第2学年 主題「日常の科学」

 

単元Ⅰ われわれは自然界のどこから食物を得ているか。また,それをどのように使っているか

 要 旨

 日常生活の科学には,なんといっても衣・食・住の問題が大きな部分を占めるであろう。この単元では,その中の食の問題について,食品およびその原料がどのような過程を経て作られ,どのように利用されるかを扱うのであるが,これによって生徒は食物の選択・利用のしかたに対する科学的な目が開らかれるであろう。また興味調査の結果によれば,この学年の生徒は人体ならびに一般の生物体の機能についての学習に特に関心をもつことが明らかにされているが,人・動物・植物の生活機能を関連的に扱う学習はかれらの自発的学習意欲ともよく合致するものといえよう。

 またこの単元の学習を社会的観点から見れば,食糧生産の増強,未利用資源の活用などに対する科学的基礎をつちかうことにもなる。 内容とするところは,まずわれわれの食物の原料を調べ,さらに食物が体内で消化・吸収されてからわれわれが生活活動を営むことができるようになるまでの経過を,人体のおもな構造と合せて理解する。また植物性および動物性の食物原料が自然界ではどのようにして作られるかを知るために,緑色植物の炭酸同化,動物の食性,動物と植物との依存関係なども明らかにする。このような学習の間に,食物を有効に利用しようとする態度と,実際に利用する能力とを伸ばすことも目標となる。

 この単元の指導にあたっては次の単元Ⅱとの関連に注意すべきである。すなわち,この単元では,食物の成立,それの人体内での変化に関する学習経験に主体を置き,次の単元では食品の正しい配合に関する学習経験に主体を置いている。

 

 目 標

 

 学習の範囲と順序,学習活動

 

単元Ⅱ われわれが健康を保ち進めるためには,どのような飲食物や衣服を必要とするか

 要 旨

 日常生活の科学化をはかるときに,まず衣・食・住の問題が大きく浮び上がることは前単元の要旨においてすでに考察したところである。その中で,住は家族とともに生活を営む場所であり,また社会的な関連が大きい。これに反して,食と衣の問題は主として個人生活に関するものであり,これを正しく選ぶかどうかは,ただちに個人の健康に対して著しい影響を及ぼす。その意味において,衣と食とを一つの単元にまとめて,これを健康の,維持増進という面から学習の対象とするところに,この単元の設定の趣旨が存するのである。

 内容とするところは,われわれが健康を保ち進めるには,適当な食物と衣服とを選ばなければならないことを科学的に調べ,さらに衣服や食物に関する知識を日常生活に応用する能力と習慣を養うことなどにある。

 指導にあたっては,まず職業科・家庭科・保健体育科などの他教科との限界を明らかにし,さらにこれらの諸教科との関連をはかることが必要である。たとえば衣料の製造工程などについて深く立ち入るのは職業科に譲るべきであろう。要するに個人の健康の維持増進という点に主体を置き,これに関する科学的な考察・処理と知識の習得に重きを置きたい。

 

 目 標

 

 学習の範囲と順序,学習活動

 

単元Ⅲ 家を健康によく安全で便利なものにするにはどうしたらよいか

 要 旨

 家はわれわれの生活にとって基本的に必要な衣食住の一つである。大昔の人々でもすまいをもっていたし,現在極寒地に住む人々はいうまでもなく,年中ほとんど裸で生活する熱帯地方の人々でもすまいをもっている。それらのすまいは,土地の習慣・気候などの地域的な環境に支配されて,それぞれ特有な形や構造になっている。文化の進むにつれて生活様式はしだいに変り,建築に関する学問・技術も進歩し,また幾多の災害の経験から建築の方法も改良され,安全で住みよい家になってきた。けれども,多くの人はまだ自分の家に種々の欠点を感じており,また天災や火災などの災害を受けるごとに,もっと安全で住みよい家を望まぬものはない。

 われわれは一日の多くの時間を家で過ごしており,それだけに家の作り方は健康や仕事の能率に大きな影響をもっている。したがって,いたずらに古いしきたりや迷信にこだわらずに,健康で安全で便利な家を作って生活の合理化を図ることがたいせつである。ことに家は一度作ってしまえば容易に変えることができないだけに建築の専門家だけに任せず,ひとりひとりが家についてもっと深い理解と関心をもつと同時に,現在の家をいっそう住みよくするためにくふうし改善するようにしたいものである。

 この単元では,家と健康との関係,建築の材料,家の間取りと施設,災害防止などに関する基礎的な事項について学習し,家をいっそうよりよいものにするために必要な知識や能力,態度などを伸ばすことをめざしている。

 

 目 標

 

 学習の範囲と順序,学習活動

 

単元Ⅳ 熱や光は近代生活にどのように利用されているか

 要 旨

 熱や光は冬の暖房・夜の照明・毎日の食事の調理など,われわれの家庭生活になくてはならぬものである。また,工場で種々の機械が動いて生活に必要ないろいろな製品ができるのも,各種の交通機関が動くのも,その多くは熱や光の恩恵である。このほかわれわれは生活のあらゆる面で熱や光と密接な関係をもっており,ことに現代ではその利用がいっそう拡大され,それに伴って生活もしだいに合理化され,便利になってきた。

 しかし,われわれの熱や光の利用のしかたはじゅうぶんとはいえず,むだも多く,今後改善しなければならぬ点が少なくない。したがって生活をいっそうよりよいものにするためには,熱や光の性質やその利用法をよく理解し,その知識を実生活に応用する能力を得ることがたいせつである。

 この単元では熱や光の性質,燃料の種類と利用法,温度の違いによる物質の状態の変化,および近代生活における熱や光の利用面などについて理解し,さらに熱や光に関する現象を数量的に取り扱って正しい結論に導く能力や,熱や光をよりよく実生活に利用する能力・態度などを養うことを目ざしている。

 

 目 標

 

 学習の範囲と順序,学習活動

 

単元Ⅴ 電気は家庭や社会でどのように使われているか

 要 旨

 電燈や電熱器として,また電話やラジオとして,われわれの日常生活と切りはなすことのできない電気は,また産業・交通・通信にも広く利用され,あらゆる近代社会の発展に欠くことのできない重要な役割を果している。ことに水力に恵まれたわが国にとっては,この電源の開発・有効な利用が産業復興の一つのかぎをなしているともいえよう。この重要な意味を持つ電気について理解し,正しい取扱になれ,活用の方法を知り,有効に利用することは,せつに望まれることである。

 一面,生徒は日常の生活で電気に接する機会が多く,非常に強い興味をいだいているが,とかく電気は恐しいもの,扱いにくいものとして親しみを持たないか,あるいは正しい取扱に慣れないため思わぬ危険を犯かすことがある。

 機械や道具がいかに複雑に見えても,部分に分析しつながりをたどっていけば,そのはたらきを理解することがやさしいのに比べて,電気の機械・器具は簡単なものでも,見ただけでははたらきを理解することができない。電気のいろいろの機械・器具の取扱になれ,活用できるようになるにはそれらの構造を知るだけでなく,電気についての基礎的な性質を理解することがたいせつで,この単元の取扱にあたって忘れてはならないところであろう。

 人体に対する危険,器具の破損の防止については,電気の性質に照して科学的な取扱方法を考えて守るようにし,いたずらに無意味な恐れをいだかせることがないように指導すべきであろう。

 

 目 標

 

 学習の範囲と順序,学習活動

 

単元Ⅵ 機械や道具を使うと仕事はどのようにはかどるか

 要 旨

 われわれは,日々,道具や機械の中に生活しているともいえる。土を耕すにも,物を動かすにも,加工するにも,すべて道具や機械を用いており,これによって著しく仕事の能率を高めているばかりでなく,素手では不可能なことを,たやすくやりとげている。また,道具や機械の利用によって人力以外の畜力や火力・水力などを有効に使用するようになり,1/10馬力にも足りない人力のかわりに,数千,数万馬力という大きな仕事率で物を動かし,加工することができるようになった。これらはいずれも機械や道具が進歩したからである。このようにして人は,動力の源という役めから解放されて,機械を操縦し監視する立場にたつようになってきたのである。われわれは,生産を盛んにするためにも,生活を豊かにするためにも道具や機械をよく理解し,取扱になれることが必要である。

 機械や道具の種類は非常に多く,なかにはきわめて複雑なものもある。しかし,これらの原理や組立を調べてみると,結局は,てこ・車・斜面・滑車などのいわゆる単一機械の組合せであることがわかる。したがって,単一機械についてよく理解することが,道具や機械を研究する基礎となるであろう。

 これらの取扱にあたっては,抽象的に力の関係を明らかにすることにとどめたり,ことさらに複雑な数学的な取扱をして,かえって理解を困難にすることがないように留意すべきである。また,道具や機械を破損させず,身体をきずつけぬよう,正しい取扱になれるように指導すべきである。

 

 目 標

 

 学習の範囲と順序,学習活動