(三) 中学校生徒の聞くことの実態

 右に述べたように、中学校生徒の生活において、聞くことは、重要な意義を持ち、また、広い領域にわたっているのであるが、今までじゅうぶんに注意されなかったのは、生徒の聞く力について、その実際が調べられていなかったからである。聞く力の性質上、客観的な調査の結果が、なかなか得られないので困難であるが、一般に、次のような点について、できるだけ詳しく、実態をつかんでおく必要があろう。

〔中学生は、どんな話を聞くことに興味を持っているか。〕

 中学生は、珍しいニュース、社会的できごと、スポーツや娯楽について聞くことを好むとともに、科学的な事実や、書物の内容や、時事問題などにも関心を持つ。家族や近隣の事など身近な見聞では満足せず、国家・社会・世界のこと、歴史上のことにまで話題が広がっていく。

 したがって、指導者は、生徒同志の会話・談笑の仲間入りをして、その中心題目を知ったり、自由な話合いに出てくる話題を集めたり、ラジオの聴取項目を調べたりして、生徒の一般的興味を調べることができる。この際、男女差や学年差、ことに、話し相手の友人や仲間のことを考慮に入れて適当な用紙に記入しておくとよい。

〔中学生の聞く態度はどうであるか。〕

 聞くことで、いちばん重要なのは、相手を尊重するという社会的な態度である。中学生は向かいあって聞く場合でも、大ぜいで聞く場合でも、聞く態度はかなりできていて、落ち着いた自然な態度で終りまで聞くことができる。ことに、話す相手に同感して熱心に聞き入る態度もだんだんできてくる。この点は、小学校では見られない成長である。しかし、大ぜいで話を聞くとき、群集心理でわざと騒いでみたり、まじめな講演などを正しい態度で聞きつづけることができないこともある。

 未知の人や成人との話合いの場合などは、実社会に慣れないため、落ち着きを失ったり、礼を欠いたりする生徒もある。

 これらについて、学校長・他教師のほか、地域社会の人の助言をも求め、学校内外の行事や、社会の行事に参加したときの聞きぶりを、なるべく調査して、一般的な欠陥や個人的なすぐれたところなどを調べておくこともたいせつである。

〔中学生の聞くことの一般的特質は、どのようであるか。〕

 聞く能力は個人によっていろいろであって、ほとんど標準を立てることはできない。以下述べることは、ただ単に一般的な傾向である。

 聞いたことを覚えている力は伸びている。また、メモをしたり、忠実に記録したりする経験も重ねているので、聞く力はそれに伴って伸びている。しかしながら、次のような欠陥が見いだされることがある。

1 要点をつかむ力が不足し、また、細かい部分に注意が行きとどかないために、大事な点を聞きもらすこともしばしばある。

2 少しこみいった筋の話を正しく聞きとることができず、おおざっぱに、ひとり決めに聞いてしまうこともしばしばある。

3 全体をまとめる力が足りなくて、少し理論的な講演などを理解することができないこともある。

4 自分のかってな解釈を押しつけたり、あっさりとかたづけてしまって、深く内容をつかもうとしない傾きがある。

5 話しぶりやことばの使い方を批判的に聞きとることが時としてふじゅうぶんである。

 諸種の会合にも慣れてきて、その場の何人かの意見を聞きわけることができるようになっているが、それらの意見の立場を考えわけることはじゅうぶんではない。論旨の進め方を考えたり、個性的表現をみてとるような高い程度の聞き方も満足ではない。