第二章 中学校の国語科の計画

 

まえがき

(一) 中学校の国語科の計画の立て方  国語学習指導をするには、教師が、それぞれの地域の実情や、生徒の実態に応じて、独自の計画を立てるべきである。本書では、その参考として、一般的な手続とおもな注意事項を述べよう。 (1) 中学校の国語学習は、どのような位置にあるかを考える。  指導の計画を立てるために、指導者は、まず、中学校の国語学習は、どのような位置にあるかを考えておく必要がある。中学校では第一章に述べたような教育の目標を、国語学習の三つのおもな意義に基いて、小学校よりもいっそう高い程度において、実現しなければならない。すなわち、卒業後ただちに実社会に参加する大半の生徒のために、日常生活をより便利に、有意義に、豊かにしていくような、言語の力を向上させる必要がある。文化的な民主社会では、日常生活のことばが非能率な使い方であったり、ことばを単にことばとして覚えているというのではいけないのであって、ことばを効果的に使うようになり、ことばによっていっそうわれわれの生活を高めていくようにしなければならない。読書を楽しみ、余暇を利用して、よりよい文学を味わうような習慣をつけていくことも、これに劣らず重要である。われわれの言語生活は、聞くこと、話すこと、読むこと、書くことの四つに分けて考えられるから、ここではこの四つに分けて計画の立て方を研究することにしたい。実際の指導では、これら四つの面は切り離さず一つになっていなければならない。ここでは、便宜上それを別々に考察するだけである。 〔生徒の興味や必要、成長や発達、性格などをじゅうぶんにつかまなければならない。〕  教師に何よりたいせつなことは、生徒のひとりひとりの実態を着実につかんでおくことである。以前の中等学校では、この点の考え方がふじゅうぶんであって、生徒は多くの場合、上から、国語学習をおしつけられたことも多かった。

 中学校の生徒は、興味の方向に、成長の度合に、生活上の要求に、著しい変化を示してくる。興味や関心のないところに学習は起らない。成長や発展を考えない指導計画は効果がない。生活上、どんな必要があるかを知らないと、指導計画を学習意欲に適応させていくことができない。

 ことに、国語学習は、広く生活一般にわたっているために、地域の実情、資料のいかん、環境の影響が、大いに関係してくる。

 教師は、絶えざる観察、注意深い接触、各種の調査、他の教師・父兄・卒業生の協力など、種々の方法によって、自分の受持の生徒のひとりひとりの実態をとらえなければならない。

(2) 生徒の実態を見きわめた上で、第一章にあげた中学校の国語学習指導の一般目標に基いて計画する。  第一章に述べた一般目標は、概括的な広範なものであって、地域や学校によって、ある目標に特に重点がおかれることもあり、ある目標を何べんもくり返して、学習計画に組み入れる必要のあるものもある。過去の実施の結果をみて、補正をしなければならないこともある。そうして、積極的に必要な資料の整備、環境の改善などにも心がけ、社会の必要に応ずるように計画すべきである。それは、さらに、学年差・個人差・性別などについても、考慮されなければならない。発達の種々の段階に即応して弾力性に富む計画をすべきである。ことに、能力の劣っている生徒の学習計画は、じゅうぶんに考えて助力してやる必要がある。 計画の実施にあたっては、常に反省を加えて、再計画をするとともに、他の人々に必要な援助を求めたり、生徒と協同の計画をしたりする。  計画は、絶えず評価され、改善されていかなければならない。学習指導を行うごとに、計画に新たな反省を加えていくことが望ましい。国語学習のように、あらゆる機会に行われるものは、時をはずさず評価をして、次の学習計画に資することが必要である。

 国語学習は、いろいろな学習の中でも行われるものである。また、日常の生活経験に、その欠陥や効果がすぐ現れる。したがって、学校内外の生徒の生活経験を見わたして、立案し、反省する必要がある。そのためには、地域社会の人々、同僚その他の助言を求めなければならないことが多い。

 中学校では、生徒が学習計画に参加することが可能であり望ましい。学習者自身による、必要と目的との反省を尊重することがたいせつである。とともに、小学校・高等学校と、必要な連絡を取ることも忘れてはならないことである。