第十一章 中学校・高等学校の国語科において使用に適した資料

 

一 国語科とその資料

 

〔国語の学習指導を効果的に行うためには適切な資料が準備されなければならない。〕

 学校および教師は、それぞれの学校の設けられた地域において、どのような経験が必要であり、望ましいかということを見きわめ、生徒の実態と要求とをじゅうぶんに調査し、最も望ましい教育課程を決定しなければならない。地域の必要や生徒の実態の上に立って決定された教育課程に基いて、国語の学習の目標を達成するため、できるだけ必要な資料を多く準備し、学習指導を効果的に行っていくところに、教師の努力が向けられるべきである。

 国語科の教育課程がどのように決定されたらよいか、どのような学習が望ましいかという問題については、本書にすでに述べてあるが、決定された学習計画に従って効果的な学習指導を行っていくためには、それにふさわしい、いろいろな資料が必要となってくる。資料は、学習の目標に到達させるために有効なもの、生徒に豊かな学習経験を与えうるもの、学習活動の媒介となるものでなければならない。学校や教師が、資料の選択を誤ったり、資料を生かして使うことに失敗したりする場合には、効果的な学習指導を期待することはできない。教師は、学習指導の中でじゅうぶんに生かしうるような適切な資料を準備するように常に心がけ、資料に対する研究を深めることが望ましい。

〔資料は学習の目標に照し、生徒の生活経験や知能の発達、身体的発達、社会的発達、情緒の発達などを考慮して選ばれなければならない。〕

 資料の選択にあたって、教師は学習の目標に照し合わせ、最も効果的に使用でき、しかも入手しやすいものを準備することが当然であるが、その場合に次のようなことを注意しなければならない。

1 生徒の興味・経験などに関連のあるものを選ぶ。

2 生徒の知能の発達、身体的発達、社会的発達、情緒の発達に応じたものを選ぶ。

3 生徒の言語能力に即したものを選ぶ。

 今までの国語学習指導においては、資料を生徒に教えることが、教師の仕事であると考えがちであった。そのために、それぞれの生徒の発達状態を考えず、またかりに考えたとしても、比較的高い知能の生徒を標準にして、説明や注釈によって教えるという傾向があった。したがって、生徒の興味や必要や能力は、第二義的のものとして考えられ、生徒の言語生活に縁遠い資料が選ばれていたのである。この結果、国語教育は特殊な趣味養成としての文学にかたよりすぎたり、いきいきとしたことばの習得が行われなかったりしたのである。新しい教育において教師は効果的な学習指導を行うために、右に述べた三つの点を、資料を選ぶ場合の基準にしなければならない。