1 高等学校の目的,目標と教育課程の性格
高等学校教育の目的と目標は,教育基本法および学校教育法に定められたところによらなければならない。
教育基本法第1条
(教育の目的) 教育は,人格の完成をめざし,平和的な国家及び社会の形成者として,真理と正義を愛し,個人の価値をたっとび,勤労と貴任を重んじ,自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
学校教育法第41条
高等学校は,中学校における教育の基礎の上に,心身の発達に応じて,高等普通教育及び専門教育を施すことを目的とする。
同法第42条
高等学校における教育については,前条の目的を実現するために,左の各号に掲げる目標の達成に努めなければならない。
二 社会において果さなければならない使命の自覚に基き,個性に応じて将来の進路を決定させ,一般的な教養を高め,専門的な技能に習熱させること。
三 社会について,広く深い理解と健全な批判力を養い,個性の確立に努めること。
このため,高等学校の教育課程は,進んだ程度の一般教養をすべての生徒に共通に得させるようにするとともに,課程の別により,さまざまな変化と弾力性をもつようにして,生徒の個性や進路に応じ,それぞれに分化した学習をさせるように配慮して,編成され展開されなければならない。
2 高等学校の課程の別と教育課程
現行の高等学校の制度は,通常の課程(いわゆる全日制の課程),定時制の課程(夜間その他特別の時間または時期において授業を行う課程)および通信教育に分れている。
これらは,主として授業を行う時間,時期または形態の相違によって区別されるが,すべて高等学校として同一の目的,目標をもち,入学および卒業の資格においても,これらの間に差異は認められていない。したがって,教育課程に関しても,すべてこの学習指導要領の基準による。ただし,通信教育における運営上の事項については,特別の考慮が必要であるから,別に定める高等学校通信教育指導要領の基準によることとなっている。
(2) 普通課程と職業に関する課程
高等学校には,全日制と定時制とを通じて,各種の課程が設けられている。すなわち,これを大別すると「普通課程」と「職業に関する課程」とに分れる。「職業に関する課程」は,「家庭に関する課程」,「農業に関する課程」,「工業に関する課程」,「商業に関する課程」,「水産に関する課程」,「電波に関する課程」,「商船に関する課程」その他に分れている。なお,これらの職業に関するそれぞれの課程は,必要に応じてさらにいくつかの課程に細分される。
これらの課程においては,それぞれ課程の特色を生かした教育課程を編成し,個個の生徒の個性や進路に応じて,計画的,組織的に学習が進められるようにしなければならない。
普通課程においては,いわゆる普通教科を中心としてその教育課程を編成する。この課程に入学する生徒の間には,個性の特徴や将来の進路にさまざまなちがいが見られる。したがって,その教育課程は,個個の生徒の個性や進路の多様性に応ずることが望ましい。
この場合,個個の生徒の個性や進路の傾向には,これを大きくながめると,おのずと共通する部分がある。その共通な面に着目して類型的に生徒の個性や進路の傾向を捕え,その必要をできるかぎり満たすように教育課程の類型を編成し,これによって,全学年を通じて,広くしかも調和のとれた教育が計画的,能率的に行われるようにしなければならない。
(イ) 職業に関する課程における教育課程の性格
職業に関する課程においては,それぞれ専門とする職業に関する教科に重点をおいて,多くの課程が分化している。これらの課程に入学する生徒は,それぞれ個性に応じ,将来の進路に関して一応の見通しをもっている。したがって,その教育課程は,職業人として必要な資質を高めるため,一般的な教養を与えるとともに,専門的な技能に習熟させることに重点をおいて編成されなければならない。
3 教科,科目および特別教育活動の性格
高等学校の教科,科目は,第2章の表のとおりに定める。
教科は,それぞれいくつかの科目に分れる。各科目は,教科のもつ一般的な目標および内容のうち,その特定の領域に重点をおいて,組織的,系統的に学習できるようにしたものである。しかし,ひとつの教科に属する各科目は,単に教科をいくつかに分割したその一部となるべきものではなく,目標において互に共通点をもつと同時に,内容の組織と範囲においても,相互に深い関連をもつものである。
教科,科目については,それぞれの目標と内容の組織に応じて,その学習指導に要する時間数を想定し,これを第2章の表に示すとおりに単位数によって表わしている。高等学校の各課程の教育課程を編成するにあたっては,課程の特色を生かし,生徒の必要にこたえ,全体としての調和を図ることが必要であるから,この点の考慮に基いて,教科,科目の単位数は,一種のみに限定せず,一定の幅をもたせて定めたのである。
高等学校では,これらの教科,科目について,すべての生徒に共通に履修させるものおよび学校で選択配列して履修させるもののほか,生徒が個人差に応じて自由に選択できるものを含めて,その教育課程が編成されなければならない。
(2) 特別教育活動
特別教育活動は,教科,科目としては組織されないが,高等学校の教育目標の達成に寄与する有効な学習活動で,教育課程の一部として,教科の指導以外に,時間を設けて指導を行うものである。
特別教育活動においては,一般的に次の諸目標に重点がおかれる。
2 公民的資質を向上させる。
3 健全な趣味や教養を豊かにし,将来の進路を選択決定するのに必要な能力を養うなど,個性の伸張を図る。
これらの活動については,学校は,生徒の自発的な活動が健全に行われるように,周到な計画のもとに,適切な指導をじゅうぶん行わなければならない。