第二学年

単元 会議の進め方

(一) 単元設定の理由

1 小学校・中学校を通じて生徒は多くの集会の参加者となり、また、時にはその発起人や責任者となった経験を持っている。

2 参加者が自分の意見を発表することができるように、多数派が少数派の反対を無視しないように、また、少数派やひとり(たとえば議長)が会合を支配することのないように、有効にしかも合理的に会合を司会することは、社会では非常に重要なことである。

3 会議を進めるにあたっては、ことばが最も重要な役割を演ずるのであって、話しことばについて反省したり、それを効果的に使用したりする機会を生徒に与える。

4 議事手続は、会を能率的に運営するには絶対に欠くことのできないものであるが、わが国では効果的に行われていない。議事手続は、だれでも知っておく必要がある。

5 社会においては、だれでも時として指導者になることがある。だれでも司会ができなければならない。

(二) 目標

1 社会における会議の役割や参加者の心構えについて、生徒の理解を確実にする。

2 議事手続のだいたいを知る。

3 左記の会を含めて、校内の各種の会合をじゅうぶんに理解し、巧みに運営するようになる。

イ 事務打合せの会合。

ロ ある問題について、参会者全部が自由に意見を交換する会。

ハ 一つの問題について、二、三人の者がそれぞれの立場から思い思いの意見を述べて、それについて討議する会。

ニ ひとりの提案者が述べた意見についてみんなが話し合う会。

ホ 一つの問題について、五、六人の者が自由に話し合う会。

4 次にあげるような能力、特に、ことばの使い方についての能力を増す。

イ 他人の主張を聞こうとする寛容な態度を養って、他人の見解を理解するように努力する。

ロ 討論全体の目標を確かめて、自分の意見を発表するだけの価値があるかどうか考慮する。

ハ 秩序だったやり方で、質問したり、自分の意見を述べたりする。

ニ 一般に認められた議事手続に従って司会する。

ホ 研究した結果を効果的に発表する。

へ 問題を項目分けにして分析し、その要点を書きとめる。

ト 意見を組み立てるために、参考書やグラフやその他の報告資料を活用する。

チ 裏づけになる論拠がなければ意見を述べないでおく。

リ 激論に陥ることなく討論を進める。

ヌ 他人の意見に賛成できないときも、礼儀正しい態度で賛成できない論点を述べる。

ル 自己の意見が証拠によって確かにされていると思う場合は、たやすく他人に左右されない。しかし、じゅうぶんに反証があがっている場合には、快く見解を改める。

ヲ 討論は必ずしも全部の人の意見の一致を見るに至らなくてもよいとする。

ワ 効果的に集会を司会する。

カ いろいろの討論会を開いたり、参加したりする。

(三) 内容

1 議事手続の規則

2 おとなの集会のしかた。

3 議長の任務。

4 参加者の任務。

5 各種の討論形式。

6 会議の際のことばづかいや態度およびそれらの改善方法。

7 各種集会においての正しい作法。

8 公の席での効果的な話し方。

(四) 学習活動の例

A 導入

1 最近に行われたクラス会について反省する。正しく行われたことや、正しく行われなかったことについて討論させる。

2 議長となった体験、議長としての苦心談・成功談について討議させる。

3 各生徒にラジオ放送の会議や、教科書や雑誌にのった会議に関する材料を持ち寄らせる。

4 教師がおとなの正式会議についての補足的説明を行う。

5 議長が会議を強く支配して、自己の見解に賛成の者だけにしか発言を許さなかった事例について考えさせる。

6 少数派が集会を支配した場合を考えさせる。これはなぜいけないか考えさせる。

7 多数派が少数派の見解の発表を妨げた場合を考えさせる。これはなぜいけないか考えさせる。

B 計画

1 会議に関する単元の目標について生徒に考えさせる。生徒のあげ忘れた目標は指導してあげさせるようにする。

2 この単元における活動を生徒が会議のよい模範としようとする気持を起させるように努める。

3 この単元の一部として研究すべき諸問題を生徒に提案させ、おのおのについて討論した上で取り上げて研究すべきものと捨てるべきものを定め、取り上げたものの中で、似たような問題はまとめる。こうして、取り上げることに定まった問題を、つごうのよい順序に配列する。

4 研究問題が決定したら、生徒の各グループに問題を配分して研究させる。

 (例)

 第一グループ なぜ民主的社会では会議が必要か。

 第二グループ なぜわれわれは会議の運営がへたであるか。

 第三グループ 学校や市(町・村)で行われる会議や集会についての研究および反省。

 第四グループ りっぱな会議や集会にはどんな特性があるか。

 第五グループ 議長や参加者の守らなければならない規則にはどんなものがあるか。

5 議事手続の初歩について説明した参考書をさがしだして、生徒にその基本的規則を学ばせる。これらの規則を学級で実地に行う。

 (例)

 議長の選び方

 議長に発言を求めるやり方

 発言を許すにあたって議長の守らなければならない規則

 主要動議の提案

 主要動議の支持

 修正動議の提案

 修正動議の表決

 主要動議の討議

 主要動議の表決

 休憩または散会の提案

C 研究および調査

1 参考書を研究し、会議の議事録や速記録を調べる。

2 書記の職務について討議し、任務の一覧表を作る。

3 生徒会およびクラス会の議事録について反省する。

D 実施

1 クラス会を開いて、クラスが当面している問題について討議を行う。議長や書記を選挙し、動議の形で問題を提案させる。動議が正しく提案され、支持されたかどうかを調べる。だれにも動議について賛否の討議をする機会を与える。修正することを認める。議事法の規則にのっとって、適当な結論にくるまで討論を続ける。動議について表決を行う。会議を正しく終る。クラスの各生徒が議事手続の、少なくとも基本的方法を会得し、実地に使えるようになるまで、このやり方をくり返し継続する。議長を生徒に順番にやらせる。

2 議事手続を用いて、クラスの会議を開く。

3 この議事手続に従った、生徒の会合に出席して、その議事手続を見学する。そこで行っている議事手続について記事を書き、その手続が正しいかどうかについて各生徒の意見を述べさせる。悪いところを説明したクラスの報告や批評を生徒会に提出させる。

4 パネル討論形式の集会について利用できる資料を読む。学級単位に一つの問題を選び、生徒のパネルを指名して、パネル討論を計画し実施する。

E 要約

1 「会議の開き方」という小冊子を計画し、その各部を各グループに分けて執筆させる。それを謄写刷りにして学級の全員に与え、他の学級にも配る。その説明をわかりやすくするために、さし絵を入れることもよい。

2 議長の任務や参加者の任務に関する表や規則を作製する。これを小冊子の一部に入れてもよい。

3 全校職員生徒の前で、クラス会を開く打合せをやってみる。他の学級の生徒に批評させ、よい点悪い点をあげさせる。議事手続の正当性が立証される場合には、批評に対して学級の手続を弁護する準備をしておく。

〔注 前記の手続には、生徒が残らず参加すべきである。この単元を行っている間にどの生徒も議長になる機会が与えられなければならない。)

(五) 評価

1 この単元を行った前と後では,学級としてまた個人として、会議を開くに際して、生徒にどのような変化が起るかを観察する。

2 単元にはいるに先だって、選択法・真偽法、または類似の質問法によって予備テストを行い、各生徒の議事法についての精通度を確かめる。単元終了後に同様のテストを行う。

3 各生徒が議長の仕事を行うのを観察する。教師は、あとで、議長としての議事手続のよかった点悪かった点を、その生徒に指示してやるべきである。

4 会議における各生徒の活動の程度を日々記録する。内気な生徒には、もっと活動するよう激励する。

5 会議中の生徒の行動を観察し、記録を取っておく。もし生徒のだれかが会議を支配しようとする傾向を表わしたときは、ほかに知れないようにその生徒に面接し、その悪癖を直すように助言する。

6 他の者の意見にどれくらい耳を傾けるか観察する。寛容な心で、他人の意見に耳を傾けることの重要さについて、学級会議を開く。

7 議事手続のまちがいを一覧表にする。動議の提案などでまちがいを起したときは、会議のあとで討論を行う。どの場合にも正しい議事手続を実行する。

8 集会を開催する場合に守るべき要領を学級で表に作る。各生徒にひとりひとりこれらの要項を守ったかどうかについて、評価表に自分で記入させ、得点を、5を優良、4を良、3を普通、2を普通以下、1を不可として、自分で評価させる。(たとえば、評価表の中に十項目があれば、その最高合計は五十で、最下は十となる。)この方法で生徒に互に評価させる。

9 りっぱな会議や集会の条件について、筆記テストを準備し実施する。

10 この単元の学習中に、クラス会を開き、議事法に熟達している人を学校外から呼んで、見てもらったり説明してもらったりする。

(六) 資料

1 集会の開き方に関する参考書。(議事法の規則に関する書籍を含む。)

2 生徒会・国会、各種誌上討論会の議事録。

3 話し方に関する参考書。