第4章 指導計画の作成について

 

 単元学習の意義

 前章にあげた各学年の目標や内容を,具体的な指導計画として取り上げていく場合,社会科では単元という学習内容の組織を考えて,その計画をたてることが必要である。

 しかし,そのためには,単元あるいは単元学習の意義について理解しておかなければならない。

 

 第1章で述べた社会科の意義や,第2章で述べたその目標によってすでに明らかなように,民主的社会人として備うべき資質の一つとして創造的に問題の解決をする力を養うことが,社会科の重要な任務である。このような目的を達するためには,おのずからそれに相応した学習内容の組織のしかたや指導法が考えられなければならないのは当然である。そこで,教科書や教師の講義本位による単調で受身的なかつての授業から脱して,児童がその具体的生活経験の中で当面し,その解決を求めており,かつ教育的にみても価値のある問題をとりあげ,これを中心として学習を展開していくような方法が重視されるようになったのである。このような考え方で,児童の学習経験のまとまりについてくふうしたものが単元であり,問題の解決に向かっての生き生きとした種々の学習活動を通じて,民主的社会における人間関係の基本的知識や理解をはじめ民主的社会人として望ましい態度,能力などを養おうとするところに社会科の単元学習の特色があるのである。

 しかし,この点をなお具体的に考え,古い学習方法と比較しながら単元学習の特質をまとめてみると,次の諸点をあげることができよう。

 

 単元学習には,このような特質があるとともに,その指導が適切を欠き,学習が形式化してしまうと,一面多くの弊害を生じやすいことを考えて,単元の構成やその展開にはじゅうぶんに慎重でなければならない。

 

 望ましい単元の備えるべき条件と単元構成の手順

 

 単元学習の意義について考えることは,おのずから望ましい単元はいかなる条件を備うべきかという問題につながるので,以下に望ましい単元の備えるべき条件を列挙してみよう。

 

 次に,こうした条件を考えながら,どのような手順で単元を構成すべきかが問題になる。

 単元は,その性質上,個々の学級教師によってつくられることが必要である。なぜなら,単元の構成と展開の基盤になる児童の具体的な問題や必要や欲求は,それらの児童と日常接している教師だけが,じゅうぶんにつかむことができるからである。すなわち,児童の気持やその動きをはっきりとらえている人は,担任の教師以外にはないからである。

 では,学級教師は,どのようにして単元を構成すればよいのであろうか。

 この場合,単元構成の手順として,絶体にいつ適用しても誤りのないというようなものを考えることは不可能でもあり,かえって望ましくないことでもあろう。しかし,原則的には次のような手順を踏んで,具体的単元を考えていくのが実際的であろう。

 

 以上のほかにも,単元構成の手順には,たとえば教育委員会などで作成した資料を有効に活用するとか,使用する教科書の内容をあらかじめよく研究するとか,地域社会で学習に利用できる資料や施設のようすを調べておくなどのことも必要であろう。しかし結局最後は,教師としてこれなら自信のある指導ができるという自主的判断によって,単元が決定されることが望ましいのである。

 

 各学年の学習の領域案

 具体的な単元構成にあたっては,上述のようにいろいろな手順が必要であるが,その手順を容易にするための各種の資料が考えられる。ここに示す各学年の学習の領域案も,その資料の一つとして作成されたものであって,従来の学習指導要領で単元の基底例として示したものと,その性格は同じものである。すなわち,これまでの単元の基底例の不備な点を反省しながら,前章の目標にてらし,適切な学習内容を選択し,その組織のしかたを考える一つのめやすとして,それぞれの学年で,社会科の学習としてとりあげる必要や価値のある児童の問題や学習経験にはどんなものがあるか,それらはどんな具体的まとまりとして考えられるかを研究して生れたのが,この学習の領域案である。

 したがって,これはあくまで具体的な単元構成にさきだつ資料であって,単元そのものの例という意味はいささかももっていない。

 なお,それぞれの学習の領域案には,なぜこの学年の児童にはこうした領域を考えて指導する必要があるかという説明が述べてあるが,従来の学習指導要領にあった「発達の特性」がやや一般的であったので,今回は社会科のねらいと児童の学年的特性を結びつけて,こういうかたちで表現したのである。

 また,その領域でとりあげる必要があると思う学習経験をいくつか述べているが,比較的重要と思われるものを示したので,これだけに限定されるとか,これらは全部とりあげなければならないというものではない。

 

各学年の学習領域案

 

 第1学年

 

 第2学年

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