二 中学校・高等学校教育の主要目標は何か

〔中学校教育の主要目標は三つある。〕

 中学校の教育目標については、学校教育法第三十五条・第三十六条に示されているとおりであるが、これを現代の教育の考え方に基いて考えてみると、主要目標は次の三つになる。

(一) 個人としての能力を最大限に発達させること。

 中学校では、生徒が自分たちの必要を満たし、自分たちの興味・適性および能力を探求して個人としての自分を、完成しようと努力するのを助けるような計画を立てなければならない。

 これを具体的に言えば、

(1) 学問の諸分野の研究の態度と能力

(2) 文学・芸術および自然の美を鑑賞する態度と能力

(3) 余暇利用の能力

(4) 健康生活を営む能力

(5) 性格の発達を完成しようとする態度と情緒的安定を得る能力

などを助長するにある。

(二) よい公民としての発達を含めて、望ましい方向へ社会人として、最大限に発達させること。

 これを具体的に言えば、

(1) 家庭・学校・地域社会などの人間関係に対する理解と態度と能力

(2) 資源利用の理解と技術

(3) 民主的な生き方に合った生活の理解と態度と技

(4) 言語の諸活動における理解と鑑賞と態度と技術

(5) 科学における理解と態度と技術、および他の国民への理解とすべての人々の福祉や世界の平和にできるだけ貢献しようとする積極的な態度

などを助長するにある。

(三) 職業および経済生活における能力を最大限に発達させること。

 生徒がその職業的興味や適性を探究して特定の職業上の技術を具体的に発達させるのを助けることである。

 その意味は、

(1) 生活設計の理解と技術

(2) 各人の素質と興味とに従って職業を選択する能力

(3) 特定の職業技術習得の能力

(4) 人類の福祉に貫献したすべての仕事を意義あり価値あるものとして認める態度

などを助長するにある。

〔高等学校教育の主要目標は三つある。〕

 高等学校の教育目標については、学校教育法第四十一条・第四十二条に示されているとおり、中学校における指導目標を受けつぎ、それをさらに充実させるにあるが、これを教育理想に基いて考えると、その主要目標は次の三つになる。

(一) 民主的社会生活を営む能力を向上させること。

 これを具体的に言えば、生徒が地域社会の一員として民主的生活の経験を通じ、より広い社会共同体の本質を理解するとともに、それに対する生活態度と技術を学び、望ましい公民的資質を向上するように助長するにある。

(二) 望ましい方向へ個人としての発達を最高度に遂げさせること。

 これを具体的に言えば、生徒が個人的問題と家庭内の問題を解決し、余暇を有効に楽しく利用する方法を知り、健康な身体を持ち、各種の文化遺産を正しく鑑賞評価し、科学的態度を体得し、自己の性格をよりよくみがくように、また、他の人々と幸福に暮すように、そうして、家・学校・地域社会・国家および世界の民主的な公民として効果的に参加するように指導することである。

(三) 職業教育を通じて、職業の技術と理解とを発達させること。

 具体的に言えば、生徒に適切な職業上の指導を行い、職業全般に対してじゅうぶんに理解させ、家庭・学校あるいは地域社会における勤労体験を通じて職業の重要性を悟らせ、個性に適した職業が選択できるように指導するにある。