評価ということばを用いるときに考えがちなことは,評価とは見聞および知識を考査することであり,またしばしば生徒がその教科内容をどの程度に覚えたかということを判断し,それによって生徒に等級または点数をつけることであると決めてしまうことである。このような考えは,評価の概念としては,きわめて限定された狭いものであり,習慣・態度・さまざまな技能・能力・鑑賞などのような知識以外の評価目標を評価する場合には,その範囲をじゅうぶん表わすものとはいえない。また考えがちな傾向としては,紙と鉛筆とによるテストが評価の唯一の方法であるとすることである。紙と鉛筆による考査はきわめて重要なものではあるが,そのような考査は,指導計画の成果の一部を評定するにすぎない。
2.評価の基本目的
評価の基本目的は,学習指導と学習とを改善する目的をもって,教育の目標に従い,いろいろな方面における生徒の成長および発達を測定することにある。それによって特殊な一つの面またはいくつかの面における成長の欠陥の理由が明示され,それに対するきょう正の方法を打ちたてることができるのである。評価は目標に直結するものである。学級は達成しようとするいくつかの非常に特殊な目標をもって,ある教科なりある課程なりの作業を始めるものである。生徒の経験としての教科または課程の内容は,これらの目標によって決められるし,またその目標がそれぞれの生徒によってきわめて完全に迅速に達成されるように計画されるものである。評価のおもな目的は,それぞれの生徒について,その目標がどの程度に達成されたか,またなぜその目標が予期したように満足に完全に達成されなかったかを明らかにすることであり,これらの事実にかんがみて,さらに学習指導を計画することである。
3.評価手段の計画と実施とにあたって留意すべきこと
評価手段を計画し実施する場合に留意すべきことは,われわれが関心をもっている点は望ましい知識・技能・能力・理解・態度・習慣・鑑賞および理想における生徒の発達であるということである。われわれは事実というものに関するかぎり,単に生徒がある事実なリ一連の事実を知っていることに関心をもっているのではなくて,その事実をかれらの生活に適用し使用することに関心をもっているのである。たとえば,英語においては生徒が単によい英語の話し方を知っているだけではじゅうぶんではなくて,生徒が実際によい英語を理解し,話し,読み,書くことが望ましいのである。生徒がことばを正しく使用し,その使用法の筆記テストによい成績で及第するかもしれないが,同時にことばを話すとなると,はなはだ悪い形を用いるという定評がある。もし英語の目標の一つが,さまざまな環境において英語を効果的に話せるようになることだとするならば,この目標がある生徒によって達成されつつあるか,または達成されてきた程度を評価しようとするときに,その生徒がいくつかの違った環境において実際に話すのを聞かなければならないことはめいりょうである。この種の評価は客観的な筆記テストを用いたときほど客観性がないことは事実ではあるが,目標によっては客観的な評価の方法のないものもある。
もう一つの例をあげると,英語のおもな目標の一つは,特に高等学校においては文学の鑑賞である。この目標の学習結果を評価するために,教師が詩または物語の作者についての知識や,文や段落を引用してその解釈を求める問題などをテストしたとして,たとえ生徒がこの種のテストによい成績をあげても,その生徒が必ずしも文学の鑑賞を伸ばしたと結論することはできないであろう。知識はたいていの場合鑑賞の前提ではあるが,それ自身が鑑賞ではないからである。この場合,比較的によい評価法は,その学期中に自発的に読んだ本のうちから,鑑賞すべき文学の種類の中で代表的と思われる本を書き出させることであろう。
さらに評価についてたいせつな原理は,それが継続的なものであるということである。それは1単元・1学期または1学年の終りにだけ行われる事がらではない。もしある学校の評価計画として,生徒に等級をつけたり点数を与えたりするために,定期的な試験しかしないとするならば,それは方法としては貧弱な不適当な部類にはいるといってもまちがいではない。
4.生徒の英語能力の発達を評価決定すること(注1)
医者が患者を治療するのにまずその前提として患者を診察すると同じように,教師が生徒の不得意な点をきょう正しまた得意な点を助長してやる第一の段階として,生徒の学習を診断しなければならない。生徒の学習の診断は,適当な評価手段によって行われるものであり,その手段によって教師は生徒個人および学級全体の長所と短所とを特に見いだすことができるのである。もしある学級の生徒の大部分が与えられたテストに落第したとするならば,学習指導法か教師と考査者か,または教師か考査者の側に過失があることはほとんど確かである。もしある学級の中の一部の生徒がテストに落第したならば,たいていの場合,(1)その一部の生徒が平均標準についていくことができなかったか,(2)個別指導がじゅうぶんでなかったか,または(3)これらの生徒は教師が気がつかないで除去してやれなかったなんらかの難点をもっている,と推定することができる。過失がいずれにあろうとも,なんらかの短所が現われて明らかにされた場合には,そのきょう正の方法を定めて適用すべきである。生徒の学習習慣が貧弱なこともありうる。たとえば,事がらによっては暗記すべきものもあり,またその理由を考えださなければならないものもあることに,気がついていないのかもしれない。短所の理由または原因がはっきりしてくることであろう。これらのことはテストまたはその他いろいろな評価法によって見いだすことができるであろう。
5.学習指導の欠陥を見いだしてその改善の基礎とすること
生徒はしばしばテストの目的を誤解すためにテストを受けることを恐れるものであるから,テストの目的の半分は学習指導の効果を測定し学習指導法の欠陥を明らかにすることにあると理解すれば,テストをあまり恐れなくしてやることができるであろう。
生徒が学習に不成功であることについては,ある程度教師の責任である。不成功はまずい学習指導法のために起ることが多い。学習指導法をじゅうぶんに用意し適切に実施するならば,大部分の生徒は教えられたことを理解し習得するものである。このようにして,テストの結果は,教師の準備や方法のうちでどんな点がまちがっているか,指導技術のどんな点を変更し改善しなければならないかを,教師に示すものである。
6.テストの結果を利用すること(注2)
評価の最終究極の目的はテストの結果を利用することである。評価の結果は,生徒指導の指針として用い,学習習慣を改善したり,生徒や父兄に学力を知らせたり,進級を決定したり,指導の質を測定したり,高等学校または大学に提出する入学願書の基礎となる記録を準備したり,生徒を適当な学級に入れたり,適当な職業や商売を選択するのを援助してやることなどの指針となるものである。その用途は多くまた永続的なものである。そしてその評価の結果は,標語によって指導要録に記録しておかなければならない。評語の詳細については,採点の項において説明することにする。
1.妥当性(「テストの目標をどの程度に測定しているかを示す度合」)(注3)
これは適当なテストの最も重要な性格の一つである。もしテストに妥当性がないならば,そのテストには一文の価値もない。妥当性はテストの目的がめいりょうであるときにのみ明らかにされる。ゆえにテストの問題を作るにあたっては,次のことを考慮すべきである。
B.テストが教科の目標と一致しているか。そのテストが全体の調査かまたは全体の診断テストであるならば,指導された課程の内容の全面にわたっているかどうか,かつそれぞれの問題は教科の目標と指導された特定な事がらとに関して有意義であるか。
C.語いおよび発音の上での難点のような,何か周辺的な要因があるかどうか。意味の誤解を生じないように問題の説明がじゅうぶんであるかどうか。
D.テストの目的が速度でないときに,テストの成績に影響を及ぼすような時間の制限があるかどうか。
E.テストの性質と期待される特定の結果について,めいりょうな指示を与えられるかどうか。
2.信頼性(「測定すべき事がらをテストによってどの程度に測定しているかを示す度合」)(注4)
テストに信頼性があるべきであるということは,妥当性と同じように重要なことである。高度の信頼性を保証するために,テストの問題を作成するにあたっては,次のことに留意し遵守すべきである。
B.問題は難易の度合を示すものでなければならないし,また難易の度合によって配列しなければならない。テストは,両極端の中間にある生徒はもちろんのこと,能力の弱い生徒も能力の強い生徒も同時に測定できるように,やさしい項目とむずかしい項目との両方を含んでいなければならない。
C.テストの作成・実施・採点および結果の利用にあたっては,生徒が全力を尽すことを妨げる要因,たとえば散漫・テスト時間の長いために起る疲労・病気・さまざまな情緒的緊張などは,考慮に入れるべきであって放任すべきものではない。
3.客観性(「採点において主観的意見や判断を除去するテストの特質」)(注5)
われわれの感情や記憶はあてにならないものである。ゆえにテストに客観性をもたせることは,主観性が原因となる過失を除去するために,ある程度有効である。客観性をもたせるにはいくたの方法がある。たとえば,真偽法による問題または資料においては,問題の用語にふめいりょうな点がないように正確に表現して,正しい答にはいかなる意見の表示も必要がないようにすべきである。他の例をあげると,選択法においては,ことばの表現が正確であり,選択される正しい答は唯一であって,解答者の意見を求めないことは,真偽法におけると同じように重要である。方法について詳しいことは後で述べることにする。さらに完全な客観性を保証するために,テスト問題の作成者は一つの回答表,すなわち問題の作成と採点とに使用するための適当な答の表を作成することがしばしば必要である。
4.実施の簡易性
考査実施の簡易性ということも,妥当性や信頼性ほど重要ではないが,同様に考慮すべきである。実施の簡易性は,生徒の立場と教師の立場とから考慮すべきである。問題はめいりょうで簡単で,説明がじゅうぶんで,試験官はそれを口頭で補足すべきである。問題が新しい形式のものであれば,答の例を示すべきである。教師の立場からすれば,問題は採点が容易で,できるならば,準備してある解答表を使って一様に採点できるように組織してあるのがよい。実施の簡易性を実現するためには,紙の質・大きさおよび文字などを考慮すべきである。刷り物が読みにくかったり,黒板が光線のぐあいが悪く位置も適当でないことがしばしばある。このような場合に,生徒は試験に最善を尽すことはできない。これらの障害は除去しなければならない。
次にTeaching A Modern Languageから測定のできる要素の表を一部修正して引用する。そのうちいくつかの要素についてはテストも出ている。(注6)
1.聞き方と口頭表現(聞き方・話し方のテスト)
B.聞き方理解・ロ頭の質問に対して筆答させるか口答させるか,または指示に従って動作をさせること
C.発音の正確さ
D.口頭で物の名を指示し,それに対してその物を確認させること
2.読み方(読み方のテスト)
B.与えられた誘導語に基いて読んだ材料をパラフレーズしまたは大意をとること
C.読んだ材料に基いた真偽法と選択法とによる叙述
D.読んだ材料に基いた選択法による質問
E.読んだ材料に基いて叙述を完成すること
F.材料の処理に対する指示。生徒の理解は,指示に基つく動作によって示すこと(上記の方法はすべて,目の働きによって,よくわかっている材料を用いて行う)
G.英文和訳
3.書き方(文法のテストを含む)
(1) 単数から複数へ,複数から単数へ変えること
(2) 時制または法を変えること
(3) 名調を代名詞に置き換えること
B.誤りのある文を訂正すること
正しい文と正しくない文とが混合している場合,その正否をつけること
C.日本語または英語の活用しない形の出ている空所を埋めて英文を完成すること
D.数個の英語の形から正しいものを選択して英文を完成すること
E.絵または誘導語に基く筆頭または口頭の作文
F.和文英訳
G.規則の叙述(行うとしても,きわめてまれに行うべきである)
4.語 い(テスト)
B.4ないし5のつくりうる訳のうちから正しいものを選択させること
C.一連の日本語と英語とを組み合わせること
D.同意語と反意語とを英語で書かせること
E.いろいろな項目のもとに英語を分類させること
5.一般的教養(文化面のテスト)
B.与えられた説明と名称とを組み合わせること
C.川・山・町・地方の名称または産業の分布・城・大学・大寺院等の位置を白地図に記入すること
D.格言を完成すること,英語のものと日本語のものとを組み合わせること,半分書いてある格言を組み合わせること
E.既習の材料に基いた真偽法または選択法による叙述にしるしをつけること
F.詩または歌のあんしょう
G.文学研究
標準学力テストとは,注意深く選択され評価され,それについての基準ができているテストである。(注7)
この種のテストは担任教師が作ることは不可能であって,テストの実施に特に訓練を受けた教育専門家や,適当なテストの作成に欠くことができないものと認められている最善の原理を体得している心理学者がつくるべきものである。
「テストが標準的なものとなるのは,(1)現在の学習指導上の重点と教科内容とに照らして問題を選択したとき,(2)これらの問題の中にひそんでいる困難性が統計的に評価されているとき,および(3)テスト自体がテストに対する生徒の反応結果をテストのできばえの点から解釈できるような基準を含んでいる場合である。」(注8)これらの条件が実現されたとき,標準学力テストは学習指導に効果のある道具として,最高度の有効性を発揮するようになるであろう。
標準テストの内容は,常に,最も権威ある教科書や学習指導要領や教科の目標や学習指導法やその教科の正しい考え方に密接に関係をもって活動している教科目の専門家たちによって選ばれる。さらに,内容の各項とその表現とは他の多くの専門家の批判を受けてきたもので,じゅうぶんな数の生徒に試みたものである。これらの予備的試験からその項目の困難さや妥当性の統計的測定が算出されている。
標準テストの特徴として,V.A.C.Hemmon は次のようなものをあげている。
B.テストは異なった方法と条件とのもとにあるさまざまな学校と学級とにおいて,学力の程度の比較をより正確なものとする。
C.テストは学習に用いた時間からみてではなくて,言語の真の学力からみて,学級内の均等性を保つために組分と配置との手段として役だつ。
D.テストはいろいろな年齢の教育に対する影響・知能程度・学習指導の方法・教育課程および教育目標を調査するための分析の手段となる。
E.テストは欠陥を診断し,一定のきょう正練習を与えるためにその欠陥の所在を見いだすのに助けとなる。
F.テストは指導の直接目標をいっそう明確なことばで規定するのに助けとなる。(注9)
基準によって他の生徒のグループとの比較ができる。これによって教師は自分の学級の学力と国全体の生徒の学力とを比較することができる。標準による生徒のグループは,年齢・性別または学年によって組み分けすることができるし,それぞれ国全体・都市または地方の標準を示すことができる。(注10)
標準化していないテストの結果や,教師が論文テストに与えた主観的評価は,進歩を正確に測定するよりどころとしては不適当である。その理由は,進歩を表示するための正確な比較研究による出発点がないからである。標準テストの基準によれば,進歩と改善とをきわめて明確に示すことができる。
標準テストには明確性と客観性とがあるから,個人の学力差を示し,多くの場合能力差をも示すものであり,また教師に対しては特定の明確な学力の到達点を示すものである。標準テストによれば,実施者はこれまで考えられなかった方面に役にたつ知識が得られ,それによって適切な指導や職業指導ができるようになる。これはまた教師に対して,それぞれの生徒の学力の特定な弱点をめいりょうに示してくれるから,これに対して効果的な指導法やきょう正法を適用することができる。(注11)
標準テストは初期の教育段階・進級・中等学校や大学の進学・卒業および転学のときに適用することができる。
2.教師作成の客観的テスト
教師作成のテストは学級担任教師の作ったものであり,少くとも学校組織の中で作られたものであって,その学校だけで使用するものである。いずれの場合においても,特徴として二つの重要な面を含んでいなければならない。すなわち,「(1)生徒の答が簡潔であること,(2)考査の採点にあたって個人的判断を入れないこと。」(注12)
現在のところ一般に認められているさまざまな型の客観的テストをまとめたものはないようである。テストの作成が洗練されてくるにつれて,現在行われているテストに,よく知られている型をさまざまに変えた新しい型が絶えず追加されてくるであろう。ありふれた型のものだけを示すことにする。変化ということは学習指導法の場合と同じように評価においても重要なことであるから,いろいろな型を用いるべきである。
単純再生法は,事実に関する知識を測定し,説明された事物をそれであると認める能力を考査するのに用いられる。
この種のテストは作成が容易であり,教師が測定しようと思うことをめいりょうに評価することができる。しかし,事実を応用したり,複雑な関係を見たり,論理的に推理する能力を測定するのに用いるにはじゅうぶんではない。
単純再生法はたいてい叙述の形式をとり,その叙述の終りに空所を設けてあって,そこに生徒は正しい答を書くか,または指示された場所に,一語か,数字か,または短い句で簡単に答えることのできる直接質問の形をとっている。いろいろな生徒の答は,形がとかく一様でなくなるから,採点が容易ではない。
したがって,短い,一定した,めいりょうな答を求めるものでなければならない。換言すれば,考えられる正解の数を制限するように,問題を変えなければならない。
例は英文参照。
1.benches
2.leaves 3.cities |
..........
.......... .......... |
4.women
5.potatoes |
..........
.......... |
1.435
2.2/5 3.12.3 |
4.the year 1949
5.Tel. No. 33-1043 |
(a)
1.yuku 2.meiyo 3.ringo 4.manabu 5.shiroi |
......... ......... ......... ......... ......... |
(b)
1.dog 2.run 3.after school 4.teacher 5.red |
......... ......... ......... ......... ......... |
1.Who wrote Gulliver’s?
2.Who wrote Robinson Crusoe? |
Answer | ..........
.......... |
2.The first president of the U.S.A. was .........
2.He does not go to school, for he has a holiday.
文とパラグラフとの完成法は,二つまたはそれ以上の空欄のある不完全な文またはパラグラフに,単語・数字または句を補って意味を完成させるものである。
単純再生法と同じように事実に関するものであり,生徒の思想や観念のまとまりを測定するものである。
この種のテストを作る場合には,テスト作成者は,教科書にある文またはパラグラフをそのまま写しとることは避けなければならない。一つの文またはパラグラフの中にあまり多くの空欄をつくって補わせるようにしてはならない。
例は英文参照。
2.How ........ floors has your house ?
3.I hope you−enjoy your trip.
2.__ and one of her __ are going to play tennis.(friends, Mary)
1.Where did Rip Van Winkle live ? ..................................
2.Did he love children ? ..................................
3.With whom did he play marbles sometimes ? ........................
Dick was throwing the 1 and 2 was trying to catch it.
b. Answers 1. Ball 2. Tom
|
1..............
2.............. 3.............. |
真偽法と正否応答法とは二者選一法のうちで最も広く用いられるものである。真偽法では,叙述が真か偽か,または正しいか正しくないかをしるしをつけさせるのである。正否応答法では与えられた問に「はい」とか「いいえ」とか答えさせるものである。
この種のテストは作りやすく,いろいろな教科で最も広く用いられている。
その長所は,他のどの種のテストよりも短い時間にたくさんの事項をテストすることができることである。けれども,この種のテストでは,生徒が事実についての知識を示すよりも,むしろ正しい答を推量しようとする傾向がある。したがって,むしろ高学年の学級では,単に事実についての記憶力ばかりでなく,思考力・判断力および推量力を必要とするような問題を作るべきである。
生徒はTとかF,YesかとNoに,まるをつけるか下線を引くか,かっこの中に×とか○のしるしをつけることになる。
答が正しいか正しくないかを判断するためには,特別の指示をしなければならない。たとえば,叙述のある部分が正しくない場合には,次のように指示してやる。「もし叙述のある部分が正しくない場合には,他の部分が正しくとも『正しくない』としるしをつけなさい」
例は英文参照。
2.(I, my) name is Wood.
3.Where (is, are) your home ?
2.Can you see (threw, through) this telescope ?
3.I'm glad (it's, its) a bright day.
4.They waited an (our, hour) for the train.
5.I don't want to (break, brake) an appointment.”(注14)
2.Do all peple rent houses? Yes No
if they have too much. T F
2.Friends are conveniences merely and should
be treated as such. T F
選択法はいくつかの答の中から正しいものを選ばせるテストである。これらの答のうち,—つは正しいが,他のものはもっともらしく見えてもすべて誤りである。生徒はそれらのうちから正しい答を選んで,かっこの中か点線の上に書いて,不完全な叙述を完成したり,問に答えたりしなければならない。
最もよい答を選ばせる選択法では,二つか三つの妥当な答があって,そのうちから最もよい答を選ばせるのである。
この種のテストは,推理・理解・識別および判断力をテストするのに適している。また,語い・単語・翻訳・読解および文法の力を調べるのにも用いられる。
選捉法とその多くの変形とは,ほかのテストのように容易に作れないが,価値のあるものである。その上,このテストは客観的に採点することができる。ただこのテストを作るときには,すべての答がどれももっともらしく見えるようにしなければならない。
選択法の短所は,(1)選択すべき項目をつくるのがむずかしいこと,(2)他の種のテストよりも紙面を多くとること,などである。第一の点について,正しそうに見えて正しくないもっともらしい答が四つか五つあるたった一つの問題を作るにも,問題作成者の巧妙な技術と心理的洞察が必要なのである。(注15)
例は英文参照。
2.School begins...(at, in, on) eight.
3.He...(graduated, graduated out of, graduated from) an elementary school.
4.This is too dear. Show me a...(better, bigger, larger, cheaper,nicer) one.
1.a museum
2.a school
3.a court house
4.a hospital
5.an assembly hall
The children enjoyed the strange five-mile ride through the wood very much. They wondered how the great horses could be so strong and wise as to pull so heavy a load with no other harness than a chain and crooked piece of wood on their necks. They marveled at the way in which the team would sway obediently to right and left past trees at the command of the driver.
a. The ride was (1) across the plain (2) through the wood (3) on a muddy road (4) along a highway (5) over a mountain... ( )
b. Were the children accustomed to riding behind horses? (1) yes (2) no (3) doubthul... ( )
c. The horses were (1) wild (2) tame (3) tired (4) obedient (5) thirsty... ( )(注16)
(4) In each group of four words given below there is one term which has relationship to underlined word at the of the item. Select the word by analogy and write number on the line at the right.
a. eat
b. shoe c. drink d. toe e. hat f. feathers |
1.bread
1.cat 1.water 1.box 1.kitten 1.bird |
2.foot
2.neck 2.iron 2.foot 2.head 2.neck |
3.pen
3.cake 3.lead 3.doll 3.knife 3.feet |
4.window
4.foot 4.stones 4.coat 4.penny 4.bill |
1
4
|
(5) Read the following Japanese sentence and encircle the number of the sentence in English which is the correct interpretation.
Watakushi wa kaze o hiite gakko o yasunde imasu.
2.I have caught cold and have been absent from school.
3.I have taken cold and am absent at school.
An edifice is...(a man ,a tree, a building, a writer.)
1.An able person is...(awkward, tall, capable, clumsy.)
2.An azure sky is...(sunny, cloudy, blue, threatening.)
3.A serene person is...(calm, noisy, rough, old.)
4.Similar tests are...(identical, different, like, unpleasant.)”(注17)
—1.simple
—2.cold —3.stupid —4.pretty —5.wet —6.dark —7.hard —8.thick —9.bottom —10.high —11.false —12.certain —13.rare —14.aid —15.spend |
a. soft
b. true c. angry d. top e. restless f. frequent g. intelligent h. sudden i. low j. doubtful k. complicated l. ugly m. save n. thin o. dry p. light q. hinder r. hot |
組合せ法は選択法を連結したもの,たとえば,一方に掲げた語または叙述を他方に掲げた語または叙述と意味で組み合わせるものである。一方の系列の項目の前にあるかっこ内に,それに相当しているものの番号または文字を書くわけである。左右同数のものと同数でないものとあるが,いずれも広く用いられている。
左右同数の組合せ法では,一方の欄の語または叙述が,他方の欄の語または叙述のただ一つのものと組み合わされるのであって,左右の項目は同数なのである。同数でない組合せ法では,一方の叙述が他方の叙述よりも数が多く,したがって答のうちのあるものはまったく用いられない。また,まったく用いられない答もあれば,一度以上用いる答もあるようなテストを作ることもできる。
組合せ法ではしばしば事実が取り扱われ・だれ・なに・いつ・どこなどという相互関係を一致させる能力を評価するのに用いられる。しかし,事実についての知識をテストするだけに限る必要はない。
場所と地名,事物と名称などを組み合わせるために,地図・図表および図解を用いてもよい。
この種のテストは作るのが簡易でたやすく,紙面はあまりいらない。したがって広く用いられている。当て推量の機会を少なくするために,各組の答を五つないし七つにするのが望ましい。
—1.A Christmas tree
—2.Many colored balls —3.The Christmas cards —4.The presents |
a. are taken out and placed on the mantlepiece.
b. is decorated in each home with lights. c. are handed to the children. d. are hung on the tree. |
|
|
1.What is she? ( )
2.What is he? ( ) 3.What is his name? ( ) 4.Who is that? ( ) 5.Where do they live? ( ) |
a. She is a music teacher.
b. They live in Yoyogi. c. That is Mr. Smith. d. He is a clerk. e. His name is Ned. |
1.yuku ( )
2.kaeru ( ) 3.hon ( ) 4.akai ( ) 5.Ybin kyoku ( ) 6.heitai ( ) 7.kin ( ) 8.hayaku ( ) 9.chshoku ( ) 10.y jin ( ) |
a. return
b. soldier c. gold d. fast e. breakfast f. book g. friend h. go i. post office j. red |
1.Her and I are going.
( ) |
1. Double negative should be avoided. |
2.The tree shed their leaves.
( ) |
2.An adjective should not be used to modify a verb. |
3.We haven't no money.
( ) |
3.A pronoun must agree with its antecedent in number. |
4.She does it good.
( ) |
4. The subject of a sentence is in the nominative case.”(注19) |
(1) 適切な言語表現の規則を守らなければならない。
b) 客観的テストの用語は,すべての生徒によくわかっているものであって,問題の目的が理解できるものでなければならない。
c) 教科書の中の材料を,単に否定にしたり,語を省いたり,またはちょっと手を加えたぐらいで問題に出すことは望ましくない。
(3) 明白な答・手がかりまたは暗示を与えているような問題は避けなければならない。それらのものはテストの価値がないし,妥当性を欠く恐れがあるからである。
(4) 知的推理だけで答えられるような項目は避けるべきである。
(5) 他の問題と相互関係のある項目を出してはならない。すなわち,他の問題の解答を与えるような項目は避けなければならない。
(6) 不可能な場合もあるだろうが,解答が解答欄に書けるように問題を配列するのが望ましい。解答を書くところが一定していれば,生徒は助かるし,また結果の採点も容易になる。
3.口頭テスト
この種の評価法は口頭で行う方法に限られる。答は即座に評価しなければならない。会話や口頭作文を評価する適当な標準的な方法はない。
英語の学習指導のおもな目標が,英語を伝達の方法として用いる能力を発達させることにあるから,口頭テストは口頭伝達の技能や能力を評価するようにくふうしなければならない。評価の過程においては,発音・アーティキュレイション・強勢アクセント・なだらかさ・抑揚・発音上の語の連結・口頭表現などに注意しなければならない。一般にこれらの項目を別々に評価するように努めるのが得策である。一つの方法は5点法または7点法を用い,それぞれの目標に従っておのおのの生徒をできるかぎり正確に評価することである。(注21)
(2)
2.How old are you?
3.When and where were you born?
4.Where do you live?
5.How did you come here?
6.Which season do you like best? And why?
1.What is the month for fogs in England?
2.When do Londoners call a fog “pea-soup fog”?
3.When there is a pea-soup fog, what do they do?
2.Some apples are red.
3.Columbus discovered America.
4.Every day is Sunday.
5.One should always be polite in the company of old ladies.
6.The South Pole is colder than the North Pole because it is farther away from the sun.”(注23)
If it is impossible to give an oral test, the questions may be answered in writing.
In the following written sentences, show what words should be read together by marking with a line the end of the group of words that should be read together. (The following is one correctly marked.)
C. Accentuate English words correctly in the following manner by placing a mark over the accentuated vowel. You will see two words marked correctly. Mark the others correctly.
(2) parliament, tomorrow, invention, American
D. Show the syllables or words which would be accented if you were reading aloud.
2.It is extremely late. I must go home and go to bed.
2._______ ( ) play, said, break, paid, grey
3._______ ( ) meat, piece, great, key, meet
4.理解力のテスト(注25)
理解力を評価する一つの方法は,指示されたことを行う能力がどの程度あるかという原理に基いた問題を作ることである。ここにいう理解して読むということの標準は,印刷してある指示を読んで具体的な実際的な命令を行う能力のことである。それぞれの指示を別々のカードにタイプで打っておいてもいいし,また印刷しておいてもよい。
そのような一連の指示を下に掲げる。次のような説明のついたカードを生徒に手渡す。
「次の力ードを読んで,書いてあるように動作しなさい。声を出して読まなくともよい。ただ書いてあるとおりに動作しなさい」。(注25)
1.Pick up the book that is on the floor and put it on the table.
2.Open my book at page 15. Put the pencil between the leaves of the book. Shut the book. And then say to me: “I have done what you asked.”
このテストの変形としては,答をうるために絵を示す方法である。だれでも知っているような話の絵を示して,教師が「この話をひとりで読みなさい。話は次のとおりです。絵の中から,だれが……か,わたしに示してください。」と言う。
さらに進んだ段階では,読み方は最も機械的な面でテストされる。すなわち印刷してある記号を見て個々の単語を早く正確に発音する能力を評価するわけである。速度・正確さおよび理解力の三方面は等しく重要である。これら三方面を見るために,真に力の強い生徒に対し抜粋の散文を読ませる方法も行うことができる。
読み方の速度は,力の程度を知る簡単な便利な指標となる。しかしどんなによく内容を知っていても,それに関係なく,読み方の速度については個人差があるから,その程度は適当に評価しなければならない。ある語がむずかしいので生徒がつまずくたびに,だいたい5秒ぐらい待つことは許さなければならない。それでも教えてやらなければならないときは,それを誤りと数える。普通の生徒の読む平均となるような速度で,文章の抜枠を読むのに要する時間をあらかじめ計っておかなければならない。
正確と不正確とは文を読む間の誤りの総数でわかる。生徒が読んでいる間にまちがったとき,教師は決して訂正してはならない。所要時間が長引くからである。
理解力は質問応答法で課価することができる。
(2) Display a large chart or picture before the class and make brief statements about it in English, which the pupils are to mark on their papers, as being true or false.
5.生徒による自己評価(注26)
自己の学習が目標に向かってどのくらい近づいているかということを客観的に評価する能力は,生徒の進歩を助けるために学校が与えなければならないたいせつな能力の一つである。自己の進歩について生徒に責任感を発展させるように導くのは最もたいせつである教師は常に評価の基礎となるべきものを生徒に指示すべきである。もしも生徒が評価の基準を作ることや評価力を用いることをめいりょうに了解していなければ,自己の学習を評価する能力を伸ばす機会は限られることになる。生徒たちが「なぜ先生はこんな悪い点をわたくしにつけたのか」とか「平均点をとるにはどうしたらよいか」とか「もっとよい点をとるにはどうしたらよいか」などと言っているのをたびたび聞くことがある。このような疑問が起るのは生徒が課程の目標と毎日学習している学課や学習活動との間の関係がわからないためである。または自分の学習に対して自分自身よりも教師のほうが責任があるものと考えている結果である。このようなことは是正されなければならないし,生徒に自己評価の能力を発達させ,自分の進歩について責任感をもたせるように導かなければならない。ほとんどどの生徒も自分が進歩しているという気持になりたいし,少なくともどの程度進歩したかを知りたがっているものである。学習はたいていまちがいを伴うものであり,人は試行錯誤を経験しないで成功することはめったにないと言えよう。このことは外国語の学習に興味をもっている生徒にも等しくあてはまるものである。言語技能を学ぶ進歩の度合を評価する方法は,困難をいかに早く克服しているかどうかを生徒自身が知ることである。この進歩度はまちがいの数を表で示すことで測定される場合がたびたびある。また困難がしだいに克服されるに従ってまちがいの数が徐々に減っていくことを示すものである。これは生徒自身がすべきである。そうすればどの程度に生徒が進歩しているかもわかるし,進歩するためにはさらに何が必要であるかもわかるからである。
教師は努めてまちがいそうなことを少なくするように学習を計画しなければならない。次に掲げるこの計画の実際的な参考案は,教師が答案を調べたり,採点をする上に大いに役にたつであろう。その答案は誤りと困難な点とを示すとともにそれを克服することもできるからである。
ある場合には能力のある良心的な生徒に答を調べたり,採点するのに参加させるのもよい。この生徒たちが答案検査委員となる。1組に40人か50人の生徒がいるときは,それぞれ20人くらいの生徒からなる二,三のグループに分けてもよい。答案検査委員は各グループから選ばれた6人ないし8人のリーダーで組織する。それぞれのグループには2人のリーグーをおく。教師の適当な指導のもとに各リーダーは訓練されて,能力の劣った生徒の作品を正したり困難な点を説明したりする。
B.教師の採点簿をやめて生徒の折本や学習結果表を用いること
(1) 誤りの発見と筆答の訂正
まちがいについて不確実な点は,教師に聞くか,または答案検査委員に尋ねればよい。
|
|
興味の性質
事がらを順序よく話すこと 魅力のある事がらの選択 文章構造の多様性 表現に富む語い |
正確さという性質
つづり字の正確さ 大文字の正しい用い方 句とう点の正確さ 文法の正確さ |
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悪い やや良い 普通 良い 最も良い
0 20 30 40 50 |
100語につき15以上の誤り 0
100語につき10ないし5の誤り 20 100語につき4ないし9の誤り 30 100語につき1ないし3の誤り 40 100語につき誤りなし 50 |
内容価値と形式価値との点を加えなさい (満点100点) (注27) |
6.その他の方法
生徒の書いた荒筋を評価する場合には,次の二点を心に留めておかなければならない。
1.生徒の考え方は正しいか。
2.生徒は簡単に,めいりょうに,自由に表現しているか。
3.生徒は適確な語だけを用いているか。
例は英文参照。
(There is no need of giving examples.)
(2) Read the following paragraph and select, from the sentences given below the paragraph, the one which most nearly expresses the main thought (Draw a circle around the number of that sentences).(注28)
1.Most people are glad to travel faster than their fathers did.
2.The Government of the Nations today are better than they were in the past.
3.Young people should prepare to have a part in a Government of all the earth.
4.Every nation is perfectly free to do what it likes.
5.The citizens of a nation should be free to do what they like.
6.Today there are no laws between nations.
7.In our school days we have no power to make laws.
パラフレイズするということは,生徒が文章の意味を別の簡単な英語のことばで説明することである。この種のテストは,与えられたことばの知識ばかりでなく,語いの範囲を測るのに用いることができる。その上これは英語で考える習慣を養うもので,特に日本の生徒に役だつものである。
例は英文参照。
1.
2.
3.
4.
5.
in front of ( )
chamber ( )
all of a sudden ( )
inquire ( )
解釈問題に二つの出題方法があって,(1)は大意を書くこと,(2)は文章の下線の部分を訳すことである。
例は英文参照。
2.Watakushi wa haru yori aki no h ga suki desu.
3.Mado o akete yorosh gozai masu ka.
4.Anata wa eigo o shitte imasu ka.
5.Dzo jibiki o kashite kudasai.
1. Kare wa konoyo no meisei ya homare o sara ni nozomazu sono hiroi chishiki o sukoshi mo hokori to shinakatta.
2.Kare wa konoyo de ymei ni naru koto o isasaka osoreta, soshite jibun no chishiki no kkyosa ni hokori o uchikudakareta.
3.Kare wa hayaku kara meiyo no koto o sukoshi shimpai shita. Soshite jibun no chishiki ga hiroku homerarete iru to hisoka ni kanjita.
生徒の習得した知識が正しいかどうかを調べるために,この種のテストは特に文法のテストにおいて効果的で,また作成しやすい。これは習得した知識の正確さを調べるのに適している。この種の問題を作成するのに教師は細心の注意を払わなければならない。一文のうちで訂正すべき誤りは多すぎてはならない。
例は英文参照。
2.She told me that she likes it very good.
3.I am very much hungry, because I have walked hardly.
4.The older of the three children were married.
2.Having approached the field with the wind the pilot had to turn his ship about.
3.Are you tired or blue or worried or ill or just cross.
4.Dr. a j kennedy left for work in spain he was able to do so because he had studied spanish and history in college.
5.May I go to the library now asked joe.
6.He was given a birds eye view of the city from a height of twenty one thousand feet.
7.Its at radio city said the boy all of us saw it yesterday.”
このテストにおいては,生徒は与えられた語または語群を用いて文を作る。時には2,3の短い文を結合することによって一文を作ることを求めることもある。転換のテスト,すなわち法(mood),態(voice)または文の種類を書き改めるのは,このテストに属する。
この種のテストは,作文の力を測るのに用いられる。この種の問題を作成するにあたっては,与えられた語または語群でたったひとつの文章しかできないように,特に注意して選ばれなければならない。
例は英文参照。
1.(1) you borrow (2) you may do (3) but you ought not (4) what you like (5) in the books (6) to make marks (7) with your own books
___________
2.(1) in coming all the way (2) on my departure (3) many thanks (4) to see me off (5) for your kindness
___________
書取作業は話しことばの技能を評価するのに非常に役だつ。
書取は前に読んだことのある教材について行うが,上級の学年では生徒のまだ見ていない教材のほうが適している。書取をするには,教師は初め全部の段落を読んで,次に文ごとに読むがよい。教師は同じ速さで書かせ,長い場合にはフレイズごとに書かせる。また各フレイズはただ一度だけくり返す。段落全部を書取らせた後,くり返さずにゆっくり読んで,生徒にできるだけ誤りを直させるがよい。
7.新旧テストの長所と短所
新しい型のテストの長所と短所とは次のようなものである。
長 所(注31)
2.採点が客観的であること。
3.時間が経済であること。
4.ほらふきをさせないこと。
生徒の答はきわめて簡潔なので,問題の採点は非常に正確かつ敏速になされる。ただその問題を作成するのに比較的時間がかかる。
翻訳や文法の規則や作文の型をテストする際に,よどみのない表現と言語とを自由に駆使する力が要素として考えられるが,新しい型の問題に答える場合生徒の書く量は極めて少くなる。これでは生徒はほらふきができない。
短 所(注32)
新しい型のテストには次のような短所がありうる。
2.考えをまとめたり,表現したりする訓練を無視すること。
新しい型のテストでは二者択一という制限によって,生徒は実力以上の点を取る。すなわち,100項のうちの各問に二つの選択項がある場合,生徒は「銭投げ」の教えのとおり平均50の正しい答をうることができるであろう。完成法の問題の場合は,あて推量の公算は明らかに取るに足らぬものである。この偶然の要因を直すためにいろいろの統計的方式が提案された。しかしあて推量の問題はこのような機械的に適用された統計的きょう正によっては完全には除かれない。なぜならば,このようなきょう正は確率の理論または平均値の統計的研究のいずれかに基いているからである。(注33)
新しい型のテストについてあげた例はすべて,比較的簡単なものである。関心をもっている教師は与えられた参考事項を調べ,テストについてさらに研究し,常にテストの用い方を改善するように努めることが望ましい。
外国語の伝統的,すなわち古い型のテストは,和文英訳・英文和訳・語い・文法の規則およびそれを用いる能力をためすために作られた問題などである。
古い型のテストの四つのおもな短所は次のようなものである。
2.採点が主観的であること。
3.はっきりしている実力が表現という手段によってゆがめられること。
4.採点や順位をつけるのに労力を要すること。
新しい型のテストは順位をつけても古い型のテストより以上にあてにもなるし合理的でもある。新しい型のテストの答案はだれが順位をつけようと,または同じ人がどんな異なった場合に順位をつけようと,同じに採点される。しかし古い型のテスト,特に解釈のテストは異なった人がしても,あるいは同じ人が異なった時にしても,同じようには順位がつけられない。(注36)
古い型のテスト(翻訳のテスト)は表現・語いの範囲および書く速さの能力を測る。この場合,後光効果すなわち生徒についての教師の一般的印象やすききらいが,生徒の実力と教師の学力評価との間にはいってくる傾向がある。(注37)
論文体テストの採点の客観性に影響を及ぼすもうひとつの要因は,答案の筆跡や全般的なきれいさが教師に与える影響である。努力しないように見えるが結果のよい生徒よりも努力は、するが結果の思わしくない生徒のほうに,どちらかといえば高い点をつける教師もある。(注38)
論文体テストは動機づけの手段,論文を書く能力を伸ばすための指導の手段,またはその能力に直接到達する手段として長所をもっているであろう。
われわれはさまざまの学力の型を評価するために,多くの異なった形式で新しい型のテストを用いることができるが,これには限界がある。それでもなお古い型,すなわち論文体テストは有用である。たとえば,書く能力を評価するために用いられる。生徒の構文・句とう点およびつづりの知識は文を書く場合の重要な手段であって,それは新しい型のテストによって評価されるかもしれないが,まとまったやり方で生徒の表現能力をじゅうぶんにそして完全に見せてくれるのは論文体テストだけである。生徒の学力のうちで新しい型のテストではよく評価できないものに,論文を書くこと,大量の教材を消化し組織だてその価値がわかることなどがある。
教師は論文体テストの作成と採点とを改善するように常に努めるべきである。このような改善の方法については,次にあげる文部省編修の図書に述べられているから,ここには述べない。
2.中学校・高等学校 生徒指導の手引 昭和24年
3.中学校・高等学校 一般学習指導法 昭和24年
教師はテストの項目のいろいろな形式に精通するばかりでなく,それぞれの形式を特殊な事情の特殊な目的に役だたせるようにしなければならない。
8.観察・生活時程録・日記・自叙伝および面接の利用
紙と鉛筆のテスト,すなわち標準テスト・教師作成テストおよび論文体テストは,これらのすべての目標を達成する上の結果の一部分を測定するにすぎないということは一般に認められている。これらのテストの方法は,適切に用いるならば非常に価値がある。しかし個人の生長と発達をじゅうぶんには測定していないという短所がある。過去のテストは知識と能力との修得を測定した。上級学校は中等学校における順位に基いて生徒を選抜した。われわれが,話された英語を理解する能力,話す能力,文学を鑑賞する能力などの学力を評価すると仮定してみよう。紙と鉛筆のテストだけでは,これはできないということは明白である。話す能力を評価する一つの方法は,うちとけた会話・floor talks・演説・教室のディスカッションなどのようなさまざまな状況のもとで生徒が話すのを聞くことであろう。文学の伸びゆく鑑賞力を評価する一つの方法は,生徒が学級で詩をしみじみと解釈するのを聞いたり,また生徒が自発的に読んだ書物を調べたりすることであろう。評価の他の方法は,観察・面接・生活時程録・日記および自叙伝であろう。(注39)ここでは,これらの方法の一つ一つについてごく簡単に述べることにする。昭和24年文部省発行の「中学校・高等学校生徒指導」という教職用専門書に書かれたこれらの方法の詳しい取扱を,英語教師が研究し,そこに示されているいろいろな技術を英語の指導計画に適していただきたい。
ある目的のための最善の評価技術は教室・クラブ・運動場および校外で生徒を観察することであろう。評価の方法としての観察は,もしいろいろの教師による幾種かの観察を相当の期間にわたって集めてみると,最も価値あるものである。教師は客観的態度をもって始め,そして生徒を観察し,英語の目標が完成されつつあるかどうかを見いださなければならない。教師はこの方法を用いるにあたって,きわめて良心的であるべきである。
B.生活時程録
生活時程録とは短い期間,生徒自身でつけた自分の活動の記録である。生徒は家庭と学校双方での自分の活動全部を書く,ある場合にはその中の一部を書く。その記録から教師は,生徒の関心・態度・能力およびそれらの発達を見いだすことができる。これは教師ばかりでなく,生徒自身にとっても非常に価値あるものである。
C.日 記
日記は指導計画に利用できる態度や関心を,教師が評価するのに役だつであろう。
D.自 叙 伝
自叙伝もまた生徒の関心・能力および適性を示すものである。
E.面 接
面接は生徒との親しい相談である。教師と生徒との間に相互信頼がなければ,これは成功しない。この方法は指導のためにも評価のためにも,または関心や能力を見いだすためにも,使用できる。教師は面接の正確な記録をとるべきである。
記録は教師にとってのみならず生徒・父兄および雇主にとってもきわめて重要である。いうまでもないことであるが,記録は正確で,包括的で,すぐに役だち,相当の期間にわたっての生徒の進歩を正確に示していなければならない。また記録は英語の指導計画が成功するために絶対に必要なものである。
採点または記録をつけることの重要な目的は次のようなものである。
B.生徒が自分の学習を評価するのを助けること。
C.生徒の進歩を父兄に通知すること。
D.転校したり,大学に進学したり,または就職したりする生徒のために,基礎となる報告書に資料を提供すること。
生徒の英語の現在の学力およびその進歩の程度を詳細に父兄に知らしてやらなければならない。教師もまた生徒が将来進歩していく助けとなるように示唆するのがよい。
また,中学校第3学年と高等学校第3学年程度の選抜試験をする必要があるから記録を残さなければならないが,その記録は英語の紙と鉛筆の試験の結果よりもはるかに広範なものでなければならない。
2.採点内容と方法
英語課程には五つのおもな目標がある。
B.さまざまなの場面に応じて効果的に話す能力と習慣。
C.読んでわかる能力。
D.書き表わす能力。
E.英語を話す国民の文化と文学を理解し鑑賞すること。
3.採点法(注40,41)
百分法のおもな難点は,すべての採点法と同様にただ点をつけることに終始してしまうことである。そしてまた生徒の活動を正確に示さないし,学習過程の長所・短所がはっきりわからないことである。たとえば,英語において80パーセントの点というのは,英語をりっぱに用いる技能や能力のすべてに一様によいということではない。文字どおりに言えば,その生徒が聞き方・話し方・読み方・書き方にそれぞれ80パーセントの力をもち英語を話す国民の文化について80パーセントの理解を得たということになる。この場合,80パーセントという点は,明らかにほとんど意味をもたない。百分法というものは,実際にはっきりしている量に基いた場合にのみ使用されるのが正しいのである。したがって,伸びてゆく有機体である生徒の成長発達を採点することは不可能である。好ましい学習活動またはいろいろな学習結果は数学的性質のものではないから,パーセントやその他の数字によっては採点できない。英語を理解し話す能力,または文化や文学の鑑賞力は,正確に書かれた進歩の記述によるほかは,とうてい示すことはできない。
しかし,百分法は客観テストのなまの点を表わす場合には,非常に有用であり有意義である。
評語法はひとつには百分法の弱点をいくぶんか緩和するために用いられるようになったが,真の学習結果に無関係であるから,理想どおりにいかない。
この採点法には上に指摘した百分法と同じようなおもな短所が多少ある。たとえば,英語にCという等級が与えられ中位の学力を示すものとするならば,このような等級を文字どおり解釈すると,その生徒の聞き方・話し方・読み方および書き方が中位であり,また英語を話す国民の文化と文学の理解と鑑賞が中位であることになるであろう。しかし,ある生徒はその言語の技能のうちの一つまたはそれ以上において,中以上または中以下であったかもしれない。このようなひとつの評語では,父兄も雇主も生徒自身も,生徒の学力や失敗について正確にわかるはずがないであろう。評語を使おうとするならば,おもな目標に応じていろいろな評語をつけなければならない。ことばを換えていえば,英語では前に述べた五つのおもな目標の一つ一つに別々の評語を用いなければならない。そしてこれらの五つの評語を平均しようとするのは賢明ではない。違った結果を平均した評語は意味がないからである。
4.むすび(注42,43)
評語に伴う記述を適切にするために,できるだけ努力すべきである。評語法をよくしていくためには,評語を与える学習結果に照らして,評語の定義を慎重にしなければならない。その資料としては,いま問題にしている学習結果の成否について,人間の判断力の決定できるかぎりにおいて信頼できる証拠である,広範にして詳細な資料を集めて使用する準備をすべきである。教師はいろいろな方面から時間をかけて集めた広範な資料に基いて評語をつけなければならない。生徒の進歩を定期的に評価したものを記録するには,一般に指導要録がいちばんよいとされている。
報告書は生徒自身の能力と発達とについてしるすべきであって,学級や競争における順位を示すべきではない。次の三つの要素を認識してはっきりさせておくことができるであろう。
B.生徒の現在の学力。
C.生徒の学力の発達と進歩の程度。
英語やその他の教科のために,別々の指導要録というものはない。指導要録には英語の五つのおもな目標に従って英語の進歩についての資料を記入する空欄がある。指導要録の詳細については,文部省発行「中学校・高等学校 生徒指導」(昭和24年)を参照されたい。
(注1) N.L. Bossing, Progressive Methods of Teaching in Schools ,Houghton Mifflin Company, Boston, 1942, Chap.xx参照。
(注2) R.D. Cole, Modern Foreign Languages and Their Teaching, Appleton-Century-Crofts, Inc., New York, 1937, pp.385-386参照。
(注3) H.A. Greene, A.N. Jorgensen, and J.R. Gerberich, Measurement and Evalualion in the Secondary School,Longmans, Green and Company, New York, 1943, p.646. 発行所の許可により引用。
(注4) Ibid., p.644. 発行所の許可により引用。
(注5) Ibid., p.642. 発行所の許可により引用。
(注6) C.C.Gullete, L.C.Keating, and C.P.Vtens, Tecking A Modern Lauguage, Appleton-Century-Crofts Inc. New York,1946, pp.81-83. 発行所の許可により引用。
(注7) H.A.Greene, A.N.Jorgensen, and J.R.Gerberich, Measurement and Evaluation in the Secondary School, Longmans, Green and Co., New York, 1943, Chapter V, pp.91-93, Norms are the levels of achievement which typical pupils actually attain. 参照。(注8) Ibid., p.16. 発行所の許可により引用。
(注9) V.A.C. Hemmon, Achievement Test in Modern,Foreign Languages, Publications of the American and Canadian Committees on Modern Languages, Volume V, American Council on Education, Washington, 1929. 発行所の許可により引用。
(注10) H.H. Remmers and N.L. Gaze, Educational Measurement and Evaluation, Harper & Brothers, New York, 1943, p.141参照。
(注11) H.A. Greene, A.N. Jorgensen, and J.R. Gerberich, Measurement and Evaluation in the Secondary School Longmans, Green and Co., New York, 1943, p.626 参照。
(注12) Ibid, p.16. 発行所の許可により引用。
(注13) T.L. Keeley, G.M. Ruch, and L.M. Terman, Stanford Achievement Tes, Reading, Advanced Battery, World Book Company,1940. 発行所の許可により引用。
(注14) M.E. Haggerty and L.C. Haggerty, Haggerty Reading Examination, Sigma, 3, World Book Company, 1920. 発行所の許可により引用。
(注15) H.H. Remmers and N.L. Gaze, Educational Measurement and Evaluation, Harper & Brothers, New York, 1943, pp.167-168 参照。
(注16) A.E. Traxler, Traxaler Silent Reading Test, Grades 7 to 10, Public School Publishing Company,1939 参照。
(注17) H.S. Candy, J.B. Opdycke, and M.Gillum, Applying Good English, Macmillan Co., New York, 1944, p.104. 発行所の許可により引用。
(注18) H.A. Greene, A.N. Jorgensen, and J.R. Gerberich, Measurement and Evaluation in the Secondary School, Longmans, Green & Co., New York, 1943, pp.182-184 参照。
(注19) H.E. Hawkes, E.F. Lindquist, and C.R. Mann, The Construction and Use of Achievement Examinations, Statement Rules and Matching and Correction, Houghton Mifflin Co., Boston, 1936, p.412. 発行所の許可により引用。
(注20) H.A. Greene, A.N. Jorgensen, and J.R. Gerberich, Measurement and Evaluation in the Secondary School, Longmans, Green & Co., New York, 1943, pp.188-190 参照。
(注21) 文部省,「中学校・高等学校 生徒指導の手引」,昭和24年,付録C 参照。
(注22) 文部省,「高等学校入学者選抜要項」,昭和23年,参照。
(注23) C.H. Handschin, Modern-Language Teaching, World Book Company, New York, 1940, p.132. 発行所の許可により引用。
(注24) Ibid, pp.112−113.発行所の許可により引用。
(注25) C. Burt, Mental and Scholastic Tests, Staples Press Limited, London, pp.297-313 参照。
(注26) W.V. Kaulfers, Modern Languges for Modern Schools, McGraw-Hill Book Co., Inc., New York, 1942, Chap ⅩⅢ参照。
(注27) R.I. Johnson and A.L. McGregor, English for Your World, Ginn and Company, Boston, 1944, p.16 発行所の許可により引用。
(注28) 津田塾大学,入学試験問題,昭和21年
(注29) H.S. Candy, J.B. Opdycke, and M.Gillum, Applying Good English, Macmillan Co., New York, 1944, pp.380-381. 発行所の許可により引用。
(注30) C.H. Handschin, Modern-Languages Teaching, World Book Co., New York, 1943, pp.129-130 参照。
(注31) H.A. Greene, A.N. Jorgensen, and J.R. Gerberich, Measurement,and Evaluation in the Secondary School, Longmans, Green & Co., New York, 1943, pp.150-155 参照。
(注32) Ibid. pp.133-142 参照。
(注33) H.H. Remmers and N.L. Gage, Educational Measurement and Evaluation, Harper & Brothers, New York, 1943, Chap.Ⅷ 参照。
(注34) Ibid, pp.133-142 参照。
(注35) D. Starch and E.C. Elliot, Reliability of Grading High School Work in English, School Review, September 1912 参照。(注36) H.H. Remmers and N.L. Gage, Measurement,and Evaluation, Harper & Brothers, New York, 1943. Chapt.Ⅷ and ⅩⅡ 参照。
(注37) Ibid, Chap.Ⅶ (pp.136-137) 参照。
(注38) H.A. Greene, A.N. Jorgensen, and J.R. Gerberich, Measurement,and Evaluation in the Secndary school, Longmans, Green and Co., New York, 1946. Chapt.Ⅷ 参照。
(注39) 文部省「中学校・高等学校 管理の手引」,昭和24年,参照。
(注40) W.H. Burton, Guidance of Learning Activities, Chap.19, D. Appleton Century Company, New York, 1944 参照。
(注41) 文部省「中学校・高等学校 一般学習指導法」,昭和24年,参照。
(注42) W.H. Burton, Guidance of Learning Activities, Chap.19, D. Appleton Century Company,New York, 1944 参照。
(注43) 文部省「中学校・高等学校 生徒指導」,昭和24年,参照。