第三学年

単元 国語・国字をよりよくするにはどうしたらよいか

(一) 単元設定の理由

1 国語・国字問題は、われわれならびに次の世代に課せられた問題の一つで、当用漢字の選定、その字体の整理、現代かなづかいの制定、ローマ字教育の実施など、いずれも今日の社会的要求に対する国家的、国民的努力の現れである。

2 国語・国字問題は、国語ならびにその表記法の特殊性により、その内容がきわめて複雑である。問題の意義を理解し、いろいろな見解を批判し、進んで自分の意見を立て、解決の方向へ協力するためには、広い知識と不断の関心と、生活上の実行などが必要である。

3 生徒は生活の必要から、この問題に対して、相当な関心を持っている。また英語あるいはフランス語・ドイツ語・中国語などの外国語、ローマ字表記法、歴史的ならびに表音的かなづかい、漢字・漢語・漢文の学習などによって、国話を反省し、国字を批判するのに必要な知識・態度・技術もひととおりできている。しかしやがて社会生活・職業生活にはいる生徒であるから、その関心や知識・態度・技術をより高めて、一定の見識を持つようになり、さらにこれを日々の生活をとおして実行するまでに導くことがたいせつである。

4 およそ社会人として、だれでも、表現と伝達の手段であることばに興味を持っていることは言うまでもない。われわれはいわば、文化遺産としてことばを受け伝えている。そうしてわれわれはその所有者として、ことばに興味を持っている。変革が現に行われているか、あるいはそれが当然行われるはずになっているか、そのいずれにもせよ、すべては一般社会の人の関心事となっている。生徒が高等学校を卒業する前に、ことばの将来の発展や改善に社会人として参加できるように、ことばにおいて起った変化、いま起りつつある変化、提出されている国語問題への解決など、最も重要な問題をよく了解しているようにならなければならない。

(二) 目標 1 国語・国字に関する知識を深め、国語・国字にはどんな問題があるか、これをよりよくするにはどうすればよいかを理解する。

2 生徒を、国語・国字の改良に関する諸問題の解決に参加する社会人としてふさわしいように育てる。

3 国語・国字に対する関心を高め、これをよりよくするために協力する態度を養う。

4 自分の日常の談話・文章を絶えず反省して、これを望ましい方向に改良していくのに必要な技術を身につける。

5 われわれの祖先によって残された言語の文化遺産を、もっとよく理解し鑑賞できるようにする。

(三) 内容 1 われわれの言語生活・文字生活の実態はどうであるかを話し合う。

2 児童・生徒の諸記録を集めて、漢字・かなづかいの実際を調べてみる。

3 国語・国字とわれわれの日常生活とのつながりを考える。

4 国語・国字問題がどうして起ったかを理解する。

5 国語・国字にはどんな問題があるかを調べてみる。

6 国語・国字をよりよくするには、どんな方法があるかを考える。

7 国語・国字問題に関する諸家の見解の異同を調べてみる。

8 国語・国字問題の重要性・特殊性を理解する。

9 国語・国字問題について世論調査をしてみる。

10 できれば、外国人の言語生活・文字生活について調べてみる。

11 国語・国字問題が、われわれの問題であることを理解する。

12 国語・国字問題の解決に参与するためにはどうしたらよいかを話し合う。

13 国語・国字問題に関して討論する。

14 自分の話しことば・書きことばをよりよくするには、どうしたらよいかを研究する。

15 国語・国字問題に関するレポート・論説を書く。

16 国語・国字・言語・文字に関する文献を読む。

(四) 資料 1 当用漢字表・当用漢字別表・当用漢字音訓表・現代かなづかい当用漢字字体表。

2 国語問題審議要領(国語白書)。

3 ローマ字教育の指針、ローマ字文の書き方。

4 米国教育使節団報告書、その他国語・国字問題の参考文献。

5 いろいろな文字表現・言語表現を含む児童・生徒の作文・日記・ノート・答案など。

6 表現のいろいろな新聞・雑誌・広告・看板など。

7 形式のいろいろな話しことば、たとえば、講演・放送・討議・討論・会話など。

(五) 学習活動の例 1 われわれの言語生活・文字生活について話し合う。その話合いの題目として、次のようなことが考えられる。 イ いろいろな場合、人の話がわからなかったり、聞き誤ったりするおもな理由は何か。

ロ いろいろな場合、自分の話しことばに苦労するのはどういう点か。

ハ 印刷物に誤字・誤植の多いのはなぜか。

ニ 漢字や漢語を覚えるために、どんな苦労があったか。

ホ 話しことばと書きことばとには、どのくらいの隔たりがあるか。

へ 外国語と比べてどうか、英語と比べてどうか。

2 「国語問題審議要領」を中心に話し合う。 イ 国語・国字問題はどうして起ったか。

ロ 国語・国字問題にはどんな事がらが含まれるか。

ハ 国語・国字問題は、どういう方向に進んだらよいと思うか。

ニ 国語・国字問題はだれが解決するか。

ホ 国語・国字問題の解決と国語の学習とはどんな関係があるか。

3 国語・国字問題に関し、現在持っている知識や意見をまとめて文章に書く。

4 国語・国字問題についての学習の順序・方法・分担を決める。

イ 調べる事がら。

英語その他の外国語と日本語との比較。歴史的かなづがいと表音的かなづかいおよび現代かなづかい。当用漢字と字体整理。語いの整理。漢字・かな・ローマ字の比較。国語・国字問題にする父兄や学級の世論調査。児童・生徒の言語生活・文字生活の実態調査など。

ロ 方法。

資料集めとその整理。書物・文献の選択と利用。図書館の利用。インタービュー。研究・調査の整理。討議。討論。レポートの作成など。

ハ 仕事の分担。

個人の仕事。グループの仕事。グループの協力。学級の仕事。

5 それぞれの分担した仕事について発表の準備をする。

6 研究・調査の結果をグループごとに発表し・学級で批判的に話し合う。

7 討論会を開く。議題「国語・国字をよりよくするにはどうしたらよいか。」

8 レポートを書く。

イ 研究・調査の整理。

ロ 国語・国字問題に関する私見。

ハ 諸家の説の批判。

ニ 自分の実行したいと思う事がらなど。

(六) 評価 1 (五)の3の文章と(五)8の文章と比較しながら調べ、また、話合い・討論会の意見により、次のことを判定する。 イ この問題に対する関心がどう変ったか。

ロ 自分の意見を持つようになったか、その意見は筋道のとおったものか。

ハ 国語・国字・言語・文字に関する知識が深まったか。

2 生徒の談話や文章に現れる変化を調べる。 イ 望ましい方向に進んでいるか。

ロ ことばや文字の使用法はどうか。

ハ 当用漢字・現代かなづかいをどうしているか。

3 教師作成のテスト。 イ 国語・国字問題の知識・理解に関するもの。

ロ 国語・国字問題に対する態度・方法の進歩に関するもの。

漢字全廃論・漢字節減論・かな専用論・ローマ字論・新字論などの主張を示し、賛否を調べて分類し先の調書と比較してみる。

4 この単元について、また、他の単元との連絡について、学級で話合いなどによって反省してみる。 イ 他の単元とのつりあいはどうか。

ロ 目標の立て方はじゅうぶんであったか。

ハ 目標や学習活動について、真の協調的な計画が行われたか。

二 資料の収集や選択は適当であったか。

ホ 目標はどの程度まで達成されたか。

ヘ この単元から会得したものについて、どんなに考えているか。

ト この単元の学習経験や学習活動に興味を持ちえたか。

チ この単元を学習する間に有益だと思ったこと、成功したと思ったことは何か。

リ どんなことがふじゅうぶんであったか。

ヌ ふじゅうぶんであったところをどうしたら改良することができたか。

5 グループごとに、または学級全体で相互批評をする。 イ 調査・研究の方法・結果について。

口 発表・話合い・討論について。

ハ レポート・論説について。

6 教師ならびに学級の反省。 イ 単元計画は適当であったか。

ロ その展開はどうであったか。

ハ 改良すべき点は何か。