四 中学校・高等学校の国語学習指導の目標は何か
(一) 中学校は義務教育の完成の段階であるから、国民として日常生活に必要な言語を理解し、使用する能力ができて、高い言語文化を享受する基礎ができなければならない。この点から考えて、次のようなことを目がけて行くのが適当であると考える。
1 改まった場合のあいさつや紹介ができる。
2 筋のとおった興味のある報告ができる。
3 原稿を見ないでも簡単な形式ばらない話をすることができる。
4 会議に参加して、責任が果せる。
5 電話やマイクロフォンなどが使用できる。
6 会話を興味深くじょうずに進めることができる。
7 劇や映画のよしあしがわかる。
8 ラジオの番組から価値のあるものを選んで鑑賞することができる。
9 必要な新聞や雑誌が読める。
10 現代文学を読んで楽しむ。
11 やさしい文語文や漢文体の文章を読むことができる。
12 読書の習慣を身につける。
13 辞書や参考書の利用ができる。
14 目的に応じて、よい本を選び出すことができる。
15 目録や索引の使い方がわかり、図書館を利用することができる。
16 当用漢字別表の漢字の読み書きが完全にできる。その他の日常必要な当用漢字が読める。
17 実用的な手紙や社交的な手紙が書ける。
18 簡単な詩や論文や物語を作ることができる。
19 文集や学校新聞などが作れる。
20 履歴書や届書などが書ける。
21 硬筆や毛筆で整った字が書ける。
22 口語のきまりがわかる。
23 余暇を利用して、聞いたり、話したり、読んだり、書いたりすることを楽しむ。
(二) 高等学校では、中学校よりもいっそう言語の能力がつき、より高い言語文化を享受することができる必要がある。そこで前掲のものはさらに高い程度において成し遂げなければならないが、その上に、新しい目標も加えられる。
1 まとまった意見の発表ができる。
2 いろいろな会で司会ができる。
3 形式の整った話をすることができる。
4 劇や映画やラジオの鑑賞や批評ができる。
5 論文・論説を読んで理解する。
6 文語文や漢文がある程度まで読める。
7 古典の現代的意義がわかる。
8 現代文学の鑑賞や批評ができる。
9 翻訳された世界文学を楽しむ。
10 新聞や雑誌を理解して読むことができ、事実と宣伝とを区別することができる。
11 いろいろの読書技術、たとえば、深く読む、ざっと読む、情報を得る、だいたいを知る、楽しみのために読書するなどの技術を身につける。
12 当用漢字が完全に読める。当用漢字表中の重要な漢字が正しく書ける。
13 目的に応じて手紙や実用的な書類が書ける。
14 創作したり、論文を書いたりすることができる。
15 それぞれの場合に応じた文章表現ができる。
16 文語のきまりのあらましがわかる。
17 国語の変遷のあらましがわかる。
18 国語生活に対する理想を高め、国語・国字に関心を持つ。
(三) 以上の、中学校および高等学校の国語学習指導の目標は、ごく一般的なものであって、学校のおかれている地域社会の必要と、学習者個人個人の発達の違いとを考慮して具体的なものにして行かなければならない。特に高等学校では、生徒の必要と能力と興味とに応じて、これらの目標のうちのあるものをいっそう詳しく学習するコースも考えられる。