三 読むこと

 

(一) 高等学校における読むことの学習指導の意義

1 読むことは、聞くこととともに、人間として成長するために欠くことのできない経験である。この二つを欠いては、学習が成り立たず、生活の根拠が失われる。高等学校の生徒は、教科書・参考書のほかに、新聞・雑誌・単行本など、いろいろな読み物をいろいろな目的によって、いろいろな読み方で読んでいる。高等学校の生徒は、生徒としての読書もすれば、社会人として、成人としての読書もしている。そして、よい影響を受けると同時に、悪い影響も受けている。知識欲の盛んな感受性の鋭い生徒たちであるから、特に読書指導の必要が強く認められる。

2 高等学校の生徒は、学習上からも生活上からも、いよいよ読書の必要が増してきている。しかし、その読書技術・読書興味・読書習慣は、個人によってはなはだしい違いがある。そして、能力のふじゅうぶんな者、好ましくない傾向の者、よい影響よりもむしろ悪い影響をより多く受けている者、極端にその能力を欠いている者も少なくない。

 読書能力のいかんは、ただちに学習の効果を左右する。その能力の低い者に、豊かな生活や、将来の成功を期待することはできない。