二 各学年の単元の選び方および展開のしかたへの注意

 

(一) 前述の三つの単元は各学年の一例であって、高等学校における学習事項としては、いろいろなものが考えられる。国語科の教師は、これらの事項をよく研究して、単元の選択の展開にじゅうぶんな用意をしておくことが望ましい。また、このことを数校の国語科の教師が共同して行ってもよい。単元を展開する際には、次のようなことを注意しなければならない。 1 単元は生徒の必要と興味と能力とに応じうるようによく考慮されなければならない。

2 目標と内容は明確に述べなければならない。そして、知識・理解・技術・能力・習慣・態度・鑑賞・理想などを含むべきである。

3 目標を達成するための学習活動は、いろいろと考えなければならない。何か一つの学習方法に重きをおきすぎる単元は好ましいものとは言えない。言語の分野における学習活動では、学級での会話、学級あるいはグループでの討議・パネル−ディスカッション・オープン−フォーラム・討論・劇化、知識を得るために読む技術、鑑賞や娯楽のために読む技術、独創的な作文などを含むべきである。

4 評価は目標に応ずるようにしなければならないし、その計画はいろいろ立てるべきである。

(二) 各学年の単元の例

 次に掲げるのは、単元を選ぶ上に基本的な仕事を便宜上学年別に配当したもので、実際に単元を立てる場合には、学校の設備・環境、生徒の能力などに応じて適当に発展させたり、組み合わせたりすべきである。

第一学年

 講義や講演の聞き方

 放送の聞き方

 発表のしかた

 会話のしかた

 筋のとおった文章の書き方

 大意や中心思想のとらえ方

 和歌と俳句

 長編小説の読み方

 映画の選び方と見方

 国語と外国語との比較

 学級文集の編集

 図書館の利用

 古典の現代的意義

第二学年

 議事の進め方

 討議のしかた

 社交的な手紙の書き方

 生活記録の書き方

 創作集の編集

 雑誌の選択と読み方

 短編小説

 詩の味わい方

 エッセイの読み方

 図書の選択と利用

 国語の変遷

 脚色のしかた

 文学と教養

第三学年

 ラジオの批判的な聞き方

 インタービューのしかた

 ノートの取り方の改善

 宣伝文や広告文の書き方

 書式一般

 論説・論文の書き方

 新聞の批判的な読み方

 日本文学の思潮

 世界文学作品

 ジャーナリズム研究

 公衆に対する演説のしかた

 司会のしかた

 国語・国字の改善

(三) 単元の取扱についての注意 1 一つの単元にかける時間は、仕事の種類によって増減があってよい。「図書館の利用のしかた」とか、「書式一般」などは、十時間ぐらいでもよいであろうし、「国語の変遷」とか、「世界文学作品」などでは、十五、六時間から、二十時間ぐらいは必要であろう。

2 古典については、第一学年の初期に、「古典はわれわれの生活とどんなつながりがあるか。」という単元をとり、第三学年まで、これを深めたいろいろな単元を設定することができる。古典では、語句の注釈や文法上のせんさくもたいせつであるが、最初からあまり細かく立ち入ってしまうと、生徒は古典に親しみをおぼえにくくなる。また古典の現代語訳を適当に利用して、古典を読むときにのみ必要であって、現在はあまり必要でない語法などの学習に多くの時間を使いすぎないほうがよい。

3 生徒の生活と結びつきが薄い事項では、資料の選択や指導の方法にくふうをこらして、生徒の興味を起し、いきいきとした学習活動のできるようにしなければならない。

4 生徒の必要と能力と興味とによって、あるコースが選ばれた場合には、それに応じたいろいろな単元が用意されなければならない。