第三章 中学校の国語科の単元の例
まえがき
前の章で中学校の国語の学習指導の計画を聞くこと、話すこと、読むこと、書くことに分けて説明したが、これをどのようにして実際に学習させて行くかがこの章の問題である。
ここで次の二つのことに注意しなければならない。
第一に、聞くこと、話すこと、読むこと、書くことは、どれも、何かについて聞いたり、話したり、読んだり、書いたりするのであって、そこに何かの解決すべき問題や興味を持っている話題がなければならないということ。
第二に、こういう聞くこと、話すこと、読むこと、書くことの技術や能力も、実際の必要に即し、実際の場において経験されてはじめて身についていくものであるということ。
第一の点から生徒がほんとうに興味を持ち、関心を持っている話題を取り上げて行かなければならないこと、第二の点から技術を現場から切り離して修練しても効果が少ないことがわかる。すなわち、問題や話題の自然の展開に従って、聞くこと、話すこと、読むこと、書くことが実際の必要に即して行われるときに、ことばを使用する技術や能力が効果的に獲得されていく。われわれはこのような学習指導の方法を採用すべきであって、この方法を採用することによって、かつて講読・作文・文法・習字などに分れて孤立して行われていた学習が一つのまとまった経験として学習されるようになる。その上、他教科、たとえば社会科や理科などとも密接な関連を持つことができる。
教科書を中心としたかつての学習においても、学習の効果をあげるためには、教科書以外に参考資料や、関連する読み物などをたくさんに用意しなければならなかった。また、教科書の一課一課を読むだけでなく、そこに書かれていることについて討論したり、それについて論文を書いたりするような指導も行われた。すなわち、教科書が話題としているものを中心に、読むこと、話すこと、聞くこと、書くことの学習活動を組織したのであった。特に、作文の指導においては、季節の自然現象や一般の社会現象の中から、生徒の興味のありそうなものを取り上げて、これについて話し合ったり創作をさせたりしていた。そこで、これをもう一歩進めて、そういう生徒の興味の中心をつかんだ文章を選んで読ませ、これについて必要な話合いをさせ、これについて適当な文を書かせるということになれば、いっそう効果があるのである。生徒の学習活動は、基本的には、決して文を読むことだけに限らないで、生徒自身の活動や経験について話させたり書かせたりすべきである。また、生徒の経験に関係ある話題や、経験を広げていく話題を選んで、聞いたり、読んだり、話したり、書いたりするようにさせるべきである。