(二) 中学校生徒の書くことの経験にはどんな種類があるか

 さきに述べたように、書くことは、書き方と作文とに分けて考えることもできるが、生活上の必要や目的によって分けていくと次のようになる。

〔相手に対して書く場合。〕

1 社交的な手紙や注文・案内・紹介・問合せなどのように、特定の相手に向かって書かなければならない場合が、日常生活にはかなり多い。

2 報告は、特定の人に見せる場合も多いが、どちらかというと、大ぜいの人を相手に公開するほうが主である。ことに学習の際には全体に対しても示されることが多い。

3 広く一般の人々に読んでもらうものとして、ポスター・掲示・プログラム・告知・広告などがある。

4 届・規約・法令・証書などは、いわば公的の性格をおびたもので、一定の型を持ったものである。

〔自分の心覚えのために書く場合。〕

1 諸種の日記のような生活記録は、他人に読んでもらうというよりも、自身の経験を記録しておくためのものである。これは思い出のためとか、生活の記念、メモなどを主としている。

2 学級日記・当番日記なども日記の一つであるが、これは、あとで読むこと、利用することを予定している。会議の記録や研究録・学習ノートなどもこれに属する。感想文・紀行文なども、多くはこの種のものである。

〔創作をする場合。〕

1 詩のようなものは、感動の表現であって、相手に読んでもらうとか、相手を感動させようというのが主目的ではない。

2 物語や脚本になると、読む人を意識する。しかし、感動のないところ、表現への意欲のないところに、創作は成立しないから、伝達のためというより、表現のためのものである。