Ⅰ 日本史の特殊目標
日本史の指導に当たっては,これが社会科の一科目であることに留意し,まず社会科一般目標をできるだけ達成することを目ざさなければならない。この場合,特に日本史として強調されるべき特殊目標は,次のようなものであることをあわせて考慮すれば,その指導計画および指導法は,いっそう適切となるであろう。
2.現代社会の諸問題の歴史的理解を深め,その問題解決に必要な能力を発達させること。
3.歴史発展における普遍性と同時に地域による特殊性を認識すること。
4.現代社会の生活文化を総合的・発展的に理解すること。
5.歴史が人間の努力によって進歩発展することを理解することにより,社会進展に対する自己の責任感と情熱とを養うこと。
6.日本の各時代・各社会に共通する人間性のはあくに努めること。
7.日本歴史における史実を合理的・批判的に取り扱う態度と技能とを育てること。
8.日本の社会の発展を常に世界史的にはあくし,現代日本の世界史的地位を認識する能力を育成することもに,進んで国際親善・人類平和の増進に協力する態度を養うこと。
9.わが国の文化遺産を社会性との関連において正しく理解し,これを尊重愛護する精神を育て,さらにわが国に対する愛情を深め,そのよい伝統を保持し,伸張する態度を養うこと。
10.歴史地図を読んだり,描いたり,また正確な資料を入手して,これを正しく図表などに表現する技能を養うこと。
11.日本の国の正しい姿を知ることもに歴史学への学問的関心を深める態度を養うこと。
Ⅱ 日本史各時代指導上の参考目標および参考内容
日本史における時代概念としては,「原始社会」・「古代社会」・「封建社会」・「近代社会」の4類に分けて理解するのが便宜であろう。各時代を取り扱う場合に,それぞれ,たとえば,どんな目標と内容があるかを一応考えてみることにした。これらをそのまま学習単元として取り上げることは適当ではないが,少なくとも,学習単元を計画する場合の,一つの参考資料にはなるであろう。これは,それだけの意味をもつものであって,決して絶対的なものとか,最低限度を示すものではない。
A.参考目標
「原始社会」
2.原始社会がその後の社会発展の基盤であることを理解すること。
3.未開の生活と今日の生活とを比較することにより,現代文化の認識を深めること。
4.日本の原始社会と世界のそれとの共通性を理解し,人間社会の発展の理解を助けること。
5.原始人が生産を通じ,自然をいかに克服したかを理解すること。
6.原始社会における村落共同体発生について理解すること。
7.人間社会における芸術・宗教その他いろいろの技術等の起源に対する理解を深めること。
8.遺物・遺跡を調査することによって,歴史の科学的理解の能力を養うこともに,原始人とわれわれとの衣食住の異同を理解すること。
9.考古学的遺物を鑑賞し,整理・復原・図示する能力および,これを尊重する態度を養うこと。
10.博物館や資料収集家を訪れ,原始時代の遺物を通じて,原始社会の文化を理解しようとする態度を養うこと。
2.古代社会が原始社会の必然的発展であることを理解すること。
3.古代社会が原始社会および近代社会と本質的に相違することを理解すること。
4.古代国家の発生について理解すること。
5.古代社会発生の理解をとおし,法律・政治等の諸制度の役割を理解すること。
6.外国との交渉が社会の進展の重要な原因であることを理解することにより,外国文化に対する正しい評価と積極的に摂取する態度を養うこと。
7.古代社会における生産と技術の発展を理解すること。
8.古代社会の発展と地理的環境との関係を理解すること。
9.神話・伝説等を科学的に取り扱う態度を養うこと。
10.古代社会における宗教・学問・文学等の文化遺産を正しく評価する能力を育てること。
11.史跡や博物館などを訪れ,古美術を鑑賞する趣味と進んでこれを尊重する態度を養うこと。
12.万葉集・古事記などの古典を愛読する趣味を養うこともに,古文献に対する正しい取扱と鑑識に関する能力と技術を養うこと。
13.古代人の生活を復原し,または歴史的人物を中心とする戯曲をつくり,演出するような技能・態度を養うこと。
2.封建社会が古代社会の必然的発展であることもに近代社会の前提であることを理解すること。
3.封建社会と近代社会とが本質的に相違することを理解すること。
4.封建社会の身分関係・土地所有関係の成立および封達意識の形成について理解すること。
5.日本の封建社会の歴史的発展を理解すること。
6.日本の封建社会とヨーロッパの封建社会とを比較して,その特殊性を理解すること。
7.外来文化ことにヨーロッパ文化との接触が社会に及ぼした影響を理解するとともに文化の発展に対する批判的態度を養うこと。
8.封建社会の内部がら近代社会を生みだす条件が成熟してくる過程を理解すること
9.現代の生活の中における封建性や伝統の意義を理解し,批判することにより,社会人としての実践的態度を養うこと。
10.封建社会におこった能楽・狂言・歌舞伎等の古典的芸術を鑑賞する能力や趣味を養うこと。
11.歴史的な書物を愛読する習慣を養うとともに、歴史的人物の伝記を調べ,これを戯曲化し,演出するような趣味を養うこと。
12.歴史的な地図を読んだり,描いたり,正確な資料によって年表や図表をつくる能力を養うこと。
2.近代社会が封建社会の必然的発展の所産であることを理解すること。
3.日本の近代社会の特殊性と世界史的意義を理解すること。
4.日本の近代社会において民主政治がどのように発展してきたかを理解すること。
5.日本の資本主義がどのような性格をもって発展してきたかを理解すること。
6.日本の近代文化の性格,特に封建性の残存が国民生活に及ぼした影響を理解すること。
7.基本的人権を伸ばすための,日本国民の努力とその意義について理解すること。
8.現在の社会の諸問題を総合的・歴史的に理解する能力を育てること。
9.現在の国際間の諸問題を正しく理解するとともに平和を守る確固たる信念と方法をはあくすること。
10.国際親善・世界平和に対する正しい協力的態度を養うこと。
11.歴史理解を通じ,民主主義社会を推進するための自己の責任を自覚し,進んで民主国家建設に献身する積極的態度を養うこと。
12.外国文化を尊敬するとともに,わが国文化の長所を認識し,理知的な愛国心を高めること。
13.書物・新聞・雑誌・パンフレット・ラジオ放送等の適切正確な資料によって,現代社会の諸問題を正しく理解しようとする態度・習慣を養うとと。
「原始社会」
1. 発 生 ○原始人類 原始人類に関する諸説(時期,
場所,種類,地理的環境),
人類と動物との相違。
○原始日本 日本列島の成立時期,地理的環
境,原始日本人に関する諸説。
2. 特 質 ○階級の差がほとんど 理由,社会状態,階級の差の発
ないこと 生事情。
○狩猟漁労および採取 意義,状態,原始農業との関係,
生活 現代社会に残る狩猟漁労採集生
活の跡。
○原始的信仰 起源,状態,現代社会に残る原
始的信仰。
○自然環境の支配力の 狩猟漁労に及ぼす自然の支配
強いこと 力,農業に及ぼす自然の支配
力,衣食住に及ぼす自然の支配力,
自然に対する人間の抵抗の努
力。
3. 発展および崩壊 ○集落の発生 理由,地理的環境,集落の統合
による部落国家の形成。
○縄文(じょうもん)式 縄文式文化と弥生式文化の相違
より弥生(やよい)式 弥生式文化の意義とその性格。
へ 弥生式文化の社会的影響。
○農業のはじまり 原始農業の起源,農業と社会生
活の進展。
○大陸との交通 意義,文化の伝来。
「古代社会」
国家へ 鉄の使用による統一の完成,
大和国家の成立,東洋諸国の統
一国家の成立とわが国のそれと
の比較。
○水田耕作 起源,水田耕作と社会の進展。
○土地私有 原因,土地獲得競争と古代社会、
大化改新と公地公民制。
○氏姓制度 意義,内容,国家組織,
社会的影響。
○大陸文化の渡来 文化の渡来と日韓関係,文化の
内容,文化の社会的影響,帰化
人による大陸文化の移植。
2. 特 質 ○古代天皇制 意義,本質,古代社会における
天皇の地位。
○貴族文化 意義,性格,社会的影響,
大陸文化との関係,
現代社会に残る貴族文化。
○律令制 意義,政治組織,隋唐律令との
相違,律令政治と古代の社会状
態,崩壊の原因。
○奴隷的隷属性 起源,実情,大化改新とその変
質。
○古代宗教 律令国家と宗教との関係,宗教
の性格,社会的影響。
3. 発展および崩壊 ○荘園制 意議,荘園発生の社会的事情,
荘園発達とその社会的影響,
崩壊の原因。
○貴族の没落 意義,荘園内における武士勢力
の増大,没落の社会的影響,
末法思想と浄土教。
「封建社会」
貴族社会の動揺。
○武家政治への展開 地方武士勢力の伸長,武士の中
央政界への進出,鎌倉幕府の創
立。
○貴族から武士へ 武家政権の確立,農業生産力の
発展,新仏教の発生。
2. 特 質 ○土地を媒介とする主 起源,公的承認,意義,
従関係 日本封建社会の特質。
○身分制 由来,封建的階層の確立,
歴史的意義。
○農奴的生産関係 意義,内容,ヨーロッパ人におけ
るそれとの比較,現在の農業生
産関係との比較。
○家内工業 意義,内容,問屋制家内工業の
意義,地域社会における問屋制
家内工業。
○自給自足経済 意義,現代社会における自給自
足経済。
○武家政治 意義,発生の由来,特質、
○武士の文化と町人文 武士文化の性格と町人文化の意
化 義,武士文化の特質,町人文化
の特質,現代社会における町人
文化,現代社会に残る武士文化。
3. 発 展 ○荘園制より大名領国 大名領国制の由来,大名領国制
制へ の特質,大名領国制の歴史的意
義。
○外国文化の輸入 意義と由来,社会的影響,現代
社会に残る当時の外国文化。
○都市の発達 由来と意義,種類,封建社会に
及ぼす影響,諸外国のそれとの
比較,現代社会に及ぼす影響。
○徳川政権の確立 意義,幕藩制の成立,組織と内
容,現代社会に及ぼす影響。
4. 崩 壊 ○貨幣経済の発展 意義,発展の過程,
封建社会に及ぼす影響。
○町人勢力の成長 意義,封建社会に及ぼす影響,
ヨーロッパにおける市民社会と
の比較。
○農村の分解 意義,封建社会に及ぼす影響,
分解の展開,日本の農村分解と
諸外国のそれとの比較。
○幕政の衰退 幕政崩壊の要因,幕政改革の意
義,雄藩勢力の増大。
現の形態,近代思想の芽ばえ。
○国際社会への登場 外国勢力のアジア進出とその歴
史的意義,開国と不平等条約。
○近代国家の成立 開国による社会の動揺,新しい
政治への構想,幕府崩壊の意義,
明治推新の意義。
2. 特 質 ○工場制工業 意義,日本の特質,発展形態。
○契約的人間関係 封建的人間関係との相違,現実
社会の状態。
○立憲政治 自由民権運動と立憲政治への要
望,性格,外国との比較。
○人権自由の尊重 西欧民主主義思想の影響,現実
との矛盾。
○近代文化 発生の社会的事情,特質(貴族
・武士・町人文化との相違)。
3. 発 展 ○憲法の制定 近代社会における憲法の意義,
明治憲法成立の諸条件,明治憲
法と現行憲法。
○条約改正 改正の理由,改正への努力,不
平等条約のわが国に及ぼした諸
影響,成功とその意義。
○産業革命 意義,革命をもたらした諸要因,
日本産業革命の特殊性とその歴
史的意義,国民生活に及ぼした
影響,日本の産業主義の発展と
農村問題。
○政党の発展 政党の意義,第一次世界大戦の
世界史的意義,政党政治の展開
とその特殊性,政治の実権の所
在。
○軍閥政治 軍国主義増大の原因,軍閥政治
展開の諸条件,ヨーロッパの全
体主義と軍閥政治との関係。
○太平洋戦争 太平洋戦争と第二次世界大戦と
の関連,民主主義の勝利。
○日本の民主化 民主化の意義,憲法の精神,
諸改革の精神神とその内容,
民主化を妨げるものの所在,
世界情勢と講和条約,
文化国家日本の使命。
Ⅲ 日本史の参考単元例
(A)案
2.近代社会はどのように発展したか。
3.現代日本はどのような世界史的地位にあるか。
2.古代国家はどのようにして成立したか。
3.武士はどのようにして発生したか。
4.封建社会はどのようにして成立したか。
5.近代社会はどのようにして生まれたか。
6.近代社会はどのようにして発展したか。
7.世界大戦はなぜはじまったか。
8.戦後の社会はどのような問題をもっているか。
2.自由の少ない社会では人間はどのような生活をしたか。
3.人間はどのように自由を求めようと努力したか。
4.人間の自由はどのように確立されようとしているか。
2.律令制国家はいかにして形成され,いかなる問題をもったか。
3.身分制度や主従関係はいかなる社会で確立したか。
4.日本は近代化の道をいかに歩んでいるか。
なお,(D)案の学習活動の例には,おもに,話し合い・発表・作文などの形式のものをあげたが,実際の指導に当たっては,この他にも,種々な活動形式のもの,特に,教科書の中の必要な箇所をよく読む,教師の話を聞く,などのものが当然含まれなければならない。そして断片的ではなく,全体として系統だった学習活動の計画がなされることが望ましい。
この学習指導要領では,学習活動の例の数は,近代に近づくほど多くなっているが,これは,社会科歴史教育が,現代社会の理解を大きなねらいとしていることから当然である。したがって,各学校の指導においても,原始社会や古代社会の学習に多くの時間を費やして,近代に関する学習がおろそかにされないように注意することが望ましい。
参考資料表は,昭和26年春,東京都歴史教育研究会が作成したものから転載した。これはただ単元としての形式をととのえることを目的としたものであるにすぎない。
要 旨
原始社会は人類社会の出発点である。現代社会はこの原始社会の基盤の上に発展してきたものである。そこで,現実の複雑な社会を知るためにも,その土台であり,素材である原始社会についてまず学ぶほうが,学習上において多くの便宜が与えられるであろう。
また,歴史の最初の部分をばく然とさせていた神話・伝説などから解放されて,科学的な研究態度を育てる意味からも,本単元の設定は有意義であるといえよう。そのころ,人類はどのようにして自然と戦いながら生活を切り開いていったか。その社会生活・経済生活・宗教生活等を世界史的な関連のもとに学習させ,日本の原始社会と世界のそれとの間における共通性を発見させることが必要である
われわれの国土や,日本民族の起源などについても,地質学・人類学・考古学などに基いて,正しい科学的な態度をもって研究することがたいせつである。
目 標
2.原始社会を基盤として,その後の社会発展が組み立てられていることを理解すること。
3.日本の原始社会の世界史発展における位置を理解し,その特質を知ること。
4.自然と人間との関係を,原始日本社会において,理解すること。
5.人間心理の発展性を,芸術や宗教について,原始時代と現代との比較において知ること。
6.考古学的発掘物の観察・博物館見学・資料収集家訪問などによって,原始文化と現代文化の異同を比較し,また原始的遺物の鑑賞・整理・復系・図示などの能力を養い,これらを尊重する気風を養うこと。
Ⅰ 人類がはじめて地球上に現われたのはいつごろであろうか。
2.人類と動物との相違はどんな点にあるか。
2.日本民族の起源についてはどんな説があるか。
2.社会生活はどのようであったか。
3.原始人の信仰はどんなであったか。
4.自然はどんな支配力をもっていたか。
2.農業はどのようにしてはじまったか。
3.社会生活はどんなに変化したか。
4.大陸とはどのような関係にあったか。
学習活動の例
(2)人類の起源に関してどんな説があるかを調査し,それぞれの説を比較して表示してみよう。
(2)人間がことばを発明したことが,生活にどのように多様性を与えたかについて話し合ってみよう。
(3)道具を作りはじめたとき,火の使用を知ったときの人類の喜びと生活の進展とを想像して,作文に書いてみよう。
(2)日本列島が大陸から分離していることが,どのように日本民族の性格を決定したか考えてみよう。
(2)その民族がどのようにして,いつごろ日本の国土に住みつくようになったか,その渡渉の経路を図にかいてみよう。
(2)自分の家や学校の近くに,貝塚があったら見学し,どんなものが出土したか調べてみよう。
(3)縄文式土器の分布図をかき,どんな地域に多く分布しているが調べ,日本民族の祖先との関係を考えてみよう。
(2)縄文式時代の遺跡を調べ,当時の社会生活や社会組織はどんなであったか考えてみよう。
3)竪(たて)穴住居の生活には,どんな長所と短所があるか考えてみよう。
(2)未開人の習慣(たとえはタブー)で,今日もなお残るものがあるかどうかを調べてみよう。
(3)土偶によって原始社会の男女の地位を考察してみよう。
(2)自分が原始時代に生活していたと考えて、自然の暴力に対してどんな手段をとったか,その様子を作文に書いてみよう。
(2)弥生式文化の実際について,遺跡・遺物を実地調査して,縄文式と比較して表にしてみよう。
(2)日本の農業は,日本の国外からの影響で行われるようになったものと思われるが,日本の農業の特徴はどこにあるか討論してみよう。
(3)日本の農業の特質としての水田耕作について,種々の考古学的資料や神話学的資料がら詳しく調査してみよう。
(4)農耕の発生と発展が,生活にどんな影響を与えたかについて討論しよう。
(2)生活の業としての豊業が,どのような重要性をもって生活を変えていったか,もし自分が狩猟時代から農耕時代に移るときに生活していたら,どのようになるか想像して,作文を書いてみよう。
(3)社会に見られる貧富や階級の差は,はじめ,どのようにして発生したか,農耕文化に関係づけて考えてみよう。
(2)大陸における青銅器の出土分布図をつくって,これについて考えてみよう。
(3)中国における史書中,原始日本のことをしるした書物,ことに「魂志倭人伝(ぎしわじんでん)」を読んで,日本との関係を,報告書の形で発表しよう。
2.一般的な進化の理法を系統化させてみて,人類の発生と進歩について理解できたがどうか評価する。
3.「魂志倭人伝(ぎしわじんでん)」等をテキストとして,講読を全員で行い,当時の部落国家の統一過程が理解できたかどうか評価する。
4.簡単に間に合う材料を用い,クラスの協同作業で,実物大の竪穴住居および石器・土器などをつくり,学校の記念祭その他に一般公開する。その際に生徒が原始生活についてどの程度正確に理解したかを観察評価する。
5.西暦紀元前後5・6世紀の間の世界の文化を示した年表をつくらせ,日本の原始時代の世界史上の位置が理解できたかどうかを評価する。
6.次の重要概念を歴史的に理解したかどうか,テストによって調べる。
8.博物館その他の見学に際して,生徒の熱心さや態度を観察する。
◎全時代を通ずるもの
新日本史講座 中央公論社
小国民新聞 新しい日本の歴史(7巻) 毎日新聞社
辻 善之助 日本文化史(7巻) 春秋社
日本文化史大系 誠文堂新光社
世界美術全集 平凡社
川上多助 日本歴史概説(上下) 岩波書店
豊田 武 概説日本歴史(上下) 大阪教育図書株式会社
坂本太郎 日本史概説(上下) 至文堂
小西四郎 日本歴史講話 修文館
家永三郎
小西四郎 新しい日本の歴史 毎日新聞社
松島栄一
遠山茂樹
石母田 正 世界の歴史(日本) 毎日新聞社
高橋碵一
家永三郎 新日本史 冨山房
和歌森太郎 新稿日本史 有精堂
竹内理三 ぼくらの社会史 東京堂
史料編纂所 絵で見る日本史 養徳社
森末義彰 日本史の研究 旺文社
芳賀幸四郎 日本史の新研究 池田書店
日本絵巻物集成 雄山閣
吉田東伍 日本読史地図 冨山房
芦田伊人
辻 善之助 大日本年表 大日本出版
世界歴史大年表 平凡社
模範最新世界史年表 三省堂
朝日年鑑
毎日年鑑
読売年鑑
時事年鑑
文部省 図画工作科鑑賞資料
絵画編 大日本図書株式会社
彫刻編
建築編
幻燈 新しい日本の歴史9巻 毎日新聞社
幻燈 日本の面影 32コマ 日精産業株式会社
スライド 日本の彫刻 東映製作所
スライド 日本の建築 東映製作所
35ミリ 美の殿堂 2巻 理研映画社
浜田耕作 通論考古学 大鐙閣
甲野 勇 先史考古学入門 山岡書店
後藤守一 日本考古学 全国書房
後藤守一 私たちの考古学(先史時代篇) 八重山書店
梅原末治 東亜の古代文化 養徳社
清野謙次 日本歴史のあけぼの 潮流社
松丸志摩三 日本農業物語 霞ケ関書房
まつしまえいいち
たかはししんいち 日本の国が出来るまで 日本評論社
みやもりしげる −目で見る日本史−
駒井和愛 文化のあけぼの 三省堂
後藤守一 祖先の生活 講談社
松崎寿和 倭人伝 大化書房
森本六爾 日本における農耕文化の起源 葺牙書房
西村真次 日本人はどれだけのことをしてきたか 新潮社
イリーン 人間の歴史 岩崎書店
35ミリ 登呂 2巻 新世界映画社
律令制国家はいかにして形成され,いかなる問題をもったか。
要 旨
原始社会の必然的発展経路として、また現代に非常に関係の深い封建社会を生むに至った古代社会を,その重要性の意味において,一単元に設定した。古代社会は国家的統一といっても,結合状態はゆるやかであり,唐制の色彩も濃い律令に時代を規制され,「咲く花のにおうがごとき」都は地方の寒村と大きな対照を示すものであった。
法制の実施上の矛盾は,ついに次代の英雄武士を生み,それに伴ってすぐれた文化を残しつつ貴族は没落していった。祖先すなわち過去の人々がどのようにして発生し,自分の国土に住みついたかという直接的な興味のあった前の単元と違って,生徒の興味を引きにくい本単元では,まず最も生徒に近い国家の成立からはいり,律令制の理解と土地制度の変遷の考察に重点をおいた。
神話でない日本の国家の成立が,神でない祖先を生き生きと描くことによって,自己との連関をめいりょうにし,国民としての自覚を得しめるであうう。
さらに貴族文化としての文学・彫刻等に触れることによって,生徒の心の故郷としての古代を感ぜしめたい。
目 標
2.古代社会が原始社会および近代社会と本質的に相違することを理解すること。
3.神話や伝説を科学的に取り扱い,古代国家の発生について正しい認識をもつこと。
4.古代社会における生産と技術の発展を理解すること。
5.古代社会における法律や政治等の諸制度のもつ役割を理解すること。
6.古代社会における宗教・学問・文学・芸術等の文化遺産を、正しく評価するとともに,これを尊重愛護する態度を養うこと。
7.外国との交渉は,社会の進歩発展の重要な原因であることを理解するとともに,外国文化を正しく評価し,その長所は積極的に摂取して,社会生活の向上に資する態度を養うこと。
8.古美術を鑑賞し,古典を愛読する趣味を養うとともに,これらをとおして古代社会を正しく理解する能力と態度を養うこと。
9.種々な歴史的資料に基いて,古代人の生活を復原し,あるいは歴史的人物や事件を劇化・演出し,または古代社会に取材した論文を書くなどの技能や学問的態度を養うこと。
Ⅰ 律令とはどんなものか。
Ⅱ 律令制の敷かれる以前の社会では,人々はどんな生活をし,どんな文化をもっていたか。
2.古代初期の社会生活はどんなであったか。
3.古墳文化とは何か。
2.律令制はどのようにして成立したか。
3.律令制の成立は国内にどんな影響をもたらしたか。
2.律令国家の文化はどんなであったか。
3.律令制下の人々の生活はどんなであったか。
2.国内文化はどのように伸びていったか。
1.律令制はどんな矛盾をもっていたか。
2.律令制が破れて,社会はどのように展開したか。
Ⅰ
(2)法律のない社会はどんなだろうか討論してみよう。
(3)律令がどの程度中国の模倣であるか,中国の法令と比較して調べ,一覧表をつくってその得失を論じてみよう。
(2)当時の統一された「国家」と今日の文明諸「国家」との相違について討論してみよう。
(3)日本地図によって,大和の政治地理的な位置について考えてみよう。
(2)大氏族と朝廷の関係について考え,蘇我(そが)氏の行為を批判してみよう。
(2)古墳の中からの出土品によって,当時の社会生活を複原して図示してみよう。
(3)埴輪(はにわ)について美術的に考え,ギリシア彫刻と比較した文章を書いてみよう。
(4)古墳の模型図とつくってみよう。またこの古墳の分布を調べて,地域的に意味づけをしてみよう。
(2)先進国と後進国との文化の流れの方向を討論してみよう。また当時はいってきた文物について考えてみよう。
(3)聖徳太子(しょうとく)の国交の態度について論じてみよう。
(2)憲法十七条をよく考え,今日の憲法と比較して,それぞれどんな点が強く主張されているか討論してみよう。
(2)班田制は階級の平等な権利を与えるものがどうか調べてみよう。
(3)氏姓制度の社会と律令制度の社会とを比較し,その変化を表に現わしてみよう。
(2)大和朝廷の努力が,国内に対して,また国外に対して伸びていった事情をたどって、地図に現わしてみよう。
(3)鉱物資源の開発が,経済的にどのような意味をもつか論じてみよう。
(4)この時代の仏教と政治との関係について論文を書いてみよう。
(2)当時の美術のうち,自分の最も好きなものについて詳しく調べてみよう。実際に見たものがあったらその話をしあおう。
(3)正倉院の御物に現われた外国の影響について論文を書いてみよう。
(4)「堤(つつみ)中納言物語」の中の一つを脚色して演出し,当時の風俗・習慣・生活感情をよく理解しよう。
(2)土地公有制の得失について論文を書いてみよう。
(3)なぜ貨幣経済が行きわたらなかったか考えてみよう。
(4)中央と地方との生活の比較を種々のものについて行い,表示してみよう。
(5)当時の女性の地位について,書物によって調べて発表しよう。
(2)「鎖国の悲哀」—和辻哲郎—を読んで,その感想を作文に書いてみよう。
(2)貴族の繁栄は文化の進展にどんな影響を与えたかを調べ,論文にまとめてみよう。
(3)仏教にはどのような変化が生じたか,律令国家の繁栄していたころと比較して表に現わしてみよう。
(4)博物館を尋ねて美術工芸品を鑑賞し,または写真等を教室に展覧してその作品について話を聞こう。
(2)班田収授法は規定どおり正しく行われたか,もし,このような土地制度が行われたとしたら,どのようなことになるか討論してみよう。
(2)荘園制の発展に伴い,貴族政治はどのように推移していったか調べて,報告書を書いてみよう。
(3)律令制の衰退によって,地方の治安はどのようになっていったか調べて発表してみよう。
2.古代社会と原始社会の経済生活について討諭させ,その本質的相違を理解したかどうかについて判定する。
3.「古事記」または「日本書紀」の一節を選んで,その合理性を検討させ、古代国家の発生について正しい認識を得たかどうか評価する。
4.飛鳥(あすか)仏像と天平(てんぴょう)仏像とを比較した文を書かせ,その背景となる時代の特色をとらえることができたかどうが調べる。
5.「青丹(あおに)よし奈良(なら)の都は咲く花のにおうがごとく今さかりなり」の和歌について感想文を書かせ,当時の帝都の繁栄を歴史的に理解したかどうか判定する。
6.次の重要概念を歴史的に理解したかどうかテストによって調べる。
8.「固有文化と世界文化」・「文化交流」等について討議させ,外国文化の摂取の重要性の認識とその態度とを観察評価する。
橋本増吉 東洋史上より見た日本上古史研究 大岡山書店
山崎 宏 東洋史上の古代日本 清水書房
梅原末治 古墳の話 養徳社
和辻哲郎 日本古代文化 岩波書店
駒井和愛 日本古代と大陸文化 野村書店
斎藤 忠 上代に於ける大陸文化の影響 大八洲出版株式会社
辻 善之助 日本文化と仏教 大日本図書株式会社
坂本太郎 大化改新の研究 至文堂
天平の文化(上下) 朝日新聞社
津田左右吉 日本古典の研究(上下) 岩波書店
石田茂作 法隆寺と正倉院 三省堂
川上多助 日本古代社会史の研究 河出書房
建築編 1巻 日本映画社
仏像編 1巻 〃
壁画編 1巻 〃
35ミリ 室生寺 2巻 文部省
35ミリ 法隆寺 4巻 文部省
16ミリ 法隆寺 2巻 文部省
スライド 法隆寺 東映製作所
35ミリ 京 都 1巻 交通公社
第3単元
身分制度や主従関係はいかなる社会で確立したか。
要 旨
人類の進歩に伴う社会生活の発展については,世界を通じておよそ共通的なものがある。多くの国々において,古代社会と近代社会との間に,封建社会の時代を経過している。わが国でも,近代社会にはいる前に,武士によって治められ,身分制度や主従関係の確立した封建制度の時代が存在した。しかもその時代が非常に長かったがために,民主主義の時代になった今日においてさえ,封建的な習慣や物の考え方がまだまだ根強く存在し,完全な近代化への根本的障害となっている。
われわれは,よりよい近代社会を建設し,近代的心性と態度とを育成する上からも,ほとんど自由のなかった封建社会はどのようにして成立し,人々はどんな社会生活を営んでいたか,またそうした社会はなぜ崩壊したかを知ることはきわめてたいせつなことである。ここに本単元設定の意義が存在する。
本単元を学習することによって,自己および自己の周囲から進んで封建的なものを取り除こうとする態度を養成するとともに,真の民主主義社会の建設に協力する積極的関心を起させることがたいせつである。
目 標
2.封建社会が近代社会の前提であるとともに,本質的には相違していることを理解すること。
3.封建社会が必然的に発生したことを歴史の理法がら考察すること。
4.階級制度と土地制度を理解し,それが封建社会の骨子をなすものであるとともに,それゆえに滅びなくなって行く過程を知ること。
5.外国の中世における封建制度と日本のそれとを比較し,その特質を理解すること。
6.封建社会の古典芸術・文学に対する理解・鑑賞力の養成と歴史的伝記劇や小説の構成・創作力の養成に努めること。
7.新しい気運が古い封建制度のうちに芽ばえてくる過程について理解すること。
8.世界からとざされた状態の中で封建社会が熱して行く過程を理解し,それが健康な発展でないことを理解すること。
9.現代のいわゆる封建的なものに対する正しい批判力・態度を養うこと。
Ⅰ 今日でも「身分制度」や「主従関係」と思われるものが残ってはいないか。
Ⅱ 「封建的」とか「封建性」とはどんなことか。
Ⅲ封建制度はどのような力によってうち立てられたか,またその社会では人人はどんな生活をしていたか。
2.武士はどのようにして貴族に代わって政権を握るようになったか。
3.封建社会はどのように展開し確立されたか。
4.封建社会の経済はどのように発達したか。また当時の人々はどのような生活をしていたか。
2.庶民文化はどのようにして発達し,現代文化とどのようなつながりをもっているか。
2.西洋諸国との交渉はどのようにして開けたか。またそれはどんな影響をもたらしたか。
2.封建的社会機構はどんな点からくずれるようになったか。
Ⅰ
(2)今日われわれの周囲に残っている「身分制度」や「主従関係」をみなで調べて集め,いつごろからこれらが行われていたか研究してみよう。
(2)日常「封建的」といわれるものの二,三の実例を持ちよって,それがはたしてどのような性質をもつものか討論し合おう。
(3)「千代萩(せんだいはぎ)」や「寺子屋」「熊谷陣屋(くまがいじんや)」等の歌舞伎(かぶき)の一幕を演出(本読み)してみて,その封建性について論じ合おう。
(2)中国の歴史を通観して,上のような事実を拾い,その共通性について論文を書いてみよう。
(3)土地制度と武士の勢力の伸展の関係を調べてみよう。
(2)鎌倉(かまくら)の政治地理的位置を読図しよう。
(3)鎌倉幕府の組織が当時の国内情勢に適合したものであったがどうかについて討論してみよう。
(2)「平家物語」・「源平盛衰記」・「太平記」などを通読して,軍記物の特色を知るとともに,その背景となる時代性を調べて発表してみよう。
(3)南北朝のころについて批判し,南北両朝に分れて討論しよう。
(4)応仁の乱のもつ意義を政治的に考察してみよう。
(5)信長・秀吉・家康の3人の政策のおもなものをあげ,その類似点を指摘し,それぞれの政策のもつ歴史的意義を考えてみよう。
(6)検地とはどんなものか,村の旧家に検地のときの帳面があったら見学しよう。
(7)家庚のころの大名配置図をつくり,親藩・譜代(ふだい)・外様(とざま)を色別にして示し,交通路のだいたいを書き込でみよう。
(8)江戸幕府の組織を鎌倉・室町のそれと比較して表をつくってみよう。
(9)親分子分・親方子分の関係で,今でも残っているものがあったら,できるだけその例を集めてみよう。
(2)室町幕府のころに興った各地の産業で,今日まで続いているものがあったらその歴史を調べてみよう。
(3)室町幕府のころに興った問屋・為替(かわせ)・定期市は,今どうなっているか調べてみよう。もし当時からの問屋や定期市が付近にあったら見学しよう。
(4)封建時代の初期から末期にかけて,国民の経済生活はどのように進んだか,何か一つの実例をとらえて論文を書いてみよう。
(5)室町幕府のころにおける農村の事情を調べ,江戸幕府のころにおける郷村制の成立にどのような影響を与えたが調べてみよう。
(6)封建社会以来の家族制度の変化を調べてみよう。
(2)「書院造」の住宅設計に,住めるように装飾を施してみよう。
(3)東山文化で,現在われわれの周囲に残っているものをさがして発表してみよう。
(4)「狂言」の一つを実演してみて,当時の文学に現われたユーモアについて討論してみよう。
(2)戦争と平和が文化の発達にどんな作用をするか考えてみよう。
(3)文化が町人に移っていった原因と意味について論じ合おう。
(4)庶民文化中,封建性を現わすものと近代精神を現わすものについて討論しよう。
(5)今日のわれわれの生活の周囲にある江戸時代の遺物について,衣・食・住その他に分けて,組中で調査してみよう。
(2)倭寇(わこう)と元寇について比較討論してみよう。
(3)「神風(かみかぜ)」を批判する論文を書こう。
(4)秀吉の外交について調べかつ討論しよう。
なぜこの役が起ったか,また失敗したか,を太平洋戦争と比較して論じてみよう。
(2)いわゆる「蘭学(らんがく)」は,日本にどんな精神を吹き込んだか論じてみよう。
(3)自分たちがもし当時に住んでいたら,キリスト教の伝来にどんな救いを感じたか,感想文にしてみよう。
(4)自分が信長・秀吉・家康のひとりであったとしたら,キリシタンについてどんな政策をとったろうか,一人称で作文に書いてみよう。
(5)鎖国の是非を組に分れて討論してみよう。
(2)農民がなぜしいたげられねばならなかったかについて論文を書いてみよう。
(3)フランス革命前夜のフランスの階級制度の矛盾を日本のそれと比較してみよう。
(2)農民の苦難を現わした物語を脚色してみよう。またそれを演じてみよう。
(3)「農民一揆(いっき)」・「打ちこわし」を現代の労働争議と比較して,その是非を討論してみよう。
(4)自分の郷里に百姓一揆の起った例があれば,共同で調査してみよう。
2.古代一封建一近代と一貫した歴史の発展の流れを表にくふうしてつくらせ,その間の因果関係を理解したかどうかを評価する。
3.自分の身辺の封建的と呼ばれるものについて調査させ,封建的の意味を理解したかどうかをみ,またどのように改善すべきか,どのように保存すべきかを論文に書かせ,社会に対する関心や熱心の程度を評価する。
4.「中世騎士物語」—バルフィンケ,野上弥生子訳(岩波文庫)—の中の一節を示し,わが国のそれと比較の感想文を書かせ,日本の封建武士道を理解できたかどうか評価する。
5.「阿部一族」—森鴎外—を脚色して演出させ,その中の封建色とそれから抜け出ようとする苦しみについて,じゅうぶん理解できたかどうかを観察・討議等によって評価する。
6.次の重要概念を歴史的に理解したかどうかテストによって調べる。
伊東多三郎 日本封建制度史 大八洲出版株式会社
中村吉治 封建社会 日本評論社
長谷川如是閑 封建文化 岩波書店
竜 粛 鎌倉時代の研究 春秋社
森末義彰 東山時代とその文化 秋津書房
野上豊一郎 能の話 岩波書店
高野辰之 国劇史概観 春秋社
中村吉治 封建制の再編成史 三笠書房
児玉幸多 江戸時代の農民生活 大八洲出版株式会社
北島正元 近世日本農民社会史 雄山閣
西堀一三 日本茶道史 創元社
森 銑三 おらんだ正月 冨山房
岡田章雄 南蛮宗俗考 地人書館
幸田成友 日欧通交史 岩波書店
川島元次郎 朱印船貿易史 朝日新聞社
大島延次郎 日本交通史 四海書房
古島敏雄 日本封建農業史 四海書房
宮本叉次 近世商業組織の研究 有斐閣
小野 均 近世城下町の研究 至文堂
伊東多三郎 国学の史的考察 大岡山書店
豊田 武 封建社会 三省堂
清水三男 日本中世の村落 日本評論社
芳賀幸四郎 東山文化の研究 河出書房
小田切秀雄 夜明け前の人々 丹波書林
スライド 蘭学事始 33コマ 理研スライド
35ミリ 日本二十六聖人(我世に勝てり)8巻 聖パウロ会
35ミリ 二条城 2巻 文部省
85ミリ 二宮尊徳先生 3巻 文部省
日本は近代化の道をいかに歩んでいるか。
要 旨
近代社会は現にわれわれの生活している社会である。われわれの社会生活や文化を考えてみると,古い歴史的遺産もあるが,その大部分は明治以後の所産である。したがって,われわれの現在の生活を最もよく理解するためには,この近代社会の全容を明らかに知らねばならぬ。近代社会は封建社会の必然的発展として生まれた社会であるが,日本の近代社会ははたして近代化された理想的な民主社会であったかどうか,すなわちその本質を明らかにし,政治や社会組織のあり方,文化の傾向がどんなであったかを検討し,さらに太平洋戦争を引き起し,敗戦のうきめをみるに至った原因を,われわれ日本人は真剣に反省すべきである。
戦後における新憲法の成立・政治・経済・社会・教育等における諸改革のもつ歴史的意義を正しく認識することは,生徒にとっても最も必要なことであり,さきに学習した各単元の内容を前提として,深い歴史的考察のもとに,現代社会の諸問題を有機的に相関的にはあくし,進んで問題解決に協力する積極的な情熱と態度を育成し,民主国家の建設と,さらに世界の平和および人類の福祉に貢献できる人材の養成に資すべきであろう。ここに本単元学習の教育的および社会的意義があるのである。
目 標
2.日本の近代社会とヨーロッパのそれとを比較して,その特殊性を理解すること。
3.日本の近代社会において,民主主義はどのようにして起り,発展してきたかを欧米のそれと比較して理解すること。
4.日本の資本主義の特質と,その特質をもつに至った原因について理解すること。
5.日本の近代文化発生の社会的事情およびその性格について理解すること。
6.基本的人権を伸ばすための日本国民の努力とその意義について理解すること。
7.現在社会の諸問題を総合的に歴史的に理解する能力を養うとともに,進んで,問題解決に協力する積極的態度を養成すること。
8.現在の国際間の諸問題を正しく理解するとともに,平和こそ人類終局の理想であることを認識し,平和を擁護する確固たる信念と態度を養うこと。
9.歴史的理解を通じ,民主主義社会を推進するための自己の責任を自覚し,進んで民主国家建設にてい身する積極的態度を養うこと。
1O.現在日本の世界史的地位を理解するとともに,国際親善・世界平和に対する正しい協力的態度を養うこと。
11.外国文化を理解・尊重するとともに,わが国文化の長所をも認識し,現代の生活文化を向上させる意欲を養うこと。
12.ラジオ・新聞・雑誌等の適切正確な資料によって,現代社会の諸問題を正しく理解しようとする態度や習慣を養うこと。
Ⅰ 近代とか近代的とかいうことはどんな意味をもっているか。
2.日本の近代社会と西欧のそれとの間には,どのような相違や類似点があるだううか。
2.日本の近代社会の芽ばえにはどんなものがあったか。
3.欧米諸国の東洋進出はどのようにして行われたか。
4.開国後の貿易はどんなふうに発展したか。
5.尊王攘夷(じょうい)運動はどのように展開されたか。
2.地租改正は社会にどんな影響を及ぼしたか。
3.義務教育はいつごろから始められたか。
4.明治政府の富国強兵政策はどんな内容をもっているか。
5.いわゆる「文明開化」とはどんなことか。
2.自由民権運動はどのように展開されたか。
3.明治憲法はどのようにして制定されたか。
4.初期の議会はどのようにして開かれ,どんな力をもっていたか。
5.対外関係はどのように推移していったか。
6.日本における産業革命は,どんな形で行われ,また,どんな影響を社会に与えたか。
7.日本の近代文化はどんな特色をもって展開されたか。
2.日本の政党政治はどのように展開されたか。
3.社会運動はどのような社会的基盤に発生したか。
4.近代生活はどのようにして国民の間に浸透していったか。
5.日本はどのようにして大陸へ進出していったか。
6.ファシズムと民主主義との対立はどのような結果をもたらしたか。
2.新憲法はどのようにして制定されたか。
3.教育の民主化はどのように行われているか。
4.農地改革はどのようにして行われたか。
5.戦後における日本の国際的つながりはどのようであったか。
6.現在の日本はどのような問題をもっているか。
7.われわれは日本の民主化にどのような覚悟をもって参加したらよいか。
Ⅰ
(2)江戸のころと維新以後の人口増加率を調べて表につくり,これを比較して、どんなことがわかるが考えてみよう。
(3)近代社会になった明治初年において,百姓一挨がひん発しているのはなぜだううか。その発生数を調べてグラフをつくり,理由を考えてみよう。
(4)行政の区域はどのように変化したかを,江戸時代・廃藩置県直後・現在の三つに分けて対照表をつくってみよう。
(2)明治時代の政界や財界を支配したおもな人々をあげ,かれらは封建時代どんな階級に属した人々あったか調べ,またその勢力を得た理由を考えてみよう。
(2)日本が鎖国してから開国までの,世界史と日本史の対比年表をつくってみよう。
(3)米国の独立がれい明期の世界にどのような影響をもたらしたか論じてみよう。
(2)「おらんだ正月」—森 銑三—,「蘭学事始」—杉田玄白—によって,当時の人々がどのように,新しい知識をうるに苦心したかを調べて,論文にしてみよう。
(3)幕末のころに高まってきた百姓一揆の動きは,どんな意味をもっていたか討論してみよう。
(2)東洋の海上における古い帝国主義と近代資本主義の争いを,地図にしるしながら説明してみよう。
(3)ヨーロッパにおける反動宗教改革は,ヨーロッパ人の東洋進出にどんな役割をしたか考えてみよう。
(4)欧米諸国の東洋進出の模様を,英・米・露・仏の4班に分けて調べ,報告会を開いてみよう。
(5)黒船渡来の模様を号外の形につくってみよう。
(2)開国後の貿易の結果,社会情勢がどう変ってきたか,研究して発表,してみよう。
(3)外人殺傷事件が妥当かどうかについて討論してみよう。
(4)日本の開国と中国の開国との比較を論文にしてみよう。
(2)郷土に維新前夜に活躍した人があったら,その写真等に簡単に説明書を付し,展覧しよう。またその人の生まれた家に行って当時をしのんでみよう。
(3)徳川慶喜の大政奉還の上表文を読んで,感想を述べてみよう。
(4)「夜明け前」—島崎藤村—を読んで,その大要について話し合い,当時の世相をまとめてみよう。
(2)帯刀を廃止きれたときの武士の感情を感想文にしてしるしてみよう。
(3)島崎藤村の「破戒」を脚色してみよう。映画が見られたら鑑賞して合評会を開こう。その中から,新政府の四民平等の理想の不徹底さを考えてみよう。
(4)四民平等の精神はどのように現われたか,教育・衣食住・女性の地位について調べて発表しよう。
(2)地租改正によって農民は救われたろうが,またそれはなぜだろうか,論じてみよう。
(2)学制頒布の法令,を読んで,それがどのような色彩をもつか討論しよう。
(3)明治初年の教科書があったら,持ってきて示し,今日のものと比較して,どのような点が著しく違っているかを話し合ってみよう。
(4)郷里の小学校はいつごろできたか,そのころどんな勉強をしていたかを祖父母や古老に聞いてみよう。
(2)江戸幕府のころからの幣制と,新政府の幣制を比較して,産業の上にどのような影響があったか論じてみよう。
(3)日本の資本主義の発達を年表に表わしてみよう。
(4)北海道の地図により,屯田兵制の敷かれた場所を見つけて詳しく調べてみよう。
(2)「文明開化」の生んだ悲喜劇について発表しよう。
(3)自分たちの祖先は,維新のとき,どんなことを見聞したかを各自でいろいろな資料で調べ,その結果を大小残らず黒板に書いて報告し合おう。
(2)世界の立憲国について,その成立年代を調べ,表につくり,なおその成立事情について討論してみよう。
(2)自由民権運動に参加した人々,たとえば,板垣退助や影山英子らの伝記を調べ報告しよう。
(2)明治憲法における天皇の地位,人々の基本的人権について,現在の憲法のそれと比べ,討論してみよう。
(2)初期の国会と今日の国会とを比較して,その権限・構成・議員の選出法等を調ベ,その対照表をつくり,話し合ってみよう。
(3)国会は初期から太平洋戦争の終戦に至るまで,社会的事情に応じて,どのように変化してきたかを調べ,学級に報告してみよう。
(2)鹿鳴館(ろくめいかん)時代とはどういう時代か,これについて話を聞こう。なおそのころの風俗を調べ,写真や絵を集め,展覧してみよう。
(3)朝鮮と清国の17世紀以後の歴史,特に,わが国との交渉を含めた歴史を簡単な年表につくってみよう。
(4)日清・日露戦争当時,わが国の外務大臣はどんな苦心をしたか,特に陸奥宗光・小村寿太郎の伝記を調べて,劇化してみよう。
(5)日露戦争前後の世界情勢において,英米は日本をどのように援助したか調べてみよう。
(6)条約改正はいつごろ行われたか,それに至るまでの努力のあとを調べて表につくってみよう。
(2)イギリスの産業革命と日本のそれとを,その成立の社会的事情,発展の姿,当時の社会に与えた影響などについて,比べて討論会を開いてみよう。
(3)日本は産業革命の結果,海外市場の獲得に狂奔するようになったのはなぜか,またそれは当時どのような国際問題を引き起すようになったか,それははたしてやむを得ない事情であったかについて考えてみよう。
(4)郷土に大工場があれば,その工場を見学し,それがいつごろでき,そしてどのように発展してきたかについて調べて、報告文をつくってみよう。
(2)明治時代の代表的文学作品を読んで,互にその感想を学級に報告してみよう。
(3)明治時代の新聞・雑誌・写真等をみんなで持ちよって,機能別に分類し,展覧会を開いてみよう。
(4)近代文化の発達とその特色について,小論文を書いてみよう。
(5)次の人々はどんな仕事をしたか調べて発表しよう。
(2)第一次大戦後の恐慌はどんな原因によって現われてきたか,それは日本の資本主義にどのような影響を与えたが,また政府はどんな対策をとったかを調べて発表しよう。
(3)三井・三菱などの財閥はどのようにして発展していったか,そして日本の経済界にどんな勢力をもっていったか,なぜ戦後,財閥は解体されねばならなかったか討論しよう。
(2)わが国における政党内閣とその政治的功績を調べて,表につくってみよう。そして政党政治の全盛期はいつごろであるか,またそれはいつまで続いたか考えてみよう。
(3)尾崎行雄の伝記を読んで,いかにかれが政党政治擁護のためにたたかってきたか,級に発表しよう。
(4)財閥と政党との結托はどのようにして行われていったか,それは政党政治にどんな影響を与えるようになったか,討論会を開いてみよう。
(2)大正7年に起った米騒動はどんな運動であったか。それはまた当時の社会にどんな影響を与えたか調べてみよう。
(3)社会運動が活発となるに従って,婦人の間にどんな運動が展開されたか、その結果はどんなになったか調べてみよう。
(2)国民の娯楽という立場から,映画の問題を論文にまとめてみよう。
(3)野球・水泳・陸上競技等の学生スポーツはいつごろから盛んになったか,これらの競技を盛んにするための施設や行事には,どんなものがあるか調べてみよう。
(4)オリンピック大会に,日本はいつから出場するようになったか,また大会における日本選手の活躍の状況を調べて表をつくってみよう。
(5)「武者小路実篤」・「有島武郎」.「芥川竜之介」等の作品の一つを読んでそこにあらわれている当時の社会生活に対する感想を発表し合おう。
(3)満帆事変・日華事変を経て太平洋戦争へ,わが国の戦時態勢ばどのように進行していったか,おもな事がらを個条書きにしてみよう。
(1)明治以後のわが国の思想は,国枠主義と民主(欧化)主義を両極として動いている。この角度から思想や文化の動きをとらえ,討論してみよう。
(2)ファシズムは日本ではどのようにして起ってきたかを調べ,論文にまとめてみよう。
(3)ドイツのナチズム,イタリアのファシズムと日本のファシズムとの関係について討論してみよう。
(2)ポツダム宣言の全文を読んで,それはどんなものか,またわれわれに最も強く要求しているものは何かを調べてみよう。
(3)ポツダム宣言受入れに伴う命令によって,どんな事がらが行われたか,おもなことを個条書きにして表に現わしてみよう。
(2)新憲法における天皇の地位を,イギリスの国王と比較して考えてみよう。
(3)新民法において,われわれの家庭生活はどのように変ったかについて討論してみよう。
(4)西洋諸国の法制では,男女の立場はどのように定められてきたかを調べ,明治の民法や今の民法での定めと対比してみよう。
(2)男女共学はどのように行われているか,その長所および欠点について討論してみよう。
(3)女性の立場は,女性のもつ経済力・教養とどう関係するか,歴史の各時代についてとらえて討論しよう。
(4)われわれの学校生活はどのように民主化されたか,各自の学校について具体的に考えてみよう。もし民主化されていない点があれば,その民主化をはかるために,いかにすべきかについて討論してみよう。
(2)農地改革の行われない以前は,地主と小作人の間にどんな関係があったか調べてみよう。
(2)世界連邦設立運動とはどんなものか。平和運動としてどれだけの実現性をもっているか討論してみよう。
(3)対日理事会・極東委員会とはどんなものか。日本はこれによってどんなに影響を受けるか考えてみよう。
(2)新憲法の精神は人類の可能の限界を越えているかどうか,「戦争放棄」について討論してみよう。
(3)日本の戦前戦後の人口問題・食糧問題について,統計をつくってみよう。そして今後の方策を論じてみよう。
(2)「農村の社会生活を合理化するにはいかにすべきか」という題で小論文を書いてみよう。
(3)われわれの家庭や村,町等において,民主化の実践者の例があれば,それを発表し,それについて批判し合おう。
(4)今後,男女同権をどういう意味において実現できるだろうか,調べた結果に基いて研究発表し合おう。
(5)ベネディクトの「菊と刀」を読んで,クラス全体で合評会を開こう。
2.封建社会と近代社会との発展の歴史について,わが国とイギリスとを対比させて研究調査させ,レポートを作成提出させて,近代社会の本質と日本近代社会の特殊性を理解したかどうかを評価する。
3.大正・昭和以後の総合文化史年表をつくらせて,日本の近代文化の性格が理解できたかどうかを評価する。
4.「戦争か平和か」の題で討論させ,人類の歴史を通観して,常にこれら二つの経緯の糸の織りなしであること,平和のための努力こそ真に意義あるものであることの結論に達するかどうがについて,観察評価する。
5.「日本人の世界的使命」について作文を書かせ,これからの日本人の決意が正しく自分のものになっているかどうかを評価する。
6.日本が敗戦するに至った理由を歴史的に反省した討論会を行わせて,日本資本主義の特殊性の理解,日本の世界史的地位の理解,平和への信念の確立,国際親善と世界平和への協力の態度ができたかどうか判定する。
7.次の重要概念を歴史的に理解したかどうか,テストによって調べる。
9.「鎌倉幕府のころの宗教改革はどのようにして起ったか」「都市の発達と幕府の滅亡とにはどんな関係があるか」などの問題を提出し,歴史を総合的にかつ発展的に理解するようになったかどうか判定する。
10.今日起りつつある事件をクラスで討論させ,相互の意見を判定することによって,人間生活において歴史の重要性を認識し,問題の解決のために多くの資料や情報を集めてその上で複雑な事情を分析しようとする態度を持つようになったかどうかを評価する。
11.レポートや口頭報告をさせた場合に,ただ小ぎれいにまとめたり,他人の著書をそのまま写すような態度であるかどうか,問題を解決するための真剣な努力が現われているかどうかを観察することによって,真実を探求しようとする態度ができたかどうかを評価する。
12.東西を対照したもの,特殊な事項に分けたものなど種々の年表を作成させて,歴史的時間の観念が明確になったかどうかを判定する。
小西四郎 明治維新 三省堂
東大史学会 明治維新史研究 冨山房
羽仁五郎 明冶維新 岩波書店
遠山茂樹 明治維新 岩波書店
尾佐竹猛 明治維新 白楊社
石井 孝 幕末貿易史の研究 日本評論社
田口卯吉 日本開化小史 岩波・改造文庫
福沢諭吉 文明論の概略 岩波書店
E・H・ノーマン 日本における近代国家の成立 時事通信社
岡 義武 近代日本の研究 弘文堂
下村富士男 明治維新の外交 大八州出版株式会社
土屋喬雄 日本資本主義史上の指導者達 岩波書店
土屋喬推 続日本経済史概要 岩波書店
信夫清三郎 日本近代外交史 中央公論社
尾佐竹 猛 日本憲政史 白楊社
児島兼三郎 ファシズム(岩波新書) 岩波書店
森 正蔵 旋風二十年 鱒書房
森 正蔵 転落の歴史 鱒書房
近衛文麿 失われし政治 朝日新聞社
米国国務省 戦争と平和 協同出版社
グル一 滞日十年(上下) 毎日新聞社
白木正元 日本政党史(昭和篇) 中央公論社
野村吉三郎 米国に使して 岩波書店
高木惣吉 太平洋海戦史(岩波新書) 岩波書店
朝日新聞社法廷記者団 東京裁判 ニュ一ス社
原田日記 岩波書店
原 敬 原敬日記 乾元社
日本文明史 日本評論社
明治大正史 朝日新聞社
三宅雪嶺 同時代史 岩波書店
チャーチル 第二次大戦回顧録 毎日新聞社
島崎藤村 夜明け前 新潮社
島崎藤村 破戒 新潮社
福沢諭吉 学問のすすめ 岩波書店
夏目漱石 全集 岩波書店
ルース・ベネディクト 菊と刀 社会思想研究会
岡倉天心 茶の本 岩波書店
35ミリ 新憲法の出来るまで 2巻 日本映画社
35ミリ 人民の憲章 12巻 CIE教育映画
35ミリ 戦争と平和 12巻 東宝
35ミリ 壮士劇場 10巻 大映
85ミリ 破戒 11巻 松竹
その他
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