第六章 国語科における文法の学習指導

 

一 文法学習指導の意義

 

 だいたい、われわれの思想・感情を相手に伝えることが、ことばの最も重要な役割であるが、自分の思うことをまちがいなく、よくわかるように相手に伝えるためには、まず、はっきりした物の考え方をするとともに、一般の人々の慣用に一致したことばづかいに従ってそれを表わすことが必要である。

 こうしたことばのきまりは、日常の言語生活の中でも自然に学習されるが、生徒がことばにはきまりのあることを知り、はっきりした計画に基いて言語活動を行うときに、その学習はいっそう効果的である。

 従来文法の規則は習ったが、正しく書いたり話したりすることのできない者はずいぶん多い。それは、規則を規則として覚えても、それだけですぐ、その規則を実際のことばづかいの上に使用して、いつも正しいことばづかいをすることができるようになるとは限らないからである。

 われわれが忘れてならないことは、実生活に必要なことばのはたらきを身につけることが、文法学習の目的であるということである。したがって、文法上の用語とか規則とかを学んでも、その知識が人の書いたものを読んだり、自分の思うことを話したりするときに役だたないならばその価値はない。文法の学習指導の意義は、ことばのきまりそれ自身を知ることではなく、生徒の日常生活におけることばのはたらきをいっそう正しく効果的にすることにある。つまり、文法の学習は、自分の言語生活を反省する能力を養い、同時に表現とことばの選択のこつを習得させるという実際的意義を持つものである。