を習得させる。

3) 自動車の設計・製作・整備・試験についての技術的知識を理解させる。

4) 自動車の工作・整備・試験・運転についての基礎的技能を習得させる。

5) 現場作業の指導・監督,工場の管理,製品の販売,サービスなどを担当することができる資質を身につけさせる。

 

(4) 造船課程の目標

 この課程は,造船工場・造船関係業務等において,船舶の設計・企画・研究等の計画部門に進むもの,または船舶の建造・修理等の現場作業の指導的地位に進むものに必要な基礎的知識・技能・態度の養成を目標とし,次の事項の達成を目ざすものである。

1) 造船工業は広範な総合工業であり,船舶は,社会・経済・海運等ときわめて密接な関係にあるから視野を広くさせ,自己の青年の重大さを自覚させる。

2) 現場における職種は種々数多くあるから協調の精神,緻(ち)密な企画力,責任感の強い実践力,創意くふうの精神を養う。

3) 造船に関する設計・計画・工作の基礎的知識を会得させ,その技能を習得させ,それらに関する研究や創造の能力を身につけさせる。

4) 船舶建造についての基準を理解させるとともに,これに必要な主要図面の理解と製図の能力を習得させる。

5) 船舶の安定・抵抗と推進等に関する基礎的知識の理解と,それらの測定および研究の能力を養う。

6) 船舶建造の順序および方法を習得させ,現場作業の指導・監督および工場の管理ができる能力を養う。

7) 造船関連工業,特に機械・電気の基礎的知識を理解させる。

8) 船舶関係法規の概要とその運用を理解させる。

 

(5) 電気課程の目標

 この課程は,将来電気施設または製作工場に働く技術員の養成を目標とし,次の事項の達成を目ざすものである。

1) 電気工学の基礎理論を習得させて,電気的現象を理解させ,これを応用できる能力を養う。

2) 電気施設・設備を理解させて,その工事・運転・保守ができる技能を養う。

3) 電気機器の機能を理解させて,その設計・製作・運用ができる技能を養う。

4) 電気通信の基礎知識を習得させて,通信機器を適切に運用できる技能を養う。

5) 電気事業および電気関係業務の公共性を理解させ,電気技術者の使命を認識させる。

 

(6) 電力課程の目標

 この課程は,将来主として電力施設または電気機器生産の現場に働く技術員の養成を目標とし,次の事項の達成を目ざすものである。

1) 電気工学の基礎的理論ならびに電気的諸現象を理解させ,これを応用できる能力を養う。

2) 電気に関する計測の技術を習得させ,各種の検査および試験の能力を養う。

3) 電気機器の特性を理解させ,取扱・運転・修理ならびに試験の技能を習得させる。

4) 各種電力施設の構成および機能を理解させ,操作・計画・保守ならびに管理等の基礎的技術を習得させる。

5) 産業界ならびに近代生活における電気の一般的応用を理解させ,技術的進歩改善に寄与する能力を養う。

6) 電気事業の公共性を理解させるとともに,産業界における電気技術者の使命を認識させる。

 

(7) 電気通信課程の目標

 この課程は,将来電気通信施設およびその生産工場の現場に働く技術員の養成を目標とし,次の事項の達成を目ざすものである。

1) 電気通信の基礎的な知識を理解させ,科学的・技術的進歩に適応できる資質を養う。

2) 電気通信に関する計測技術を習得させ各種の試験・検査において適切な測定ができる能力を養う。

3) 通信機器の機能を理解させ,その製作・調整・試験に関する技術を身につけさせる。

4) 電気通信施設の構成を理解させ,その工事・操作・保守・修理に従事するために必要な基本的な技術を習得させる。

5) 各種高周波応用の現状を理解させ,将来の進歩発達に寄与する素地を養う。

6) 電気通信の関係法規を理解させ,その公共性を認識させ,技術者としての使命と責任を自覚させる。

 

(8) 建築課程の目標

 この課程は,将来広く建築技術関係の部門に進んで,建築物の設計・施工・管理・行政等の業務を担当するものに必要な基礎的知識・技能・態度の養成を目標とし,次の事項の達成を目ざすものである。

1) 建築の文化的・社会的意義を理解させ,建築技術者の地位と使命を自覚させ,建築工業の発展に寄与する意欲をつちかう。

2) 各種建築材料の性質,建築物の各種構造法を科学的に理解させ,これを応用する能力を養う。

3) 建築設計の科学的・意匠的なまとめ方および関係法規について理解させ,設計業務を担当するに必要な設計製図および監理の知識・技能を習得させる。

4) 建築施工の技術的・経済的な正しい進め方を理解させ,施工業務を担当するに必要な経営管理の知識・技能を習得させる。

5) 建築技術者として必要な科学的態度,計画的習慣,創造的情熱をつちかい,協調誠実の品性を身につけさせる。

 

(9) 土木課程の目標

 この課程は,将来土木行政機関・建設事業場等において,土木工事の企画・設計・施工・管理等の業務を担当するものに必要な,基礎的知識・技能・態度の養成を目標とし,次の事項の達成を目ざすものである。

1) 土木事業の公共性,特に国土総合開発においてしめる地位等にかんがみ,協調奉仕の精神,緻密なる企画力,責任ある実践力をつちかい,土木技術者の地位と使命を自覚させ,建設工業の発展に寄与しうる資質を養う。

2) 土木に関する基礎的知識を理解させ,企画・設計・施工の技能を習得させるとともに,技術の改善進歩に資する素地を育成する。

3) 各種測量法を理解させ,正確に実測・計算・図化作業ができるよう,測量の技能に習熱させる。

4) 各種土木材料の性質を科学的に理解させ,とくにコンクリートの合理的配合と現場管理の能力を養う。

5) 機械化した近代工法に対する認識を深めさせ,各種施工法に対する科学的研究の態度を養う。

6) 工事施工の順序・方法を理解させ,管理・運営に必要な基礎的知識を習得させ,指導統率の能力を養う。

 

(10) 工業化学課程の目標

 この課程は,将来化学工業関係の工場および試験所・研究所等において,現場作業の指導的な任務につくものおよび,さらにこれらの管理部門に進むものに必要な知識・技能・態度を養成することを目標とし,次の事項の達成を目ざすものである。

1) 化学工業の成立に必要な具体的な化学理論と,化学工学的な知識・技能とを関連させて身につけさせる。

2) 物質の化学変化とそれに影響をおよぼす諸条件を理解させる。

3) 工業として成立させることのできる化学反応の特有性を理解させる。

4) 化学工業で用いる一般的操作(単位操作・単位反応)について理解させる。

5) 化学工業における物質収支・エネルギ収支・機器材料・装置材料の選択について理解させる。

6) 化学工業において必要な種々の化学分析・試験・測定を行うことができるようにする。

7) 工場・事務所の管理運営に必要な知識・技能を習得させ,指導統率の能力を養う。

8) 化学工業と産業・生活との関係および資源と製造方法の推移の関係を理解させる。

 

(11) 窯業課程の目標

 この課程は,将来窯業関係の工場,試験・研究機関等において,各種の現場作業あるいは試験・研究・企画等に従事する技術員となるべきものに必要な知識・技能および態度の養成を目標とし,次の事項の達成を目ざすものである。

1) 窯業製品が人類の社会生活・文化生活に,また産業生産において重要な基礎資材であることを認識させ,窯業技術者の責務を自覚させる。

2) 窯業技術の全般にわたり,その科学的根拠を理解させ,応用の力を養い,創造の才をつちかう。

3) 特に珪(けい)酸塩を中心とする原料の知識とそれの取扱技術,窯炉および窯炉操作に関する知識と技術をそれぞれ習得させる。

4) 窯業関係事業場の合理的な管理と能率的な運営を行わせ,指導統率の能力を養う。

5) 窯業の伝統を正しく認識させるとともに,時代とともに展開する科学的・技術的進歩に適応できる資質を養う。

6) せまい視野におちいることなく,広く関連諸産業を理解する力を養う。

 

(12) 色染課程の目標

 この課程は,将来染色工業関係の工場および試験所・研究所などにおいて,現場作業の指導監督および試験・研究などの業務に従事するものに必要な基礎的知識・技能・態度の養成を目標とし,次の事項の達成を目ざすものである。

1) 染色および仕上加工に関する基本的知識と技能とを,互に関連させて身につけさせる。

2) 繊維・染料・染色薬品・染色機器などに関する技術的知識を理解させ,それらを応用する能力を養う。

3) 染色工業において必要な種々の試験・測定・検査に関する基礎的知識を理解させるとともに,その技能を身につけさせる。

4) 色彩・図案の基礎的知識を理解させ,色彩を有効に取り扱う能力を養う。

5) 染色工場の運営や管理に必要な基礎的知識・技能を習得させる。

6) 染色技術の性格と染色工業の社会的・経済的意義を理解させ,染色技術者としての地位と使命を自覚させ,染色工業の発展に寄与する意欲をつちかう。

7) 染色技術者として必要な計画的な実践力,協調的に責任ある行動をする態度および応用創造の能力を養う。

 

(13) 紡織課程の目標

 この課程は,将来紡織関係事業場および試験・研究室において各種の技術的業務に従事し,紡織工業界の進歩発展の実質的推進力となる技術員を養成することを目標とし,次の事項の達成を目ざすものである。

1) 繊維材料の性質を理解させ,その用途を適切に応用できる能力を養う。

2) 各種繊維製品の構造を理解させ,これを設計・製造できる能力を養う。

3) 紡織機械の構造・作用を理解させ,これを整備・運転・保全できる能力を養う。

4) 繊維工業に必要な試験・検査・測定に関する基礎的な知識・技能を養う。

5) 紡織関係工場の運営・管理および現場作業の指導監督に必要な基本的な知識・技能を養う。

6) 紡織工業の社会的・経済的意義を理解させ,紡織技術者としての自覚を高め,積極的・協同的に責任ある行動をする態度・習慣を養う。

7) 紡織工業技術の科学的根拠を理解させ,応用創造の能力を伸ばし,現場技術の進歩改善に貢献できる能力を養う。

 

(14) 採鉱課程の目標

 この課程は,将来鉱山・炭鉱などの鉱業関係の分野において,地下資源の調査開発企画・鉱山設計・管理等に従事するものおよびこれらの現場作業の技術的業務に進むものに必要な知識・技能・態度を養成することを目標とし,次の事項の達成を目ざすものである。

1) 地下資源の利用が人類の社会生活・文化生活に,また他の工業部門にしめる地位の重要性を理解させ,採鉱技術者としての社会的意義と使命を認識させ,将来の技術的進歩に適応できる資質を養う。

2) 地下資源の存在状態および価値判定の基礎的知識・技能を習得させる。

3) 採鉱・採炭・採油の基礎的技術を習得させ,新しい生産技術に対する研究的態度を養う。

4) 選鉱・選炭の基礎的理論を理解させ,設備計画に関する知識・技能を習得させ,選鉱成績の向上に寄与する研究的態度を養う。

5) 冶(や)金の一般的知識を理解させ,技能を習得させる。

6) 鉱山・炭鉱における変災の原因を科学的に理解させ,これらの予防対策の基礎的知識と技能を習得させ,保安確立の重要性を認識させ,坑内外作業の技術的進歩に対処する保安技術の研究の習慣を養う。

7) 将来現場技術者・経営者として運営に必要な知識・技能,指導統率の能力および研究的態度の習慣を養う。

 

(15) 冶金課程の目標

 この課程は,将来生産冶金または製造冶金の分野において,金属の製・精錬および加工などの現場作業に従事するものおよびさらにこれらの企画・研究部門に進むものに必要な知識・技能・態度を養成することを目標とし,次の事項の達成を目ざすものである。

1) 冶金技術者としての社会的意義と重要性を自覚させ,冶金工業の発展に寄与しうる強い実践力と旺(おう)盛な研究心とを養う。

2) 金属の製・精錬の反応・操作を理解させ,金属の生産に必要な知識・技能を習得させる。

3) 金属の生産・加工に必要な炉・燃料・耐火材の知識を習得させる。

4) 金属ならびに合金に関する理論および現象を理解させ,実験・研究ができる知識・技能を習得させる。

5) 金属材料の製造・加工の方法を理解習得させ,その管理・経営に関する一般的知識を習得させる。

6) 金属製錬に関係ある鉱物,選鉱の一般的知識を習得させる。

7) 冶金工業に必要な鉱石・金属の化学分析・試験・検査の知識・技能を習得させる。

 

(16) 金属工業課程の目標

 この課程は,将来工業各般の要求に応ずる金属材料の製造・選択ならびに加工に従事する技術員となるものに必要な知識・技能・態度を養うことを目標とし,次の事項の達成を目ざすものである。

1) 金属工業の基礎産業としての重要性を理解させ,金属技術者としての社会的意義と使命とを認識させる。

2) 金属および合金の諸性質に関する現象と理論を理解させる。

3) 金属の製造,冶金に関する知識・技能を習得させる。

4) 金属材料の加工ならびにその設計・計画に関する知識・技能を習得させる。

5) 金属材料に必要な分析・試験・測定の知識・技能を習得させる。

6) 金属工業に必要な設計ならびに製図の基礎的知識と技能を習得させる。

7) 金属工業に関連ある機械・電気に関する一般的知識・技能を習得させる。

8) 金属の製造ならびに加工などの事業場の管理・経営に関する知識を習得させる。

 

(17) 木材工芸課程の目標

 この課程は,将来木材工芸関係の事業場において,各種の技術的作業ならびに業務を担当する技術員となるものに必要な知識・技能を習得させ,これに相応しい態度・習慣を養成することを目標とし,次の事項の達成を目ざすものである。

1) 木材工芸の産業としての重要性を理解させ,木工技術者としての使命を認識させる。

2) 木工技術の科学的根拠を理解させ,実技に習熟して技術の進歩改善に寄与する能力を養う。

3) 計画・設計の知識を習得させ,研究的態度と創意くふうの習慣とを養う。

4) 経営・管理に関する基礎的知識を習得させ,すべてを合理的・能率的に処理できる能力を養う。

 

(18) 金属工芸課程の目標

 この課程は,国内および輸出産業として広い領域をもつ金属工芸についてよく理解させ,それぞれの分野で計画および製作のできる技能者の養成を目標とし,次の事項の達成を目ざすものである。

1) 各種金属材料の取扱・加工および仕上技術(表面処理等)を習得させる。

2) 美術工品・装身具の意匠および製作技術を習得させる。

3) 日常生活に関連ある機械・器具等の設計を習得させる。

4) 機械加工の基本を習得させ,生産方式に対する研究的態度を養う。

5) 以上の各領域で個性の伸張をはかり,創意くふうの態度および改善の能力を養う。

6) 将来現場技術者および経営者となる素地を養う。

 

(19) 図案課程の目標

 この課程は,あらゆる産業部門に重要な役割をもつ意匠図案を担当する技能者としての使命を自覚させ,造形の職務において産業と文化の向上発展に寄与できる教養と技能を身につけることを目標とし,次の事項の達成を目ざすものである。

1) 広く造形の美的感覚を豊かにし,創意くふうの態度を養い,意匠表現の能力を身につけさせる。

2) 産業工芸の本質を理解させ,工芸品・機器の意匠とその図案表現の実技を習得させる。

3) 広告・宣伝の理念を理解させ,その実体を認識させ,各種商業図案表現の実技を習得させる。

4) 室内計画の基準を理解させ,装備設計の実技を習得させる。

 

(20) 印刷課程の目標

 この課程は,将来印刷工業に従事する技術員として必要な知識・技能・態度を養成することを目標とし,次の事項の達成を目ざすものである。

1) 印刷技術の科学的知識を理解させる。

2) 製版・写真・印刷についての基本的技能を習得させて,どの部門にも進むことができるようにする。

3) 創意・くふうと応用の能力を養う。

4) 作業の機械化・能率化に留意させて,事業場管理の能力を養う。

 

(21) 塗装課程の目標

 A.(塗装を主としたもの)

 この課程は,塗料製造ならびに塗装関係事業の技術員・指導者として必要な知識・技能・態度の養成を目標とし,次の事項の達成を目ざすものである。

1) 塗料材料および塗料の化学的知識を学ばせ,塗料の合成および性能・用途を理解させる。

2) 塗装目的,使命,塗料の性質を理解させ,塗装法を習得させ,技能に習熟させる。

3) 塗装工業の現状を理解させ,基礎知識とともに広く専門技能に習熟させ,業界の指導的能力を養う。

B.(漆(しつ)芸を主としたもの)

 この課程は,漆(うるし)および塗装工芸に従事する技術員・指導者として必要な知識・技能および態度の養成を目標とし,次の事項の達成を目ざすものである。

1) 漆および化学塗料の基礎知識を学ばせ,塗装目的,塗料の性能を理解させる。

2) 漆および塗装工芸品の生産・加工技術の理解と習練をさせ,創作力を養う。

3) 漆および塗装工芸の生産機構・企画につき学ばせ,塗装技術者としての能力を養い,事業界の進歩発展に寄与させる。