三 文法学習指導の内容

 

 文法は国語を学習する場合にはいつでも学習されている。ただそれがことばづかいを反省して、言語の機能を知り、それを普遍的な法則にまとめていくときに文法教育がはじまるのである。小学校においても当然、児童はいくらかの文法的な知識を持ち、文法的な自覚を持たなければならないが、中学校・高等学校の文法学習指導に際しては、次のような内容が考えられる。

(一) 文

 表現の単位としての文と、その成分や組み立てを明らかにすること。

イ 文のいろいろな型。

ロ 文の成分。

 主語と述語、修飾語および接続する語などに分けて意味をはっきりさせること。

ハ 文の組み立て。

 句と節、ひとつづきのこみいった考えをまとめ、二つ三つの文をつないで一つの長い文とすること。

(二) 語の使い方を明らかにすること。 イ 語の用法と意味。

ロ 助詞・助動詞の類。

ハ 語形の変化と接尾辞・接頭辞・語根。

 なお、語の音変牝や、複合語・同意語・反対語にふれること。

ニ 連語・慣用語など。

(三) くぎり。

 話す場合には、ことばの調子や態度などによって、その表現を助ける。しかし、書くときにはこんな手段がないから、正しい書き表わし方は、相手によくわからせるために必要であるということ。

(四) 文章。

イ 文と文との間のつながり。

ロ 文の並べ方。

 考えていることを整理して段落をくぎり、話の運び方がよくわかるように順序よく並べること。

(五) 効果的なことば。 イ 相手と時と場所とに応じた適切な表現。

 その場にぴったりあてはまった、相手にもそれとはっきりわかるようなことばを選ぶこと。

 表面的な意味ばかりでなく、かくれた意味も見のがさないこと。

ロ はっきりしたことば。

 単語や言いまわしが、自分の思うところにぴったりとはまっていないときは、たとえその形が整っていても、すぐれたことばづかいとはいえないこと。

ハ 美しいことば、力のこもったことば、韻律・修辞など。たとえば、文の構造に変化を与え、人をひきつけるようなことばづかいをするようにすること。

(六) 進んで、文法体系を授けて、ことばの構造を明らかにし、また、古典を理解するために文語法の大要を学ばせる。言語の変遷、日本語と外国語との比較、言語と思考、言語と文化、言語と文学、国語表記上の特殊性、ことばの持つ使命などについても、適当な機会を求めて理解させるように配慮する。