第11節 森 林 生 産
第1.「森林生産」の性格と目標
「森林生産」は,土地その他の環境要素をじゅうぶんに活用して,適地に適木を育てて森林をつくること,および林木を外界のいろいろな危害から守るとともに地力を増すことを学ぶ科目で,その目標を細分すると次のようになる。
1.環境と林木の生育・成長との関係を明らかにして,よい木材および特用林産物を能率的に生産する能力を養う。
2.林木の危害を予防駆除し,林地の生産力を保持させる能力を養う。
3.国土の緑化をはかり,進んで森林を愛護する態度を養う。
第2.「森林生産」の具体的な到達目標
〔技 能〕 |
〔一般的な知識・理解〕 |
(森林環境) 1.苗畑あるいは林内における簡単な気象観測や土性の調査などができること。 |
1.暑い地方から寒い地方に,また低い土地から高い土地にいくに従って茂る木の種類や森林の状態が違う。 2.環境要素の影響によって木の育ちぐあいが違う。 |
(造 林) 2.それぞれの林地に適した木を選びうること。 3.種の品質の良否を見分けられること。 4.種の貯蔵ができること。 5.重要な木の苗木を,いろいろな方法で,じょうずに育てうること。 6.苗木の良否をはっきりと見分けうること。 7.苗木を林地にじょうずに植えつけうること。 8.あかまつの山地直まきができること。 9.下刈り・つる切り・除伐・枝うち・間伐を合理的に行いうること。 10.薪炭林の択伐ができること。 |
3.森林をつくるには,自然的,経済的環境に応じて各種適当な天然更新法や人工造林法が選ばれる。 4.森林をつくるには,更新のしかたや作業の方法が違ういろいろな型のものがある。 5.下刈り・つる切り・枝うち・除伐・間伐を行うことによって,生産される木の質がよくなり量が増す。 6.樹型級(幹級別)を決めることによって,間伐木の選定が行いやすくなる。 7.農用林は,その目的によって木の種類が違い,手入れ保護の方法も違う。 |
(森林保護) 11.病気や害虫予防駆除用のおもな薬剤の使用ができること。 |
8.苗木や林木に対しては,急激なあるいは慢性的な危害があり,それぞれの害に対していろいろな対策がある。そうして,木の種類や森林の状態によって危害に対する抵抗力が違う。 9.落ち葉や枯れ枝などをとりすぎると林地が荒れる。また,肥料木とよばれるような木を適当に混生させれば,林地を積極的に改良することができる。 |
(森林植物) 12.おし葉をつくることができること。 13.おもな林木と下草の種類を見分けうること。 14.森林の植生調査ができること。 |
10.樹木には,他の植物と異なった植物生理学的および生態学的特徴がある。 |
(樹 芸) 15.竹その他おもな特用樹種の栽培ができること。 |
11.竹林の経営,その他特用樹種の栽培には特殊な取扱方が必要である。 |
(造 園) 16.庭木の簡単な手入れができること。 17.庭木の根まわし・植えかえができること。 |
12.風致林に対しては特殊の取扱方が必要である。 |
第3.「森林生産」の教育内容
気象観測,土性の調査,母樹の選び方,種の採集,種の精選,種の貯蔵,種の品質鑑定と発芽試験,まき床のつくり方と種まき,さし木とつぎ木,草とりと間引き,施肥とかん水,日よけと霜よけ,苗木の病気,害虫および有害鳥獣の防除,床がえと掘りとり,山行き苗木の良否の見分け方,荷造り,地ごしらえと植付,直まき・下刈り・つる切り・除伐・枝うち・間伐・まつくいむしその他害虫の駆除,森林火災とその防止,風害の対策およびその善後策,雪害の対策とその善後策,野ねずみ・野うさぎの被害とその防除,林地の生産力増進,あかまつその他の天然更新,わい林択伐,植物採集と森林植物の分類,おし葉つくり・植生調査,たけの植付,竹林の敷草・土入れ,竹林の伐採,竹林の改良と更新,きりの根分けと種根の伏込み,きり苗の植付,芽かきと台切り,うるし・あぶらぎり・くり・みつまたなどの栽培,樹木の風致的取扱。
第4.地方の必要に応じた教育課程構成への適用
1.伐採がそのまま森林の更新手段になるようなこともあるので,この科目は「森林土木」と関連が深い。また,「林産加工」ではいろいろな森林副産物について学ぶから,この科目とも関連がある。また,この科目はりっぱな森林をつくるというだけではなく,利益をあげることを目的とするものであるから,「林業経済」とも関連させて学ばなければならない。
2.林業は長期間にわたる事業であるから,優良な苗木をうることが特にたいせつである。そこで,苗床におけるいろいろな仕事を実地に体得・熟練させるようにする。