まえがき
一 本書の目的と使い方
〔本書は、各学校が教育課程を作る場合に、国語科としてどのような活動および経験と資料とを考えておくべきであるかを知らせるために書いたものである。〕
今後、各学校はその地域社会の必要を見きわめて、生徒たちの必要に合った教育課程を設定しなければならない。本書は、その場合、国語の課程としてどういうことを考えていなければならないかについて、基準を示そうとした。そのために、主として次の事がらを取り上げた。
(1) 国語科の目標
(2) 国語科の内容
(3) 国語科実施の方法
(4) 国語の領域における生徒の成長発達の評価
これらの四つの事がらをもとにして、学習活動の導き方や考え方や調査のしかたについて、参考になるようなことを掲げた。
〔本書は、また、国語科の資料としての教科書を編集するために基準を提供しようとする。〕
教科書の検定制度が実施されて、教科書が自由に作られるようになった。教科書の著者は教科書を作る場合、すでに一般に認められた理論に基いて作らねばならないが、その理論の多くは、本書に示されている。検定基準によれば、国語科の教科書は、他の教科におけると同様、この学習指導要領によることになっているが、それは教科書を、ここに示されたことに完全に一致させなければならないというわけではない。
元来、教科書というものは教育課程の全部ではなく、教育課程の中にあって、その教科における資料のある量を提供するものであるが、国語科においては、他教科の場合よりも、教科書が特に重要な地位を占めてきた。国語科教科書は、国語の課程の重要な資料であって、他の資料もそれを中心として求められるようになっていなければならない。したがって、学校の教育課程が本書に基くと同様、教科書の課程も、本書に基いていなければならない。そうして、教科書が各学校の教育課程の中でじゅうぶん活用されるようになっていなければならない。
〔本書は、国語科の教師の実践に、手びきとなることをめがけている。〕
国語科の学習指導は、他の諸教科と同様、あるいはそれ以上に、地域の必要に即し、生徒たちの必要と興味と能力とに合うように計画され、実施されるべきである。本書は、教育上の計画を立てる場合だけでなく、毎日毎日の実践指導に対しても、参考となるようなことを掲げようとした。
〔本書は、参考であり、手びきであるから、学校および教師が、本書に掲げたことをそのとおり採用することを予想してはいない。〕
本書はなるべく実際的であるように努めたが、あくまでも参考であり、手びきであって、盲目的に従われるべきものではない。本書の中の「単元の例」にしても、教師はこれを参考としても、さらに具体的な有効なものを作成すべきである。その他の点においても、すべて、本書に掲げたことは一つの基準であって、これを参考として、この基本的な方向に従って考えてほしいという意味である。