附    録

Ⅰ 運動の特性と指導

 この指導要領では第Ⅲ章で述べたように,これまで教材と呼ばれていた各種運動種目を学習内容の重要な部分として取り上げることにした。したがってこのような考え方に慣れない人々にとっては不便な点があり,またもっと具体的に述べることを希望される向きもあるかもしれない。このような点や各種運動が体育学習の場となるその重要性を考えて,さきに学習内容で示した各種身体活動の部分を特に取り出して,必要と考えられる事がらについて述べ,指導の参考に供することにした。

 この章の一般的なねらいは,各種の身体活動を基点に体育の学習指導全般の見通しをたてようとした点にある。すなわちそれぞれの運動種目(群)は,体育の学習活動をどのように方向づけたらよいかを明らかにしようとするものである。

 このためにまず,この指導要領における各運動群についてふれ,次に目標や学習内容との関連を考えてその特性を導き出し,さらに指導の具体的的内容や発達との関係における内容の学年による排列にふれ,そしてまた各種目の一般的な方法や指導上の注意とともに,必要と考える場合にはその取扱例についても述べることにした。

 各活動群にはそれぞれの特性があって,一様な取扱は困難な点もあり,また教科内容として取り入れられた歴史的事情も異なるので,一般的には上のように考えながら,特に必要と思われる点を重視して述べることにしたので,その取扱方におのずから違いのあることを了承されたい。

 紙数の制限があり,またそれぞれの運動群や種目の方法や指導を扱った参考文献も少なくないので,ここでは特に必要と思われる事がらについてだけ述べることにした。

(Ⅰ)固定施設を使って遊ぶ運動と力試しの運動

1.この指導要領における考え方について

 「力試し」という観点からながめれば,すべての運動をそのように考えることができるし,また指導上の立場からもそれは望ましいことである。このような理由から,他の運動群と重複する点も生じ,まとめ方には多少の困難があるが,こどもたちがかなり強い欲求や興味をもっているところの比較的単純な未組織的な自然運動で,しかもその運動のそのままで自己の力や進歩も試しやすいような活動群を概活して,「力試しの運動」とした。

 この運動群に比較して,いっそう形式的な運動である徒手体操は一応これから区別され,中学年以上になるとかなり組織的に発展する走運動は,「リレー」として分離した。また,発達上の必要から低学年における「固定施設を使っての遊び」は単に「力試し」という観点からだけでなく,人間関係の学習の場としても特に重要な役割をもっているので,一応分離して考えた。これらの分類は,要するに,学習指導の計画や実際にあたっての便宜から考えられたものである,ということができよう。

 この活動群の内容を技術系統の角度からながめてみると,おおよそ次のようになろう。

(1) 第1に,固定施設を使っての遊びから器械器具を使っての運動に発展するもので,前の指導要領で,「器械遊び,器械運動」と呼ばれていたものの大部分はこれに該当するであろう。

(2) 第2には,未組織的で,形式が比較的単純ないわゆる走跳投の運動であって,前の指導要領で「かけっこ・リレー・陸上運動」と呼ばれたもののうち,リレーを除いた大部分はこれにあてはまるであろう。

(3) もう一つは,器械器具を使わずに,個人的あるいは少人数で比較的簡単に試みられる巧ち運動の系統がある。これらは器械器具を用いないで行うスタンツと呼んでもよい。前の指導要領で,「体操」の「2人以上で組んで行うもの」にはこのスタンツに含まれるものが少なくないし,「器械遊び・器械運動」に含まれていたマットを使っての運動(たとえば前まわり後まわりなど)はむしろこの群に含まれることになうう。

2.ね ら い

 前に,かけっこ・リレー・陸上運動と呼ばれていた走跳投などの運動や器械遊び・器械運動と呼ばれていたものなどが,この指導要領で力試しの運動としてまとめられたのは,組織的活動として発展させるというよりも,どちらかといえば,体育の立場から,個人的発達を促す上に特に効果的で欠くことができない活動としてとりあげられ,しかもこれらが他の活動とよく調和して計画され指導されやすいようにという配慮からである。

 この活動群に特別に期待するねらいは,身体的発達,基礎的運動能力の発達,施設の活用のしかた,安全に関する態度や能力の発達であって,いっそう具体的にいうならば,一般に次の事がらが重要であろう。

(1) 走ったり,とんだり,投げたり,懸垂したりなど,いろいろの一般的な基礎的運動能力を発達させる。

(2) 筋力・持久力・柔軟性・敏しょう性・器用性・平衡能力あるいはいろいろの状況での正確な反応などの向上を図る。

(3) 安全に対する態度や能力を身につける。特に固定施設,器械器具を使っての運動ではそうである。

(4) 他の活動の間にさしはさむことによって,身体的あるいは心理的な解緊や調整をはかる。

(5) 自己の現状や進歩への関心を高めるために,有効な基本的な学習の場を提供する。

(6) 低学年において「固定施設を使っての運動」を特にとりだしたことは,さきに触れたとおりであるが,このような施設を利用する場合には,上に述べたねらいとともに,お互が仲よく安全に活用し,たいせつに扱うように,そしてそれらの態度が自由時間における遊びの生活によく発展されるようにというねらいが,重視される必要がある。

3.指導上の一般的注意

 一般的に言って,指導上最も重要なことは,個人的能力をいかににしてじゅうぶん伸ばすかに留意することである。そのためには次の事がらに留意しておく必要があろう。

(1) 組織的活動への発展に重きをおくというよりは,それらに重点をおくほうが望ましい他の活動群との調和を考えながら,主として身体や基礎的運動能力の円満な発達を促進するという角度から計画がたてられ,指導されるほうが有効であろう。

 このような観点から,他の活動群の場合に比べれば,教師が活動の中心とならなければならないことが多くなるであろうし,また児童の日常の遊びや自由時間の活動にはそれほど期待できないところから,この群の運動は教科時間に多くを望まざるを得ないだろう。

(2) この活動群は,まとまった長い時間をかけて学習しなければならないというよりも,児童の発達や指導上のねらいからすれば,むしろ短い時間での学習を数多く考えることもできるので,全般的な立場からすれば,他の活動群の学習の間にはさんで計画し指導することが多くなろう。

 しかし,高学年に進めば,まとまった長い時間をかけての,いわゆる単元的取扱(たとえば,体力テスト)もできるし,また有効でもある。特に評価の計画との関係をよく考えて,たとえば「児童のもっている進歩の可能性」や「一般的基礎的運動能力」の測定は,このような「力試しの運動」の学習において扱われるほうが便利であり,指導上からも効果のあることである。

(3) 「力試しの運動」は,一つ一つの運動それ自体が児童の自己評価や相互評価に関して最も好つごうな学習の場であるから,児童みずから自分の進歩を知り,成功を喜び,そして次の進歩を考えるように指導することがたいせつである。そのためには,記録の指導が必要となるし,多くの力試し運動を用意し,それによって具体的に活動目標をはあくさせ,児童が常に「努力しよう」とする気持を起すようにくふうすることがたいせつである。走跳投などの運動の場合は距離や時間,回数などて考えるのが,好つごうであろう。固定施設や器械器具を使っての運動,徒手でのスタンツ系統の運動の場合には,それ以外のくふうがいっそう必要である。次のような様式て活動目標をあげるのもその場合の一例となろう。

C級の目標(或いは初級の目標)

B級の目標(あるいは中級の目標) A級の目標(あるいは上級の目標)  以上示した例は,単に一つの様式であって,それらがはたして適当かどうかは,その時の学習(指導)内容とその学級の児童の経験や発達が異なるであろうから,それらの現実に即するようくふうされる必要がある。あまりむずかしすぎたり,やさしすぎたりしないような配慮が望ましい。

(4) 学習にあたっては,また能力による組分けをくふうすることも忘れられてはならない。組分けは,それまでに行われたテストの結果や児童の記録などによって,いくつかのグループに分けるのが望ましいが,必要な資料がない時は教師の判断によるのも有効な場合があろう。要はそのグループをあまり固定しないようにし,客観的な児童の能力によって,好ましい変化修正をいつも考えておくことがたいせつであろう。なおグループ学習で児童のリーダーを適切にとりあげることは重要なことである。

 この能力別によるグループ学習では,さきにあげたような児童の活動目標を適切に示すようにすることが望ましい。

4.技 術 指 導

 運動技術や能力の問題を中心におきながら,指導上の要点を述べてみよう。

 力試しの運動は,前にも述べたように,おおよそ三つの群別に分けて考えるのが好つごうであるが,一般的に活動の学年による発展については,次のような原則を考えることができよう。

 すなわち,低学年ほど身体の動きが自然的,全身的,個人的,活動的な運動で,単純な型のものがよく,商学年に進むに従って人工的形式的な面が加えられ,部分的分化的(たとえば腕の運動とか,力技的運動とかのような)運動,何人かが組んで行う運動,平均運動のような,あるいは他人の演技を鑑賞したり評価したりするというような静的な活動,さらにはやや高次の神経一筋肉的熟練を要する複雑さを増した型のものが取り上げられることになる。また,自己評価の指導から考えれば,低学年では,上述のことから当然であるが,できたか,できなかったかの最も単純な評価が大部分を占めるであろうし,高学年になるに従って,回数や時間や距離などで実際に測定をしたり,「じようずにできた」「普通だった」「あまりじようずにはできなかった」というようなあるいはそれ以上のやや複雑な尺度または標準尺度を用いての評価をとりあげるように,活動の内容もそれに応ずる指導も考慮されるべきであろう。

 低学年では,学校に備えられている固定施設を利用し安全に楽しく遊ぶことができるように慣らして,自前な時間の遊びや公園などにおける遊びにまでその成果が発展するとともに,中・高学年における器械,器具を使っての運動の基礎が作られるところに一つの要点がある。

 もう一つは,走ったり,とんだり,投げたりなどの基礎的な運動と,ころころまわり,あひるやにわとりのまねをして歩いたりとんだりなどのスタンツ系統の運動を含んだ「力試しの運動」がある。どちらかといえば,低学年では前者に重点をおくほうが望ましいが,いずれにしてもそぼくな自然運動の形で取り上げ,児童の活動欲求をじゅうぶん満たしながら,身体の調和的発達をねらうようにしなければならない。

 中学年になれば,走跳投などの基礎的運動でも単に走ったりとんだりではなく,まとまった活動としての幅とび,高とび,ボール投げなどへ進めることができる。自分の記録に対する興味も強くなり,進歩への関心も積極的となるので,それらを正しく伸ばすように努めることが重要であろう。

 スタンツ系統の運動でも,転向とびや体起しなどのように,自分の力がはっきりわかるような,しかもやや困難であり努力を要するような運動に進めるのがよい。

 器械器具を使っての運動は,低学年での固定施設による経険を発展させ,器械や器具を用いてのまとまった運動の初歩的なもの(たとえば,抵鉄棒でのとび上がり,前回りおり,とび箱のとび越しなど)に進められよう。

 スタンツの場合は特にそうであるが,器械器具器を使っての運動においても,適当な運動の種目をできるだけ豊富に用意して,児童の変化を求める活動欲求にも応ずる必要があろう。また,たとえば,チェックリストを作って自己の進歩を記録するように指導するのはたいせつなことである。

 高学年になれば,相当に形式のととのた運動に進めることができ,自己評価についても客観的な資料を用いたり,主観的な評価も単に「できたか,できなかったか」でなく,「非常にじょうずだったか,普通にできたか,普通よりへただったか」などのようにいくらか複雑な尺度を考えることができるようになろう。

 スタンツはやや形式だった転回,支頭倒立などに進め,また数人で組んで行う運動も指導するのがよいだろう。

 同じように,器械器具を使っての運動も,とび箱での転回や鉄棒での足かけ上がり,回転のような相当に技功を要するものに進めることができるし,しかもきれいにじょうずにというねらいを求めることも有効となろう。

5.力試し運動の具体例

 走跳投などの運動や器械器具を使っての運動については,前の指導要領においても多く具体例が示されてあるので,ここでは器械や器具を用いないで,徒手のままで行うスタンツ系統の運動についていくつかの例を示すことにする。

  低学年(第1・2学年)の場合

(1) あひる

 あひるのまねをして歩いたり走ったりする。その場合体を前に曲げ,両手で両足首を握らせるがよい。また両ひざを曲げたままでするのもよい。同じような要領で,にわとりのまねも考えられよう。

(2) くも

 くものまねをして歩く。腕立て伏臥をして歩く

(3) 犬(あるいはねこ)

犬(あるいはねこ)のまねをして歩いたり走ったりする。これは両手をついて四つばいなり,歩いたり,走ったりする。

(4) かに

 仰向けになり両手・両足を使って前後左右に歩く。

(5) あざらし

 両足を引きずって,両うでを交互に前に出して歩く。

(6) とび上がり両手(足)打ち

 その場で高くとび上がり,空間で両手を,あるいは両足を打ち合わせる

(7) ゆりかご

 腰をおろし,ひざを曲げて両手でもち,休を丸くして,「ゆりかご」のように体を前後に揺する。(マットを使用する)さらには,前のほうに「ころころまわり」を行う。

(8) くまおどり

 片ひざを曲げ,他の片足を伸ばして前方に出す。これを左右交互にくり返す。

 中学年(第3・4学年)の場合 (1) 「かかし」のようにして,目を閉じて片足で立つ。

 両手を横にあげて立ったり,体側につけて立ったり,一定の時間動かないでその姿勢を保つようにする。

(2) 片足とび

 片足で立って,いろいろの力向へとぶ。

(3) その場転向とび

 その場でとび上がり,1/2転向して着地する。前力にとびながら1/4転向する。

(4) かに

 「かに」のように,腕立て伏臥で横に歩く。あるいはあおむきで両手を後について行う。

(5) 体起し

 仰臥の姿勢から上体を起す。

(6) 背合わせ立ち上がり

 ふたりが背中合わせになって,ひじを互に組み,同時に立ち上がったりすわったりする。

(7) 人運び

 ひとりを他のふたりが選ぶ

(8) 手押し車

 ひとりが腕立て伏臥をし,その両足を他のひとりが持ちあげ「手押し車」のように歩く。

(9) 腕組起上がり

 腕を組んで仰臥し,組んだ腕はそのままで起き上がる。

(10) ひざ腕立て腕屈伸

 ひざをつけて腕立て伏臥の姿勢をとり,腕を曲げたり伸ばしたりする。

 高学年(第5・6学年)の場合

(1) 片足屈伸

 片足で立って,その足を曲げたり,伸ばしたりする。その場合,他の足を地・床につけないように努力する。

(2) 腕立て腕屈伸

 腕立て伏臥の姿勢をとり,腕を曲げたり伸ばしたりする。

(3) 体屈伸歩(尺取り虫)

 腕立て伏臥の姿勢から手と足を交互に前方(あるいは後方)に進める。

(4) 人倒し

 からだを強直させたひとりを他のひとりがささえる。あるいは静かに寝かせたり起したりする。あるいはまた,ふたりで押し倒したり支えたりする。

(5) 転向とび

 とび上がって,その場で体を1回転させる。

(6) かえるさか立ち

 両手を地・床につけ,両ひじに両ひざをのせてさか立ちし,両腕で体重をささえる。

(7) 腕立て体前出

 腕立て伏臥の姿勢で,両腕はそのままにしておいてその両腕の間に,とんで両足をとおして体を前方に突き出し,仰臥の腕立て姿勢となる。

(8) かえるとび

 ひとりが体を前に曲げて両手を両ひざ(あるいは足首)につけた姿勢をとり,他のひとりがその相手の背に手をついてとび越す。

(9) かつぎ合い

 ふたり一組を作り,互に背中合せになって相手をかつぎ合う。

(10) 支頭倒立

 両手と頭で体を支持して倒立する。(マットを使用する)
 
 

(Ⅱ)徒 手 体 操

1.この指導要領における徒手体操の取扱について

 いままての体育において体操の果してきた役割はかなり大きいと思われるが特に身体の調和的発達についてはそうであった。この指導要領においてはこの体操の特徴を他の運動との相互関連の上に立って,できるだけよく生かすように努力されているわけである。

 体操の概念や考え方については必ずしも一定のものはないが,この指導要領においては,小学校で普通に考えられているものを一応の手がかりとして,(昭和24年度発行,小学校学習指導要領体育科篇),一部を「力試しの運動」に含めそれらに比べてどちらかといえばいっそう形式的な,主として生理学や解剖学の原理に基礎をおいたところの,身体を部分的にあるいは総合的に意図的に動かすことによって身体の発達に資そうとする徒手で行う一群の運動を徒手体操として取り上げることにした。

 ここでいう徒手体操のこのような性格から考えれば,児童が,何のために,どのように身体を動かしたほうがよいかということについて理解することができ,かつそれを実行しうる力を獲得できるかどうかの見通しを立てて,その上で体育計画に取り入れるほうが望ましい。この指導要領で,高学年の学習内容として徒手体操を取り上げたのは,主として児童の知的発達から見て,一般にそれが適当であろうと考えたからである。

 しかし,体育計画において占める役割には,他の運動のそれぞれと同じように,徒手体操にもおのずから限界がある。ひとしく身体の発達に資するといっても,ある場合には他の運動のほうが必要であり効果的であろうし,ある場合には他の運動と徒手体操の両者の協同が重要であろう。低・中学年の学習内容として扱われていないのもそうであるし,高学年において全体の5〜10%の比重が考えられているのも,そのような事情からである。いうまでもなく,この比軍(5〜10%)は,一般的な場合の一つの例であって,ある学校にとっては少なすぎるし,ある学校の場合には多すぎることもあろう。

 なお,またラジオ体操その他と関連して,実際には中・低学年の児童についても,徒手体操を扱うことがあろうが,それまでもここで否定しょうとしているのではなく,徒手体操の持っている本来の意味から学習内容として期待できるのは,一般に高学年からであろうとしたわけである。

2.徒手体操の特性

 徒手体操の特性を体育の目標や学習内容の立場から考えるとき,この指導要領で最も重視しているのは,児童の身体的発達に及ぼす効果と,健康習慣に関するものとがある。

(1) 発達上の効果

 身体の各部分を合目的に適切に動かすことによって,全身の均整な調和のとれた発達と内臓の機能を促進する。特に身体各部の動きを柔軟にするには好つごうである。

(2) 健 康

 他の激しい運動をめぐっての準備運動や整理運動として,あるいは補助・補償・調整・きょう正などの意味をもった,しかも実施上簡易な合理的運動として徒手体操がもっている健康生活上の意義を理解させ,正しい姿勢に対する関心を高め,それらを実践に導く。特に将来の生活で起りやすい固癖や運動不足の問題を合理的に解決できる能力を育てるのに役だつ。

3.運動のしかたに関しての指導内容

 運動の仕方に関して一般的に必要な指導内容は,少なくとも上下肢・くび・胸・背腹・体側・胴体の各部の運動あるいはそれらのいくつかの総合的な運動である。さらに必要に応じては,ひとりで行う体操のねらいをいっそう強めるために,その形式や要領をそのまま生かしながら,他人の協力を得て行う場合も考えられる。

 次に示すものはいくつかの具体例である。

(1) 上下肢の運動

 上下肢の運動は,腕と脚を別々に,あるいは同時に,屈伸・挙振・回旋・跳躍して行う。

(2) くびの運動

 くびを前後左右の各方向に屈・転・回旋する。

(3) 胸の運動

 胸を伸展する。

(4) 背腹の運動

 体を前後に屈,倒する。

(5) 体側の運動

 体を横に屈,倒する。

(6) 胴体の運動

 体を側転・回旋する。

4.指導上の留意点

 徒手体操の体育計画における特性は,個人の身体的発達および将来の生活で考えられる固癖の予防きよう正,運動による健康の保持によく貢献できるというところにある。したがって,具体的な計画や指導の実際にあたっては,徒手体操のその特性をじゅうぶん生かすくふうをしなければならないし,その意味で徒手体操そのものの技術的要点も児童がよくはあくできるように指導しなければならない。

(1) 指導上の一般的注意 (2) 技術指導の要点  前述の事がらとともに,できるだけ運動は単純なものを考えるべきてある。局部的な運動は単純で全身的運動になるほど複雑になるという考えは,必らずしも一般的ではない。特に,小学校期の児童を対象にするときは,簡易単純な運動形式によって徒手体操のねらいをよく果せるようくふうし,ある必要(たとえば,児童の進歩したいという欲求や成功の喜びに応ずるためなど)から運動を複雑化するにしても,体育計画における体操のねらいから考えて,その必要以上のものを求めるべきでない。
(Ⅲ)リ レ ー

 1.この指導要領におけるリレーの取扱について

 リレーは,体育科における団体的な教材のひとつとして,古くから行われてきたし,またこどもたちが,日常手軽に遊んでいる遊戯の一つとしても親しまれている。

 この指導要領においては,各学年を通じて取り扱うことにしたが,低学年においては,これを,「力試しの運動をする」の運動群に入れ,中学年と高学年においては,「リレーをする」の運動群として独立させるという分類のしかたをしている。これは,低学年においては,団体的な運動としての取扱よりは,むしろ,個人的走運動の「かけっこ」が形をかえたものとして扱うのが適当であると考えたからである。リレーは団体運動であるが,ボールゲームのように複雑なルールや人間関係を必要とするほどのものではない。したがって,個人的なものと団体的組織的活動の中間にあるような種目として考えて指導したらよかろう

 2.リレーの特性

 リレーは,一般に,個人の競走が集合されて,団体として勝敗を決する活動であるが,これを,この指導要領に示された目標や学習内容との関係で考えるとき,特に重要なものは,(1)発達上の効果(2)人間関係(3)健康や安全に対する態度と知識理解(4)レクリェーシヨンとしての活用(5)進歩の評価の五つである。

(1) 発達上の効果

 リレーは,走ることを主として,それに,蛇行,回旋,バトンの受け継ぎ,ものの置きかえ,障害の突破など,いろいろな動作を伴うことが多い。それゆえ,走力や器用さを高めて全身支配の動作になれさせ,内臓の機能を促進する。

(2) 人間関係

(3) 健康や安全に対する態度と知的理解 (4) レクリエーションとしての活用 (5) 進歩の評価

 リレーは,能力差が判然としている走運動が主となっているから,こどもたちが他人と能力を此較したり,自己の向上を反省したりしやすい活動である。それゆえ進歩を評価する態度や技能を養うのに役だつ。

5.指導の内容

 リレーの指導にあたって考えられる重点的な指導の内容は,(1) リレーのいろいろな形式(2) 健康や安全に対する態度(3) 対人関係や運動に対するよい態度(4) 走法,バトンタッチの技術や走の規則などである。

(1) リレーのいろいろな形式

 リレーには,各種の形式と数多い種目がある。

(2) 健康や安全に対する態度

 リレーの多くは,短距離走運動が多いから,他人と接触して転倒し,けがをすることがないとは限らない。それゆえ,リレーにおいて転倒を防ぐためには,他人と接触しないことをぜひ指導しなければならない。また,こどもたちは,リレーが脚の筋肉や内臓諸器官に強い刺激を与えるものであることを体験している。それゆえ,これらの理由を教師が説明したり,児童に考えさせることによって,リレーをするときは,準備運動や整理運動が必要であることを理解させることができるし,また,どんな準備運動や整理運動が適しているかも理解させることができる。

 このような観点を深めていけば,リレーはどんなときに適当な運動であるかも理解するようになる。このようにして,健康や安全に対する態度を養うことは,リレーの指導において欠くことのできない内容である。

(3) 対人関係や運動に対するよい態度

 リレーは勝敗がはっきりあらわれ,感情を強く刺激する運動であるから,こどもたちはとかく熱狂しがちである。なかにはおそいものを非難したり,規則を犯したり,相手方の走者をやじったり,相手方と言い争ったりするこどもも少なくない。それゆえ,リレーの指導にあたっては,勝敗に対する正しい態度,よい観衆となる態度,すなわち,フェアプレー,スポーツマンシップなどの指導は欠くことのできない内容である。

(4) 走法,バトンタッチの技術や走の規則

 前項で述べたように,リレーはこどもたちの最も熱中する活動のひとつであるから,走者になったものや次走者に当っているものは,興奮していることが多い。そして,腕を伸ばしたまま大きく振ったり,風車のようにまわして走ったりして,相手に危害を加えることがある。あるいは,次走者と衝突することもある。それゆえ,リレーの指導においては,正しい走り方(特に腕の振り方)走るときのいろいろな規則(追い越すときの規則,コーナートップなど)バトンタッチの正しい方法(バトンの持ち方,受継ぎの方法,持ちかえなど)などについて指導することを欠くことができない。

4.指導の順序

 リレーは,特にはっきりとした段階的系統をもっているわけではないが,一般に,低学年は,折返しの直線走に若干の他の形式を加えたものでよい。走距離は,種目によるが50メートル以内に止めるのが適当である。

 中学年になれば,巧ち的な身体支配力が相当高くなるから,曲線走も可能である。走距離も50〜70メートルを走れるし,4年においては障害を置いた種目も可能となる。なお,4年からは,バトンタッチの正しい方法も必要を感ずるようになるし,基本的な点(たとえば,左手に持って右手に渡す,など)は学習できる。

 高学年においては,走距離1OOメートルぐらいが適当で,各種の技術や規則も正しく行えるようになる。

5.指導上の注意

 以上のようなリレーの指導にあたっては,特に留意すべきこととして,次のような諸点をあげることができる。

(1) 各チームの人員を平等にする。平等でないときは,あらかじめ欠員を満たしておかなければならない。欠員を満たす方法はいろいろあるが,2度走るものを決めておくのがよい。そして,このこどもには走力が中程度で体力の強いものを当てるのがよい。

(2) 1チームの人数は15〜20人ぐらいが適当であるが,4組以上(1回の走者,4人)になると数が多く,こどもたちには混乱して適当でない。

(3) 各チームの力が平均するように編成しなければならない。競争前に勝敗が判っているような組分けは,学習の効果を少なくする。チームの力が平均するように分けるには,測定の結果に基いて行うことが望ましいが,中学年,高学年においては,子どもたちが納得するような同程度の能力の者を組ませ,それをジャンケンなどで分けてもよい。

(4) 競争のしかたは,低学年においては,ふつう身長順に低いものから走らせるのがよいが,中(4年)高学年においては,チームのキャプテンを選ばせ,その子を中心に,走順を相談して決定し,走らせるとよい。

(5) 競走にあたっては,各チームがはっきり識別できるように,鉢巻,帽子または,たすきなどで色わけするとよい。特に低学年においては混乱を防ぐためにかならず必要である。

(6) 走者および次走者以外は,決められた位置をみだりに立って歩かず,きちんと整列しているようにしつけなければならない。

 また,応援のしかたは,りっぱで統制のある方法をとらせなければならない。

(Ⅳ) ボール遊び,ボール運動

1.ボール遊び・ボール運動の特性と指導のねらい

 この指導要領で取り扱うボール遊び,ボール運動は,各種のボールによって行われる運動で,普通は集団で,またはチームを作って行われるものであり,組織だったグループ活動として発展しやすいものである。

 このボール遊びやボール運動を目標との関係で考えてみるとき,特に重要なものは,好ましい人間関係(社会的態度)の育成である。この好ましい人間関係の育成を中心にして,さらに施設や用具をたいせつに扱い,また健康習慣を身につけることがらもたいせつになってくる。そして体育科の学習は,当然運動を学習の場として展開されるのであるから,これらの目標に達する過程においてボールを扱ういろいろな技能を向上させ,また身体的発達上の効果も期待できることになる。

 ボール運動を指導する場合のおもなねらいをあげれば次のとおりである。

(1) 好ましい人間関係(社会的態度)の育成 (2) 施設や用具の整理と活用 (3) 健康習慣と安全 (4) 身体的発達上の効果 2.児童の発達と指導の順序

 体育科の学習内容については,本文第Ⅲ章に述べてあるが,その中のボール遊び・ボール運動は,普通一般の学校において指導できるものと考えられる。

 次にボール運動を指導する場合の順序を,児童の発達に即して考えてみることにする。

低学年(第1, 2学年)

 この学年の児童は一般的にいって,大筋使用の活動が大部分であり,運動は無器用であるが,目と手の協応もややできるようになるので,簡易なグループ活動としてのドッヂボール・キックボール・球入れなどを指導する。この場合,発達から見て,与えられた役割を守ることができる段階にあるので,教師の指示によく従い,秩序ある行動を学習させるようにする。 中学年(第3,4学年)  この学年では細かい筋肉が使用できるようになり,器用さも増し,目と手の協応も安定し,組織的なグループ活動に興味を持つ段階にあるので,ある程度チームゲームとして組織だった運動,すなわちドッジボール・ハンドボール・フッドボール・コーナーボールなどを指導する。

 またこの時期の児童は,共通の目標に協力したり,役割を分担し責任を持つことができるようになる。また秩序ある行動を好み,自分で計画をたてることができる段階になるので,ボール運動の指導にあたっては,技能の上達をはかって自信を持たせるように努め,また人員や施設用具に応じて適宜規則をきめて,それをよく守り,みんなで楽しく運動できるようにグループ活動の指導に重点をおく。

高学年(第5,6学年)  この学年になると,身体活動への欲求が強く,器用さも増し,他人と協力ができ,秩序を守り,自分たちで計画的に行動のできる段階にあるので,相当復雑な組織だったボールゲームを行うこどができる。そこでバスケットボール型・バレーボール型・べースボール型・サッカー型などに属する組織だったボールゲームを指導するのがよい。

 ここでは,いろいろな種類の運動を経験させ,技能の向上を図りながら,しかもみんなが楽しくゲームができるように指導することがたいせつである。

 そのためには,協力の態度や責任ある行動をいっそう助長し,秩序ある学習を指導し,好ましい人間関係の育成に注意を払い,グループ学習を中心として進めることがたいせつである。

3.指導上の一般的注意 (1) 指導の目標を明確にはあくすること。

 ボール運動は,先にも述べたように好ましい人間関係(社会的態度)の育成が最も大きなねらいである。

 社会的態度を育てるには,組織的なグループ活動を通しての学習によってその効果は期待できる。ボール運動の指導では何よりもまずこの社会的態度を育てることの目標をはっきりとはあくして指導することがたいせつである

(2) グループ活動と重視して指導すること。

 ボール運動の学習では,好ましい人間関係を育てることがたいせつなねらいであり,このねらいを果すための学習ではグループ活動が指導されなければならない。

 すなわちまずチームを作り,それぞれのメンバーは,チームの共通の目標に達するためには,それぞれのメンバーは,役割を持ち,その役割を果すことによって真の協力ができ,好ましい人間関係も育成される。

 チームの編成にあっては,児童の発達を考え,能力の異なった児童がいっしょになってチームを作り,各チームの能力が平均するようにくふうするのがよい。

 次に各チームの練習の計画をたて,各人の役割を決定する。

 各チームの練習の計画にあたっては学級全体で,または各チームごとに話合いをして計画をたてる。その計画に従って各人の役割を決める。役割の決定にあたっては,児童の能力に応ずるようにし,児童の意見をじゅうぶん参しゃくして決めるのがよい。この場合,身体的に欠陥のある児童に対しても能力に応じて運動に参加できるような考慮を払い,また審判・記録・計時等それぞれの能力に応じて役割を与えることがたいせつである。

(3) 教科以外の組織的な活動と関連して指導すること。

 ボール運動は組織的な活動に発展しやすいものであるから,教科時の指導は教科以外のグループ活動とじゅうぶんな関連を考え,これらのチーム活動経験が他の学校生活や家庭,社会生活での問題を解決するように方向づけることがたいせつである。

(4) 基礎的技能の指導を考慮すること。

 ボール運動の指導では社会的態度を育てることがたいせつなねらいであるが,そのねらいを果すためには,グループ活動がよく行われなければならない。ボール運動でのグループ活動は,チームとしての活動であり,チームプレーがよくできるためには基礎的な技能を身につけることによってのみグループ活動が円滑に行われる結果になることを忘れてはならない。

 このような基礎技能の学習は高学年になるに従ってその必要を増してくる。

 これらの基礎技能の学習は,チームプレー全体との関係において,チームプレーを行うための困難点をとり出し,それらの技能を反復練習することによって身につき,正しく行うことができるようになる。

 またチーム・ゲームでは作戦がたいせつであり,これがチーム・ワークをつくりあげるのにたいせつな役割を果すものであるから,児童の能力に応じて作戦を指導することがたいせつである。

 作戦指導にあたっては,児童の話合いによって作戦をたてたり,また他のよいゲームを見学するなどして,それを理解し,練習することが必要である。

 また正しいモデルを示したり,正式のゲームに移る前にリードアップゲームを行うなどして興味をもって学習するように指導することがたいせつである。

(5) 能力に応じて規則を決め,それをよく守るように指導すること。

 ゲームを楽しく行うためには規則が必要であり,この規則は児童の能力に応じて決められなければならない。また施設や用具との関係も考慮に入れることも必要である。

 この規則は児童が自主的に決め,児童の発達に応じて順次改善して行くのがよい。

 そしてゲーム時にこれらの規則をよく守るように指導し,守ったかどうかについて反省を加えながら,これらの態度の向上をはかるように努める。

(6) 進歩の評価について指導すること。

 ボール運動がよくできるようになったかどうかを,児童の過去の状態と現在とを比較反省し,また将来どのような計画をたてて学習したらよいかなどを考えることを指導するのは,きわめてたいせつなことである。

 基礎的な技能については,測定の結果を記録させ,その記録を通して過去のものと比較したり,また他人と比較したりしてその進歩を評価するように指導する。

 また協力する態度など数量的に結果の出ないものについては自己反省や相互評価をさせ,チームとして,また級全体として,話合いによって改善し,さらによい学習を進めるような指導を忘れてはならない。

4.運動の方法

 さきにボール運動を指導する場合のねらいや指導上注意すべき事がらについて述べてきたので,ここでは主として運動の方法をしるすことにする。

 ボール運動にはいろいろの種類があるが,低・中・高学年に分け,各段階で3〜4種目程度をとりあげ,その方法をしるすことにした。

 実際の指導にあたっては,これらのボール運動を学習の場として先に掲げたねらいを果すようにすることを忘れてはならない。

低学年(第1・2学年)

○ドッジボール

(1) 準 備  ボール(ドッジボール)たすき,笛など。

(2) 方 法

 紅白2組に分れ,一方が円の中にはいり,他方が円の周囲に位置する(下図参照)

 円外のもの(外野手)は円内のもの(内野手)にボールを投げ当てる。ボールを投げ当てられた内野手は円外に出て待つ。一定時間投げ当てることを争い,円内に残った者の多い組を勝とする。

(3) 規則の概要と指導上の注意点

A 内野のものはボールを受けとめてはならない。

B ボールは肩より下に投げ当てること。

C 投げ当てられた者は円外の一定の場所で待つように指導する。

D 攻撃の交代は敏速に行い,規則を守り,秩序正しく行うように指導する。

○キックボール

(1) 準 備 ボール

 (フットボール)

 たすき・笛など。

(2) 方 法

 数組に分れ,各組それぞれ円陣をつくって向かい合い,互にボールをけり合うことを競争する。

(3) 規則の概要と指導上の留意点

A 一定時間にボールをけり合った回数の多い組を勝とする。

B ボールは足だけで扱う。

C 円外にボールがころがり出たときは,ボールを自分の位置まで持ち帰って続いてけりはじめる。

D 最初は円を小さくして,列の間隔を狭くし,ボールが円外に出ないようにするのがよい。

E ボールは高くあげないように指導する。

F きまりを守り,秩序正しく行うように指導する。

○球 入 れ

(1) 準 備 長さ2.5mぐらいの竹棒,かご2個,紅白球若干

(2) 方 法

 竹の棒の先にかごをつけそれを2か所に立て,そのまわりに紅球,白球をそれぞれ散らしておく。紅白2組が,かごの周りに円陣をつくり,合図によって各組同時に球を拾い,自分の組のかごに投げ入れる。一定時間内に球を多く投げ入れた組を勝とする。

(3) 規則の概要と指導上の留意点

A はじめと終りの合図をよく守る。

B はじめと終りの整列は秩序正しく,敏速に行う。

C 運動会の種目として適したものであるから,運動会と関連して指導する。

中学年(第3・4学年) ○ドッジボール

(1) 準 備 ドッジボール・たすき・笛など。

(2) 方 法

 紅白2組に分れ,各組はそれぞれ内野と外野に分れて,下図のように位置する。センタージャンプによって競技を開始し,内外野から相手方の内野手にボールを投げ当て一定時間競技を続け内野に残った者の多い組を勝とする。

(3) 規則の概要と指導上の留意点

A ボールを直接投げあてられたものはアウトとする。

B 内野のものが,かってに内野外に出たときはアウトとする。

C 外野の投げたボールが一度地面や他の者にふれてからあたったときはアウトにならない。

D 外野のものは,ころがるボールを円内にはいってとったり,円内に足をふみ込んでボールを投げてはならない。

E 外野のものはボールを持って歩いてはならない。

F 最初に外野に出る者は適当な時に内野にもどることができる,また外野で相手側にボールをあてたものは内野に帰りうるようにもしてもよい

G 内野からパスをした場合,外野線を外野手の手にふれることなくでたときは,パスボールとして相手側にボールを渡す。

H ボールは手で受けるように,また全身をつかって正しく投げるようにする。

I 強いものだけがボールをとらないようにする。

○ハンドベースボール

(1) 準 備

 ゴムまり,ソフトボール,べース4個,笛など。

 競技場は右図に示すように,ダイヤモンドの一辺の長さは10m〜15m程度とする。

 ファウルラインは,本塁と1塁,本塁と3塁とを結んだ線およびその延長線である。投球場所は本塁から5〜8m位はなれたダイヤモンドの中央につくる。

(2) 方 法

 紅白2組に分れ,一方は攻撃組,他の組は守備組となり,上図のような配置につく。各組は投手1人,捕手1人,塁手3人,内野手5〜6人,外野手5〜6人で,守備は攻撃側の打者および走者をアウトすることに努め,3人アウトにすれば,攻・守を交代する。攻撃側は所定の場所から投手の投げた球を打撃順に手で打ち,1塁から2,3塁と順次塁をふんで途中アウトされることなく,本塁に走りもどると1点となる。

 各組攻守交代してこれを数回(5〜7回)くり返し得点の多い組を勝とする。

(3) 規則の概要と指導上の留意点

A 規則はだいたいソフトボールに準ずる。

 投球の方法はアンダースローでもよいが,1回地面にバウンドさせて投げる方法でもよい。

B 守備と攻撃の交代を敏速に行うようにする。

C 審判はなるべく児童が交互に行うように指導する。

○フットべースボール

(1) 準 備

 フットボール,べース4個,笛など。

 競技場は右図に示すようにダイヤモンドの一辺の長さを14〜18メートル位とする。パスラインは本塁を中心としてべースラインの2分の1(7〜9メートル)を半径とする4分の1円孤を描いてつくる。ファルウラインは本塁と1塁,本塁と3塁とを結んだ線とその延長線である。

(2) 競技方法

 紅白2組に分れ攻撃側と守備側を決める。守備は上図のように本塁手,1,2,3塁手,内野手が5〜6人,外野手が5〜6人としそれぞれ配置につく攻撃はキックする順番を決め,所定の場所においたボールをけり,第1塁から2,3塁を順次踏んでアウトされることなく本塁に走りもどると1点となる。

 守備側はボールをける者および走者をアウトすることにつとめ3人アウトにすれば攻守を交代する。これを数回(5〜7回)くり返して行い,得点の多いほうが勝である。

(3) 規則の概要と指導上の留意点

 規則はソフトボールを準用すればよいが,異なるおもな点は次のとおりである。

A ファウルを3回するとアウトにする。

 次の場合はファウルとなる。

(A)けったボールがパスラインを越える前にパスラインからでたとき。

(B)けったボールがパスライン内に止まったとき。

(C)けったボールが1塁または3塁をこす前にファウルライン外に出たとき。

B 走者が各塁に達する前にボールにあてられたときは,アウトである。

C 塁にいる走者は,次の者がボールをけるまで塁をはなれてはいけない

D ボールが本塁にもどされたら塁間にある走者はもとの塁にもどらなければならない。

E 守備側は本塁を守る者のほか,パスライン内にはいってはならない。

F 足のつめをよく切らせておく。

G 守備と攻撃の交代を敏速に行うように指導する。

高学年(第5・6学年) ○ボートボール

(1) 準 備

 ボール・たすき・笛など。

(2) 方 法

 紅白2組に分れ,(1組約10名くらい)味方同志でボールをパスし,相手をさけながら進んで,台上に立っている味方のものにボールを渡して得点するゲームである。

(3) 規則の概要と指導上の留意点

A ゲームはセンタージャンプで開始する。

B ボールを持って走ってはならない。

C 1回だけボールを地面に打ちつけてもよい。(ドリブル)

D 乱暴な行為のあったときは相手のボールにする。

E 台上のものがボールを受けとっても,台上から落ちた場合には,得点にならない。ただし相手に押されて落ちた場合は得点とし,さらにペナルテイ,スローを与える。

F ボールが場外に出た場合は,出した反対側が境界線外から投げ入れる

G 得点した場合はエンドライン外から反対側がボールを投げ入れてゲームを続ける。

H 規則は能力に応じて適宜変更する。

I 各人のポジションをきめ,自己の責任をじゅうぶん果すように指導する。

J ゲームを楽しく行うために,パスや動きの基礎技術の練習もとり出し指導する。

○ネットボール

(1) 準  備

 バレーボール・ネット・笛など。

(2) 方  法

 紅白2組に分れ(1チーム9〜12名位)じゃんけんでサーブを先取した側から,うしろのライン外からボールをネットを越して相手方に投げ入れる。ボールを投げ込まれた組はだれかがこれを受けとめ,その場所からネットを越して相手側に投げ込む。ボールを落した場合は相手側に1点を与え,得点した方がサーブする。このようにして一定の得点(21点)に早く達した方が勝である。

(3) 規則の概要と指導上の留意点

A サーブは2回とも失敗したときは相手側に1点を与える。

B ボールがコート外に出たときは,出した反対側の得点となり,サーブ権を得る。

C サーブは順番は決めて行う。

D ボールを地上に落したときボールをネットにふれさせたとき,ボールを持って歩いたときは反対側に1点を与える。

E ボールのとんでくる方向を早く判断して動くように指導する。

F 各自の責任範囲をよく守るように指導する。

G ボールは胸で受けとめないで手で受けるように指導する。

○ソフトボール

(1) 準 備

 ソフトボール・べース・バットなど。

(2) 方 法

 紅白2チームが攻撃と守備に分れる。

 攻撃側は投手の投げた球を打ち,アウトされることなく1,2,3塁を次次とふんでホームに走りもどる。

 守備側は打者および走者をアウトすることに努め,3人アウトにすれば攻守を交代する。これる数回くり返して得点の多い組を勝とする。

(3) 規則の概要と指導上の留意点

A 投手の投球動作は下手投げでなければならない。

B フェアとファウルは,打者の打ったボールが最初に地上に落ちた点で決定する。

C 投手がボールを持って投手板に立ったら走者は塁をはなれてはならない。

E 規則は野球とだいたい同じであるから能力に応じて適宜変更するのがよい。

F 適宜ポジションを交代して指導するのがよい。

○簡易サッカー

(1) 準 備

 ゴール・ネット・フットボール・たすき・笛など。

(2) 方 法

 紅白2チームに分れ,一方のチームが中央からボールをけって,ゲームを開始する。手や腕を使用することなく,主として足でボールをけり,味方同志で連絡をとり,相手をさけながら進み,相手ゴールにけり込み得点する。

一定時間ゲームして得点の多い組を勝とする。

(3) 規則の概要と指導上の留意点

A ボールは頭・胴体・足で扱う。手・腕を用いたときは反則で相手側にフリーキックを与える。

B ゴールキーパーは手,腕を使用してもよい。

C ボールがサイドライン外に出たときは,出した反対側チームがサイドライン外から両足を地面につけて頭上より投げ入れる。

D ボールがゴールライン外に出た場合は,防御側が出したときは攻撃側がコーナーキックを,攻撃側が出したときはゴールエリア内から防御側がける。

E 乱暴な行為のあったときはフリーキックを相手側に与える。

F ボールに密集しないで各自のポジションを守り責任を果すように指導する。

G キック,ドリブル等の基礎的技術は必要に応じて指導する。
 
 

(Ⅴ)リズムや身振りの遊びとリズム運動

1.この指導要領におけるリズム運動(リズムや身振りの遊び)の取扱について

 リズミカルに行われる表現は人々を美しい心情に導き,リズミカルに行われる遊びは楽しく,人々を融合させる。しかしわが国では生活の状態や,歴史的事情にはばまれて,それがじゅうぶんに生活にとりいられるにいたっていない。学校体育ではこの点を考慮し,表現を楽しみ,それに関連する諸種の能力の発達をはかるとともに,それが生活にとりいれられるよう方向づけようとする。

 小学校期はこの種の活動にとっては,最もたいせつな時期であるから,偏することなく欠けることなく指導されることが望ましい。しかし,現状には施設や指導力などの差があるので,そのおのおのに応じて適宜活用されるよう,内容を考慮したい。

 リズムや身振りの遊びとリズム運動の区別は,発達上の変化を示すもので,さまざまな活動を含め分化しない状態のものから,しだいに一つの方向をとって,将来のダンスヘ発展していく過程を示したものである。

2.リズム運動(リズムや身振りの遊び)の特性

 リズム運動を目標や学習内容との関係で考えるとき,次のような特性があげられる。 

(1) 発達上の効果 (2) レクリエーションとしての活用 (3) 民主的態度の育成 3.指導内容と指導の順序(学年的段階) (1) 指導内容

 学習内容では,その内容を二つに大別している。

 一つはフォークダンス(歌を伴う郷土的遊び)で,児童が日常生活の中にもっている遊びからはじまり,主として遊び仲間や家庭での生活を楽しくするために,そのまま遊びの材料となる性質のものである。これらはだいたい定まった型をもっており,その型をおぼえることによって日常生活の遊びとして活用されるものである。

 他の一つは,経験の表現と基礎リズム(模倣と基礎リズム)で,児童の日常生活の経験をとりあげ,美的表現の経験と,その技能を深めるものである。基礎リズムは,リズム運動における基礎的技能をさすものであるがそれは基礎的技能のみをとりだして鍛えるというよりは,主として表現と結びついて,よりよい表現を生むための手がかりとするものである。しかし,歩いたり,走ったり,ころがったりすることは,児童にとっては意図的な表現を伴わなくてもリズミカルな活動の楽しみがあるから,時に応じて適宜とりあげ,その正しい要領を学ばせることもある。

 附言すると,学校によっては施設や指導力などの差があるから,次のような指導内容の変化も考えられる。

(2) 指導の順序(学年的段階)

 指導の内容が施設や指導力などに左右されるように,学年的段階も一様には決めにくい。

 一般的に言って,低学年ではリズミカルで活発な個人的活動が主となり,題材は実際に見たり行ったりできる動的なものから選択する。またこれらは楽しく自由に模倣し,あるいは物語風にくりひろげられていく活動で,必ずしも一つの作品としてのまとまりを要求しない。

 中学年では,リズミカルで活発な個人的活動が充実してくるとともに,集団的活動が可能になる。したがって題材は個人的に行うに適したものと,集団で構成するに適したものとの両方から選択する。いずれも実際に見たり行ったりできる動的なものを中心に取材する。これらは主として自由に,スケッチ風に展開するが,ときにはごく簡単なまとまりをつけることも試みるように導く。

 高学年では,技術や表現に関するかなり強い関心をもち,また個性的な傾向が現れ始めるから,それに応ずる指導の変化が必要になる。したがって題材で行う場合や,各自自由に選択して行う機会も与える。また,作品としてほぼまとまりをつけられるようになるから,ときにはかなり念入りに指導して完成の満足を得させる。

 さらに,運動会・学芸会・学級会・学年コンクールなどの行事にあたっては,児童が自主的に計画に参加し,役割を分担し,作品をまとめるよう指導する。

 なお,各学年を通じて,たれでも楽しくいっしょに行うことができるように,フォークダンス(歌を伴う郷土的遊び)を適宜とりいれていくのはいうまでもない。

 基礎リズムは表現をささえるものであるから,表現の発展に応じてそのとりあげ方も変化していく性質のものである。すなわち,低学年では主として児童の表現を誘発し,暗示する役目を果し,その題材が自然に導きだされ,変化をもち,よい身振りとなるように用いられる。高学年では,主として児童のもっている技能を抽出し,表現がより確かに,より豊富になるようにくふうし助成する役目を果すように用いられる。

4.指導上の一般的注意 (1) 指導内容の特性に応じて,その特色を重点的にとりあげて指導する。すなわち,フォークダンスでは,まず気軽に楽しい雰囲気の中で順序をおぼえさせ,表現では,率直に思うように表現するよう導くなどである。

(2) 題材は児童の生活経験の拡大にそって選択し,指導者の好みのみに偏することを避ける。

(3) 表現は実際によく観察し,個性的な表現方法を見つけ,育てるようにつとめる。

(4) できあがった結果の良否よりも,思うことを表わし,くふうする活動やよいグループ活動を重んずる。

(5) 表現に伴う技能は,活発なリズミカルな活動が自由にできることを第一にし,技巧にとらわれない。

(6) よい作品を鑑賞する機会を与える。

(7) 他人の作品は主として,その児童の学習の進歩に必要な時に,参考として取り上げる。

(8) 個人差に応ずる指導をくふうする。

(9) 児童の生活に取り入れられるよう,生活との関連を考えて指導する。

(10) 常に明るく温い態度で指導する。

5.教材および題材例とその指導例

 低学年(第1・2学年)

1 歌を伴う郷土的遊び

(1) さくらさくら (2) ずいずいずっころばし(3) 夕やけこやけ ○(4) じゃんけん遊び (5) あわぶくたった ○(6) うしろの正面だーれ (7) ぴょんぴょんとんで ○(8) かりにいきましょう ○(9) こんにちは皆さん 2 模倣と基礎リズム (1) でんしゃごっこ (2) じどうしゃ (3) 花とちょう (4) 金太郎 (5) お正月遊び (6) おもちつき ○(7) お山のどんぐり ○(8) 動物園 (9)お家つくり

○じゃんけん遊び

(1) 目  的

(2) 隊  形

 自由(ふたりまたは数人)

(3) 方  法

 各地方の児童のもつじゃんけんの歌を歌いながら,手や足でじゃんけんをして遊ぶ。たとえば次のようにもできるだろう。

(4) 指導上の注意 ○うしろの正面だーれ

(1) 目  的

A 生活の中にもっている楽しい遊びをとりあげ,だれとでも遊べるようにする。

(2) 隊  形

 円形,ひとりの鬼が円内にしゃがんで目を閉じている。

(3) 方  法

 各地方の歌を歌いながら,円周上をスキップまたは歩いてまわる。たとえば「かごめかごめ かごの中の鳥は,いつでてねむる。鬼さんのうしろはだあれ」などである。歌い終ると円周のものはしゃがんで円心にむき,鬼のまうしろにあたったものが,自分の好きな動物の鳴き声をまねる。鬼は声から判断して,その相手の名を言いあてる。あたったら鬼と交代する。あたらない時は,「うしろの正面だーれ」という部分から以下の動作をあたるまでくり返して行う。

(4) 指導上の注意

 

  こんにちは皆さん(How do you do my Partner)

○こんにちは皆さん(アメリカのリズム遊び)

(1) 目  的

 外国のリズム遊びを楽しみながら,新しい男女関係の基礎をつくる。

(2) 隊  形

 二重円,女児は外側,男児は内側に向い合って位置する。

(3) 方  法

(4) 指導上の注意  

       かりにいきましょう

○かりにいきましょう(イギリスのリズム遊び)

(1) 目  的

 外国のリズム遊びを楽しみながら,新しい男女関係の基礎をつくる。

(2) 隊  形

 8人組とし,男女各4人づつ相対して並び,先頭から番号をつける。

(3) 方  法

 全体をスキップで行う。

(4) 指導上の注意 ○花とちょう

(1) 目  的

 児童の知っている植物や,それに関係の深いこん虫などをとりあげ,観察をいかして身振りを楽しみながら,動植物に対する愛情ややさしい感情を持つようにし向ける。

(2) 隊  形

   自由。

(3) 方  法

 たとえば次のようにも行えるだろう。

(4) 指導上の注意 ○お山のどんぐり

(1) 目  的

 絵巻物をくりひろげるように展開される短い物語の中で,空想の世界に楽しく遊びながら,やさしい感情や,思うことを即座に,卒直に表現する態度を育てる。

(2) 隊  形 自由。

(3) 方  法

 たとえば次のようにも行えるだろう。

(4) 指導上の注意 ○ 動 物 園

(1) 目  的

 児童に最も親しみの深い動物の模倣を取り上げ,身振りを楽しみながら観察を深め,動物に対する愛情と美しい感情を育てる。

(2) 隊  形 自由。

(3) 方  法 一例をあげると次のようにも行われるだろう。

(4) 指導上の注意
 中学年(第3・4学年)

1 歌を伴う郷土的遊びとフオークダンス

(1) 花いちもんめ (2) 通りゃんせ (3) たんすながもち (4) らかんさん (5) あんたがたどこさ ○(6) どこの国から (7) てまりうた ○(8)きつねとがちょう ○(9) ロンドンブリッジ (10) みんなで楽しく 2 模倣と基礎リズム (1) つばめのおやど ○(2) まりつき (3) 私のつくった物語 ○(4) えんそく (5) かげふみ (6) ボート (7) のぎく (8) 夏の生活 ○(9) びっくり箱 ○(10) 積木遊び

○どこの国から

(1) 目  的

 生活の中にもっている身振りの遊びを取り上げ,だれとでもじょうずに遊べるようにする。

(2) 隊  形

 数人のグループとひとりの鬼が向かいあう。

(3) 方  法

 数人のグループはあらかじめ自分たちの仕事を相談してきめておく,次に旅人と鬼は次のような問答と身振りをする。

(4) 指導上の注意  

        きつねとがちよう

○きつねとがちょう(スエーデンのリズム遊び)

(1) 目  的

 外国のリズム遊びをおぼえさせ,自由な時間の遊びを豊かにし,また新しい男女関係の基礎をつくる。

(2) 隊  形

 図のように一列につながったがちょうと一匹のきつねが向いあう。

(3) 方  法

4 指導上の注意  

         ロンドンブリッジ

○ロンドンブリッジ(イギリスのリズム遊び)

(1) 目  的

 外国のリズム遊びを楽しみながら,だれとでも遊ぶようにさせる。

(2) 隊  形

 2人が向いあって両手をつないで橋をつくり,他の8人位は1列の円になり手をつないでその下をくぐれるようにする。

(3) 方  法

 円のものはスキップで橋をくぐってとぶ。一曲の終りの,とリズムの変化しているところで,橋はつないだ両腕を下ろして,通っているだれかをつかまえる。つかまえられたものは交代して橋をつくり,くり返して行う。

(4) 指導上の注意

○え ん そ く

(1) 目  的

 印象の深い体験をとらえ,観察した動的なものを楽しく身振りにうつしながら,思うことを率直に表わし,また人と協力して行う態度を育てる。

(2) 隊  形

 内容に応じて個人又はグループになる。

(3) 方  法

 たとえば次のようにも行えるだろう。

(4) 指導上の注意 ○ 積 木 遊 び

(1) 目  的

 各自が積木の材料になり,動く積木の組立を行うことによって,ものの構造に対する興味を深め,グループ表現の手がかりを得させながら,美しい感情や協力して一つの目標を達成する態度を育てる。

(2) 隊  形

 数人または10人くらい。

(3) 方  法

 たとえば次のようにも行えるだろう。

(4) 指導上の注意 ○びっくり箱

(1) 目  的

 身振りを楽しみながらいろいろなおもしろい遊びをくふうするよう,その手がかりを与える。

(2) 隊  形

(3) 指導上の注意  

            ま り つ き

○ま り つ き

(1) 目  的

 まりのつき方をくふうし,個性的なまとまりをもたせながら,美しい感情や創造的な態度を育てる。

(2) 隊  形

  自 由。

(3) 方  法

(4) 指導上の注意
 高学年(第5・6学年)

1 フォークダンス

(1) トロイカ (2) ダッチカップルダンス (3) ギヤザリングピースコーツ (4) バルソビーン ○(5) バージニアリール ○(6) 困った小人 (7) ぼんおどり 2 経験の表現と基礎リズム (1) とりいれ (2) ぶらんこ (3) 花園 ○(4) 波 (5) おともだち (6) 機械 (7) 嵐 (8) わたしのすきな音楽で ○(9) 雨だれ (10) はたらく人

 

        バージニア・リール

 

○バージニア・リール(アメリカのフォークダンス)

(1) 目  的 (2) 隊  形

 8人組とし,男女各4人づつ相対して並び,先頭から番号をつける。

(3) 方  法

 全体をスキップまたは軽いウォーキングで行う。

(4) 指導上の注意  
        困った小人(Little man in a Fix)

 

○困った小人(デンマークのフォークダンス)

(1) 目  的 (2) 隊  形

 図のように4人組ふたりずつ反対のほうを向く,中の男どうしは左腕を組み,右腕は外側の女子の腰に回す。女子は左手を男子の右肩におき,右手を腰にとる。1組だけふたりの組をつくっておく(これが困った小人の組である)

(3) 方  法

 以上の動作をくり返しすのであるが,ふたたび最初の4人組になる時,困った小人あった組はどの組かと腕を組んでしまう。そこで新しい別の困った小人の組が生まれるわけである。
○波 (1) 目  的

 題材の特徴をとらえて表現をくふうし,一つのまとまりある構成に仕上げさせながら,創造的な態度(または協力して一つの目標を達成する態度)を養いかつそれらの美的表現を通じて美しい感情を育てる。

(2) 隊  形

  自由(ひとりまたはグループ)

(3) 方  法

(4) 指導上の注意
○雨 だ れ (1) 目  的

 観察をもとにして表現をくふうし,いろいろの簡単なまとめ方を考えさせながら,個性を発揮させ,(あるいは集団にとけこむ態度を養い)かつそれらの美的表現をとおして美しい感情を育てる。

(2) 隊  形

  自由(ひとりまたはグループ)

(3) 方  法

(4) 指導上の注意
○と り い れ 1 目  的

 日常生活に関係深い収穫をとらえて,グループ表現の経験を得させながら,自分たちの生活を支える社会構造に対する理解を深め,協力して一つの目標を達成する態度を育て,かつそれらの美的表現を通して美しい感情を育てる。

2 方  法

4 指導上の注意  
(Ⅵ) 鬼 遊 び

1.この指導要領における鬼遊びの取扱について

 鬼遊びは,「おにごっこ」「おにご」「おにさん」など,ところによりその呼び方にいくらかの違いがあるが,古くからわが国のわらべあそびとして伝えられてきたもので,いまでもこどもたちに親しまれている。このような遊びは外国でも行われ,従来,体育科の教材として取り入れられていたものの中には外来のものも相当ある。

 この指導要領では,鬼遊びを,各学年を通じてとりあげることにしたが,これは,前記のようにこどもたちの日常生活の遊びとして無視できないし,また施設用具のふじゅうぶんな現状では,行いやすい活動であると考えたからでもある。要するに,こどもたちの運動的遊びを健全に豊かにすることがおもなねらいである。

2.鬼遊びの特性

 鬼遊びは,多く追うこと,逃げることから構成されている単純な遊びで,そこから生ずるこどもらしい好奇心や競走心が興味の中心となる。しかも,施設や用具をほとんど必要としないし,人数や時間にもあまり制限されないから,児童の遊びに対する配慮の貧弱なわが国においては,こどもたちがとりつきやすい遊びとなっている。

 このような鬼遊びを目標や学習内容との関係で考えるとき,特に重要なものは,(1) レクリエーションとしての活用 (2) 発達上の効果 (3) 人間関係の三つである。

(1) レクリエーションとしての活用 (2) 発達上の効果 (3) 人間関係 3.指導の内容

 鬼遊びの一般的な指導内容としては,(1) こどもたちが生活に取り入れやすい鬼遊びのいろいろな形式 (2) 健康や安全に対する態度 (3) 規則を守る態度 (4) 遊びをくふうする態度などである。

(1) 鬼遊びのいろいろな形式

 鬼遊びには,数多くの種目があり,呼び方も,人により地方により異なっていることが少なくない。この指導要領においては,これらのものから,適当と考えられるいくつかを,例としてあげることにした。

 低学年 ひとり鬼・子ふやし鬼・場所とり鬼・ねことねずみ・けん鬼

 中学年 子ふやし鬼・からかい鬼・場所とり鬼

 高学年 子とり鬼・陣取り

 もちろん,これら8種目を指導すれば,これで満足だというわけではないし,また,これだけは必ず指導しなければならないという意味でもない。地方によっては,もっと適当なものもあるであろうから,適宜加除することが必要であろう。

(2) 健療や安全に対する態度

 鬼遊びは,少数のものだけが疲労することになったり,また,つまずいたりころんだりすることが,他の活動に比べて比較的多い。それゆえ,適宜機会を利用して,渦度の疲労を避ける遊び方,運動場の整備,けがの原因の手当などについて適当な指導を加え,こどもたちが日常生活に適用できるように,健康や安全についての心得を指導することが必要である。

(3) 規則やきまりを守る態度

 鬼遊びには単純ではあるが,それぞれ遊びを構成する規則やきまりがある。特に低学年のこどもたちの中には,これらの規則やきまりを破って,そのために興味が薄らいだり,遊びが続けられなくなったりすることが多い。それゆえ,規則やきまりに対する指導を徹底させることは,鬼遊びの指導において欠くことができない。

 規則やきまりに対する指導では,これを守るという態度を指導することはいうまでもないが,しだいに,こどもたちが自分で規則やきまりを作るという態度も指導していきたい。特に低学年で,鬼遊びのような単純な遊びにおいてこうした態度を指導すれば,中学年や高学年のボールゲームなどにおける組織的態度にまで発展させることも容易である。

(4) 遊びをくふうする態度

 前項の規則やきまりを作ったり,守ったりする態度は,これを,遊びの構成の立場から見れば,こどもたちが,だんだん自分たちに興味あるように,遊び方を自分たちの条件につごうよく作りかえ,しだいに新しいものに変化させていくということになり,鬼遊びのようにレクリエーションとしての活用をねらう活動においては,特にたいせつな指導の内容である。

 この指導要領では,一応8つの例だけしかあげていないのであるが,これらは,それぞれ基本的なものをあげたのであるから,これらの活動に対して本項のような指導を加えるときは,各種の遊びに発展するはずである。たとえば,子ふやし鬼というのは,一般には,ひとりの鬼を決め,他は全部逃げ手となって逃げ,つかまえられたものが鬼になって,次々鬼がふえる遊び方であるが,このとき,鬼を識別するために,鬼になったものが片手や頭や背中において追いかけるようにくふうすれば,片手鬼となるであろうし,鬼が手をつなぐことに決めれば,手つなぎ鬼となるであろう。

4.指導の順序

 鬼遊びは,もともと,未組織で自然発生的な遊びであるから,特に発生的・段階的な系統をはっきりさせにくい。それゆえ,学年的な指導の順序も,特に初歩的なものとか,高度な段階のものとかの区別がつけ難い。学年に応じた身体的,心理的特性を考えて,数多い種目の中から,適当なものを選択することが必要である。すなわち,低学年は,規則も簡単で,体力も多く必要とせず,歌なども挿入できるようなものがよいであろうし,中学年や高学年においては,強い走力や器用さを必要とするもの,こどもたちの冒険心を満足させるもの,規則も複雑なもの,などがよいであろう。

 この指導要領においても,このような基準で前記の種目を選択したわけである。

5.指導上の注意

 以上のような鬼遊びを指導するにあたって,特に留意すべきこととしては,次のような点をあげることができる。

(1) どのこどもも,遊びの仲間に加わるように注意して, 楽しいものにする。

(2) 時間を長くせず,かつ,特定のこどもだけ鬼としないようにし,また疲労しすぎないように注意する。

(3) 時間中継続して行うより,適宜他の類型の種目と結合して指導する。

(4) 季節に応じて種目を選択する。

(5) 危害の予防には特に注意する。

(6) 決められた規則やきまりは確実に守らせる。

(7) 必要以上に騒がしくならないようにする。

 

(Ⅶ)水遊びと水泳

1.この指導要領における水泳(水泳び)の取扱について

 水泳は夏のスポーツで,暑夏水にひかれるのはこどもだけでない。水に恵まれたわが国に水泳の普及しているのはきわめて自然なことで,学校体育は,生活に取り入れられるスポーツの芽を育てながら,鍛えようとする。

 泳ぎの上達のためには,小学校期に始めるのが最もよいとされている。しかし,水泳場に恵まれない学校が,水泳を教育内容に取り入れるのは困難であるので,この指導要領では,「条件の許すかぎり」という制約をつけて学習内容に取り上げることにした。近くに水泳場を持たない学校では,もし事情が許せば,臨海学校その他の計画によって指導されることが望ましい。

 水遊びと水泳の区別は発達上の変化を示すものであって,指導の内容は水泳場の条件によって,各学年一様に考えるわけにいかないが,最大の努力を払わなければならないことは,事故の防止である。

2.水泳の特性

 水泳を目標との関係で考えるとき,特に重要なものは発達上の効果,レクリエーションとしての活用,健康と安全に関するものの3つである。

(1) 発達上の注意 (2) レクリエーションとしての活用 (3) 健康と安全 3.指導内容と指導の順序(学年配当) (1) 学習内容との関係

 学習内容の一般的事項は前に述べたので,ここではなるべく重複を少なくしたいのであるが,まず問題となるのは,運動としてどのような内容(泳法やとび込みなど)があるか,ということと,水泳と健康習慣(水泳心得)との関係が重要で,施設用具や人間関係についての学習内容も,それぞれの学習場面で考えることができる。

(2) 指導の内容

 ここで特に取り上げる指導の内容としては,ふつうの条件を備えた学校を対象に考えるとき,基礎的泳法,とび込みの初歩,水泳心得の3つを取り上げることが適当であろう。このほか潜水(潜行)や水中遊戯などもあるが,これらはむしろ基礎的泳法と関連して考えることがよかろう。

(3) 指導の順序(学年配当)

 指導内容が水泳場に左右されるように,内容の学年配当も一様に決めにくい。一般的にいって,水泳心得は低学年からよく徹底させることがたいせつで,その他の内容については,低学年では石拾い・ならびっこ・面かぶり・犬かきなど,ごく初歩のもので,水に慣れさせ,親しませることに重点をおく。

 中学年になると水にも慣れ,かなりまとまりのある動きができるようになるから,犬かきからクロールの初歩へ進め,また横泳ぎや平泳ぎの初歩・ごく初歩のとび込みなどを,適宜水中遊戯と関連させながら指導する。

 高学年になると,やや形の整ったクロール・横泳・平泳ぎ・潜水の初歩・立とび込みの初歩・水中遊戯・500mから2キロぐらいまでの遠泳は期待できよう。技術の上達や競泳にかなり強い関心を示すようになるから,校内水泳大会や適当な距離の遠泳を計画し,危険のない範囲で役割を分担させる。

4.技術指導と指導上の注意 (1) 指導上の一般的注意

 泳ぎの上達よりはまず安全に注意する。そのためには水泳心得が学習時だけでなく,日常生活の中でよく実践されるところまで具体的に指導する。水にはいる前と水から出た直後の人員点呼は,そのたびごとに励行する。技術指導はまず水に対する恐怖心を除くことからはいる。個人差がかなり大きいから,泳力に応じた組分けをし,さらに個別指導を加える。他の種目と同様,技能のすぐれた者よりも,劣った児童に対してより大きな努力をなすべきである。技術の上達の基礎は正しい泳ぎの動作(フォーム)を習得することであり,また個人やグループの能力に応じた身近な目標を与えて練習させるとよい。

(2) 技術指導の要点

 泳法については,まず恐怖心を除くため浅い所で顔を水に入れ,水中で目をあけることに慣らす。(洗面器を利用するのもよい)

 次に浮くこと沈むこと,短い距離の面かぶり(顔を水に入れたままのバタ足)犬かきなどを,石拾いやバタ足競争(ふたり組にしてひとりに手を引かせてもよい)などと結合して学習させる。

 犬かきができるようになったところで,蛙足の泳法に進めるのであるがこの場合物や人にささえられたり,また砂浜や浅い所などで,呼吸や腕や脚の動作などを個々に取り出して練習させるとよい。技術の上達には,それぞれの泳法の正しいフォームに導くことがたいせつである。

            図 解 に よ る 参 考

第1図 初歩の練習

第2図 クロール(速泳ぎ)

第3図 横 泳 ぎ

第4図 蛙足と平泳ぎ

第5図 とび込み

 とび込みの指導では,水面と目の距離が長いほど恐怖心が強くなるから,初心者はできるだけ目と水面との距離を短くするようにする。

 潜水の腕の動作は,水を下から上に押し上げる動作を加えて,からだが浮かないようにする。また水の濁って水底がはっきり見えない場合には,じょうずなものが潜行者の近くの水面をついて泳ぎ,万一に備えることがたいせつである。

 遠泳を実施する際には,参加者の泳力や健康状態によく注意し,潮流や水温を調べて,泳力に合った距離を定める。舟や救急用具,薬品や毛布などを用意する。隊形が乱れないように注意し,日射病を防ぐために時々頭を水で冷やさせ,時々点呼をとるなどして,たえず人数に注意する。
 
 

(Ⅷ) スキー・スケート

1.この指導要領におけるスキー・スケートの取扱について

 スキー・スケートは,わが国の積雪地方では,こどもたちの生活の中に広く取り入れられている。したがって,冬季積雪地方における学校では,この活動を重視して,子供たちの発達が目ざされる。

 スキーやスケートは,幼児にとっては,積雪や結氷などの自然環境条件で遊ぶことから始められるが,身心の発達が進むにつれて簡単なスキーやげたスケートを利用して,技術の向上を目ざそうとする。そこで,学校体育としては,低学年では,自然に親しむ遊びを,中学年になって,スキーやげたスケートやそりを利用する斜面の滑降や氷すべりなどを中心として学習を進め,しだいに系統的発達を目ざすのがよいと考えられる。

 スキー・スケートは,多くの学校の体育学習で取り上げることができないので,この指導要領では,水泳と同じように,「条件の許すかぎり」という制約をつけて学習内容に掲げたが,その実施が可能な状態にある学校では,それらのすぐれた価値を認め,実情にふさわしい内容を学習計画の中に取り上げて指導することが望ましい。

2.スキー・スケートの特性

 スキー・スケートの特性を,目標との関係で考えると,次のようになろう。

(1) 発達上の効果 (2) レクリエーションとしての活用 (3) 健康と安全 3.指導内容と指導の順序 (1) 指導内容

 スキー・スケートの特性から指導内容(運動の内容や心得など)を一般的に考えてみると,次のようになろう。

(2) 指導の順序

 指導内容は,自然環境に左右されるので,一様に学年配当を決めることは困難であるが,一般的には,おおよそ次のような順序で考えるのがよい。その場合,スキーやスケートの心得については,運動の内容にふさわしい順序で,徹底させるようにすることが必要である。

4.技術指導と指導上の注意 (1) 指導上の一般的注意

 スキーもスケートも,まず安全に注意することがたいせつで,そのためにはスキーやスケートの心得が日常生活で実行されるように指導する必要がある。

 雪遊びは,それがスキーに,あるいはスケートに分化して発展するのであるから,低学年では,無理に分けず,綜合的取扱で,もっぱら安定した滑走や滑降ができることを重点として指導することがよい。そのためにまず基本動作としてのころび方・おき方・用具の着脱・携行などについての指導や,スキーの場合,しだいに傾斜を深くするなどの考慮が必要である。

 なお,能力別組分けをし,さらに個別指導を加え,またこどもたちが目標をめざして練習するように指導する。

(2) 技術指導の要点

5.図解による参考

 (1) ス キ ー

A図 ストックの正しい握り方

B図 登 行 法

C図 直滑降の基本姿勢

D図 不整地滑降

E図 全制動滑降

F図 半制動滑降

G図 回転(基礎回転)−左回り−

H図 回転(クリスチャニア)−左回り−

I図 回転(ボーゲン)−左回り−

(2) スケート A 初歩の滑走−フォーム−

B スピード滑走−フォーム−

C 直線路の滑走−足の変化−

D コーナーの滑走−足の変化−

E ストップ

F 後進

 

Ⅱ 施設・用具の標準

 施設の大きさ・種類・数量,用具の種類・数量などは,各学校に応じて詳細な標準を設けることは,なかなか困難である。小学校体育の立場から,一般的に必要と考えられるものの具体的な表を,次に一応の標準例として掲げることにする。
 
施設用具名          規格の参考        数量(学級数)  備考

                            1 7 13 25

                            | | | 以

                            6 12 24 上

運 動 場    120m×70m 100mの直線コースをとる
コンクリート広場 500㎡
体 育 館    500㎡ 高さ7m
プ ー ル    25m×10m 深さ80cm〜110cm
足 洗 場    2m×3m              1 2 3 4
水 飲 場                       1 2 3 4
用 具 室    4m×8m
す べ り 台  高さ2.0〜2.5m スロープ3.4〜4.2m  1 1 1 2
遊  動  木  地上45cm以上  長さ4〜5m     1 1 1 2
ぶ ら ん こ  支柱の高さ2.5〜2.8m         4 4 6 6   ○
         上幅と下幅の差O.1m
シーソー(懸垂) 高さ1.3〜1.5m 長さ2.1〜2.3m    4 4 6 6   ○
登  り  棒  高さ3m                10 10 20 20   ○
ジャングルジム  底辺2.5〜3m 高さ2.5〜3m      1 1 1 1   △
回  旋  塔  支柱3m にぎりの高さ0.9〜1m     1 1 2 2
雲     梯  高さ1.5〜2m 長さ5〜6m      1 1 2 2
固定円木(平均台)高さ0.3m  長さ4〜5m        2 2 3 3   ○△
低  鉄  棒  太さ25〜28mm 幅1.8高さ0.8〜1.2m   5 5 10 15   ○
高  鉄  棒  太さ25〜28mm 幅1.8m高さ1.3〜2m   1 1 2 2   ○
砂     場  5m×6m×0.3m            1 1 2 2   ○
と  び  箱  長さ    高さ    幅       2 2 4 6
         小0.8m  1.0m   0.35m
         大1.0m  1.2m   0.4m
踏  切  板  長さ0.9m 幅0.6m 高さ0.1m     2 2 4 6
マ  ッ  ト  幅1〜1.1m  長さ2〜2.2m      2 2 4 6   ○
ドッジボール                       1学級1〜2個
バレーボール                       5 5 10 10
ソフトボール                       10 10 15 15
ゴムボール    数量はダース              2 2 3 4
フットボール                       2 3 4 6
軟式野球ボール  数量はダース              1 1 2 2
卓球ボール    数量はダース              1 2 3 3
紅 白 球                        多  数
バレーボール用支柱 高さ2.3m(調節式)         1 1 2 3   ○
バスケットゴール  高さ2〜2.75m            1 1 2 2   ○
ソフト用バット                      2 3 6 6
ソフト用べース                      2 3 3 3   ○
ポートボール用台  上50×50cm  高さ5020cm       1 2 2 4   ○
卓  球  台   長さ2.5m 幅1.3m 高さ66cm     1 2 2 4
卓球用ラケット                      4 8 8 16
高とび用スタンド  高さ2m               1 1 1 1   ○
バ  ト  ン   1号,2号,3号           8 8 12 12   ○
綱 引 用 綱   長さ30m〜40m            1 1 1 1
旗         大小色各種              若 干       ○
旗  立  台                      若 干       ○
なわとび用なわ   短なわ2.3〜3m            50 50 50 50   ○
          長なわ4.5〜6m            5 5 10 10
ピ  ア  ノ                      1 1 1 1 体育用
オ ル ガ ン                      1 1 2 2 体育用
蓄音機(電蓄を含む)                   1 1 1 2   ○
レ コ ー ド                      若 干
タ ン バ リ ン                    1 2 3 5
録  音  機                      1 1 1 2
空 気 入 れ                      1 2 2 3
ひ も と お し                    1 2 2 3
ラ イ ン 引 き                    1 2 2 3
出発用ピストル                      1 1 2 2
笛                            若 干
採点用小黒板                       2 3 4 5
シ ヤ べ ル                      2 2 4 4
く     わ                      2 2 4 4
砂 な ら し                      1 1 2 2   ○
ストップウオッチ                     1 1 2 4
巻     尺                      1 1 2 4
肺 活 量 計                      1 1 1 1 △
背 筋 力 計                      1 1 1 1   △
握  力  計                      1 1 1 1   △
体  温  計                      2 3 5 6
身  長  計                      1 1 1 2
座  高  計                      1 1 1 2
体  重  計                      1 1 1 2
胸囲測定巻尺                       1 1 2 2
視  力  表                      1 1 2 3
色  神  表                      1 1 2 2
救急用具一式                       1 3 6 6

備考 1.規格の参考は,児童の発達に即した,おおよその基準を示したものである。

   2.数量は学級数に応じて示した。

   3.○印は自作可能なもの,△印はできれば備えることが望ましいものである。

     施設用具の配置図(例)

1.のぼり棒 2.バックネット 3.低鉄棒 4.ゴール 5.シーソー 6.ぶらんこ 7.すべり台 8.遊動木 9.運梯 10.回施塔 11.ジャングルジム 12.砂場 13.バレーボールコート 14.バスケットボールコート 15.200mトラック 16.野球場 17.サッカー,ハンドボール場 18.すもう場 19.べンチ 20.足洗場 21.コンクリート広場 イ.体育館兼講堂 ロ.ステージ ハ.控室兼更衣室 ニ.シャワー室 ホ.便所 ヘ.用具室 ト.体育教官室 A.プール B.便所 C.シャワー室 D.更衣室

Ⅲ 学校体育に関係のある法規

 民主的な社会を実現するためには,各種の定められた法規を尊重することは欠くことのできない要件である。

 学校体育を正しく振興するためには,学校体育に特に関係深い法規を研究しその定められたゆえんをじゅうぶんに考えて,これを活用することがたいせつである。

 次に学校体育に関係の深い法規を掲げることにする。

1,教育基本法(昭和22年3月31日法律第25号)

第1条(教育の目的)教育は,人格の完成をめざし,平和的な国家及び社会の形成者として,真理と正義を愛し,個人の価値をたっとび,勤労と責任を重んじ,自主的精神に充ちた,心身ともに健康な国民を期して行われなければならない。 2,教育課程と時間数 学校教育法(昭利22年3月31日法律第26号)

第20条(教科)小学校の教科に関する事項は,第17条及び第18条の規定に従い監督庁が,これを定める。

学校教育法施行規則(昭和22年5月23日文部省令第21号)

第24条,小学校の教科は国語・社会・算数,理科,音楽,図画工作,体育及び自由研究を基準とする。

(注)自由研究は教科以外の活動に改められた(学習指導要領一般編昭和26年改訂版) 第25条,小学校の教科課程,教科内容及びその取扱いについては,学習指導要領の基準による。

  学習指導要領一般編(昭利26年改訂版)

    教科についての時間配当の例
 
    学年

教科

1・2 3・4 5・6
体  育
15%
IO%
IO%

備考

(a)この表は教科の指導に必要な時間の比率だけを示しているが,学校はここに掲げられた教科以外に教育的に有効な活動を行う時間を設けることが望ましい。

(b)教科と教科以外の活動を指導するに必要な一年間の総時間は,基準として次のように定められる。

  第1学年および第2学年     870時間

  第3学年および第4学年     970時間

  第5学年および第6学年    1,050時間

3.運動の免除

 学校教育法施行規則

 第26条 児童が身体の状況によって履修することのできない教科は,これを課さないことができる。

4,体育施設

 学校教育法施行規則

 第1条 学校には,別に定める設置規準に従い,その学校の目的を実施するために必要な校地,校舎,校具,体操場,図書館又は図書室その他の設備を設けなければならない。

② 学校の位置は,教育上適切な環境に,これを定めなければならない。

日本建築規格木造小学校建物(昭和24年4月10日文部省商工省告示第1号)

 第2条 児童一人当り校地面積の標準は第1表による。

第1表
 
学校の規模別 児童1人当り面積(単位㎡)
12学級以下
20
12学級以上
15

同解説(技粋)

3,屋外運動場面積は校地に含まれるものとし,この規格から除いているが,1校について70m×120mを下らないような運動場を持つことが望ましい。

2,片側廊下の幅員はロッカーの施設を設ける場合と,寒地および多雪地方において規模の小さい学校で屋内運動場を設けない場合は増加することとした。

5,身体検査および衛生養護施設

 学校教育法

 第12条(身体検査・衛生養護施設)学校においては,学生・生徒・児童及び幼児並びに職員の健康増進を図るため,身体検査を行い,及び適当な衛生養護の施設を設けなければならない。

② 身体検査及び衛生養護の施設に関する事項は,監督庁が,これを定める(注)身体検査に関する表簿は学校において備えなければならない表簿の一つである  学校身体検査規程(昭和24年3月19日文部省令第7号)

 第1条 学校教育法(昭和22年法律第26号)第12条の規定による身体検査はこの省令の定めるところによる。

 第2条 この省令で学徒身体検査というのは,学生・生徒,児童及び幼児に対して行う身体検査をいい,職員身体検査というのは,学校の職員(学校に勤務する常勤者,非常勤者を含む)に対して行う身体検査をいう。

 第3条 この省令で定期身体検査というのは,第9条(第14条で準用する場合を含む)の規定による身体検査をいい,臨時身体検査というのは他の身体検査をいう。

 第8条 学徒身体検については身長,体重,胸囲,坐高,栄養,せき柱,胸,郭,眼,耳,鼻及びいん頭,皮ふ,歯牙,「ツベルクリン」皮内反応その他疾病及び異常について検査を行わなければならない。

② 前項のほか,運動機能,精神機能等校長が必要と認める事項についても検査を行うことができる。  第9条 学徒身体検査は毎年4月に行わなければならない。

 第19条 臨時身体検査は,左の場合は,学生,生徒,児童及び幼児並びに職員に対して行うことがきる。

1,学校伝染病の発生したとき。

2,長期にわたって授業を行わない場合の直前,直後。

3,結核,寄生虫,その他の疾患について精密検査を行う必要のあるとき。

4,就学,入学は卒業のとき。

5,その他校長が必要と認めたとき。

6,異常者の取扱い。

 学校教育法

 第75条(特殊学級)小学校,中学校,高等学校には左の各号の一に該当する児童及び生徒のために,特殊学級を置くことができる。

1,性格異常者

2,精神薄弱者

3,ろう者及び難聴者

4,盲者及び弱視者

5,言語不自由者

6,その他の不具者

7,身体虚弱者

② 前項に掲げる学校は,疾病により療養中の児童及び生徒に対して,特殊学級を設け,又は教員を派遣して,教育を行うことができる。
 
 

小学校学習指導要領

体育科編

MEJ 2123

昭和28年11月20日 印刷

昭和28年11月30日 発行

著作権

所有

文 部 省

発行者

東京都中央区入舟町3の3

藤 原 政 雄

印刷者

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中  村  榊

(新興印刷製本株式会社)

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