第3節 指導計画の作成上の一般的留意点

 

 前節にあげた目標や指導内容に基いて,実際に指導していくためには,第4学年までの基礎の上に,第5,6学年の見通しをたてて,適切な指導計画を作成することが必要である。それには,次のような手順を考慮して進めていくことが望ましい。

 この学習指導要領では,全国的な教育課程の基準として,家庭科の目標や内容を示している。各学校では,これをよく研究した上で,学校や地域社会の実情,および児童の状況に即して,それぞれ適切な指導計画を作成しなければならない。基準として示された内容には,相当に幅をもつものが多いから,家庭科の目標をいっそう有効に実現するように,特に内容についてじゅうぶん研究することがたいせつである。  先に述べたように,家庭科が第5,6学年に置かれている理由は,児童の心身の発達の上から考えられたことであり,したがって前節に示した目標や内容も児重の発達の程度を勘案して作成したものである。しかしまた,家庭科を指導する教師として,児童の発達の特性についての理解をもち,さらに自分の指導する学級の児童の力が,どの程度に発達しているか,これまでどのような学習経験を積んできているかを具体的にとらえることが,計画を作成する上に必要なことである。特に家庭科が,第5学年から置かれているので,その学年の児童の学習経験や発達の状況について知ることが,計画を立案する上に重要な条件となる。  家庭科における児童の学習活動が生き生きと展開していくためには,児童の家庭生活の実態をよく調べ,それに立脚して指導計画を立てることかたいせつなことである。ただし単に家庭生活の実態のみに応ずるとか,実態に関する教師の主観的判断に左右されることがあってはならない。  指導の計画を考えてゆくには,季節や学校・地域社会の行事を検討することも必要なことである。季節によって,家庭生活にはいろいろに変化がある。たとえば洗たくという児童の経験は,他の時期に比べると,梅雨期から夏にかけての生活に多い。こうした時期にこの経験を有効に生かしたら,学習が活発に展開されるであろう。同様に,学校や地域社会の行事も,児童の意識に大きな影響を与えるものであるから,その関連をじゅうぶん考慮することはたいせつなことである。  第1章において,家庭科と他教科との関係について述べたように,家庭科は他教科との関係が深い教科である。それゆえ,他教科と関連する内容を取り上げる時期をよく検討する必要がある。

 

 以上のような諸項目を研究して,各学校では自主的に指導計画を立案することがたいせつである。なお,前節に示した指導内容を,第5学年,第6学年の学年別に配列するには,次の諸点に留意することが必要である。

 

 さきに掲げたそれぞれの指導内容の分野は,実際生活においては互に関係し合っているのであるから,児童の実際生活に即して題材を選び,それが自然に発展的に展開できるように組織する必要がある。もちろん,これは全体を通じて家庭科の目標がじゅうぶんに達成されるように計画されていなければならない。このようにして指導計画を作ると,多くの場合,家族関係や生活管理の分野は,被服や食物や住居に関する題材と結びついて計画されることになるであろう。また,家族関係や生活管理の分野ばかりでなく,一つの題材には被服・食物・住居の分野が,いろいろの形で出てくる機会が多くなるであろう。

 たとえば「すまいのそうじ」とか「きれいなへや」とかの題材名で学習を構成してみると,住居の分野のうちの「清掃」の指導内容が学習の要素となるが,そうじをする場合の身なりということで,被服の分野が取り扱われるし,そうじ用具の扱い方や製作修理といった面で,ぞうきんとか台ふきの製作に発展し,被服製作の基礎的な学習を計画することにもなる。また,児童の家庭生活への実践的態度を培うということで,家族関係の分野の中の「家族としてのあり方」や生活管理のいろいろの内容を学習させることができ,児童の学習活動は生き生きとして盛り上がることになろう。また「食事の手伝い」という題材を構成すると,食物の分野の「食事のしたくとあとかたづけ」の内容が中心になるが,家族関係が基底になって,「ぜんだてのしかた」や「あとかたづけのしかた」が計画されようし,能率的・合理的に仕事をするということは,生活管理の指導の内容をおさえることになる。さらに,この中で調理の学習を扱うとすれば,直接に身支度をどうすればよいかが問題になり,被服の分野が取り扱われる。また,調理したものを食べる際には,食事の作法なども学習し,ひとびととの間がらを望ましいものとすることもできよう。しかし,以上は,一例であって,必ずしもこの題材例の学習に,上にあげた内容をみな含めなれけばならないというのではなく,各学校でそれぞれの事情によって,この中のあるものは他の題材の内容になりうるし,また,これにさらに他の内容を盛りこんでもよいのである。このようにして,題材が構成されて児童が学習を進めていけば,児童はこれまでの経験の上に,さらに望ましい経験を積むことができるであろう。しかし,こうした場合,常に,家庭科の本質からそれないように注意する必要がある。

 

 なお,指導計画を作成する際には次のような点にも留意することが必要である。