第八章 中学校の国語科における習字の学習指導

 

一 中学校の国語科における習字の地位

 

〔書くことを効果的に行うためには、習字の学習が必要である。〕

 国語生活における書くことの実際は、その場その時で、いろいろの用具で書き表わすことが要求される。

イ 鉛筆・ペン・鉄筆・チョークなどの硬筆は、それぞれ特殊の使い方があり、書かれた文字に著しい相違を生ずる。

ロ 大小さまざまの毛筆によって、各種各体の文字を書きこなすことは、特殊な技術として、系統的な練習を必要とする。

ハ 書かれる紙や板には、用途による大きさや質の違いがあって、一律に取り扱うことはできない。これに加えて、公用文や実用文などそれぞれ書式のあるものは、その慣習に従いながら、与えられた紙面を効果的に美的に活用しなければならない。

 このように、文字を書き表わすには、必要に対する用具の差によって、複維な事情を生じるから、国語学習の中に、これに必要なさまざまの経験が用意されなければならない。

〔中学校の習字学習は、小学校における書くことの技術の習得の上に立って、生徒の必要と興味およびその心理的、生理的発達の段階に適応しなければならない。〕

 中学校においては、小学校の書き方および習字の学習を基礎として、必要と興味、心理的、生理的発達に応じた習字としての学習が展開されなければならない。

 すなわち、生活上、学習上の必要に応じて、

イ 硬筆で速書き(視写・聴写)する技能。

ロ 毛筆を使いこなす技能。

が、高められなければならない。

 特に毛筆にあっては、高等学校芸能科書道に発展するだけの内容を備え、能力ある生徒に対しては、書道としてこれを学習させる用意も必要である。そして、どのような用具による場合でも、習字としては常に、

イ 正しいこと。

ロ 美しいこと。

ハ 速いこと。

の三つが、重点のおきどころを異にして要求される。この技術を身につけるには、どうしてもくり返し練習しなければならない。しかも、その技術は、技術として終ることなく、実際生活の中に生き、好ましい生活態度となって働かなければならない。

 したがって、習字学習は、特別の計画を必要とするが、孤立することなく、国語学習全体の中に、書くことの一環として適正に位置づけられなければならない。