(三) 中学校生徒の話すことの実態  従来、話す力を調査するのに、限られた教室活動の結果だけを見て、よく話せるとか、話がうまいとか考えていた。しかし、話すことは、生活の各種の場面に相手に応じてそれぞれの技能や態度がいるのであるから、調査の範囲や法もずっと広がらなければならない。 〔中学生はどんな話題に興味を持っているか。〕  中学生は、日常のできごとや見聞を、他人に伝えたがる傾向においては、おそらく小学校・高等学校以上であろう。目新しいニュースや、突発的できごとを話題とした話にはすぐ仲間入りをする。だから、かれらが一週間に友人と話し合った話題を集めてみると、男子ならスポーツの記録や先生のこと、上級学校のこと、女子なら映画、友だちのこと、おもしろい小説、流行の話などである。その多くは、実生活や社会のできごとである。話題は多いようだが、狭い見聞に限られるきらいがある。

 成人の話題にも強い興味を持っている生徒とそうでない生徒とある。中には、政治や世界情勢の話題にも関心を示しだす生徒がある。

〔中学生の話すことの一般的特質はどのようであるか。〕

1 あいさつや紹介などの改まった生活の場面に慣れていない。未知の成人、学校訪問者などに対して、適当な態度で応待することがよくできない。

2 表現が自己中心的で他人の発言を妨げてまで、続けざまに自己を主張する。

3 話合いなどの際、形式的な生気のない態度で参加していることも多い。これは、参加者としての自覚が乏しかったり、自分の意見に確信がなかったりするためであるが、指導の不適切によることも多いようである。責任のがれのために、早口でしゃべって型どおり済ませてしまうということもよくあることである。

4 演劇活動の練習や、学級内の発表会などの場合、ふまじめになることが多いが、これは、レクリエーションや研究発表の意義をじゅうぶんに理解しないためである。それに、自分の話し方を改善しようとする態度にもふじゅうぶんなところがある。

5 早口になったり、不必要な音声をさしはさんだりする癖が、小学校高学年に引き続いて多く、それが固定してしまうころである。

6 発音の不自然・ふめいりょうを正したり、声の量を調節することはできるようになるが、まだ、言いまわしのくふうとか、適切な語いを選ぶことがじゅうぶんでない。

7 言う前にじゅうぶん準備してかかることがなく、責任のがれにいいかげんな発表をすることもある。

8 自分の考えをじゅうぶんまとめてから切りだすことができない。内容についてその価値を判断する力がじゅうぶんについてはいない。

9 かなり長く話を続けることができ、書物で読んだことや過去のことなどを思い出して話すことができるが、これらをよくまとめて話す力には欠けるところがある。

10 正しいことばづかいで、はっきりと、相手に伝えるという心構えがじゅうぶんでないために、すこしこみいった説明をするときや、相手によくわからないことを話して聞かせる技術はへたである。