第四章 高等学校の国語科の計画

 

まえがき

 

(一) 高等学校の国語科の計画の立て方  高等学校に入学してくる生徒たちは、知能・情緒・性格ばかりでなく、国語の学力において、非常な違いがある。卒業後の進路についても、ただちに仕事につく者と、大学に進む者とがある。高等学校の国語科の計画は、それらの事情を考えて立てなければならない。 〔高等学校の国語科の計画を立てるについては、まず第一に高等普通教育を終った者にどれだけの国語の力が必要であるかを考えなければならない。〕  高等普通教育を終った者にどれだけ国語の力が必要であるかについては、第一章にあげた高等学校の国語学習指導の一般目標のところに書いてあるが、計画を立てるについては、さらに具体的に考えてみなければならない。これらは高等学校卒業生が将来どのような職業を選ぼうとも、社会人として必要な国語の能力であって、高等学校でぜひ身につけなければならないことである。したがって、これは、一般の高等学校はもちろん、商業・工業・農業などの高等学校の国語学習指導を計画する場合においも、当然考慮しなければならない。 〔高等学校の国語科の計画を立てるについては、職業上の必要を考えなければならない。〕  高等学校の卒業生にはすぐに職業につくものと、大学のコースを終ってから職業につくものとある。また商業・工業・農業などの職業の課程もある。いずれにしても将来職業につくということを考えて、そのために必要なことばの効果的な使用を身につけるのでなければならない。たとえば人と応待すること、他人を紹介すること、あるいは文書の作製や整理はどんな職業にも必要なことである。また辞書や参考書の使い方、大意や要点のとらえ方など、研究調査のための読みに熟達することも、大学に進学するしないにかかわらず必要である。さらに、教養として古典(漢文を含む。)・文学史などを学習することも必要になる。

 こうした社会的必要、職業的必要を満たすことが、同時に大学進学の条件でなければならない。したがって、大学進学のために特別のコースを設ける必要はない。りっぱな社会人となる準備が、同時に大学進学の準備であるように、国語科の計画を立てることが望ましい。

 高等学校の国語学習指導の計画を立てるについては、なお、生徒の必要と能力と興味とに応じて、国語科の目標のうちのあるものを取り上げて、いっそう詳しく学習するコースも考えなければならない。