第3章 水産に関する課程の編成

 

第1節 水産に関する課程の編成

 

水産教育は分野が広いので,専門的に職業を身につけられるように,代表的なものをあげれば漁業,水産増殖,水産経営,水産等が編成され,その他今後設けられてよいものに,漁船機関士の養成,漁業無線の技術等を対象とした課程が考えられる。
 
課程\教科
漁 業
水産製造
水産増殖
水産経営
水 産
水産一般
水産生物
海洋気象
漁  業
航海運用  
漁  船    
水産製造  
水産化学  
 
微生物  
   
水族病理        
水産増殖
 
水産経営
水産簿記
水産法規
水産に関す

る他の教科

         

水産に関する課程の必修および選択教科についての例。

 各課程は必修と選択の教科が配合されるが,各地域の実状によってきまってくるであろうし,また生徒の要望もあるであろう。

 たとえば,経営をのぞいた他の三課程を設置した所では,経営に関する教科を全くそなえないか,または特に設けることになる。

 二課程を設けた所では,それらに必修の教科以外は状況に応じて選択的に設けられるわけである。

 また,漁業課程は漁船乗組員の資格取得を目的とする場合は,その程度に応じて充実した教育が行えるように教科を配置せねばならない。

 その地域が漁業が非常に盛んであれば,学校としては漁業課程を設けるであろうし,多額の水産物が集荷される所であれば,さらに製造や経営の課程を併設することが考えられる。

 たとえば,漁業,製造の二課程を設置するところでは、14教科中10教科は必修教科で当然設けられるはずであり,他の4教科も共に設けられるのがのぞましいが,順次充実を計らねばならない実状であれば,その地域に応じて,経営方面の教科を選択して設けていくのもよい。そして社会の要求にもよるが,経営の教科を増加していって,経営課程の併設に拡充していくのもよいであろう。

 内海や淡水地域で増殖業が盛んであれば,増殖課程を主体とし,製造や経営の課程を併設することが考えられる。

 遠洋漁業の基地等では,特に漁船乗員の養成に力をそそいで,漁業課程のうち,海洋気象,航海運用の教科を最大限に充実して,有利に海員の免状を取得できるようにすべきである。

 一方,漁業が小規模で,大型漁船を必要としない地域では,漁業課程の教科を広く一様に充実させるのもよい。

 また,生徒の多くが卒業後家業に従う地域では,その土地のよい水産業自営者とするために,各課程の教科をその地域に最も適するよう総合的に組み合わせて,独自の特色をもった水産課程を設けることも考えられる。

 

第2節 漁業課程の編成

 

 1.漁業一般向きの場合の科目組み合わせの1例

 

 

共通必修
課程必修
 

 

 

特育

別活

教動

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10

 

 

 

 

21

11

38

 

 

 

 

 

 

 

12

 

 

 

 

 

16

12

35

3〜4

9〜12

8〜10

20〜26

3〜4

3〜4

3〜4

9〜12

34〜36

34〜36

34〜36

102〜108

備考

(1)これは漁業を中心として水産業全般に広く目標をおき,漁業自営者,漁業初級技術者および漁船乗組みの海技従事者(乙種二等航海士)の養成を考慮して科目を組み合わせた。(2)共通必修における第1学年の社会は(一般杜会),数学は(一般数学),理科は(物理),第3学年の社会は(世界史),(人文地理),(時事問題)のいずれか一つを選ぶように指導する。(3)選択科目としては,第1学年は普通教科のうちから適宜な科目を選び,第2学年は(漁業)3単位,(水産製造)2単位,(水産簿記)3単位,(航海運用)4単位,(海洋気象)2単位,および普通教科の科目,第3学年は(漁業)3単位,(水産増殖)2単位,(水産経営)2単位,(航海運用)4単位,(漁船)2単位,および普通教科のうちからそれぞれ将来の目標を考慮判断して適宜選ぶように指導する。

(4)(海事関係法規)は(航海運用)に,(漁船機械)は(漁船)の科目のうちにそれぞれ2単位以上含ませる。

 

 2.漁船運用に重点をおいた場合の科目組み合わせの1例

 

 

共通必修
課程必修
 

 

 

特育

別活

教動

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10

 

 

 

 

21

11

38

 

 

 

 

 

14

 

10

16

 

 

 

19

25

49

2〜4

2〜4

9〜13

3〜4

9〜10

34〜35

35〜37

36〜38

105〜110

備考

(1)これは船舶職員法による乙種一等航海士の受験資格を得ることに科目の配置を考慮したため,必修科目が多くなっているから,選択科目の選びかたは一方に偏さぬように指導する。

(2)共通必修の教科の選びかたは例1に同じである。

(3)選択科目としては,第1学年は外国語(英語)5単位,第2学年,第3学年は専門教科および普通教科の科目のうちから適宜選ぶように指導する。

(4)(海事関係法規),(漁船機械)の組み合わせかたは例1に同じである。

 

第3節 水産製造課程の編成

 

 製造一般向きの科目組み合わせの1例

 

 

共通必修
課程必修
 

 

 

特育

別活

教動

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

10

 

 

 

 

21

11

38

 

 

10

18

 

10

 

 

 

 

 
 

16

17

38

3〜5

8〜10

4〜6

14〜19

3〜4

3〜4

3〜4

9〜12

32〜35

33〜35

35〜36

100〜106

備考

(1)これは製造を中心として,できるだけ一般的に広い技術,知識を修得するように組み合わせた。

(2)共通必修における第1学年の社会は(一般社会),数学は(一般数学),理科は(化学),第3学年の社会は(世界史),(人文地理),(時事問題)のいずれか一つを選ぶように指導する。

(3)選択科目としては,第1学年は普通教科のうちから適宜な科目を選び,第2学年は(水産生物)2単位,(水産化学)3単位,(水産簿記)3単位,および普通教科の科目,第3学年は(水産製造)2単位,(水産経営)2単位,(海洋気象)2単位,および普通許可の科目のうちから適宜選ぶように指導する。

(4)(水産機械)は第2学年において(水産製造)の科目のうちに含めて3単位組み合わせる。

(5)水産製造の大規模に盛んな地域は(水産製造)を20〜25単位,(水産化学)を10〜15単位必修にすることが考えられる。

 

第4節 水産増殖課程の編成

 

 増殖に重点を置いた場合の科目組み合わせの1例

 

 

共通必修
課程必修
 

 

 

特育

別活

教動

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10

 

 

 

 

21

11

38

 

 

10

 

 

 

 

 

16

 

 

 

18

14

37

3〜5

5〜7

5〜7

13〜19

3〜4

3〜4

3〜4

9〜12

32〜35

32〜35

34〜36

97〜106

備考

(1)これは増殖技術の習得に重点をおいて組み合わせた。

(2)共通必修における第1学年の社会は(一般社会),数学は(解析1)理科は(化学),(生物)のいずれか一つを,第3学年の社会は(世界史),(人文地理),(時事問題)のいずれか一つを選ぶように指導する。

(3)選択科目としては,第1学年は普通教科のうちから適宜な課目を選び,第2学年は(微生物)2単位,(水産簿記)3単位,(漁業)3単位,および普通教科の科目,第3学年は(水産化学)3単位,(水族病理)2単位,(水産製造(冷蔵))2単位,(水産経営)2単位,および普通教科の科目のうちから適宜選ぶように指導する。

 

第5節 水産経営課程の編成

 

 総合的経営の場合の科目組み合わせの1例

 

 

共通必修
課程必修
 

 

 

特育

別活

教動

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

簿

 

 

10

 

 

 

 

21

11

38

 

 

 

 

 

 

12

 

 

 

17

14

36

4〜5

7〜8

5〜7

16〜20

3〜4

3〜4

3〜4

9〜12

33〜35

33〜35

33〜36

99〜106

備考

(1)これは漁業,水産製造,および水産増殖を総合的に考慮して組み合わせた。

(2)共通必修における第1学年の社会は(一般社会),数学は(一般数学),理科は漁業および水産増殖に重点をおく場合(物理),水産製造を主とするときは(化学)とし,第3学年の社会は(世界史),(時事問題)のいずれか一つを選ぶように指導する。

(3)選択科目としては,第1学年は普通教科の科目,第2学年は(水産製造)4単位,(漁業)2単位,(漁船)2単位,および普通教科の科目,第3学年は(水産製造)2単位,(漁業)3単位,(水産増殖)2単位,および普通教科の科目のうちから適宜選ぶように指導する。

 

第6節 水産課程の編成

 

 総合的に科目を組み合わせた場合の1例

 

 

共通必修
課程必修
 

 

 

特育

別活

教動

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10

 

 

 

 

21

11

38

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

15

13

35

3〜4

11〜12

7〜8

21〜24

3〜4

3〜4

3〜4

9〜12

34〜36

35〜37

34〜36

103〜109

備考

(1)これは前節の各課程に比し,水産業全般に広く,且つかなり深く目標をおき,つぎに選択科目を集約的に活用することによって,その地域に適応した水産業の自営者および初級水産技術者を養成するため,総合的に各教科を組み合わせた。

(2)共通必修課目の選びかたは前節に準ずる。

(3)選択科目としては,第1学年は普通教科のうちから適宜な科目を選び,第2学年は(水産生物)2単位,(海洋気象)2単位,(航海運用)5単位,(漁船)3単位,(水産簿記)2単位,(水産製造)5単位,(水産化学)3単位,(水産病理)2単位,および普通教科の科目,第3学年は(漁業)3単位,(航海運用)5単位,(水産製造)5単位,(水産化学)3単位,(水産増殖)5単位,(水産簿記)2単位および普通教科のうちからそれぞれ生徒の希望,家庭の状況,およびその地域の必要に応じて適宜選ぶように指導する。

 

第7節 水産に関する課程の教育計画

 


 
普通教科必修
水産に関する教科必修
選  択
38単位
30単位
17単位
85単位
 
47単位
 

 

普通教科および単位数の関係

 高等学校の三年間に修得すべき単位数は85単位で,そのうち,38単位が普通教科の必修であり,30単位が水産に関する教科の必修で,残りの17単位が選択になっているが,実際に職業教育の目標によって水産に関する教科を配置したり,あるいは教養教科を選択させるようになる。従って総単位数は一般的な教育では,85〜93単位が適当であるが,高度の漁船乗員の資格を目的とするような場合では,100単位程度を履修させねばその資格がとれないので,いきおい,教育計画に相当な無理をせざるを得ない。しかし,商船高等学校と異り,漁業に本質があるのであるから,本科においては,乙種一等航海士(機関士)の受験資格を得ることを目標とし,航海運用の関係教科は25〜30単位にとどめておき,さらに、甲種二等航海士(機関士)の受験資格を得るためには,1年以上の専攻科を設置し,練習船実習にあわせて不足の10〜15単位を補修するようにしたい。

 

教科と実習時間の関係

 実習時間は水産に関する教科の総時間数の4割以上であって,相当な時間を実習に充てることができる。

 従来,実習は別に実習の教科をおくこともあったが,現在では教科数を少なくして重点的な方針をとり,実習時間は教科に含められ,それから4割をとるようになっている。

 実習には一年を通じて教科に並行して行うのがよいものもあり,ある期間にまとめて行うのが都合のよいものもあり,また教科を総合して行うのが適当なものもあるが,いろいろな見地から,総合実習の形にもって行くべきであろう。

 年間計画は各地域の実状に応じて,示された基準にできるだけそいつつ,各地域独自の計画がなされることがのぞましい。

 年間計画,月間計画等の具体的な例も示すべきであるが,現在,水産教育が直面している諸問題との関連もあり,ここでは省略しておく。

 以上を参考として,各地域において,現状に甘んぜす,水産教育の向上発展に努力されるよう期待する。

 

 

 
高等学校学習指導要領

水産科編    

昭和28年11月10日 印刷

昭和28年11月15日 発行

  著作権所有     文   部   省

             東京都千代田区五番町5番地

  発行者    実 教 出 版 株 式 会 社

                 代表者  花 岡 芳 夫

             東京都荒川区日暮里町8丁目565

  印刷者            

                 代表者 田 中 富 士 男

     _______________________

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