Ⅰ 世界史の特殊目標
世界史の指導に当たっては,これが社会科の一科目であることに留意し,まず社会科一般目標をできるだけ達成することを目ざさなければならない。この場合,世界史として特に強調されるべき特殊目標は,次のようなものであることをあわせて考慮すれば,その指導計画および指導法は,いっそう適切になるであうう。
2.世界史の発展と動向とを,くりかえし理解することによって,歴史的思考力を訓練し,現代社会の諸問題を理性的に批判し,正確に判断する能力を養うこと。
3.世界史における時代概念を適確に理解することによって,現在社会の歴史的地位をはあくし、正しい社会観と,健康な常識とを育成すること。
4.世界における古典や名著に親しんで,その読解力をたかめ,また,文学・美術・音楽などの作品を通じて,芸術愛好の心情を養い,豊かな人間性を養うこと。
5.現代日本の世界史的地位を理解することにより,わが民族使命を自覚し,あわせて,個人の努力の価値をも認識すること。
6.調査・見学・研究等の実践を通じて,研究に対する誠実な態度と,資料を歴史的に整理する能力とを育て,討論・発表に必要な技能と,公民的素質とを養うこと。
Ⅱ 世界史各時代指導上の参考目標および参考内容
世界史の時代概念としては,いろいろな区分が考えられるが,ここでは一応,「近代以前の社会」と「近代以後の社会」の二大区分を採用することにした。
しかし,世界史の指導計画をたてるに当たっては,われわれが住んでいる現在の社会を生き生きと浮び上らせるために,下現代の社会」を別に抜き出した方が教育上有効であろう。
A.参考目標
「近代以前の社会」
2.近代以前の社会の遺制・遺産が,今日の社会にどのように残存しているかを理解し,これに対する正しい態度を育てること。
3.近代以前の社会の発展の普遍性と特殊性を理解すること。
4.近代以前における歴史的展開が,現在社会に対し,どんな意義をもっているかを理解すること。
5.文化の交渉の社会発展上における意義を理解し,外来文化に対する正しい態度を養うこと。
6.文化遺産を正しく評価する能力を育てること。
2.近代社会の本質を理解し,公民的態度を養うこと。
3.近代社会発展における普遍性と特殊性を理解すること。
4.ヨーロッパ社会の世界的発展を理解すること。
5.アジア社会の近代化の遅れた意義を理解し,民主主義への熱情をたかめること。
2.現在世界に起りつつある国際問題に対する歴史的理解により,世界平和と国際協力とを推進する態度を養うこと。
3.将来の世界史の方向ならびに日本の地位について考え,わが民族使命の自覚をたかめること。
「近代以前の社会」
1.原始社会の発展
a人類の出現
b原始生活の展開
c原始宗教の性格
d民族制度
e文明の発生
2.古代国家の形成
a古代オリエントの統一
bギリシアのポリス
cローマの世界帝国
dインドの統一国家
e中国の統一国家
f日本古代国家
3.古代文化とその特色
a文字の発達とその伝藩(ぱ)
b生活技術の向上
c古代芸術の性格
d古代法制と社会組織
e古代の思想と学問
4.西欧封建社会の成立と発展
a民族移動と諸王国の形成
b大土地所有制の発達と身分制の確立
c教会権力の拡大
d中世文化の特色
e中世都市の発達
f封建貴族の没落
5.アジアにおける専制国家の変遷
a王朝の交替
b武人政治の出現
c中国官人制の成立
d文化内容の変遷
e社会経済の発達
f農民の反抗
g専制政治の没落
h日本封建制の特色
6.民族と文化の接触交流
aヘレニズム
bシルクロード
c十字軍
d東方文化の西方伝播
e中日文化の交流
f征服王朝
7.宗教と生活文化
aキリスト教の発展
bイスラム教の拡大
c仏教の流伝
dヒンズー教の特色
e道教と民間信仰
aルネサンス
b宗教改革
c地理上の発見
d商業資本の発展
e科学の発達
2.絶対王制と市民革命
a絶対王制の成立
b植民地の成立
cイギリス革命
d啓蒙思想
eアメリカの独立
fフランス革命
3.産業革命とその影響
aイギリスの産業革命
b近代都市の発達
c交通機関の発達
d産業資本の発達
e労働問題の発生
f日常生活の向上
4.近代民主主義とその発展
aイギリス議会政治の発達
bフランス共和制の成立
c国民主義の発展
dアメリカの南北戦争
5.ヨーロッパ勢力の世界進出
a帝国主義の発生
b列強の勢力均衡
cアフリカ分割
b列強のアジア政策
6.アジアの近代化
a太平天国
b清朝の没落と民国革命
c国民会議派とインド独立運動
d明治維新
7.近代文化の発展
a近代思潮とその性格
b学問の分化
c自然科学の発達
d国民教育の普及
e生活文化の向上
a大戦の推移
bロシア革命
c国際連盟
d国際協調
2.全体主義と第二次世界大戦
a世界恐慌
bアメリカの発展
cソ連の充実
d日本の大陸進出
e全体主義国家のたい頭
f第二次大戦の勃発とその推移
3.戦後の世界情勢
a国際連合と世界平和運動
b米ソの進出
cアジアの民族運動
dアメリカ経済の優越
e現代文化の性格
4.世界史上における現代日本の位置
a日本の民主化
b日本の国際的地位
c日本文化の建設
1.参考単元題目例
世界史の学習に有効な単元組織としては,いろいろなものが考えられる。しかし,注意しなければならないことは,世界史の内容を,単に幾つかの適当な大さに区分し,まとめたのでは,よい単元はできないことである。どこまでも,問題を中心として,構成されなければならない。問題の選び方には,一定の型があるわけではないが,世界史学習指導要領委員会としては,高等学校世界史の単元として,一応次のような諸系列を考えて,参考に資することにした。
(A案)
第1単元
アジアの社会とヨーロッパの社会の発展にはどのような相違があるか。
目 標
2.近代以前の社会においては自然環境がいかに制約を与えているかを正しく理解すること。
3.文明の交流による社会発展の意義を正しく理解すること。
4.現代社会における近代以前り社会の遺制を理解し批判することにより,社会生活を向上させる能力を育てること。
5.近代以前の社会と近代社会の相違を認識することにより,民主主義の価値を理解し,これを育てること。
6.世界的宗教の歴史的意義を理解することにより,現代生活における宗教の役割を理解すること。
7.近代似前の社会の文化遺産を評価する能力を育てること。
8.史実批判および理解の能力を養うことにより,事物を合理的科学的に処理する態度を養うこと。
(2)中国人・朝鮮人などの東洋人とわれわれの生活とにはどのような違いがみられるか。
(2)今日の未開民族の生活と原始人の生活との間にはどのような似た点と違った点があるか。
(3)原始人の社会生活とわれわれの生活とではどのような違いがあるか。
(2)ピラミッドや万里長城のような大工事はなぜ営まれたか。
(2)中国・インド・日本などの古代文化はどのような社会的地盤の上に発生したか,そして今日の社会にどのような影響と与えているか。
(3)わが国でローマ字が普及し,漢字制限が叫ばれているのはなぜか。
(2)現代生活の中でこれらはどのような影響を及ぼしているか。
(2)なぜ日本や中国では「家伝」とか「秘伝」の形で伝統が受け継がれているか。
(2)遊牧民族は文化の発展にどんな役割を果たしたか。
(2)日本の民主化の途上において古来のアジア文化はどのように評価されているか。
世界はどのようにして一体化したか。
目 標
2.一体化する以前の社会が封鎖的であったことを理解することにより,民主主義的寛容の精神を養うこと。
3.世界の一体化をもたらした要因がなんであるかを理解することにより,近代社会の本質を認識すること。
4.ヨーロッパ社会の世界的発展を理解すること。
5.世界の一体化の過程により,生じた諸問題の理解をとおし,その民主的解決への能力を育てること。
6.国民的偏見を排除し,近隣諸国民に対し友好的態度を養うこと。
(2)われわれの経済生活はどのように世界経済と結びついているか。
(3)われわれの文化はどのように世界の文化と密接な交渉をもっているか。
(2)サビエルが日本に来たのはどのような事情によるのか。
(3)汽車汽船などはなぜ発明されたか。
(2)第一次世界大戦はなぜ起ったか。
(2)人類の幸福のためにはどのような国際協力が必要か。
現代の世界にはどのような問題があるか。またそれはどのようにして起ったか。
目 標
2.第二次世界大戦後における世界の新情勢を理解することにより,正しい国際秩序のあり方を考えること。
3.民主主義について正しく理解し,これを実行する信念を育てること。
4.現代日本の世界史的地位を理解すること。
5.戦争が世界の人々に及ぼした影響とその意義を理解することにより世界平和と国際協力への理想と情熱を養うこと。
6.大戦後のアジアの形勢の変化を世界史的にはあくする能力を育てること。
(2)生活上の変革
(2)民主主義の勝利。
(2)国際関係の緊張—コミンフォルム,北大西洋条約等。
(3)敗戦国の動向。
(2)産業生産の配分。
(3)平価切下げ・インフレーション。
(4)労働組合運動。
(5)該問題解決の合衆国の努力。
(2)平和擁護運動・世界人権宣言。
(2)宗教問題。
(2)原子力問題。
(2)西欧諸国の政策。
(2)今後に残された問題。
(B案)
第1単元 どのようにしで近代以前の社会は発展し,今日のわれわれの社会に影響を与えているか。
第2単元 世界における主な文化はどのようにして生まれ,今日の社会にどのような文化遺産を残しているか。
第3単元 近代社会はどのようにして発展したか。
第4単元 近代文化はどのように発達し,現代社会にどのような役割をもっているか。
第5単元 世界各国相互の密接な交渉により,どのような問題が生じたか。
第6単元 世界平和の維持と民主化のためにどのような努力がなされたか。
(C案)
第1単元 大昔の人たはどのようにして生活を切り開いていったか。
第2単元 生活にほとんど自由のなかった社会で人々はどのような暮しをしたか。
第3単元 人々はどのようにして生活の自由を得ようと努力したか。
第4単元 人々の自由はどのようにして確立されようとしているか。
(D案)
第1単元 国家と社会主活とはどのようなつながりで発展してきたか。
第2単元 市民の活躍は社会の発展にどのような役割をつとめたか。
第3単元 世界平和はどのようにして求められてきたか。
2.世界史への導入
世界史の学習に当たっては,まず生徒の学習意欲を喚起し,さらに問題解決の手がかりをうるために,各単元の学習に先だち,世界史学習全体への導入を試みることも,以後の学習活動にきわめて有効であうう。
その方法として,たとえば,最初に社会科世界史の学習つ目的として,われわれと歴史とのつながり,さらにわれわれと世界の歴史がいかに密接不離の関係にあるかを理解させ,生徒の興味と関心をじゅうぶん喚起し,以後の世界史学習への意欲をもりあげることである。また,生徒の世界の歴史上,地理上についての既知の知識を一応整理しておくことが必要である。かくすることにより,漸次世界史の概要を確実にするよう留意しなければならない。この方法としては,教師の講義によることは,努めて避け,生徒自身にまとめさせる方法をとり,その間において,以後の学習活動の方法を習得させることも必要であろう。したがってここでは,単に生徒の興味・関心を呼び起す程度にとどめ,歴史学序説にならぬよう留意すべきである。
「世界史への導入」の学習活動の例
2.われわれの社会生活は,過去において,どんな進歩発展を遂げたか。一例をあげて,その世界的関連を討論すること。
3.現在のわれわれの生活上の問題の理解ないし解決に資するためには,世界史上,どのような問題があるか,話し合うこと。
4.他の教科や科目で,これまで学習したものの中から,世界史に関連する既知の知識をまとめてみること。
5.きみたちの知っている時代区分にはどんなものがあるか。その中で適当と思われるものについて,理由をあげて討論すること。
6.西暦とはどんなものか。なぜ,世界で広く用いられるようになったかについて話し合うこと。
7.世界のおもな国家と,それに含まれるおもな民族とを表に記入すること。
8.世界のおもな人種と民族の分布図を書き,人種と民族の区別を考えること。
9.参考資料はどんなものがあるか,調べてみること。
10.学習の方法と形態はどうしたらよいか,話し合うこと。
(D)案の展開例
前記の(A)案の例では,すでにかなりの程度まで展開が進んでいるが,ここではさらに,(D)案の詳細な展開例を示す。各教師は,単元諸系列および展開例を参考にして,最も教育効果があがるような,すなわち,社会科としての世界史の目標が最も達成されやすいような指導計画をたてられることを希望する。
なお,(D)案の学習活動の例には,おもに 話し合い・発表・作文などの形式のものをあげたが,実際の指導に当たっては,この他にも,種々な活動形式のもの,特に,教科書の中の必要な箇所をよく読む,教師の話を聞く,などのものが当然含まれなければならない。そして断片的ではなく,全体として系統だった学習活動の計画がなされることが望ましい。
参考資料表は,昭和26年春,東京都歴史教育研究会が作成したものから転載した。これはただ単元としての形式をととのえることを目的としたものであるにすぎない。
第1単元
国家と社会生活とはどのようなつながりで発展してきたか。
要 旨
われわれの社会生活は,国家を離れては存在しない。しかもわが国ほ民主国家建設を目ざして発足このかた,いまだ日浅く,民主化の前途はもとより,現実的にも山積する諸問題を控え,国家の再建もまた多難である。よってこれらの問題解決の手ががりを,いわゆる近代以前における人類の歴史発展過程に求めつつ,他方,先史時代における人類の出現より,世界の一体化を導引するに至った。15,6世紀に及ぶ史的展開を,世界的視野のもとにはあくして,現代の正しい理解を助成することが必要である。
一方,本単元の学習でより,生徒は国家の歴史的役割と,近代国家の意義を認識して,正しい民主国家樹立への情熱を高めるように指導されることが望ましい。また本単元学習の内容から,従来の歴史学の成果をじゅうぶん駆使し,生徒のいだく興味を育成するとともに,世界史的考察の能力を高め,真に科学的な歴史解明の方法を習得し,物事を合理的に判断する態度を育てたいものである。あるいはまた,われわれの生活文化は世界史的所産に負うところが多いことを理解することにより,それぞれの歴史的役割を反省し,各時代・各地域における民族や国家の文化的貢献と正しく評価し,自己の生くべき方向を見いだすようにしたいものである。
目 標
2.国家成立の社会的基盤を理解することにより,社会進展に対する人間の努力を理解すること。
3.近代以前の諸国家発展の事情を理解することにより,歴史発展の普遍性と特殊性とをはあくすること。
4.さまざまの国家型態のもとにおける社会生活の理解を通じ,現代社会における正しい生活のあり方を考え,それを推し進める態度と習慣と養うこと。
5.民族や文化の接触交流が社会の発展に尽した役割を知ることによって,諸民族・諸文化に対する正しい態度を養うこと。
6.近代以前において,国家や社会生活が自然環境の強い制約を受けていたことを理解すること。
7.文化遺産や社会遺産を正しく評価する態度を養うこと。
8.世界的宗教の歴史的意義を理解することにより,人間生活における宗教の役割を認識すること。
b現在,世界にはどのような国があるか。そしてそれぞれどうして国家を形成しているのか。
bどのような事情によって,国家は形成されたか。
c文明はどのような地域に発生し,どのような特色をもっていたか。
b古代の文化はどのようなものであったか。それはどんな社会が生み出したか。〔アジア・ヨーロッパ〕
cヨーロッパの封建社会はどのようにして成立発展し,その社会生活はどんな特色をもっていたか。
dアジアの古代国家は,ことにどのような推移を示したか。〔インド・中国・日本〕
b東西文化の交流はどのように行われ,それぞれの社会にどんな影響を与えたか。
bキリスト教はどのように広まり,ヨーロッパ文化にどんな影響を与えたか。
cイスラム教は世界史にどんな役割を果たしたか。
1.
b
(2)世界の主要国の二,三について,今日の国民・領土・政治が形成される以前との相違を各自知っているところを話し合って比較してみること。
(2)石器・土器および遺跡・遺習などについて調べ,原始生活の展開を報告すること。〔農耕生活の発生,社会組織の展開,精神生活の発展〕
(3)原始生活は果たして楽園であったかどうか討論すること。
(2)魏志倭人伝(ぎしわじんでん)にみえる日本の部落国家について調べて,その成立事情を考え,各自が発表すること。
(3)国家の起源に関するいくつかの学説を調べてきて話し合うこと。
(2)オリエント・インド・中国などの最古の文明について、次の事項を調べ,その特色を検討すること。
(2)ギリシアのポリス発展の経過を調べ,アレキサンダーの歴史的役割を話し合うこと。
(3)ロ一マ帝国の成立事情を調べて,その社会・政治・経済の動向について検討してみること。
(4)インドのカスト(種姓)社会成立の事情を調べ,統一帝国成立の経過を報告すること。
(5)秦漢(しんかん)帝国について,その社会・政治・経済の統一過程を考え,皇帝の権力発展を検討すること。
(6)隋唐(ずいとう)帝国の発展を調べ,その社会・政治・経済の性格について話し合うこと。
(7)大化改新について調べてきて,その社会・政治・経済の基盤につき,各自の考えを発表すること。
(8)古代統一国家について,それぞれの特色を考え,比較討論すること。
(2)孔子(こうし)・老子・韓非子(かんびし)などは,どのようなことを主張したか,その思想の発展と社会的背景と日本への影響について検討すること。
(3)唐詩選等について,唐代文学を鑑賞し,どのような社会的背景からこれが生まれたかを話し合うこと。
(4)ギリシア文化について,各自分担して調べてきて,なぜそれらが今日でも世界の人に親しまれているかを話し合うこと。
(5)ローマ文化の各部門について調べてきて,その世界的性格と検討すること。
(2)西欧封建社会の成立事情を調べ,城や教会を中心として,どのような社会生活が営まれたかを検討すること。
(3)西欧における中世都市の性格について調べ,アジアにおける都市(インドのデリー・アグラ,宋(そう)代の開封・抗州(こうしゅう),日本の堺(さかい)・山口等)と比較討論すること。
(4)アベラールとエロイーズの書簡の一,二を紹介し,西欧中世文化の特質について話し合うこと。
(2)中国に藩(はん)鎮の成立した事情を調べ,その動向を検討すること。
(3)中国の科挙制度について,宋代から清代までの社会との関係を調べて報告し,官人政治の意義を話し合うこと。
(4)中国における儒学の変遷(漢学・正義学・宋学・陽明学・考証学等)の大体を調べてきて,それぞれの社会の性格とどのような関係にあったか,さらにそれらが日本へどのような影響を与えたか話し合うこと。
(5)日本における大名の成立を中心として鎌倉幕府から江戸幕府への社会的背景の変遷を世界史の推移の上から検討すること。
(2)サラセン民族の海洋発展について調べ,その仲介貿易による富と文化の発展を報告すること。
(3)中国における外来支配民族と漢民族との接触について小論文にまとめて報告すること。
(4)なぜ遊牧民族は現在世界の指導的地位にたてないのか話し合うこと。
(2)中国とヨーロッパくとの間における古代の交通路にどんなものがあったか,おもな東西文化の交渉事実について調べて報告し,民族や文化の接触交流と社会の発展について検討すること。
(3)十字軍について調べ,その遠征がヨーロッパの政治・経済・社会・文化にどのような影響を与えたか検討すること。
(4)奈良・平安両朝の大陸文化の摂取と,鎌倉・室町両朝における中国文化の影響とを比較討論すること。
(2)仏教の発展が,インドにおけるヒンズー教の成立と,中国における道教の成立と,どのような関係があったか検討すること。
(3)仏教の日本化について,二、三の実例をあげて話し合うこと。
(2)教会発展の推移を調べ,ヨーロッパの国家・社会・文化がキリスト教とどんな関係をもっていたかを報告すること。
(2)今日イスラム社会はどのように世界に分布しているか,また,それらの社会の,それぞれ,どのような動きを示しているか,検討すること。
「われわれは文化遺産や社会遺制にどのような態度でのぞんだらよいか」について作文して,提出すること。
b
「われわれは学校や家庭の生活で,どのような態度をとったらよいか」について討論すること。
2.学校所在地を中心として,郷土における近代以前の遺制について報告批判させ,生徒が果たして地域社会における非近代的遺制や遺習を正しく批判する態度や能力が養えたがどうか評価する。
3.世界各地のいわゆる封建制度につき,その成立発展の事情を話し合い,社会発展における普遍性と特殊性とについての理解がどの程度に深まったかを評価する。
4.日常生活に用いられてきた各種の道具(たとえば,衣服・住居・家具・農具・炊事器・交通機関等)の数例につき,模型を作るか作図して,その改良発展と社会生活の向上を,集団的に発表し,自然克服の意欲と文化発展の理解とを評価する。
5.学習活動以前に,われわれの日常生活に外国文化がどのように取り入れられてきたか(美術・建築・文学・宗教・思想等)について話し合い,学習後ふたたび同問題についての報告を提出させ,文化交流に対する理解とはあくの深化を評価する。
6.世襲的な特権・身分が支配的だった国家の例をいくつかあげて,世論に基礎をおいた国家の形と比較討論させ,民主主義に対する理解と熱意とを評価する。
7.次の重要概念を理解したかどうか。
○古典文明の性格
○ローマ帝国の歴史的意義
○アジアにおける専制国家の変遷等。
世界歴史(10巻) 河出書房
世界の歴史(6巻) 毎日新聞社
世界歴史大系(25巻) 平凡社
世界文化史大系(24巻) 誠文堂新光社
世界思潮(12巻) 岩波書店
東洋思潮(18巻) 岩波書店
世界美術全集(刊行中) 平凡社
世界歴史事典(刊行中) 平凡社
京大西洋史(10巻) 創元社
箕作元八 西洋史講話 開成館
市村■次郎 東洋史統(4巻) 冨山房
和田 清 中国史概説(上・下) 岩波書店
人物世界史(東洋・西洋) 毎日新聞社
亀井・三上・児玉 世界歴史地図 吉川弘文館
箭内・和田 東洋読史地図 冨山房
京大西洋史研究室 世界歴史大年表(上・下) 目黒書店
スライド
市民の活躍は社会の発展にどのような役割をつとめたか。
要 旨
われわれの社会生活の基盤は,近代民主主義の発展過程に求められる。資本主義の発展に伴い,市民階級はしだいに社会に重要な役割を演じ,かつ合理的思惟の生長は,たくましい実践とあいまって,従来の封建的身分的な束縛を解体させた。近代市民社会の形成により,人類の社会生活は飛躍的発展を遂げたのである。
現代社会は多く市民社会の発展成長の過程にほかならない。したがってその実体をはあくすれば,そこにはあらゆる分野にわたって,不完全な様相を見いだすであろう。つまり,われわれは市民社会そのものの未然な問題や,近代化の不徹底に伴ってもたらされた幾多の問題に直面している。かかる現代社会にはぐくまれたさまざまな問題の歴史的意義をはあくし,ことに近代社会成立の中にその由来を求め,もって解決の方途を考えることは,重要な意味を持つ。
前単元に基いて設定された,発展的な本単元の学習により,生徒はより直接的であり,かつ深刻化した社会的課題の追求と,変化に富む世界史の流れに,深い興味と高い情熱とを傾けるであろう。また市民社会の世界史的発展を認識することにより,世界史的視野に立って,物事を判断し,処理する能力を養うように指導されなければならない。
目 標
2.資本主義の発展をとおし,近代社会発展を理解することにより,現代社会の諸問題に対する歴史的はあくの能力を養うこと。
3.ヨーロッパ社会の世界的発展をとおし,現代文化の理解を深めること。
4.産業革命の世界史的意義の理解をとおし,労働問題に対する正しい認識と態度を養うこと。
5.近代社会発生の社会的基盤の理解をとおし,社会進展に対する責任と情熱とを養うこと。
6.アジア社会発展の特殊性を理解することにより,現在アジアに起りつつある諸問題を歴史的にはあくする態度と習慣と養うこと。
7.民族的偏見を排除し,近隣諸国民に対し友好的態度を養うこと。
b現在と昔とで市民の性格にどんな違いがあるか。
b市民はどのような分野に活動ができるようになったか。
cアジアにおいては商工業はどのように発達したか。
b君主や市民の国家における地位はどのように変化したか。
cアジアの君主権はどのような変遷をしたか。
b市民社会はどのようにして建設されたか。
(イ)イギリス (ロ)アメリカ (ハ)フランス 等。
b産業上にはどのような変化がみられたか。
c文化の分野ではどのような傾向を生じたか。
bアジアにはどのような変化を生じたか。
c第一次世界大戦はどのようにして起ったか。
1
bわれわれはどのような人々をさして,普通,ブルジョアとか,プチブルというのだろうか。またそれらの人々はどんな職業に従事し,どのような社会的地位にあるのだろうかみんなで話し合うこと。
cアテネ市民の政治上・経済上・社会上のあり方を話し合い,現代の市民生活との違いを指摘すること。
bルネサンスとはどんなものか調べ,それがなぜイタリア都市に起ったかを討論すること。
c「ヴェニスの商人」を読み,ルネサンス時代の市民の生活を報告すること。
d宗教改革について調べ,市民階級の発展とどのような関係にあるかを考えること。
eコロンブスやマジェランのような大航海は,どのような社会的,政治的事情のもとに行われたかを調べ,報告すること。
fコペルニクス・ガリレイ・ベーコン・デカルトなどが,科学精神の発達にどのように尽したかを調べること。
g宋代における商工業発達の状態を調べ,ヨーロッパのそれと比較すること。
h15,6世紀における日本の自由都市(堺など)の様子を調べ,ヨーロッパのそれと比較すること。
(1)市民と封建領主 (2)君主と封建領主 (3)市民と君主
b絶対主政はどのようにして生まれたか,そしてどのような政策を行ったか,イギリス・フランス・ロシア・プロシアなどを例にとり調べること。
(1)政治 (2)外交 (3)殖民(経済) (4)文化
c宋・元・明・清の政治組織のあらましを調べ,君主権を中心として,それらに共通する性格を選び出すこと。
d日本史上,天皇の政治的役割はどのように推移したか,簡単にまとめ,発表すること。
b次の事項について調べ,その歴史的役割について話し合うこと。
(1)マニェファクチェア (2)問屋制度
cイギリスでは,「国王は君臨すれど統治せず」といわれているが,その事の歴史的意味を調べて学級で話すこと。
dロック,ヴォルテール,モンテスキュー,ルソー,アダム・スミスはどのような説を主張したか。またなぜかれらがそのような説を唱えるようになったかを調べること。
eアメリカの独立宣言を読み,これを中心として当時の事情について討議すること。
fフランスの「三色旗」ば何を意味するがを考え,その精神がフランス革命をとおし,どのように実現されたかを調べること。
gナポレオンの業績について調べ,これを民主主義の立場から批判すること
b次の事項について調べ,その背後の社会の事情を検討すること。
(例)(1)ギリシア・ラテンアメリ力の独立 (2)七月革命および二月革命 (3)ナポレオン三世の第2帝政の成立と没落。
cドイツ・イタリア統一の事情を調べ,その要因と意義について考えること。
dロシアの農奴解放とアメリカの南北戦争について調べ,それらがそれぞれの社会にどのような影響を与えたかを考えること。
e産業革命について調べ,なぜ最初にイギリスに起ったかを討議すること。
fどのような社会的,経済的事情のもとに,汽車・汽船が発明されたかを調べ,話し合うこと。
g産業革命が人間の社会生活にもたらした影響について調べ,みんなでまとめること。
h19世紀は「科学の世紀」といわれるのはなぜか。科学の進歩をもたらした要因について調べ,学級でその話をすること。
i19世紀を中心とした文芸思潮を調べ,それが社会の動きとどのような関係にあるかを討論すること。
j次の人物の伝記を調べ,文化史上の役割を箇条書にすること。
(1)カント (2)マルクス (3)ダーウィン (4)パストール (5)ランケ (6)コント
(1)領有国名 (2)領有年代 (3)領有事情
bアフリカ大陸が,ヨーロッパの列強により,なぜ分割されたか,当時の国際情勢と関連して考えること。
cヨーロッパ勢力の進出により,次の諸国では 政治的,経済的,社会的にどのような変化が起ったか,おもな事象をあげて発表すること。
(1)日本 (2)中国 (3)インド (4)朝鮮その他
d産業革命以前と以後とで,ヨーロッパ勢力のアジア進出には,どのような相違があるか調べること。
e第一次大戦前,約半世紀間の列強の経済力伸展に関する次の統計図をつくること。
(1)鉄・石炭の比産高 (2)国内および海外の投資額 (3)人口の増加表 (4)鉄道延長および船舶保有量 (5)貿易額
f第一次大戦の起った原因について,政治・経済などの点から調べること。
gサラエボ事件がなかったら,大戦が起らなかったかどうか,みんなで話し合うこと。
2.「都市の空気は自由にする」という題でレポートを書かせ,近代社会進展に対する理解と情熱とを評価する。
3.産業革命がわれわれの社会生活にどのような影響を与えているか,具体的事例をあげて説明させ,現代の諸問題に対する歴史的はあくの程度と労働問題に対する正しい態度とを評価する。
4.中世,新大陸発見当時,および現代の三つの世界地図を示して比較し,なぜそのような地図ができたか話し合わせ,近代化の本質についての理解を評価する。
5.「国際結婚」・「ユニセフ」について各自意見を述べあって討論させ,民族的偏見排除と近隣諸国民との友好的態度がどのように養われたかを評価する。
6.新聞等に論じられるアジア問題の一例について討議させ,その歴史的背景の理解,および現在アジアの諸問題を歴史的にはあくする態度と習慣が養われたがどうかを評価する。
7.次の重要概念について理解したかどうか。
○絶対王政
○市民革命
○アジア社会の後進性
○近代精神と科学文化
○帝国主義と世界大戦 等。
鈴木成高 封建社会研究 弘文堂
坂口 昂 ルネサンス史概説 岩波書店
トインビ一 産業革命史論 岩波書店
芝野十郎訳
上田貞次郎 産業革命史 改造社
カーライル フランス革命史 春秋社
柳田泉訳
ジャン=ジョレス フランス革命史 平凡社
村松正俊訳
シーリ— 英国発展史論 第一書房
吉田保訳
大塚久雄 近代欧洲経済史序説(上・下)日本評論社
高僑幸八郎 近代社会成立史論 日本評論社
ウィットフォーゲル 解体課程にある支那の経済と社会(上・下) 中央公論社
平野義太郎訳
スミス 支那の村落生活 生活社
塩谷・仙波訳
清水盛光 支那社会の研究 岩波書店
ラティモア 中 国 岩波書店
小川 修訳
外務省調査部 孫文全集 外務省
スライド
レコ一ド
世界平和はどのようにして求められてきたか。
要 旨
現代ほど全人類が平和を熱望している時代は過去にはなかったであろう。もともと戦争は人間の本性に根ざすものであるとの証拠はない。したがって,人類はいかなる時代にも,おのおのの立場で,平和を欲してきたはずである。このような平和を求める人類の要望にもかかわらず,われわれは,われわれの生涯にすでに二度も世界戦争を経験しなければならなかった。ただしそれは近代社会発展の経過であったとはいえ,何人もその悲惨な現実には目をそむけ,「戦争は文化の墓標」であることを痛感した。われわれはここに,なぜこの世界戦争が起ったのか,換言すれば,「世界平和」はなぜ維持することができなかったかを歴史的に究明し,世界平和樹立に対する方途を見いだすことに切実な関心をいだいている。それはただに,われわれの社会的課題であるのみならず,また世界的課題でもある。
戦争の惨渦を体験した生徒にとっても,平和こそ最も関心の深い問題であろう。生徒は本単元の学習により,現実の社会の動きを歴史的にはあくすることによって,平和実現へのかれらの情熱と決意を,いよいよ固めるように指導されることが望ましい。このようにして民主主義が世界戦争に対処して発展した世界史の過程をとおして,高貴な人間性の価値を認識し,憲法精神を体得して、社会の実践者となることを期待しうるであろう。
目 標
2.民主主義が世界戦争に耐えて発展してきたことを理解することにより,民主主義に対する信念を固めること。
3.現代世界の諸問題を世界史的にはあくする習慣と能力を育てること。
4.現代文化の特質を理解することにより,日常の生活文化を高める態度および能力を育てること。
5.現代日本の世界史的地位を理解することにより,国際社会におけるわれわれの責務を自覚すること。
b世界平和維持のために,どのような試みがなされているか。
b第一次大戦後の国際秩序には,どのような欠陥があったか。
c全体主義はどうして,また,どのような国に起ったか。
d日本は世界平和に対して,どのような役割をしたか。
b日本の再建に対して,世界各国は,どのような態度をとっているか。
cアジアの諸民族は,民主主義をどのように育てているだろうか。
d現代の文化は,世界平和にどのように貢献しようとしているか。
e経済生活の安定のために,どのような努力がなされているか。
bわれわれは,日本の自立に,どのような努力をすべきであろうか。
c個人として,世界平和に貢献するには,どうしたらよいか。
1.
(2)憲法には,平和維持に関して,どのような精神がもられているか調べ,その意義について話し合うこと。
(2)1918−1931年ごろまでの国際間のおもな会議の年表をつくり,その意義を考えること。
(2)ベルサイユ条約前後の世界地図をかき条約の精神が,その後の世界状勢にどのような問題を生み出したかを調べること。
(3)ロシア革命の意義と,その後の動きについて調べること。
(2)独裁政治は,どのような国に起ったか。また,それらの国のもつ特色をあげ,国際秩序への影響を調べること。
(2)日本の中国に対する政策と,これに関するおもな事件をあげ,その一,二について,経済的・国際的解釈を試みること。
(3)中国における排日運動の原因を対内的・対外的方面から検討してみること。
(3)今日の世界分裂を,1世紀前の状態と比べ,現在対立の事情との相違を考えること。
(2)現在の国際状勢が,日本にどのように反映しているか,日々の新聞から例をあげてみること。
(2)次の事項について調べ,その歴史的意義を考えて報告すること。
(2)次の人々の思想について調べること。
(ヘ)ガンジー
(2)マーシャルプランとはどんなものか報告し,そしてそれがどのように実施されたか検討すること。
(3)ロシアの工業化は,世界経済にどのような影響を与えているかを検討すること
(2)世界人権宣言を読んで,わが国の現状から,特にどういう点の改善に力を注がなければならないかを討議すること。
(2)「個人と世界平和」について作文を書くこと。
2.「世界戦争と民主主義」という題で作文を書かせ,民主主義の使命についての歴史的理解と信念とを評価する。
3.各自,世界平和に貢献したと思われる人を,5人あげ,それを選んだ理由を述べさせ,個人業績に対する認識を評価する。
4.新聞の政治・経済・社会面の記事から,相互に関連ありと思われるものを選び出し,それが世界の動きとどのようなつながりがあるかを発表させて,世界史的はあくの習慣と能力とを評価する。
5.戦争と文化について討論させ,近代文化の使命に対する自覚と世界平和への熱意とを評価する。
6.次の重要概念を理解したかどうか。
○世界恐慌と全体主義との関係
○ベルサイユ体制と民族主義
○第二次大戦とアジアの民族運動
○冷たい戦争 等。
プライス 近代民主政治 岩波書店
松山 武訳
ロイド=ジョージ 世界大戦回顧録 平凡社
内山・片岡・村上訳
ウィストン=チャーチル 第二次大戦回顧録 毎日新聞社
毎日新聞社
横田喜三郎 国際連合 国土社
中国研究所 現代中国辞典
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Ⅲ(a)日本史
(b)世界史
MEJ 2125
昭利27年3月15日 印刷
昭和27年3月20日 発行
著作権 文 部 省
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発行者 藤 原 政 堆
東京都中央区入船町3丁目3番地
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