前節にあげた目標や指導内容に基いて,実際に指導していくためには,第4学年までの基礎の上に,第5,6学年の見通しをたてて,適切な指導計画を作成することが必要である。それには,次のような手順を考慮して進めていくことが望ましい。
以上のような諸項目を研究して,各学校では自主的に指導計画を立案することがたいせつである。なお,前節に示した指導内容を,第5学年,第6学年の学年別に配列するには,次の諸点に留意することが必要である。
(B) 基礎的なものから総合的発展的なものへと進める。
(C) 長期にわたってしばしば学習をくり返さなけれはならないものはなるべく早く取り上げる。
(D) 学習時,特に安全について周到な注意を要する作業はあとにする。
さきに掲げたそれぞれの指導内容の分野は,実際生活においては互に関係し合っているのであるから,児童の実際生活に即して題材を選び,それが自然に発展的に展開できるように組織する必要がある。もちろん,これは全体を通じて家庭科の目標がじゅうぶんに達成されるように計画されていなければならない。このようにして指導計画を作ると,多くの場合,家族関係や生活管理の分野は,被服や食物や住居に関する題材と結びついて計画されることになるであろう。また,家族関係や生活管理の分野ばかりでなく,一つの題材には被服・食物・住居の分野が,いろいろの形で出てくる機会が多くなるであろう。
たとえば「すまいのそうじ」とか「きれいなへや」とかの題材名で学習を構成してみると,住居の分野のうちの「清掃」の指導内容が学習の要素となるが,そうじをする場合の身なりということで,被服の分野が取り扱われるし,そうじ用具の扱い方や製作修理といった面で,ぞうきんとか台ふきの製作に発展し,被服製作の基礎的な学習を計画することにもなる。また,児童の家庭生活への実践的態度を培うということで,家族関係の分野の中の「家族としてのあり方」や生活管理のいろいろの内容を学習させることができ,児童の学習活動は生き生きとして盛り上がることになろう。また「食事の手伝い」という題材を構成すると,食物の分野の「食事のしたくとあとかたづけ」の内容が中心になるが,家族関係が基底になって,「ぜんだてのしかた」や「あとかたづけのしかた」が計画されようし,能率的・合理的に仕事をするということは,生活管理の指導の内容をおさえることになる。さらに,この中で調理の学習を扱うとすれば,直接に身支度をどうすればよいかが問題になり,被服の分野が取り扱われる。また,調理したものを食べる際には,食事の作法なども学習し,ひとびととの間がらを望ましいものとすることもできよう。しかし,以上は,一例であって,必ずしもこの題材例の学習に,上にあげた内容をみな含めなれけばならないというのではなく,各学校でそれぞれの事情によって,この中のあるものは他の題材の内容になりうるし,また,これにさらに他の内容を盛りこんでもよいのである。このようにして,題材が構成されて児童が学習を進めていけば,児童はこれまでの経験の上に,さらに望ましい経験を積むことができるであろう。しかし,こうした場合,常に,家庭科の本質からそれないように注意する必要がある。
なお,指導計画を作成する際には次のような点にも留意することが必要である。
2.学校の施設・設備の実態に応じた指導計画を立てることがたいせつである。施設や設備がじゅうぶんでない場合には,それぞれくふうし,充実させていくこと。また,施設・設備が不足なとき,そのために一部の児童が時間の空費をするというようなことのないように計画を立てておく。
3.指導計画には,弾力性をもたせ,学習が有効に進められるように考えておくこと。たとえば,教師の予想しなかった児童の動きに対処しうるように考慮しておくとか,予定したことが,何かのつごうでできない際に変更することができるようにしておくとか,時間を継続して学習するほうがよい場合のために,他の時間を融通することができるようにしておくとかである。
4.児童の個人差によって,同時に異なる学習をするような場合に,安全に能率的に行えるように配慮しておくこと。
5.指導計画はその実施後,絶えず指導にかんがみて適切であったかどうかを反省し,よりよく改善していくことが望ましい。そのためには,実際に指導した実施記録をとっておくこともたいせつなことである。