第2節 小学校家庭科の指導内容

 

 小学校家庭科の諸目標を実現していくためには,さらにその目標を具体化した指導内容についての見通しをもたなくてはならない。

 この指導内容は,家庭生活の多方面にわたる経験や活動であるが,小学校の児童にふさわしい内容として,家族関係・生活管理・被服・食物・住居の五つに整理したものである。

 これらの五つの分野は,前節の五つの目標の各項ごとに,それぞれ対応しているものではない。また,それぞれの分野は独立しているものではない。むしろこれらの分野は家庭生活の実際においては,相互に密接に関連し合っているものである。

 したがって,この五つの分野を順を追って指導するものではなく,またおのおの独立して指導するものでもない。

 特に,被服・食物・住居の三つの分野の指導には,家庭生活の全般にわたる家族関係や生活管理の指導と関連づけて指導することがたいせつである。

 

家 族 関 係

内   容

指 導 の 要 点

家庭の生活

家庭生活の意義

・家庭はすべての生活の基盤であり,そこでは家族が愛情をもって結び合い,互に協力していることがわかる。

・家庭は人間生活にとって保健・経済・娯楽・教養・社交などのたいせつな機能をもっていることがわかる。

・自分は家庭の人々に保護育成されていることを知り,そのよき一員となるように努める。

家庭の仕事

・家庭生活にはこれを維持向上するために,いろいろの仕事があることがわかる。

・家庭の仕事は家庭の人々の立場や能力に応じて適当に分担され,また互に協力しなければならないことがわかる。

家庭と社会

・家庭の生活は近隣や国とつながりを持っていることがわかる。

・近隣の人々と互に協力することができる。

家庭の人々

家   族

・家族の構成員は家々によって違っており,それぞれの立場や役割を持っていることがわかる。

・使用人その他の家族以外の人々に対し,思いやりを持って接することができる。

家族としてのあり方

・家族は相互に敬愛・信頼・感謝・協同し合い,おのおのの立場を理解することがたいせつであることがわかる。

・幸福な家庭を建設するために,家族は互に意見を述べたり,すなおに聞いたりしなければならないことがわかり,またその能力や態度が身につく。

・自分の考えや好みをたいせつにするとともに,他の家族の考えや好みをたいせつにしなければならないことがわかる。

・家族の間がらを反省し,これを改善しようとする。

・家族を喜ばせようと積極的に努める。

・家族に対し,正しい言語動作で接することができる。

・自分の役割を認識して必ず実行し,責任を果すことができる。

・老人や弟妹には思いやりの心をもって親切に世話ができる。

・病人の看病や傷の手当の手伝いができる。

・責任をもってお使いやるす番ができる。

家庭の交際

親しい人々

・友人と親しく,また望ましい態度で交際できる。

・近隣の人々と親しくまた望ましい態度で接することができる。

・親類との関係がわかり,親しくまた望ましい態度で接することができる。

応接と訪問

・来訪者に対し望ましい態度で接することができ,用件を聞くことができる。

・来客に対し気持よく取り次ぎ,接待することができる。

・人を訪問した際には望ましい態度で接し,用件を伝えることができる。

生 活 管 理

内   容

指 導 の 要 点

合理的な生活

生活の計画化

・合理的な生活をするために,生活を計画化する必要があることがわかる。

・生活のむだに気がつき,改善のくふうをする。

生活の能率化

・生活を高めるためには,生活を能率化する必要のあることがわかる。

・労力・時間・物資・金銭など,できるだけ有効に使用することの必要がわかる。

労力と休養

労力の尊重

・労力が貴重なものであることを自覚し,自分および他人の労力を尊重するようになる。

・労力を能率的に使用する態度と能力を身につける。

仕事の能率化

・仕事の能率を考えて,物の置場所をくふうするようになる。

・仕事の手順を考えて,計画的に進める態度を身につける。

・仕事を能率化するためには,仕事の準備とあと始末がたいせつであることがわかる。

・仕事を能率化するためには,いろいろの道具や機械がくふうされていることがわかる。

・仕事にふさわしい身支度をすることができる。

休   養

・健康のためにも,仕事の能率をあげるためにも,適度の休養がたいせつであることがわかる。

・じょうずな休養の方法がわかる。

・休養を計画的にしようとする。

娯   楽

・娯楽は家庭生活にうるおいを与え,あたたかい人間関係を作り出すものであることがわかる。

・娯楽は休養や余暇利用の方法として有効であることがわかる。

・家族がみんなでともに楽しむ方法を考える。

・低俗な娯楽を批判することができる。

時間の尊重

時間の尊重

・生活を高めるためには,時間を尊重し,活用することがたいせつであることがわかる。

・約束や集会の時刻を守り,時間を有効に使おうとする。

規則的な生活

・時間の空費を防ぐためにも,仕事を能率化するためにも,規則的な生活がたいせつであることがわかる。

・起床・就寝・登下校・食事等,おもな行動時刻を決めて,それに従って計画的に行動することができる。

・週・月などのだいたいの計画を立てて生活することができる。

余暇利用

・計画的な生活によって,余暇を生み出すように努める。

・余暇を有効に使用する態度を身につける。

物資の尊重と活用

物資の尊重

・生活に必要な物資の重要性がわかり,それをたいせつに使用しなければならないことがわかる。

物資の管理と活用

・必要度を考えて,自分の持ち物の種類や数量を調整することができる。

・物を長く使用するにはどんな注意が必要であるかがわかる。

・物の種類によってその置場所や入れ物をくふうする。

・物をじょうずに使用する方法がわかる。

・物の性質に従ってその保存法をくふうする。

修理・更生廃品利用

・修理や更生によって,できるだけ長く物を使用するように努める。

・あき箱やあきびんなど,廃品を有効に利用する態度を身につけて,その方法をくふうする。

金銭の使い方

買   物

・金銭を計画的に使用する態度を身につける。

・買い物がたいせつな仕事であることがわかる。

・じょうずな買い方がわかる。

・買ったものは記帳するようになる。

貯   金

・計画的に使うため,不時の必要のために,貯金がたいせつであることがわかり,貯金するように努める。

被   服

内   容

指 導 の 要 点

被服と生活

被服の機能

・被服が保健と活動に適さなければならないことがわかる。

・被服のもつ社会的意義がわかる。

・被服は季節・男女・年令・仕事によって違いがあることがわかる。

・衣服や持ち物について,その目的と性能とがわかる。

被服生活の計画

・自分の被服の種類と数を考えて,合理的な計画を立てる必要があることがわかる。

・被服の計画を立てるには季節や経済などを考えなければならないことがわかる。

・不足している被服の補充のしかたをくふうする。

・既製品の選び方,買い方がわかる。

衣服の着方

衛生的な着方

・常に清潔な衣服を着るようになる。

・衛生的な下着の選び方がわかる。

・季節に応じた衣服の着方がわかる。

・気温によって衣服の用い方を調節することができる。

活動に便利な着方

・仕事や運動に応じて適当な服装を整えることができる。

整った着方

・下着のつけ方,上着のつけ方が正しくできる。

・着方と姿勢とは関係のあることがわかる。

・衣服の調和についてわかる。

手入れと保存

つくろいのしかた

・布のいたみ方とそれに適したつくろい方がわかる。

・いたみの小さいうちにつくろわなければならないことがわかる。

・簡単なつくろいができる。(ほころび縫い・さしつぎ・あなつぎの程度)

・ボタンやスナップなどを正しくつけることができる。

簡単なしみぬき

・簡単なしみの取り方について知る。(すみ・えのぐ・どろ・果じゅう・しょうゆなどのしみ)

・しみをつけたらすぐ取ることの必要がわかり,これを実践しようとする。

あとしまつ

・衣服は脱いだらすぐ始末をするようになる。

・ブラッシを使うことができる。

・衣服のたたみ方がわかる。

しまい方

・虫やかびを防いで,衣服を保存する方法を知る。

・防虫剤の種類や使い方がわかる。

・容器の種類や使い方がわかる。

洗たく

洗たくのしかた

・洗たくの必要がわかり,簡単なものは自分で洗たくしようとする。

・布地の種類によって,用いるせっけんや,その他の洗剤の区別がわかる。

・洗たく用具についてわかる。

・洗い場の適当な高さがわかり,よい高さで洗たくしようとする。

・簡単な洗たくができる。(洗い方,干し方)

仕上げのしかた

・手のし・しきのし仕上げの方法がわかる。

・簡単なアイロンかけができる。

作 り 方

用途と材料

・用途に適する布地,その他の材料の選び方がわかる。

・衣服に関する製作用具の扱い方がわかる。

裁 ち 方

・寸法の取り方,決め方がわかる。

・布目や縫いしろや裁ち合せを考えて布を裁つことができる。

・型紙の使い方がわかる。

縫 い 方

・手縫いの基礎ができる。(なみ縫い・半返し縫い・まつり縫い・とめ方・つぎ方の程度)

・ミシン縫いの基礎ができる。

・簡単な日常用品を作ることができる。(ぞうきん・台ふき・ふくろ・前かけの程度)

簡単な手芸

・簡単な手芸により,生活を美しく豊かにしようとする。

・簡単な手芸ができる。(染物・編物・ししゅうなどのうちから選ぶ)

食   物

内   容

指 導 の 要 点

食物と栄養

食事の意義

・食事のもつ栄養的・社交的意義がわかり,家庭生活の団らんにも食事のたいせつであることがわかる。

食品の選択

・日常食品のもつ栄養分について知る。

・栄養的目標にかなった食品の選択ができる。

・栄養的な食品の組合せがわかる。(基礎的な食品群による。)

・食品には消化しやすいものと消化しにくいものとがあることがわかる。

日常食の献立

・食品を栄養的に取り合わせることができる。

・予算や社会事情・季節や行事等を考慮して食品を取り合わせなければならないことがわかる。

・美味で好みに合った献立を作ることの必要であることがわかる。

食事のしたくとあとかたづけ

材料の整え方

・野菜やくだものの鮮度がわかる。

・安くてよい品を選んで買おうとする。

・材料を整える時期がわかる。

身支度

・調理に適当な服装・その他を整えることができる。

台所の整備

・安全で能率的な調理台・流しなどの高さ・広さ・配置がわかる。

・調理用具・食器などを安全かつ能率的に配置することができる。

・調理用具・食器などを清潔にしまつすることができる。

・ごみの衛生的な処理がわかる。

・仕事を能率的にする設備や器具についてくふうし台所を改善するように努める。

調理用具とその扱い方(計量器を含む)

・調理用具の種類や用法がわかり,その簡単な手入れができる。

・調理に必要なはかりやその他の計量器の使い方がわかり,その使用に慣れる。

燃料の使い方

・調理用燃料を安全かつ合理的に使うことができる。

・こんろの手入れ,保管ができる。

調 理

・日常食の簡単な調理ができる。

・食品の洗い方,切り方,加熱のしかた,味のつけ方,盛りつけ方の基礎ができる。

・食品の取扱を衛生的,科学的にする態度ができる。

・仕事を計画的に手順よく進めるようになる。

・仕事を協力して能率的にする態度ができる。

配ぜんとあとかたづけ

・日常食のぜんだてができる。

・食事の形式を簡素化し,楽しく能率的に食事ができるようにしようとする。

・食器やふきんの衛生的な洗い方やしまい方がわかり,これを実践しようとする。

・廃棄物を清潔に処理することができる。

・食器・食物・台所・食事の場所を衛生的に保とうとする。

食事のしかた

健康と食べ方

・食事の時間や分量を適度にする。

・偏食の害がわかる。

・衛生的に食事をする。

食事の作法

・日常の食事作法を身につける。

・皆で明るい気分で楽しく食事をする。

・来客に茶菓や食事を進めることができる。

・招かれた場合や来客のあった場合,皆とともに望ましい態度で茶菓や食事をとることができる。

住   居

内   容

指 導 の 要 点

すまいと生活

すまいの機能

・すまいは生活の本拠として,保健・安全・休養・家族団らんなどの重要な機能を持っていることがわかる。

・すまいにおける各場所の働きがわかる。

すまいの合理化

・合理的なすまい方がわかる。

・現在のすまいの改善に関心をもつ。

清 掃

そうじのしかた

・そうじのたいせつなわけがわかる。

・いろいろのそうじのしかたがわかる。

・計画的・能率的なそうじについて知る。

・場所に応じたそうじのしかたがわかる。

・大そうじについて時期・方法・効果を知る。

・そうじに関心を持ち,進んで行うようになる。

そうじ用具

・そうじ用具の種類がわかる。

・そうじ用具の良否がわかり,使用に適した用具を選ぶことができる。

・そうじ用具のじょうずな使い方,および管理のしかたがわかる。

・簡単な用具を作ることができる。(ぞうきん・台ふき・はたきなど)

せいとんと美化

身のまわりのせいとん

・仕事をするのに能率的な整理のしかたがわかる。

・決まった場所へ必ず置くようにする。

・整理に必要な簡単なものをくふうする。

室内のせいとんと美化

・常に室内を使いよく整える。

・室内の美化を考えて物の配置をくふうする。

・調和のよい室内の飾りつけがわかる。

・簡単な装飾品を作ることができる。

家具・道具建具の扱い方

・家具・道具の扱い方がわかる。

・建具の扱い方がわかり簡単な手入れができる。(めばり・きりばりの程度)

健康なすまい方

採光と照明

・適切な採光や照明について知る。

・照明用具の種類や扱い方がわかる。

通風と換気

・通風や換気のしかたがわかり,これに気をつけるようになる。

季節とすまい

・暖かいすまい方をくふうする。

・暖房用具の種類と暖房用具の安全な扱い方がわかる。

・梅雨期のすまい方を知る。

・涼しいすまい方をくふうする。

清潔と消毒

・不潔になりがちな場所を知り,常に気をつける。

・消毒方法を知り,簡単な消毒ができる。