前章の小学校社会科の目標を,具体的な社会科の学習指導を通して実現していくためには,さらに具体化した目標と学習内容についての見とおしをもって指導計画を作成しなければならない。
そこで,この章では各学年の目標とおもな学習内容を示した。
まず各学年に学年の主題というものが示してあるが,これはその学年の社会科学習の基調となっているものをできるだけ簡潔なことばで表現したものであって,あらかじめこのような固定したわくを決めて,それから各学年の目標や内容をつくったというのではない。したがって,たとえば学年の主題が「郷土の生活」とあるからといって,その学年では郷土以外の学習内容に触れてはならないとか,触れる必要はないという意味のものではない。それゆえ学年の主題の意味を非常に窮屈に考え,固定した指導計画に陥らないように留意されたい。
次に,学年ごとに1から5までの基本目標とこれをさらに分析した具体目標(カッコ内の算用数字で示したもの)とが示してある。
基本目標は,前章の小学校社会科の目標がそれぞれの学年の児童の発達段階によってどのように発展していくべきかを考え,その学年の指導の重点が明確になるように5項目にまとめたものである。また具体目標は,実際的な学習や児童の思考の過程をできるだけ具体的にとらえながら,それぞれの基本目標が,児童のどのような理解の段階あるいは学習内容を通して達成されるべきかを検討して作成したものである。したがって,単に所要の学習内容を論理的に分析し細目化したものではない。それゆえ,これを利用するにあたっては,基本目標と具体目標との関連,具体目標相互の関係にじゅうぶん留意されたい。
なお,各学年の学習内容を単独にそれだけとして示すことをせず,それぞれの目標,特に具体目標の中にこれを合めて示してあるが,これはいかなる場合にも,目標と内容を切り離さずに考えることが重要だと考えたからである。
第1学年 学年の主題 「学校や家庭の生活」
(2) 他人の意見をよくきき,また自分の考えや経験したことを率直に話し合い,きまりよく勉強し,元気よく活発に遊べば,みんなと仲よく暮すことができる。
(3) 学校や家庭では,勉強,遊び,食事その他について時間をきめて規則的に行うようになっているので,自分勝手なことをすると他人にいろいろ迷惑をかけることになる。
(4) 学校や家庭の生活は,自分ひとりの生活ではないから,お互にいろいろな約束やきまりを守り,親切にし合えば,仲よく遊んだり気持よく仕事をすることができる。
(2) 祖父母,父母,兄姉など,いっしょに暮している家の人たちは互にいたわり合いながら力を合わせて,わたくしたちの衣食住など毎日の暮しに心を配っていてくれる。
(3) 家庭の暮しには,季節や仕事によって,特に忙しいことやまた病人ができて手の足りないことなどもあるが,そのような時はもちろん,ふだんの時でも仕事を進んでみつけ,いろいろな困難に負けず,これを最後までやりとげることがたいせつである。
(2) 学校や家庭には,自分だけでなくみんなが使う道具,自分はあまり使わなくてもほかの人の仕事にたいせつな道具などがあるが,その置き場所,使い方,始末のしかた等についてみんながくふうすれば,これらをいっそう役にたてることができるばかりでなく,いろいろな危険を防ぐことができる。
(3) 学校や家庭では,いろいろな動植物を飼育栽培しているが,動物をかわいがり,植物の世話をよくすることは,楽しいことでもあり,またそれらをいっそう役にたてることにもなる。
(4) 学校には,教室,図書室,衛生室,講堂,運動場やその他の設備,用具などが作ってあるが,その使い方についてみんなでよく相談したり,きめられた規則をよく守って使えば,楽しい勉強や遊び,安全で健康な学校生活ができる。
(5) 学校や家庭の近くで,みんなが遊ぶ場所には公園,小川,山,野原などいろいろあるが,自分たちでよく考え,またおとなの注意もよく聞いて,遊ぶ場所を選んだり,遊び方のくふうをすれば,けがなどをせず楽しく遊ぶことができる。
(2) 乗物や道路は,わたくしたちがほかの土地へ行く時に必ず利用するたいせつでしかも便利なものであるが,多くの人が利用するのであるから,乗物の中でさわいだり道路上で遊ぶことは他人の迷惑になる。
(3) 道路や橋がこわれたり,乗物が通らなくなると,たくさんの人が不便をうけるので,そういう事故が起らないように,また起ったら早くなおすためにいろいろな工事が行われるが,そのじゃまをしないようにすることがたいせつである。
(2) 先生や両親が,食べ物,着物その他についていろいろ注意したり,学校で身体検査などを行うのは,みんなの身体を病気から守るためであるが,じょうぶな身体をつくるにはよい習慣,悪い習慣があることを考えて,自分から進んでそのよい習慣を身につけるように努め,自分の身体や生命をたいせつにすることが必要である。
(3) 学校や家庭では,国民の祝日や家族の誕生日,学校の創立記念日等にいろいろな行事を計画したり,仕事を休んでみんなで喜びを共にする方法が考えられているが,自分から進んでこれらに参加すれば,その喜びはいっそう深くなる。
(4) 自分の勉強や遊びでも,友だちの力やちえを借りることが多いように,家の人たちも近所の人々や親せきの人々とつきあい,互に助け合って暮している。
第2学年 学年の主題 「近所の生活」
(2) 仕事によって,その人の様子,ことばづかい,使う道具などにはいろいろ違うこともあるが,むやみにこわがったり,あなどったりせず,それらの人々の仕事が自分たちの生活になぜたいせつかを考えるとともに,これらの人々に対してことばづかいや態度に気をつけ,できるだけ親切にすることがたいせつである。
(3) みんなが近所にある道路や乗物,ポスト,下水など日常生活に関係の深い機関や施設の使い方について注意しくふうすれば,安全で健康な生活ができる。
(4) わたくしたちは毎日の生活で,両親や祖父母,兄姉,弟妹あるいは学校の先主,友だち,近所の人々などに対して,つねに尊敬と感謝,いたわりの気持などを持ち,それをできるだけ具体的に行動に現わしていくことがたいせつである。
(2) 農家の人々は,米,麦,野菜など日常欠くことのできない食料を作っているが,その仕事は長い期間継続し,また天候のよしあしなどによって左右されることが多いので苦労が多い。
(3) 工場で働く人々は,機械を使って大きな汽車,汽船をはじめ,衣料品,学用品などにいたるまで,いろいろな品物をたくさん作り,また事故などを少なくするためにいろいろ苦心している。
(4) 自分たちの使っている品物には,遠く離れた土地で作られたものもあるが,それを運ぶ人たちは,早くまた品物がこわれたりいたまずに届くよう努力している。
(5) 物を売る人は,品物を仕入れるために苦心しているばかりでなく,店の場所を考えたり,宣伝の方法,品物の並べ方,配達のしかたなどについても,いろいろくふうしている。
(2) 警察や消防の仕事に従事する人たちは,交番,火の見,消防ポンプなどいろいろな施設や道具を使って,日夜事件の予防のために働いており,万一事件が起ればすぐ働けるように準備しており,時には自分の危険もおかして働かねばならないことがある。
(3) 医師や保健所の人々は,みんなの身体を病気から守り,みんなが健康に暮せるように,伝染病の予防や治療のために日夜働いている。
(4) いろいろな伝染病が起ると,その人だけでなく多くの人に広がる危険があるから,ふだんから,予防注射,大帰除,はえや蚊の撲滅などに進んで協力するとともに、学校や家庭,近所で伝染病が発生した時は,すぐに正しい処置をとらなければならない。
(2) わたくしたちは郵便や電話によって遠く離れた人々とも簡単に連絡したり,用事をたしたりできるが,それには,ポスト,電柱などがたいせつな働きをしており,郵便集配人,交換手などが日夜苦労していることを考えて,これらの人々に迷惑をかけないようにすることがたいせつである。
(3) 家や学校や近所では,祭礼,映画会などいろいろな厚生慰安のための行事を考えて,みんな楽しく生活しようとつとめているが,これら行事はできるだけ多くの人が喜んで参加できるようにすればそれだけ楽しくなる。
(4) 近所の人々は,ふだんの時はもちろん,冠婚葬祭その他仕事のいそがしい時など,互に手伝い合ったり,喜びや悲しみをわかち合って暮している。
(2) 秋のあらしや冬の雪などは田畑の作物や人々の生活にまで強い影響を与えるが,人々はこれをどう防ぐかいろいろくふうしている。
第3学年 学年の主題 「町や村の生活」
(2) 村(町)にあるいろいろな資源や施設の働きをよく考えて,これらをたいせつにすれば,学校や家庭の生活はいっそう楽しくすることができるばかりでなく,村(町)の生活をよくすることができる。
(3) 自分の失敗やあやまちは,素直に直し,他人の失敗やあやまちをむやみにとがめだてしないで,互に喜びや悲しみを共にするように心がけると,人々はいっそう仲よく仕事をすることができる。
(2) 村(町)には,自分の村(町)で仕事をしている人々と,他の土地へ仕事をしにいく人々があるが,動植物の飼育栽培,いろいろな資源の捕獲採取,他の土地から入手した原料を使っての物資の生産などが人々の努力によって行われている。
(3) 村(町)の人々は,その生産した物資を,自分たちで消費するばかりでなく,出荷組合その他の手を通して,これらを他の土地へ送り出していると同時に,他の土地からも必要な物資を入手しなければならないので,商店,市場などが人々の生活にたいせつな働きをしている。
(4) 村(町)の人々の物資の生産,出荷,他地域からの物資の入手等にみられる活動は,村(町)の地勢,気候,資源などの自然の様子や交通機関のありさまと深い関係を持っているばかりでなく,いろいろな職業の人々の働きが結び合って行われている。
(5) 村(町)の人々は,その仕事の上ばかりでなく,すまいや衣服あるいは行事などの点でも,地勢や気候,季節,仕事の性格などを考えたくふうをしているが,このようなくふうや資源の愛護開発が,今後ともますますたいせつである。
(2) 村(町)の生活にも台風,洪水などの災害に備えていろいろなしくみやくふうが考えられており,その被害をうけた時には,みんな協力して復旧につとめる。
(3) 村(町)の保健所,消防施設,警察などは,人々の健康・衛生や安全な暮しにとって欠くことのできない働きをしているが,直接にこれらの仕事に携わっていない人々でも,自分たちの村(町)を守るためにいろいろくふうしたり,力を合わせることがたいせつである。
(4) 村(町)では学校や公民館その他を利用して,音楽会、展覧会,映画会等を開き,みんなが共に楽しみ,心を豊かにする機会を持ち合うことがたいせつである。
(5) 学級や学校に,みんなが楽しく暮せるように児童会その他のしくみやきまりがあると同じく,村(町)の生活にもみんなの仕事をする代表者を選ぶしくみや,公共施設を使ったり,行事を行う時のきまりがあるが,これらのきまりを守り,施設をじょうずに使うようにくふうすることがたいせつである。
(2) 農業や漁業,林業などが多く行われ,人家や建物の割に土地の様子が広々としている村と,商店,工場,映画館などの建物や乗物などの多い町とでは,その外観が違っているばかりでなく,人々の衣服,食生活,すまいの様子,遊び方,行事などにもいろいろな違いがある。
(3) 村と町の様子,人々の暮し方に,いろいろな違いがあるので,町の人々は食生活その他に必要な物資を村から入手することができるし,村の人々もいろいろな衣服,仕事のための道具などを町から手に入れることができるのであり,これには各種の交通機関が欠くことのできない働きをしている。
(4) 村(町)の人々は,いろいろなかたちで通信機関を利用しているが,自分たちもよその土地から来た人とよく話し合ったり,よその土地へ移り住んだ人と通信などし合えば,たとえ,その生活が違っていてもお互に理解や愛情を深めることができる。
(2) 村(町)の人々の現在の仕事のしかた,日常生活における物資や道具の使い方,いろいろな行事や公共施設の様子,よその土地との関係なども,両親あるいは祖父母のこどものころの様子と比較すると,いろいろな点で違っており,便利になった点が多いが,昔しにはなかった困ったことも起こってきた。
(3) 昔の村(町)と今の村(町)の生活が変ってきたのは,世の中における新しい道具や機械の発明などとともに村(町)の人々自身の村(町)の生活をよくしようという努力や自然への働きかけがあったからである。
(4) 自分たちの村(町)を住みよく美しくするには,その方法についてみながよく考え計画をたてるばかりでなく,すべての人が自分の村(町)を愛する心をもってその仕事に協力することが大事である。
第4学年 学年の主題 「郷土の生活」
(2) 自分の郷土の特色をよく理解して,学校・家庭・村(町)などでの毎日の生活を改めて反省してみると,いろいろ新しいことに気づき,その生活を改善するよい方法を見つけることもできるが,何事によらずよいとわかったことは,困難をのりこえ,勇気をもってしとげることがたいせつである。
(3) わたくしたちの周囲には,貧しい人や手足の不自由な人もいるが,みんな同じ尊い人間であることを考えて,互にいたわり合うばかりでなく,人それぞれの長所を生かして共同の仕事をすることがたいせつである。
(2) 郷土の地勢は,人々の仕事の上ばかりでなく,郷土と他地域や郷土の中の交通,あるいは町の発達などに影響を与えている。
(3) 郷土の気候や資源は,人々の仕事の上ばかりでなく,そのすまいや食生活,その他の暮しの上に影響を与えている。
(4) 郷土の町は,お互に深い関係をもっているばかりでなく,周囲の農,山,漁村などの地域の生活とともになりたっているが,それらは政治の働きの中心となっている町,物資の集散地とか,商工業の中心となっている町など,それぞれ特色があって,郷土全体の生活にたいせつな役割を果している。
(5) 郷土の自然の様子は,昔と今とでいろいろ違った点があるが,昔の郷土の人々の生活も,やはりそのころの自然の様子と深い関係をもって営まれていた。
(6) 同じ郷土の中でも,地勢,気候,資源,交通などの関係で,仕事や人々の暮し方が所によって違っていることもあり,自分の村(町)の生活も,村(町)の自然環境ばかりでなく,郷土の中での位置や近くにある大きな町との関係などからも影響を受けている。
(2) 郷土の人々の全体の福祉をはかるためには,教育や文化,医療の施設,警察・消防などの組織,各種の公共事業が必要なので,みんなの税金をもとに,これらの仕事がうまく行われるようなしくみが都道府県として考えられている。
(3) 郷土にも,風水害,冷害,干害など,生産を妨げ,人々の生命財産をそこなう危険があるが,昔から郷土の人々は,いろいろな努力を払ってその対策をたててきたし,現在でもこの点についてさまざまなくふうをしている。
(4) 郷土の人々は,その生産活動や消費生活の面でも,たとえば協同組合などのようなしくみを考え,人々の協力による生活の向上に努めている。
(5) 郷土の人々の幸福には,現在ある施設をみんなで考えて有効に利用することがたいせつであるが、それらをさらに改善したり,充実することが必要である。
(2) 四季の変化や,季節による人々の暮し方,あるいはその仕事などの点で,郷土と他地域を比較してみると,南北に長い日本では,郷土とはかなりの違いがあり,きわだった侍色をもつ地域がある。
(3) 郷土の生活と衣食住,生産,交通の様子などの点で違った特色をもつ地域は,国内ばかりでなく外国の諸地域にも多く,それらを調べると,郷土の生活をよく理解する上に参考になる点が少なくない。
(4) 郷土の人々の衣食住や,生産,生活行事などには,その地勢,気候などの関係から他の地域に見られない特色があるが,そこには郷土の人々の昔からのいろいろなくふうや努力のあとがひそんでいるから,そのよい点は今後もできるだけ生かしていくことがたいせつである。
(2) 人々の交通の様子も江戸時代と今日とでは,単に新しい道路が開かれたり,交通機関が出現したためばかりでなく,世の中のしくみが変ったため,便利にになった点が多いが,この変化が郷土の人々の暮しや生産の上にも深く影響し,新しい問題も起ってきている。
(3) 人々のこうした努力によって,昔から郷土の姿は変ってきたが,またわたくしたちも,今後の郷土の発展について考えるために,生活の改善に努めた先人のくふうや他地域の開発の事例などを参考にすることがたいせつである。
(4) 住みよい郷土を作るには,みんなが因襲や迷信にとらわれず,その職業や仕事に応じて,後の世の人のことも考えて,その責任を果すことが大事である。
第5学年 学年の主題 「産業の発達と人々の生活−−日本を中心として−−」
(2) われわれ日本人は,住む地域,職業などを異にし,その日常生活でのいろいろな問題に当面しているが,それらは食糧問題,国土の開発のように国民全体が真剣に考えなければならない問題につながっている場合が多い。
(3) 集団生活をしていくわたくしたちには,いろいろな責任があるが,学校・家庭・町や村の一員としてだけでなく,現在の国民生活をよく理解した上で,日本国民のひとりとしての自己について反省し,どんな場合でも自己の良心に恥じない行動をするよう努めることがたいせつである。
(2) わけても農業は,米,麦その他の食糧物資を生産し,人口の約半数がこの仕事に携わっている重要な産業であり,昔から人々が土地の開発,灌漑のくふう,品種の改良,新しい肥料・農薬品・機械などの活用に努めてきたが,なおその生産や農家の人々の生活改善には,いっそうの努力を必要とする。
(3) わが国を取り巻く暖流,寒流などの関係で,昔から国民の食生活と切り離せない重要な産業として発達してきた水産業では,今日なお遠洋漁業への発展,各種の水産加工や増殖事業の開拓のための努力が絶え間なく続けられているが,水産資源の保護,漁場の問題等解決すべき問題も少なくない。
(4) そのほか国民の衣食住資源として,また工業の原料や動力資源として欠くことのできない各種の林産資源,地下資源などには,国内の需要を満たせるものと満たせないものがあるが,それぞれその開発や必要量の確保にさまざまな努力が払われている。
(5) 明治以後,日本の工業は交通機関の発達や貿易の発展とともに,繊維工業などを中心に盛んになってきたが,現在でも京浜,中京,阪神,北九州等の工業地帯やその他の工業都市を中心として,生産の合理化,市場の開発などに努めながら,各種の工業生産が行われている。
(6) 各種の生産や商業の発達は,わが国における陸上交通や海上交通の発達を促がし,自然の条件を克服してトンネルの開さく,道路や港の整備などが図られた結果,今日では主要な鉄道幹線や国内航路が国内諸地域を短時間で結びつけ,さらには外国航路や航空路もますます発展しつつあるが,それだけに交通機関の利用にあたっては,みんなの細心の注意が必要になってきている。
(7) 現在の社会生活では,日々大規模な商業取引が行われ,商店,市場などの働きによって,人々は国内,国外の生産物資を容易に入手し得るが,それだけに商業のしくみや広告,宣伝の働きなどをよく理解して,じょうずな物の買い方やその使い方をくふうすることが必要である。
(2) わが国は南北に長く気候にかなりの違いがあり,資源の分布状況も異なるので,同じ山村や漁村でも生産物資の種類やその生産のしかたに相違があり,それぞれの方法で,他地域との物資や文化の交流を図っている。
(3) 商工業の発達や今日の行政のしくみは,農,山,漁村の生活といろいろな面で異なる都市の生活を発展させ,その地方ばかりでなく,国全体の生活の中でも重要な働きをしているが,人口の過度の集中,そのほか他の地域ではみられない問題も多い。
(4) その地理的位置のため,年々台風の被害を受けることが多く,各種の資源も決して豊かとはいえないわが国では,産業の発達に伴いやすい資源の濫費に注意するばかりでなく,国土の緑化その他資源の開発に国民全体が協力することがたいせつである。
(5) 日本全体の生産や生活の特色を理解し,さらにわが国の今後の産業の発展などについて考えるにあたっては,国内諸地域の特色をよく知るばかりでなく,それぞれのしかたで自然環境を生かした生産活動を行っている外国の様子と比較してみることもたいせつである。
(2) 社会における分業のしくみや機械の進歩により,人々は厚生慰安や文化活動を行う時間を多くもてるようになり,その地域や職業に応じた余暇の利用をくふうしているが,その利用のしかたや厚生慰安の施設には,なお改善すべき点が少なくない。
(3) 人がそれぞれの仕事をもって働くことは,自分や家族の生活を維持するためばかりでなく,社会全体の発展に寄与するためであるが,自分たちもその学校生活や家庭その他で全体への寄与と自己の責任を考えつつ仕事をする必要がある。
(2) 手工業と比較して,新しい動力の利用,大量生産,分業のしくみ,原料入手や製品販路の拡大,大きな資本などの点で特色ある機械生産の普及の結果,人々は物資の入手その他の点でいろいろな利便を受けた反面,個人の価値が忘れられたり,人々の安全や健康がおびやかされたり,資源が濫費されたりする傾向が生じ、みんなでよく考えて解決しなければならない問題に当面している。
(3) 生産のしかたや衣食住の生活が,今日のように発展してきたについては,内外の先人の発明発見が大いに役だっているが,今後も,大量生産その他の科学の成果を公共の福祉のために役だてようとする気持がたいせつである。
第6学年 学年の主題 「日本と世界」
(2) 世界の人々が生活や考え方の違いをこえて,理解し協力し合うためには,物資や文化の交流による相互の依存関係をよく考えるばかりでなく,進んだ交通通信報道機関を正しく利用して,互に偏見をなくし,相互の意見を疎通し合うことが必要である。
(3) 人々の平和を願う気持にもかかわらず,世界の国々は,これまで幾度か戦争という手段で争ってきたが,特にその破壊力が大きくなった今日では,それぞれの国の独立を尊重し含って平和を守る努力を続けなければならない。
(4) どんな集団生活でも,紛争や意見の対立を平和的な方法で処理するには,みんなで定めたきまりや自己の責任についてよく考え,多数の意見を尊重しながらも少数意見も生かすような努力を払うことがたいせつである。
(2) わが国の憲法によって,天皇は国の象徴,国民統合の象徴としての立場に立っておられ,また政治は国民が選んだ代表者による議会政治によって行われている。
(3) 国や地方の政治のしくみやきまりは,人々全体の生活をよくしていくために作られたものであることを考え,みんなが選んだ代表者のことや国民が義務として納める税金のことなどに関心をもつことがたいせつである。
(4) 学校や家庭などの身近な生活の場合でも,困ったことは,たれかがなんとかしてくれるという気持でいたのでは,その生活はよくならない。
(2) わが国では3世紀の後半ごろ,大和朝廷の統一によって国としての形を整えてから明治維新に至るまで,政権の所在地が大和,奈良,平安,鎌倉,室町,江戸等と変ったり,政治に携わった人々が貴族や武士であったりしたが,明治になって憲法がつくられ議会政治が行われるようになってから,国民の政治に参加する道はしだいに開かれてきた。
(3) その間,大陸の文化や制度をとり入れた政治や生活が展開された世の中,鎌倉幕府の創立以来政治にも文化にも武士の生活の特色が強く現われた世の中,同じく武家政治でも江戸幕府の諸政策によって世の中の秩序や人々の身分が固定した時代等があり,やがて明治維新を迎えた。
(4) このような各時代の政治や国民生活の発展のかげには,多くの困難の中で外来文化の摂取や産業・交通の開発,文化の発達等にさまざまな力を尽した先人の努力があるので,現在の問題を考えるときにも,つねに昔の人々の業績についてふりかえり,さらにそれを今日にどう生かしたらよいかくふうしてみることがたいせつである。
(2) その後,江戸時代の鎖国のため,中国,オランダ以外の国々との交通や貿易はしばらくとだえたが,明治になってから西欧の文明を急速に取り入れ,近代産業を興し,諸外国と対等な交際をするためにさまざまな努力を払って,世界における国際的な地位を高めてきた。
(3) 第2次世界大戦後,産業の復興や貿易の振興にいろいろな努力が払われつつあるが,日本の資源,人口,領土,あるいは将来の文化の発展等,諸外国との関係に深くつながった問題が多いことを考えて,つねに外国の様子に関心を払うことがたいせつである。
(4) 世界各地を短時間で結ぶようになった交通機関や通信報道機関の発達のために,われわれはいろいろな利便をうけ,世の中の動きも速くなったが,それだけに各人が自主的な判断力を養い,落ち着いて自分の考えを確かめ,行動することがたいせつになってきた。
(2) イギリス・ドイツ・フランスその他のヨーロッパの国々,あるいはソビエト連邦,アメリカ合衆国,ブラジル等の国々でも,それぞれの地域の気候,資源などを生かした特色ある生活が営まれているが,それらの国々とわが国との現在の関係や今後の協力などについて関心を払うことが必要である。
(3) 現在のわれわれの日常生活には,古くからの日本の文化やしきたりと比較的新しく他国からとり入れた生活様式とが交り合っており,国の人々の発明発見などから受けている恩恵も少なくないが,日本の科学者の業績や日本固有の文化が世界の人々の生活に寄与し,高く評価されている点も少なくない。
(4) すぐれた芸術家,思想家,宗教家などの生涯とその精神は,永く歴史に生きて,世界の人々の心を動かし,さらにわたくしたちの今後の生き方に強い力を与えてくれるが,これらを通して道徳的心情や宗教的情操を養い,また芸術愛好の精神を深めることがたいせつである。
(5) 現在の世界には,国際連合,ユネスコ,赤十字等,平和を守り,科学や文化の交流を高めようとする活動が,いろいろな姿で行われているが,国を愛する心と広く世界に学ぶ心を一つに持って,これらの働きをよく理解し,わが国の今後の発展について考えることがたいせつである。