Ⅰ.学習指導法に影響する要素
こどもが望ましい経験を重ね,有効な活動を行うためには,学習指導の計画だけではじゅうぶんでなく,すぐれた指導法がそれに伴わなければならないことはいうまでもない。有効な学習は,学ぼうとするこどもと,指導する教師との協力によって行われるといってよいであろう。
次に,このことを念頭において,学習指導に影響する諸要素について考えてみることにしよう。
こどもが,これまでに経験したことのない事がらや,見たことがあっても,注意しなかったことに出あうと,「なんだろう」とか「なぜだろう」とか疑問を起すであろう。また,経験したことがあっても,まだ解決のついていないことには同じように疑問を起す。このように,こどもが興味をもち,解決の必要を感じている場合は,そのことを問題として解決の活動が始まる。
このような問題解決の過程中で,
(2) 問題解決の過程中で,こどもの現在および将来に役だつ理解・能力・態度を養う。この間に新しいことを学んでいったり,新しい習慣を身につけていったり,新しい感じ方・味い方を体得していったりして,環境に適応した生活をしていく。
この学習の効果が,じゅうぶんあがるように指導するには,その方法に,どのような要素が影響するかを,しっかりつかんでおかなければならない。
1.学習するものとしてのこども
学習を指導するにあたって最も必要なことは,学習するものとしてのこどもの実態を,しっかりつかむことである。それは,次のように分けて考えることができる。
(1) こどものもっている必要と興味
b.こどもが興味をもつであろうと思われることで,ちょっとした刺激を与えれば,その興味が盛んになるものは何か。
c.その必要や興味は,どこまで学習すれば満足しそうであるか。
d.こどものもっている必要や興味は,教育上果して意味があるかどうか。
b.社会性は,どの程度に発達しているか。
c.情緒は,どの程度に発達しているか。
d.知能は,どの程度に発達しているか。
(第2章 こどもの発達の項 参照)
学習は,学習者がすでにもっている経験や知織を土台として発展する。したがって,教師はこどもがすでにどのような知識や経験をもっているかをよく知っていることが必要である。
これらは,学習の指導法に深い関係をもつばかりでなく,計画をたてるときも,指導に必要な材料を用意するときも,また評価を行いその結果を活用するときも,直接間接に影響をもつものである。
(4) 個 人 差
こどもの興味・能力・必要・活動の傾向・性格・感受性などには,個人的な差異がある。
教育は,個々のこどもをできるだけ発達,進歩させることを望んで行われるものであるから,個々のこどものもつ個人差について,じゅうぶん注意を払い,それに適応した指導法をとらなければならない。
2.こどもの学習に役だつ環境と材料
こどもの外部にある学校や社会の施設・設備・自然界・社会等の環境は,こどもの学習に対し,次のような点で,きわめて密接な関係がある。
(1) こどもが「なんだろう」とか「なぜだろう」とか疑問を起すのは,こどもと環境のつながりの中で行われる。うさぎ・やぎが飼ってあるような学校では,うさぎ・やぎは何を食べるのか,どのようにして世話をするかなど,疑問をもちやすく,また,世話をしたり,観察をしたりすることにも興味をもちやすい。教室を例にとってみても,その教室が暗ければ,何とかして明るく気特よくしたいものだと考えるであろうし,明るくするいろいろな方法も考えだすことであろう。このようにこどもの置かれている環境は,疑問なり問題なりが構成され,学習が発展していく基になるものである。
(2) 環境にある事物は,また,問題を解決するに役だつ。「いろいろな動物は何を食べているか」が問題となったとき,学校で飼っているうさぎ・やぎを観察しようと考え,それによって解決しようとする。また,「雲はどうしてできるか」が問題となったとき,図書室があれば,そこで読書によって解決しようと考える者もあろうし,気象台が近くにあれば,そこを見学し,所員に話をきいて解決しようとする者もあろう。「どのようにしたら火がよく起るか」が問題となったとき,そこに,こんろや,ストーブなどの道具があれば,それを使って解決しようと考えるであろう。
こどもは環境との交渉のもとに暮しているわけであるから,そこにいろいろな問題をもち,さらに環境にあるものを使って,その問題を解決している。したがって,こどものもつ問題の種類・深さ・解決のしかたなどは,環境にどのようなものがあるか,そのものがどのような状態にあるかによって違うのである。教師は,こどもがどのようなことに興味や関心をもつかを知るとともに,環境にどのようなものがあるかをしっかりとつかんでいなければならない。
しかし,環境にあるといってもただ近所にあるというだけでは,学習指導にすぐに役だつというわけではない。学習指導に役だてるためには,こどもの近所にあるもののうちで,どのようなものに興味をもつか,どれほど深い関心をもつか,問題解決にどのようなものが役だつかを調査研究しておくことがたいせつである。
3.指 導 目 標
指導法は,理科の目標に即してくふうされなければならない。第1章に掲げた理科の目標が,その焦点を示している。
理科の指導法は,理解・能力・態度等がかたよらないで学習できるように,くふうされなければならないことはいうまでもない。これらのねらいは,指導の目標として具体的に掲げられなければならない。
それでは,単元の学習を指導するときに,どのようにして具体的な指導の目標をきめたらよいであろうか。その手順を示してみよう。
(1) 年間計画の単元のうち,これから指導しようとする単元に,最もよく似ていると思う単元の指導目標を調べる。これらの指導目標のうちから,今度の単元にふさわしいものだけを選びとる。
(2) 年間計画の単元のうち,(1)で調べた残りの単元の指導目標を調べてみる。そのうちに,今度の単元にふさわしい指導目標があれば取りあげて(1)で選んだ指導目標に加える。
(3) 「学習するものとしてのこども」の項にしるしたことから,年間計画に現われていないが,指導目標として新しく加えたほうがよいものがあるかどうかを考えてみる。
(4) 以上のようにして選び出された指導目標について,次のような要素から重要さの違いを考えてみる。
b.こどもの発達
c.こどもの過去の経験と知識
d.こどもの学習に役だつ環境と材料
e.他教科の指導目標との均衡
f.社会の情勢・現状・要求
Ⅱ.これらの要素の指導法への影響
上に述べた「学習するものとしてのこども」,「こどもの学習に役だつ環境と材料」「指導目標」が,どのように指導法に影響するかを,次に述べてみよう。
1.学習活動の選択
「Ⅳ 理科の学習活動とその指導」の中にある各項(例,観察・実験等〉の意義を参照する。その意義の中から「学習するものとしてのあなたのこども」と「あなたの選ばれた指導目標」と一致するものを探す。
〔例1〕最近,輪ゴムが多く出まわってきて,それがこどもの一つのおもちゃにまで発展した。その遊びの一つとして,非常に興味をもっているのは,ゴムを筆箱などに張り,はじいて音を出すことである。時間さえあれば,これで簡単な曲をはじいては,大騒ぎをしている。
音の学習は第2学期に行う予定であったが,どのこどもも音の出るものに興味をもって遊んでいるので,予定を変えて,ここで音の学習をすることにした。
指導のねらいは,おもちゃの楽器を作成しながら,いろいろな実験を行い,音の学習をすることである。一方,制作をとりあげた理由は,こどもの興味が輪ゴムと筆箱の遊びを通して,製作に向っていたからである。(Ⅳ(3)製作 参照)
指導の順序としては,この遊びから話し合いを始め,もっとよい楽器,もっとほかのいろいろな楽器を作ってみようというところに進んだ。作ってみたいものをいろいろあげさせ,それから作ってみたい物を中心に,グループを作った。グループの人数の多い場合は二つ三つの同じものを作るグループを作り,製作後の比較に希望をもたせた。
製作にあたっては,必要な材料・道具などを調べ,なるべくもち合せのものを活用するように努めた。
各グループは,どんなにして作るか相談したり,教科書を読んで考えたりして計画を立てた。また,だいたいできあがったころ,実物と比較して改善をはかったり,根気よく原理を追求したりしたグループもあった。
〔例2〕音の学習にあたり,こどもが日頃疑問をもっている山びこの指導を,どうしたらよいかを考えた。こどもは,静かな廊下や講堂でも,山びこを聞き,また,校庭でも,校舎にぶつかってかえってくる音に関心をもったこともある。
そこで,室の中で大たいこをたたいて,とびらや窓ガラスに伝わる振動に注意したり,水中に小石を投げ入れて,波紋が池の縁ではねかえってくる様子を見たりする実験をとりあげた。このような簡単な実験と,過去の経験を思い合わせながら,山びこについての本を読んで,学習のまとめをした。
2.学習の順序
学習活動にはいろいろな種類があるが,それを,どんな順序にするのが,その学習にとって,また,こどものために最も効果的であるかを考える必要がある。順序も考えないで,ただこどものなりゆきにまかせておくのでは,よい指導とはいえないし,多くの場合,目的も達せられない。
ある事がらを学習する場合に,初め見学をしたほうがよいか,読書したほうがよいか,製作をするのがよいか,幻燈や映画を見せるほうがよいか,あるいは,これらは後にまわして,まず実験したほうがよいかなど,いろいろな場合が考えられる。
〔例1〕3年生のわたくしの受持ちのこどもは,岩石に対して,いっこうに興味をもっていなかった。その年の秋,多摩川原に遠足をしたとき,少し刺激やヒントを与えたら,急に関心をもちだし,それ以来,石と見ると集めてきては,さわってみたり,重さを比べてみたり,割ってみたり,色や形を比較してみたりして,自分たちで「これはちりめん石,これはろう石,これはひかり石」などと,自由に名をつけ,興味をもって学習を続け,効果があがった。
〔例2〕こどもは,衛生方面には比較的無関心であるが,これは,多くは知識が乏しいための無関心である。いったん少しでも,からだについて理解してくると,ことに自分のからだのことに関しては,興味をもつものである。校医にやさしく話をしてもらってから,話合いや見学・読書などによって学習をすすめたところ,健康に注意する習慣ができた。
例1では,なぜこのような学習順序をとったか。この場合は,3年の理科指導の年間計画の中に,岩石の学習が組み込まれているが,こどもたちは,あまり岩石に興味をもっていなかった。しかし,このこどもたちは「ちょっとした刺激を与えれば,興味をもつ」(Ⅰ・1の(1),b参照)状態にあった。そこで,このちょっとした刺激を何によって与えるかをくふうすればよい。この問題は,遠足をまず第一の指導順序におくことで,うまく解決したのである。
例2の場合は,衛生方面について,こどもの興味や関心のうすい場合である。専門家の話を聞くことを学習順序の第一におき,これによって興味を引き出す。それに続いて,こどもの興味が一歩一歩深くなるような学習活動を選んだ。それで学習活動の順序を見学・読書ときめて,成功した場合である。
このように,学習指導の順序は一定の型に捕われることなく,「わたくしがいちばんよく知っているわたくしのこどもたちを,わたくしが指導するのである。」ことを常に念頭におき指導の順序をより適切に計画すべきである。
3.指導する時間
指導するときに,学習活動をどれほどの時間を続けていったら適当かは,次のような観点に立ってきめるのがよいであろう。
(1) 学習活動の重要差の違い(次の項参照)
(2) 学習活動の種類から
時間が長くかかる活動——製作・見学・報告書を作る仕事・実験など
(3) こどもの興味の持続から(第2章 こどもの発達 参照)
低学年のこどもでは,同じことを長く続けていると,すぐあきがくる。こどもの興味のかわるにしたがって,次々と場面とか,することを変える必要がある。一つのことに興味をもっている時間は,だいたい1年では,5〜10分,3年では20分ぐらいであろう。
高学年では,一つの活動の興味は,比較的長く続くようになる。
(4) 単元の指導時間から
b.一つの学級で,AのグループとBのグループで,違った学習活動をしている場合は,Aは図書館に調べに行く,Bは花壇へ観察に行く。この二つの学習活動は,ほぼ同時に終って,次の話合いの活動にはいりたいことが起る。このように,同時にしている種類の違った学習活動の関係から,学習活動の時間は制限を受ける。
c.Aのグループの学習活動が早く終る場合には,さらに他の学習活動を加えて,Bのグループの活動とほぼ同時に終るようにする必要がある。
このような学習活動をさし加えることは,あらかじめ計画する場合もあるし,臨時に起る場合もある。指導中予期しないときに臨時に起ったときに,適当な学習活動をすることができるように,あらかじめ準備しておく必要がある。また,このような時こども自身で余暇を利用するようにする。
4.力の入れ加減
単元の学習の中に,次々に展開される各ゝの学習活動に,指導の際の力の入れ加減をどのようにするかは,こどもの興味と必要を感じている度合や,これまでの経験,こどもの発達,単元の含む指導目標によって異なってくる。
(1) 指導にじゅうぶん力を入れなければならない学習活動
b.こどもにとって,新しい経験である場合
c.単元の学習進行の必要上,特に力を入れて指導する必要が生じた場合
生物を愛育する態度がふじゅうぶんである等
これと同様なことは,個人についても考えるべきことである。
温度計の読み方を指導したあとで,最高最低の寒暖計の扱い方を指導する場合
単元の指導では,その内容となる学習活動の一つ一つについて,このように力の入れ加減を考えることは,指導の能率をあげる上に,きわめて必要なことである。
5.問題解決のための学級の組織
(1) 各自でやったほうが効果のある場合
ⅰ.協力する態度を養う場合
ⅱ.手分けしたほうが問題が解決しやすい場合
一つの問題を分けて,分担解決するとき
そうでないと,グループごとにその研究結果を発表し合うとき,他のグループの発表は自分たちに関係のないこととして聞く誤に陥ることになる。
持久力の近いこどものグループ,問題をつかむ能力の近いこどものグループ。
b.グループ内の仕事の分担
グループ内でめいめいが分担している仕事の種類は,時によって取り替え,めいめいがかたよらない学習をするように調節することが必要である。
c.グループの人数
グループの人数をきめる場合には,次の点を考える。
ⅰ.こどもの社会性の発達(第2章 こどもの発達 参照)
ⅱ.学習活動の種類(Ⅳ 理料の学習活動とその指導 参照)
ⅲ.学校の施設・材料(第7章 参照)
普通4〜5人,10人ぐらいまでできる。「お店屋さんごっこ」のときには,1軒の店を分担するグループの人数は2〜3人が適当である。野外学習のときは,花たばを作る場合には2〜3人,石を集める場合には,石をめいめいで自分の袋に入れるにしても,ともに行動するグループの人数は,やはり2〜3人が適当である。
高学年では,実験・製作・材料集め・見学・訪問等多くの場合,グループの人数は4〜6人が適当である。
このように,グループの人数は,こどもの社会性の発達と,学習活動の種類とをともに考えて,適当な人数を決めることが望ましい。
この二つの学習は,一応は別の形式の学習方法であるが,実際こどもを指導する場合には,この二つをまったく別のものとして切り離して行わないで,場合場合に応じて,二つの学習の形式を組み合わせると効果がある,たとえば,めいめいの学習からグループの学習にはいり,あるいはグループの学習の中間にめいめいの学習かはいるようにする。
Ⅲ.理科の学習指導法
1.学習指導の過程
(1) こどもが,うさぎを手に入れて,それをこれから学級で飼育していこうと相談がまとまった。そこで問題になったのは,どのようにして飼うかということであった。このうさぎの飼い方について話し合っているうちに,どのような飼育箱がよいのか,どのようなものをどれだけ食べさせたらよいのか,手入はどのようにしたらよいのか,以上の三つの問題を解決すればよいということになった。
(2) 次にみんなで,これらの問題をどのようにして解決できるかを考えた。すでにうさぎを飼育したことのあるこどもは,これまでの経験を思い起して,いろいろの意見を出した。これまで経験したことのないこどもは,農家を訪問して調べようとか,教科書に書いてあるから,それを読もうとか,うさぎの飼育について書いてある本を探して読んでみようなど,解決の方法をいろいろ考えた。そうしてめいめいの好みに合い,自分にできる方法によって分担し,研究を始めることになった。
(3) あるこどもは本を読んで調べた。あるこどもは農家を訪れ,飼育しているところを見せてもらったり,農夫の話を聞いたりした。またあるこどもは,上級生に聞いたり,両親に聞いたりした。
(4) こうして調べた事がらについて,みんなで話し合った。そのときに農家での調べはまだじゅうぶんではないことがわかったけれども,いちおうそれらの結果をまとめて結論を出した。
(5) こどもはこれらの結論に基いて,飼育箱を作ったり,食べ物を用意してこれを与えたり,手入れをしたりする仕事にとりかかった。
さて,うさぎを飼いたいというこどもの要求に基いて進められた,これまでの学習およびその指導の過程を要約してみると,おのずから次のような五つの段階に分けられる。
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1.
2. 3. 4. 5. |
学習すべき問題をはっきりとつかむ。
問題を解決するために計画をたてる。 計画に基いて,研究や作業を続ける。 研究や作業の結果をまとめる。 まとめた結果を活用し応用してみる。 |
計 画 の 段 階 研 究 の 段 階 整 理 の 段 階 活 用 の 段 階 |
こどもたちがうさぎを飼う仕事にとりかかり,その仕事を続けていく間に,うさぎに有害な食物はどのようなものか,食物と成長との関係はどうか,木のようなかたいものをかじることのあるのはなぜか,どのようにして運動するかなどの疑問が,次々に起り,その度に問題が構成され,解決のための活動が展開されることであろう。このときの指導の過程はふたたび上表の1〜5の順序をふむのが一般である。
このような指導の過程は,問題解決を目ざして行われる指導の特徴であるから,上に示したものよりも大きな問題を解決する活動の中においても,あるいは,もっと小さな問題を解決する学習の中においても,同じような過程をたどるということかできる。
たとえば,一つの実験をする場合を考えてみると,まずこのような段階をふんで,仮の結論を得る。この結論を問題解決に適用してみて,さらに実験をやり直す学習にはいる。このときには,また最初の段階から学習がくり返され,ほんとうの結論を得ることになる。このようにいくたびかこの学習の順序がくり返されながら進んで,ついに単元の学習を終ることになるのが普通である。
次に,こどもの学習の順序と,それに沿って進められる指導の過程の関係をわかりよくするために,表に示してみる。
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1.問題をつ
かむ
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・生徒や級友と話し合う。
・教科書や参考書を読む。 ・映画・幻燈などを見る。 ・話を聞く。 ・見学する。
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1.指導の段階
・指導前の調査をする。 ・経験を思い出させる。 ・本の選択・話合いなど の学習活動をたすけ, 問題をつかませる。 ・こどもが,どの程度は っきり問題をつかんだ かを知る。 |
2.計画をた
てる
|
・結果の予想について話し合
う。 ・問題を分析する。 ・研究の範囲をきめる。 ・遊び・研究・作業の方法につ いて考えたり話し合ったりす る。 ・教科書や参考書を読んで,解 決のいとぐちをつかむ。 ・研究や作業の順序や方法をノ ートにかく。 ・必要な用具や資料を整える。 ・仕事の分担をきめたり,グル ープを作ったりする。
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2.計画の段階
・結果を予想させる。 ・問題を分析させる。 ・解決の方法を考えさせ る。 ・必要な用具の集め方や 使い方の指導をする。 ・仕事の分担をきめる世 話や,グループを作る 世話をする。 ・こどもの行動を観察 し,こどもの計画をた てるための諸能力の程 度をつかみ,クラスあ るいは個人の指導の適 正をはかる。 |
3.研究や作
業をつづけ る |
・遊びの活動をする。
・観察をする。 ・継続的に観察する。 ・実験をする。 ・友だちや先生の実験を見る。 ・飼育をする。 ・栽培をする。 ・実験や観察の結果を記録す る。 ・調査や採集をする。 ・見学をする。 ・絵にかいたり,工作したりす る。 ・表やグラフを作る。 ・映画や幻燈を見る。 ・画や写真・掛図・図表などを 見る。 ・標本を見る。 ・模型を扱って調べる。 ・教科書や参考書を読む。 ・人の意見を聞く。 ・問題に答える。
|
3.研究の段階
・個別・班別・組全体の び方について世話を する。 ・個別・班別・組全体の 研究や作業について世 話をする。 ・こどもの興味が継続す るよう留意する。 ・環境をこどもの学習に 最も適するように整え る。 ・こどもの行動を詳しく 観察し,目標に照らし て,たえず指導の方法 を評価し,よりよい方 法をあみだすようにす る。 ・個々のこどもの指導に 意を用いる。 ・研究や作業に使った物 のあとかたづけを指導 する。 |
4.結果をま
とめる |
・まとめ方・研究や作業の結果・
学習過程の反省などに関する 話し合いをする。 ・遊んだこと,見学したことな どを文にかいたり,絵にかい たりする。 ・報告書を作る。 ・発表したり,作品を展示した りする。 ・発表を聞いたり,作品を見た りして,質疑応答・批評など をする。 ・さらに研究すべき問題を明ら かにする。 |
4.整理の段階
・遊びや研究のまとめ方 を指導する。 ・まとめのための絵や文 のかき方,報告書の書 き方などを指導する。 ・発表や展示の方法につ いて指導する。 ・発表の聞き方,展示し たものの見方,質疑応 答や批評のしかたを指 導する。 ・指導の目標に照して整 理のしかたを評価する ・こどもの行動を細かく 観察し,これに基いて 指導法の適正をはかる |
5.活用応用
する
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・まとめた結果に基いて,試み
たり,日常生活に活用してみ たりする。 ・問題に答え,学習したことが 身についたかを自己評価す る。 |
5.活用の段階
・テストをする。 ・テストの結果や,こど もの行動観察の記録の 結果をまとめ,指導の 過程を反省する。 ・次の学習への発展を助 ける。 |
〔注意〕
b.この表に示す学習活動が,ある単元の学習の時期に全部行われるというのではない。単元の問題を解決するにふさわしい学習活動として,一般にどのようなものがあるかを示したにすぎない。
次に各段階における指導について,もう少し詳しく述べてみよう。
(1) 導きの段階
この段階の目的は,単元の問題についてこどもの興味を導き,しだいにその問題をはっきりつかませるとともに,学習する意欲を盛んにすることにある。そのためには,話合いや,参考書・教科書を読むことや,映画・幻燈を見ることや,遠足や見学をすることなどの手段が用いられる。
したがって,模型・標本・実物・写真・図表等の陳列,参考書・雑誌・新聞などの準備が必要になる。
殊に話合いは,教師にとって,こどもがどのようなことに興味をもち,どの程度に問題をつかんでいるかを知るとともに,それを手がかりとしてこれから後の展開の方法を考えるのには,まことによい手段である。
これらの問題をつかむ手がかりは,新聞記事・ラジオニュース・時の話題・行事などの社会事象からの場合もあり,大水・火災・地震・伝染病・停電・断水などの偶発的な事象からの場合もあり,また,こどもの生活の直接の経験からの場合もある。
問題をつかみ,その解決に興味なり,必要感を起すときには,こどものこれまでの経験の深いもの,浅いもの,興味をすでにもっているもの,あまり興味のないものによって,指導に手心を加えることが必要である。
たとえば,低学年で「ままごとあそび」をする場合は,こどものだれでもが興味をもっているものであるから,特別苦労しなくてもとびついてやる。それで,この場合は,あまり時間をかけなくてもよい。しかし,学年がのぼるに従って,こどもの経験にも差ができ,興味もいろいろ分れてくるとともに,社会性も発達してくるので,指導にも趣向をこらし,時間をかけることが必要になってくる。
学習する事がらに必要を感じ,興味を起すということは,問題をはっきりとつかみ,これを解決する必要と興味をいうのであって,先生にほめられるとか,点数をもらうとか,試験に出るということのための必要や興味をいうのではない。
特に,教師の意図をこどもにおしつけるようなことがたびかさなると,こどもは常に命令を待って,はじめて行動を起すようになり,自発的な研究態度を養うことはできない。こどもたちの個々の興味や関心・能力などに目をとめて,それぞれのこどもに適した指導をすることがたいせつである。
(2) 計画の段階
問題がはっきりとらえられてから,その問題をどのように解決していくかの計画をたてることが,この段階の目的である。
普通は導きにつづいて話合いが続けられ,解決の方法・順序が定められていく場合が多いが,それとともに,教科書を読んだり,幻燈や映画を見たり,教師の話を聞いたり,教師の実験を見たりするような手段も併用される。
話合いが進められるにつれて,問題の輪廓もだんだんはっきりし,研究の方法が次々に定められていく。ときには,いくつかの小さい問題に分けられ,グループの研究に移すような計画がたてられたり,また,必要な資料を,みんなで集めたりするような計画がたてられたりすることもある。
このような計画をたてるいとなみは,いま自分が解決しようとしてたてた計画に従えば,どのような結果になるかを予想することによって,興味深く,また解決に最もふさわしい計画がきめられる。したがって,教師は,こどもの計画をたてる話合いを,いつもこの結果の見通しをもとにして行われるように指導することが必要である。
予想をもたない試みは,むだ骨おりになりがちである。結果の予想をたてることによって,むだなく,解決の目的に向う学習を発展させることができる。そのためには,まず問題の本質や内容に類似していると思われる過去の経験に照し合わせて,あれこれと結果を予想すべきである。また参考資料によって調べる必要も起るであろう。こうした経験なり,資料なりによって,はじめて,たぶんこうであろう,こうすればよいであろうという予想がつくようになってくる。
この結果を予想して学習を進めていくということは,次の研究の段階においても重要なことである。たとえば,実験をするときを考えてみると,自然の状態では,はっきりと事実を確かめられない場合に,結果を予想することによって,はじめて,特定の状態のもとでそれを観察し,調べていくことができるのである。
(3) 研究の段階
問題がきまり,解決の方法について計画がたつならば,その計画に基いて,こどもが力強く研究や作業を続けて,学習の目的を達することのできるように導くのが,この段階の目的である。
ここでは,表に示したような多彩な活動をとり入れ,こどもが納得できるまで研究するように指導することか望ましい。教師が,自分で考えたコースをこどもに押しつけるとか,また,ひとりのこどもの考え出したコースでしばるというようなことは,学習の発展を妨げることになるから,注意しなければならない。
この段階でとりいれられる学習活動は,低学年と高学年とでは,おのずから差異がある。自他がまだはっきり分化していない,しかも変化を好み,活動的な低学年のこどもでは,遊びの形態をとり入れ,遊びの間に指導目標にかなう楽しい経験を積んでいくようにはかるべきである。しかし,高学年に進むに従い,注意の集中も可能になり,思考も分化し,やや精密な器械を扱う能力や,継続的に仕事をする能力や,読書の能力などが発達するから,それにつれて,討議(話合い)や見学や,実験や,継続観察や,記録や,工作などの活動を多彩におりこむことができるようになる。その上,自主的な態度もしだいに伸びてくるから,それらの活動の指導も,できるだけこどもの自発性を伸ばすように行うことが望ましい。
この段階は,教師にとって個々のこどもの能力に応じた指導をする最もよい機会である。考える能力や技術的な能力や,そのほかのいろいろな能力について,おくれているものについてはその原因を確かめ,それに対する指導に力を注ぐとともに,進んでいるこどもに対しても,研究を興味深く推し進めることのできるよう指導を忘れてはならない。
なお,研究や作業がうまく進行するためには,こどものつきあたるいろいろな障碍を取り除いて,学習の興味を持続させることに,教師は特に力を入れなければならない。また実験や観察に必要であると思われる資料・材料・用具を準備しておくとか,掛図や図表を教室に掲げるとか,適当な参考書を用意するとか,質問に対しいつでも答えられるよう素材について研究をしておくことなどは,こどもの研究の活動を,有効にしかも力強く進める上にきわめてたいせつなことである。
教科書は,この段階では随時活用されるようにしなければならない。実験の方法に行きづまったとき,技術について不明な点があったときなど,教科書はよい手びきとなるであろう。しかし,教科書を教師がよんで,それで終るようなことがあってはならない。
(4) 整理の段階
これまでに研究や作業を続けてきたことをまとめるのが,この段階の目的である。
低学年では,遊んだり観察したりしたことを話し合ったり,作品を展示したり,ときには絵や文にかいたり,歌をうたったり,劇にしくんだりしてまとめるようなことが多い。
高学年に進むに従って,研究の結果を整理して報告書を作ったり,図や表にまとめたりすることができるようになる。研究によってわかったことをもとにして劇を創作したり,紙しばいに作ったり,絵巻物を作ったりするのもよく,また観察したことや見学したことを文章にまとめるのもおもしろい。グループで行った研究は,まとまるに従って,教室の壁にはったり,机の上に陳列したりしていくのもおもしろい。
整理ができたら,発表をする。発表の方法には,口頭でする場合もあり,図や絵を掲げて説明をしたり,展示や陳列をしたりする場合もある。いずれにしても,教師や級友や父兄に聞いてもらったり,見てもらったりして,批評を受けるような機会を作るべきである。
ここで注意することは,とりあげた問題が,全部こどもが満足するところまで解決されるとは限らないことである。それで,じゅうぶん納得するところまで到達し得なかった問題は,それを明らかにして,将来の研究にまつようにすることが必要である。
(5) 活用の段階
研究の結果得られたことをもとにして,さらに実生活への応用・活用に心がけるのがこの段階の目的である。
この活用によって理解をさらに確かにすることもでき,また,新しい問題をつかみ,学習の発展を助けることもできるし,また活用応用によって,こども自身が学習の過程を反省し,学習の方法を改善するいとぐちができるのである。
この段階でとりあげられる学習活動には,次のようなものがある。
(b) 練習問題に答え,理解が確実かどうかをためしてみる。
(c) どのような新しい問題があるかを考える。
この段階では学習がひととおり終っているのであるから,教師は次のような事がらについて観察や調査をまとめ,学習指導反省の資料にしなければならない。
(a) 活用によって,理解がどれだけ確実となり,能力や態度がどれほど伸びたかを見る。
(b) これまでの観察記録をまとめ,指導法を反省する。
(c) 新しい問題のうち,どれがとりあげる価値のあるものか,また,その指導をどうすればよいかを考える。
2.学習指導全過程を通じての指導上の留意点
学習指導過程の五つの段階,すなわち導き・計画・研究・整理・活用のそれぞれの段階について,指導上の留意点を1で詳しく説明した。しかし,これらの段階の指導が成功するためには,こどもが問題を解決できるまで興味をもちつづけなければならないし,また,解決のための活動が力強く進められるためには,こどものおかれた環境に目をとめて,それを学習に最もよい環境にすることにも留意しなければならない。また,こどもが観察や実験や製作などを行っている間に,こどもをよく観察し,これをもとにして指導法を評価し,最もこどもに適した指導法をくふうし,指導にあたることもたいせつなことである。
これらは,どの段階にも通ずる指導上の留意点であるから,次に詳しく述べることにする。
(1) 学習興味の持続をはかること
学習の過程で,学習することに興味を失い,それ以上学習を続けるのがいやになることがある。その原因をさぐってみると,非常にむずかしいことにつき当ったとか,危険を感じたとか,資料や道具が足りなくて,仕事ができないとか,あるいはまた,グループを作っているめいめいが争うとか,力の強いものに遠慮するなど,いろいろある。
これらは,学習の進行をはばむ大ききな障碍であるから,教師はたえずこどもの行動を注意深く観察し,このような障碍を取り除いてやるように導き学習の興味を最後まで持続するようにすることがたいせつである。
(2) 常に指導法の適正をはかること
こどもの学習がうまく進行しない他の原因として,教師の指導が適切でない場合をあげることができる。こどもが必要を感じていないのに,無理に研究をしいたり,学習の計画がじゅうぶんたっていないうちに,次の仕事を導いたりすると,こどもは進んで学習することなく,一つ一つ教師のさしずに従うようになる。
また,この逆に,こどもが興味にのって,熱心に学習を発展させている場合には,教師がそれにつりこまれてしまうと,重点がどこにあるかわからないような学習をしていたり,指導目標になんらかかわりのない学習活動へ脱線している場合も,ありがちのことである。
そこで,教師は,こどもがはたして指導目標にかなった活動をしているのであろうか,また,指導に無理がないだろうかなどについて,こどもの行動を常に注意深く観察し,指導法を評価し,指導法の改善にたえず努力しなければならない。
(3) 個人差に応じた指導を心がけること
こどもの興味・能力・活動の傾向・性格などには,個人的な差異があるから,指導にあたっては,個人個人の傾向をしっかりつかみ,個人差に応じた指導を行わなければならない。
たとえば,グループの編成にあたって,統率力のあるこどもに,仕事のうまいこどもを配するとか,仕事の早くできそうな個人またはグループに別な仕事を与えるようにするとか,個人個人の活動の型から考えて,なるべく多様の学習活動を導くようにするなど,いろいろなくふうがあるであろう。
また,おくれているこどもには,おくれている原因を確かめて,そのこどもに合った学習活動を選ぶ。また,進んでいるこどもには,他の問題を与えて,いっそう理解を確実にすることが適当な場合もあるが,このようなこどもを足ぶみさせて,興味を失わないようにくふうすることがたいせつである。
(4) 環境を学習に最も適するように整えること
ある単元の学習をこどもが行っているとき,教室や廊下に,その単元の学習に関係のある図表や写真などをはったり,学習の進行に従って,次々にできていく成績品を展示・陳列をすると,学習の興味はますます高まり,力強い学習が行われる。
このように,単元の学習を進めるには,環境をどのように整えたらよいかを絶えずくふうすることは,問題の発見や,学習の興味の喚起や持続,学習の進行にきわめて深い関係があるから,教師は,教室ならびに教室外の環境整備に,不断の関心を払わなければならない。
(5) 社会性を活用すること
学級を作っている個々のこどもは,互に影響し合って,学級の個性を形作っている。研究や作業も,このような学級社会の中の活動にほかならないのであるから,個人またはあるグループで,よい思いつきをしたこどもや,協力の態度のしっかりしたこどもや,実験技術のうまいこどもをほめたり,激励してやったりすると,その賞賛や激励が,他のこどもまたはグループにも,ひびいて研究意欲はますます盛んになり,研究方法にも示唆を与えることとなり,教室全体が明るく活動的になってくる。
また,一つの問題についても,学級全体の問題としたり,グループの研究に移したり,個人の研究に移したりするとか,個人の研究でも学級全体のこどもに報告させ,質疑応答・批評を行わせるなど,学級の民主的組織の活動を推し進めるようにすると,共同・責任・寛容などの影響によって,科学的な能力や態度も,しだいに伸びてくるのである。
もし学級のこどもたちの間で,成績の点数を争うようなことを奨励すると,学級の空気も級友の成功を喜ばす,級友をおとしいれるというような,暗いものとなるから注意しなければならない。
(6) 家庭との連絡をはかること
学習したことが身についたかどうかは,学校生活ばかりではわからない。こどもの活動の場は,広く学校・家庭・地域社会全般にわたるのであるから,教師は,学習指導にあたって,努めて家庭と連絡をとり,こどもがどのような生活をしているか,いま行っている学習指導の結果が,家庭生活にどのように現われているかを調べ,指導法をくふうする場合の参考とするようにすべきである。
Ⅳ.理科の学習活動とその指導
理科の学習活動のおもなものをあげると、次のようなものがある。
2.実 験 9.読 書
3.製作および操作 10.映画・幻燈・放送等の利用
4.飼育および栽培 11.話合い
5.材料集め 12.報 告
6.野外学習 13.遊 び(低学年)
7.見 学 14.デモンストレーション
次ぎに,上にあげた学習活動のおのおのについて,その意義・適用・指導方法,その他の注意事項をあげてみる。
(1) 観 察
ⅰ.物事を観察することにより,興味も関心も深くなる。
ⅱ.問題をつかむことができる。
ⅲ.問題を解決することができる。
ⅳ.観察することにより,事実をありのままに見る能力や態度が養われる。
ⅴ.事実を尊重する態度が養われる。
ⅵ.実証的な態度が養われる。
ⅶ.自然の調和や恵みを知ることができる。
b.適 用
ⅰ.主として問題解決の方法として,重要な位置を占めるものである。
ⅱ.導入の段階で,問題を見つけるために用いる。
c.方 法
観察は事実をありのままに見るのでなければいけない。問題解決に役にたつ程度に,詳しく見ることがたいせつである。
ⅰ.観察する動機を与える。
ⅱ.どのような目的で観察するかを,はっきりさせる。
ⅲ.何を観察するか。問題解決のためには,何を観察すればよいかを,はっきりさせる。
ⅳ.どこで観察するかをきめる。
ⅴ.どのような方法で観察するかをきめる。
観察に使う器具の正しい取扱方,使用法について指導する。
記録・スケッチの指導をする。
ⅰ.長期にわたる変化を,はっきりつかむことができる。
ⅱ.持久的態度が養われる。
ⅲ.記録の能力が高められる。
ⅳ.他人と協力する態度が養われる。
ⅴ.生物愛育の態度が養われる。
b.適 用
長期間観察しなければ結果の出ない場合に適用する。
たとえば,栽培・飼育・気象・天体の観察など
c.方 法
長期間継続するのに必要な計画を,しっかりたてる。
ⅰ.記録のしかたは,前の記録と関連をもったものにし,変化したことを落さないで書くようにする。
ⅱ.運営のしかたをきめ,特に生物の栽培・飼育の場合は,休みの日の管理を怠らないようにする。
ⅰ.自然の状態では,はっきり原因がわからない場合,特定の条件のもとで事実を観察し,原因をつきとめることができる。
ⅱ.科学の原理を実験によって,はっきり理解することができる。
ⅲ.科学を日常生活に応用する習慣ができる。
ⅳ.仮の結論を実験で確かめることにより,実証的な態度を養うことができる。
ⅴ.計画をたて,それに従って行動する態度ができる。
ⅵ.注意深く正確に行動する,態度が養われる。
ⅶ.科学的操作をする能力を養うことができる。
b.適 用
ⅰ.問題解決の一つの方法として,自然の状態では,はっきりと事実を確かめられないときに,特定の状態のもとに観察する場合
ⅱ.科学の原理の理解を助ける場合
c.方 法
ⅰ.実験の目的を,はっきりつかむ。
ⅱ.実験の計画を,しっかりとたてる。
計画の中に危険なことはないか検討する。
(b) 助言を与える。
(c) 正しく操作するように,器械・器具の取扱を指導する。
(d) 正しく観察し,その結果を記録する。
(備考)
ⅰ.こどもが直接やれないほどむずかしい実験は,教師が行って,こどもに問題をもたせたり,問題解決に役だたせたりすることができる。
ⅱ.危険を伴う実験は教師もやって見せないほうがよい。
ⅲ.問題解決のための実験は,こども自身がやることに主要な意味がある。教師がこどもにかわって実験を行って見せることは,できるだけ避けるほうがよい。
ⅳ.設備・材料が少なくて,こども自身ができない場合には,他の実験を行うか,他の学習活動を選ぶべきであろう。
ⅰ.機械や器具を製作(あるいは分解・組立)したり,操作したりすることによって,その構造や機械を理解することができる。
ⅱ.操作によって,科学が生活に役だつことを理解する。
ⅲ.製作したり,操作したりする過程で,問題をつかむことができる。
ⅳ.製作や操作の過程で,次の能力や態度が養われる。
(b) 原理を応用する。 (g) 計画に従って仕事をする。
(c) 設計図をかく。 (h) 根気よく仕事をする。
設計図を理解する。 (i) 協力して仕事をする。
(d) 材料を集める。 (j) くふうする。
材料を使う。 (k) 科学を尊重する。
(e)道具や機械を使う。 (l) 科学を日常生活に応用する。
ⅰ.機械や器具の構造や機能を理解する場合
ⅱ.観察・実験・飼育・栽培の用具等をつくる場合
ⅲ.機械や器具の使い方になれる場合
c.方 法
ⅰ.製作や操作の目的を,はっきりつかむ。
ⅱ.計画をたてる。
ⅲ.設計図をつくる。(構造を調べる)
ⅳ.材料・工具を集める。
ⅴ.材料の性質,工具の使い方を研究する。(操作の順序を研究する)
ⅵ.安全について注意する。
ⅶ.製作(あるいは分解・組立)や操作をする。
ⅷ.できばえや扱い方について批評する。
ⅰ.栽培や飼育を行っている間に,いろいろな疑問をもち,解決の必要感に迫られた問題を構成することができる。
ⅱ.観察・実験・報告・製作などの多彩な活動と,自然に,有機的に結びついて営まれるので,生産技術を総合的に身につけることができる。
ⅲ.動物や植物の成長,適応などに関する問題を解決し,理解を身につけることができる。
ⅳ.生命の尊さを知り,生物を愛育する態度が身につく。
ⅴ.自然の調和や恵みを感得する態度が身についてくる。
b.適 用
ⅰ.生物の成長や適応に関する問題をつかむ必要のある場合
ⅱ.生物の成長・適応などに関する問題を解決する必要のある場合
ⅰ.の場合
うさぎが手にはいり,飼って世話しようと飼育を始めた。世話をしているうちに成長の問題をつかむことを予想した場合
ⅱ.の場合
あおむしをとって,それがどのように成長して,もんしろちようになるかを調べる必要が起った場合
ⅰ.飼育する動物や栽培する植物をきめて,飼育や栽培の目的をはっきりつかむ。
(a) 成長を楽しむために,うさぎを飼う。
(b) 成長の順序を調べるために,おたまじゃくしを飼う。
(b) 飼育または栽培する場所や,器具について話し合ってきめる。
(c) 世話の仕方について話し合う。
飼料の入手方法,給餌の方法,変ったことのあったときの処置観察の要点など
② 栽培については
種のまき方・植えかえの方法・肥料の施し方・その他の手入れのしかた・観察の要点・変ったことのあったときの処置など
(e) 世話をする当番をきめたり,仕事を分担するためにグループに分けたりする。
(b) 飼育日誌や栽培日誌をつけ,その日の様子をみんなに報告する。
(c) 変ったことのあったとき,みんなでこれを考え,処理する。
(d) 時々みんなで観察したり,世話のしかたを反省したりする。
(b) 飼育や栽培をしたことが,ほんとうに問題解決に役だったか,また役だてるように努力したかなどを反省する。
ⅰ.問題解決のための資料・観察・実験・製作等の材料の必要なことがわかる。
ⅱ.計画をたてて仕事をする場合,必要な材料を整えておく能力が養われる。
ⅲ.問題解決のために,身近の材料を利用する態度が養われる。
b.適 用
問題解決のための資料・観察・実験・製作等の材料を得る場合
c.方 法
ⅰ.資料・材料を使う目的をはっきりする。
ⅱ.どこで集めるかを決める。
家庭・学校内・近くの学校・図書館・野外市場等
ⅲ.どのようにして集めるかを決める。
買出し・採集・借用等
ⅴ.集めた資料・材料を整理・整とんする。
ⅵ.集めた資料・材料を目的のために使う。
ⅶ.使った材料の使用の後始末をする。
ⅰ.野外のありのままの姿がわかる。
ⅱ.自然に親しむ態度が養われる。
ⅲ.自然の調和・美しさ・偉大さ・恩恵を知ることができる。
ⅳ.問題を見いだすことができる。
ⅴ.もっている問題を解決することができる。
b.適 用
導入の段階で問題をつかむときや,問題解決に用いる。
c.方 法
教師は事前に現場の予備調査,輪送の交渉,保護者との連絡をすます。
ⅰ.目標をはっきりする。導入の場合であれば問題をつかむようにする。
ⅱ.どこへ行くかきめる。
ⅲ.身じたくや,もっていくものをきめたり,整えたりする。
ⅳ.現場での行動について約束し(個人行動・団体行動等),危険防止について考える。
ⅴ.目的地で学習する。
ⅵ.整理する。
ⅰ.現場におけるありのままの姿がわかる。
ⅱ.問題をつかむ機会となる。
ⅲ.問題を解決することができる。
ⅳ.研究心が盛んになる。
ⅴ.見聞をひろめることができる。
ⅵ.専門家に意見を聞く態度が養われる。
ⅶ.科学作品に興味をもつ。
ⅷ.科学者の仕事の尊さを知るよい機会となる。
b.適 用
学校で経験することのできない生きた社会の事物(施設・設備),現象に触れる場合に用いる。
c.方 法
教師は,見学地の選定,見学地で利用できるもの。危険物・危険な場所・その他について予備調査をする。また,見学の交渉,輸送方法の交渉をしたり,保護者の承諾を得ておく。
ⅰ.見学の必要を感じ,目的をしっかりつかむ。
ⅱ.見学の計画をしっかりたてる。
見学の現場で疑問をもったら,質問させるようにする。
ⅴ.見学したことをまとめる。
ⅰ.問題解決の資料を得ることができる。
ⅱ.科学的研究のおもしろさを感得する。
ⅲ.専門家に意見を聞く態度が養われる。
ⅳ.資料を集める能力が高められる。
ⅴ.科学者の仕事の尊さを知ることができる。
b.適 用
教師は,どのような専門家がいるかを調査し,訪問の日時・目的などについて打合せをしておく。
ⅰ.訪問の目的をはっきりつかむ。
ⅱ.訪問先をきめる。
ⅲ.訪問上の注意をする。(作法・質問のしかた・メモの取り方など)
ⅳ.訪問する。
ⅴ.聞いたことをまとめる。
ⅰ.科学の原理を理解することができる。
ⅱ.科学的知織をうることができる。
ⅲ.問題をつかむことができる。
ⅳ.問題解決の方法や,観察・実験・製作などの手がかりをうることができる。
ⅴ.読書する能力を養うことができる。
ⅵ.科学に対する興味および研究心を高めることができる。
ⅶ.科学の尊さを知ることができる。
b.適 用
ⅰ.問題をつかむ場合
ⅱ.問題解決の方法や,観察・実験・製作などの方法をきめるとき参考に使う。
ⅲ.こどもが直接に観察・実験・製作などができないとき,本によって問題解決をする場含
ⅳ.科学的知識を得たり,疑問の解決をしたりする場合
ⅴ.仮の結論を修正する場合
c.方 法
図書の充実をはかり,どんな本があるか予備調査をしておく。経営のしかたをこどもの利用しやすいようにする。
図書館の利用の方法を指導する。
ⅱ.どんな本の,どの部分を読めばよいかを決める。
ⅲ.どのように読んだらよいかを決める。
わからないところを質問する。
ⅰ.多くの人の共通の問題を解決するのに効果がある。
ⅱ.直接,視聴覚に訴えるために,こどもの注意を集中し,興味を深くする。
ⅲ.問題をつかむことができる。
ⅳ.科学的な説明をらくに理解することができる。
(b) 自然現象の時間を伸ばしたり,縮めたりする。
(c) 自然現象の起る順序を変える。
b.適 用
ⅰ.問題をつかむ場合
ⅱ.見学や野外観察をする前に,そのいく所はどんなところか,またどんな観察ができるか等の予備指導をする場合
ⅲ.問題解決の有効な手段として使う。
ⅳ.整理のため使う。(単元のまとめ,観察・実験のまとめ等)
ⅴ.発表の方法として使う。
c.方 法
問題解決のために,どのような視聴覚教具を使ったら有効かを決める。
ⅰ.見たり聞いたりする目的をはっきりする。
ⅱ.見たり聞いたりする要点をはっきりつかむ。
ⅲ.見る。聞く。
ⅴ.問題解決に役だつようにまとめる。
ⅰ.学習に社会性をもたせる。
ⅲ.気がつかなかった点,自分の考えのまちがっていた点について,よいヒントを得る。
ⅳ.独善でない結論を得ることができる。
ⅴ.発表のしかたがじょうずになる。特に,根拠に基いて話し合う態度が養われる。
b.適 用
ⅰ.問題をつかむ場合
ⅱ.問題解決のしかたを決める場合
ⅲ.観察・実験などをまとめて結論を出す場合
ⅳ.報告・発表の内容を検討する場合
c.方 法
ⅰ.話合いの目的をつかむ。
ⅱ.話合いの形式を決める。
短時間に要領よく話す。
人の話をよく聞く。
全員が話すようにする。
ⅵ.結論を出す。
ⅰ.研究や作業にまとまりをつけ,理解を確実にすることができる。
ⅱ.評価をするよい機会となる。
ⅲ.報告を聞くことによって啓発されたり,理解を深めたりする。
ⅳ.次のような能力を養うことができる。
(b) 事実から推論する。
(c) 資料を使う。
ⅰ.研究作業にまとまりをつける場合
ⅱ.個人やグループの研究を他のものに知らせる場合
c.方 法
ⅰ.報告の必要と興味をもたせる。
ⅱ.報告のしかたを決める。
(b) 形式——発表会・展覧会・掲示等
ⅳ.報告をする。
ⅴ.報告事項について話合いをする。質問する。
ⅵ.批評する。(評価)
ⅰ.遊びの興味は深く,この興味を満足しようとする強い要求をもとにして,問題解決が自然に行われる。
ⅱ.製作・観察・読書などの活動が自然に取り入れられ,理解と能力とを総合的に身につけることができる。
ⅲ.科学的なものの考え方や,これまで学習したことがどのように役だつかを知ることができる。
b.適 用
ⅰ.主客未分化の低学年で,理解・能力・態度を総合的に身につける必要のある場合
ⅱ.その遊びが,いろいろな活動を含み,指導目標にかない,こどもが興味をもって希望するものであった場合
c.方 法
ⅰ.遊びの目的をはっきりつかむ。
ⅱ.遊びの計画をたてる。
(b) 遊びに必要な道具について話合いをして決める。
(c) グループに分ける。
(d) 必要な道具を用意する。
(b) 必要に応じて,個人またはグループごとに,あるいは全部を集めて遊びの方法について指導する。
(c) よい遊び方を行っているものがあったら,ほかのグループまたは個人に知らせてやる。
(b) 絵日記にかいたり,絵にかいたりする。
(c) 道具の後仕末をする。
ⅰ.自分たちの意見や理解した事がらを多くの人に問い,意見を修正したり,理解を確実にしたりすることができる。
ⅱ.これまでのいろいろな経験をまとめ,体系化することができる。
ⅲ.研究の結果を互に知らせ合うことから,総合的な理解が得られる。
ⅳ.進んだ科学の研究が,多くの人の協力によって行われることが理解できる。
ⅴ.デモンストレーションによって,次のような能力や態度が養われる。
(b) 批判的な態度 (g) 総合的に判断する能力
(c) 計画的に行動する態度 (h) 資料・材料を集め活用する能力
(d) 余暇を利用する態度 (i) 整理整とんする能力
(e) 問題をつかむ能力 (j) 記録・図表を作る能力
ⅰ.グループやクラス全体の研究をまとめ,これを発表する場合
ⅱ.広く研究のための資料を集め,これをクラス全体の問題解決に活用する場合
ⅲ.学芸会・こども会その他の集合に,研究や実験などの展覧や公開をする場合
ⅳ.研究の結論の正否をクラス全体のこどもに問い,その問題に関心をもたせるとともに,できるだけ多くのこどもに理解をもたせる。
c.方 法
ⅰ.デモンストレーションの目的をはっきりとつかむ。
ⅱ.計画をしっかりたてる。
(b) デモンストレーションの方法
(d) 準 備
ⅳ.デモンストレーションを行う。
(b) いろいろな意見のうちどれをとりあげ,またどのようなことを今後の問題としたらよいか。