(Ⅰ) 第1学年(第10学年)
Ⅰ 表 現
1 歌 唱
イ) 長い呼吸の保ち方,短い時間の息つぎの要領を会得する。
ロ) 頭声および胸声の出し方に習熟し,それらの混声区を拡張する。
ハ) 美しく明確な発音で歌う。
2) 平易な斉唱・合唱・重唱・独唱などを盛んにし,その楽しさを味わい,声楽への興味を増進して,声楽に対する自発活動を活発にするとともに,それらの歌唱技能を養い,歌唱による自己表現力を高める。
〔注〕
歌唱技能に関しては,次の点に,特に留意する。
イ) ト音譜表およびへ音譜表の読譜技能。
ロ) 同声および混声(和声的なもの)の合唱技能。
ハ) 程度の高い歌曲の斉唱技能。
ニ) 独唱の平易な基礎技巧。
ホ) リードふうな曲の重唱技巧。
3) 平易な声楽曲を歌う。
〔例〕
イ) 平易な古典派ならびにロマン派の歌曲(モーツァルト・べートーベン・シューベルト・シューマンなど)。
ロ) 外国語(とくに英語)の歌詞をもつもの。
ハ) わが国および外国の健康で明るい民謡。
ニ) コラールふうな合唱曲。
ホ) 基礎技巧を養うのに適した独唱曲・重唱曲。
4) グループ合唱・集団合唱を盛んにして,学校および地域社会の文化生活の向上に貢献する。
イ) 基礎技術
オクターブ以上にわたる音楽をひく(左右8度で行う)。
五指練習
ロ) 応用技能
簡易な練習曲ならびに楽曲を正確にひく。
〔例〕
平易なソナチネ,チェルニー編の練習曲など。
オルガン
ラインハルトならびにベングー編の練習曲など。
簡単な旋律の伴奏または,同程度の楽曲を初見でひく。
2) 吹奏楽・小管弦楽などを合奏して,その楽しさを味わい,器楽合奏への興味を増進して,楽器の演奏に対する自発活動を活発にするとともに,それらの演奏技能を養い,自己表現力を高める。
イ) 基礎技術
発音その他
音程——正確
リズム——明確
呼吸およびフレージング——適切
強弱——自然
同種楽器および全楽器の正しい整調。
3) 平易な器楽曲を合奏する。
〔例〕
イ) 簡易な古典楽曲。
〔例〕
ヘンデル作曲「マカベウスのユダ」中の合奏。
モーツァルト作曲「ドン ファン」中のメヌエット。
ロ) 簡易な吹奏楽
〔例〕
スーザ作曲の平易なマーチ。
イバノビッチ作曲「ドナウ川のさざなみ」
4) 楽器をたいせつに取り扱い,保管や手入れをよくし,簡単な修理は自分でする。
2) 演奏形態(各種の独唱・重唱・合唱・独奏・重奏・合奏)を理解して音楽を鑑賞する。
3) 古典派・ロマン派・近代派・現代派(歌劇・オラトリオも含む)の通俗的な名曲を鑑賞する。
2) 簡単な詩(自分および友人あるいは教師,詩人の作品)に,長調の旋律(一部形式・二部形式・三部形式)をつけ,それに主要三和音および属七で和声づけをする。
3) 一部形式及び二部形式で,簡単な器楽曲を作る。
4) 器楽合奏のための編曲をくふうする。
イ) 現在の音楽は,どのような要素からなりたっていて,それらは,音楽の芸術的な特性に,どのような意義をもっているか。
ロ) 音楽は,どのように記録し,楽譜と演奏とは,どのような関係があるか。
ハ) 音階は,どのような意義をもっているか。また,現在行われている音階には,どのような種類があって,それらが,現在の音楽に,どのような特性をもたらしているか。
ニ) 各国の音階には,どのような種類があって,それらは,どのように各国の音楽を特徴づけているか。
ホ) 現在の音楽は,音程について,どのような理論に立脚し,それらが音楽にどのように用いられているか。
ヘ) 演奏の機関には,どのようなものがあり,それらは,どのような組合せで用いられ,どのような音楽的な効果や特色を発揮しているか。
2) 現在の価値ある音楽文化財には,どのようなものがあるかを知り,それらの歴史的背景を理解するとともに,現代の社会生活における音楽の価値や意義を認識する。
(Ⅱ) 第2学年(第11学年)
Ⅰ 表 現
1 歌 唱
イ) クレシェンド・デクレシェンドなどに必要な呼吸をする。
ロ) 頭声および胸声による発声法を歌唱に応用する。
ハ) 各声種(ソプラノ・アルト・テナー・べースなど)の発声法に関心をもち,それをくふうする。
2) 合唱・重唱・独唱などの経験を深め,声楽に対する研究心を盛んにするとともに,それらの歌唱技能を養い,歌唱による自己表現力を高める。
〔注〕 歌唱技能に関しては,次の諸点に特に留意する。
イ) ト音譜表およびへ音譜表による,程度のやや高い音程とリズムとから成る歌曲の読譜技能
ロ) 和声的な作風の歌曲のほかに,対位法的な作風を含む同声および混声の合唱技能。
ハ) リードおよびこれに準じる独唱や,同声ならびに混声の重唱曲の歌唱技能。
3) 各種の声楽曲を歌う。
〔例〕
イ) 平易なリード(シューベルト・シューマンなど)。
ロ) 古典イタリア歌曲。
ハ) 平易なアリア(音域の広いものや技巧の困難なものは避ける)。
ニ) オラトリオ・古典オペラ・カンタータなどの合唱および重唱曲。
ホ) 英語以外の外国語の歌詞をもつものを加える。
へ) わが国および外国の民謡に取材した健康で明るい歌曲。
4) グループや学校の合唱団を組織して,学校や地域社会で演奏し,また集団合唱を盛んにして,学校や地域社会の音楽的な文化の向上に貢献する。
イ) 基礎技術
五指練習を強化する。
音楽の内容や形式を理解してひく。
ハ) 初見演奏
簡単なコラールを初見でひく。
2) 吹奏楽・小管弦楽・重奏などの経験を深め,それらに対する研究心を盛んにするとともに,吹奏楽・小管弦楽・重奏などの演奏技能を高める。
イ) 各楽器の基礎的な演奏技術に習熟する。
ロ) 合奏の表情技巧を習得して,表情豊かな合奏をする。
ハ) 重奏では,正確な技術がとくに必要であることを自覚して,自発的にその技術を習得する。
3) 各種の器楽曲の演奏に習熟する。
〔例〕
イ) 古典楽曲(特にコラールふうなものを重んじる)。
〔例〕
ヘンデル作曲「ラルゴ」。
ボッケリーニ作曲「メヌエット」。
ハ) 通俗的な序曲・接続曲。
4) 楽器をたいせつに取扱い,保管や手入れをよくし,簡単な修理は自分でする。
2) 楽器の発達に伴って,変化し複雑化した演奏形態を理解し,それらの音楽を鑑賞する。
3) 歌劇(古典派およびロマン派)と楽劇との特徴を理解し,それらの音楽を鑑賞する。
ロ) 三部形式で長調の旋律を作り,それに主要三和音・属七および副三和音で,和声づけをする。
2) 簡単な詩(自分および友人あるいは教師,詩人の作品)に長調の旋律(一部形式・二部形式・三部形式)をつけ,それに,主要三和音・属七および副三和音で和声づけをする。
3) 各種の唱歌形式(ただし三部形式は長調のみ)で,簡単な器楽曲を作る。
4) イ) 移調の技術(記譜および演奏)を習得する。
ロ) 簡単な唱歌や民謡を器楽曲に編曲する。
イ) 和声および旋律は,音楽において,どのような美的価値をもつか。
ロ) 現在行われている和声は,どのような理論に基き,それは,どのように取り扱われ,音楽上,どのような機能を発揮するか。
ハ) 旋律はどのように構成され,どのような美的効果を発揮するか。
2) 楽器の発達と演奏形態の変遷について,次のような事がらを理解する。
a) 楽器は,音楽にどのような地位を占め,その発達が,音楽の発達とどのような関係をもっているか。
b) 楽器と演奏技巧や演奏形態とが,どのような関係をもち,それらがどのように変遷したかを理解して,現在,よく演奏せられる音楽の理解と鑑賞に資する。
(Ⅲ) 第3学年(第12学年)
Ⅰ 表 現
1 歌 唱
イ) スタカートやマルカートの歌唱に必要な呼吸法を会得する。
ロ) レガート・スタカート・メサ ディボーチェ(messa di voce)などの発声法に習熟する。
ハ) 各声種(ソプラノ・アルト・テナー・ベースなど)の特色を発揮する。
2) 合唱・重唱・独唱などの技術を高め,声楽のもつ芸術性を体得する。
〔注〕
歌唱技能に関しては,次の諸点に特に留意する。
イ) ト音譜表およびへ音譜表の読譜技能を高める。
ロ) フーガを含む同声ならびに混声合唱の技能を習得する。
ハ) 声種の特色を生かした合唱曲・重唱曲・独唱曲などの歌唱に習熟する。
ニ) 合唱指揮法の基礎技術を習得する。
3) 各時代,各種の演奏形態の声楽曲を歌う。
〔例〕
イ) 古典脈・ロマン派・近代派などの平易な歌曲。
ロ) リード(ドイツ・イタリア・フランスなどのロマン派のものを中心として古典派・近代派にわたる)中の通俗的なもの。
ハ) オラトリオ・カンタータ・歌劇(特に時代の制限はない)中の合唱曲・重唱曲・独唱曲。
ニ) オーケストラ伴奏のもの,助奏のあるもの,重奏と共演するものなどを加える。
ホ) 英語以外の外国語の歌詞をもつものを加える。
へ) 前学年に準ずる。
4) 前学年に準ずる。
イ) 基礎技術
装飾音・パッセージその他の基礎的な演奏技巧。
ロ) 応用技能
独奏・合奏・伴奏などに上達する。
〔例〕
イ) ピアノ
簡単な古典ソナタ,メンデルスゾーンの無言歌の類。
ロ) オルガン
レーマンの小曲,バッハの平易な曲。
ハ) 歌曲の伴奏や合奏。
ニ) 初見演奏
平易な小曲を初見でひく。
2) 合奏(おもにオーケストラ)・重奏などの技能を高め,器楽のもつ芸術性を体得する。
イ) 基礎技術,特に音階・強弱・終止形の合奏・整調などの技術を確実にする。
ロ) 正確な合奏をし,かつ,発想を巧みにする。
ハ) ピアノトリオ・弦楽四重奏などの重奏技能を養う。
ニ) 合奏による伴奏および合唱との共演になれる。
ホ) 形式や楽曲の内容を理解して演奏し,純音楽の芸術性を体得する。
ヘ) 指揮法の基礎技術を習得する。
3) 各時代,各種の演奏形態の器楽曲をひく。
〔例〕
イ) 簡易な古典交響曲・接続曲・序曲・組曲。
ロ) 古曲派やロマン派の簡易な重奏曲。
4) ピアノやオルガンの構造を理解して,簡単な修理や調律をする。
2) 楽式の学習に関連して,組形式(ソナタ・交響曲・協奏曲・組曲・変奏曲など)の楽曲,幻想形式・移変形式による楽曲を鑑賞する。
3) 洋楽(特に民族音楽)に関連して,邦楽・東洋音楽などの独自の美しさ,特に,楽曲構成・演奏形態・楽器の相違から生れる特異性に重点をおく)を味わい,それらの名曲を鑑賞する。
ロ) 三部形式および複合三部形式で作曲する。
ハ) 実際的な対位法による作曲法を会得し,簡単な曲を作る。
2) 簡単な詩に自由作曲をする(単音楽ふうなものや複音楽ふうなもの)。
3) 唱歌形式や複合三部形式,あるいは対位法などで,簡単な独奏や合奏用の楽曲を作る。
4) 民謡その他を,独唱曲・独奏曲・合唱曲・合奏曲などに編曲する。
イ) 対位法や楽式は,音楽においてどのような美的価値をもつか。
ロ) 対位法は,どのような理論に基礎があって,それらは,どのように取り扱われ,音楽上,どのような美的効果を発揮するか。
ハ) 楽式は,どのような理論に基礎があって,それらは,どのように取り扱われ,音楽上,どのような美的効果を発揮するか。
2) 音楽史や音楽理論の発達について,次のような事がらを理解する。
イ) 音楽理論と音楽とはどのような関係があって,音楽理論の発達が,現代の音楽の発達にどのような関連性をもっているかを理解する。
ロ) わが国の価値ある音楽文化財には,どのようなものがあるかを知り,それらの歴史的背景を理解するとともに,現代の社会生活における,わが国の音楽の価値や意義を認識する。