国語学習においては、いろいろな場合に応じうる読書技術を高めるとともに、効果的な読書活動が行われるように、適切な読書指導が必要である。適切な読書指導によって、生徒の読書技術が高められるばかりでなく、生徒の語いは豊かになり、話す力、書く力をも増すことができる。しかも、このことは国語科ばかりでなく、その他のあらゆる教科にも関連してくることであって、生徒にどのような読み物を与えるかということは、学校図書館や学級文庫の運営とあいまって、学校教育全体から考慮されなければならない問題である。特に国語科教師はその中心となって、生徒の読み物の選定の基準についての研究を進めなければならない。国語教科書特に文学編は、そうした読書指導の基準であって、その学年にふさわしい読み物を資料として供給できるように、読み物選定に対する深い考慮が払われるべきである。
幼児のころは、日常の身辺生活から取材した絵本や動物の絵本などを好み、この段階を経た後に、もっと想像豊かな童話や擬人的なおとぎ話、漫画などを好むようになる。小学校低学年においては、この傾向に引き続き、童話や冒険的な物語や知的な物語に興味を持つようになる。小学校高学年から中学校にかけては、読書の範囲も広くなり、男子と女子との間に、興味の相違が現れてくる。男子はスポーツや冒険に関するものを中心に科学的なものにひかれるようになり、女子は友愛を主題としたいわゆる少女小説を喜ぶ。伝記や自然界の事象を主題としたものは、男子・女子ともに読むようになる。高等学校の段階では人間の内生活に触れた小説や戯曲などの文学書を中心として、思索的、科学的な随筆、思想書、外国文学の翻訳書などに興味を持ってくる。
これらの興味の発達の段階は一般に認められているところであり、それぞれの段階を興味の変化に基いて次のような名称で時期を分けることも行われている。
2 寓話期 ——十歳
3 童話期 十——十二歳
4 物語期 十一——十七歳
5 文学期 十五——二十歳
6 思想期 十九歳——
また、生徒は生活の必要から、知識を求めるために、その源を読書に求める。したがって、生徒の読書範囲は、成長とともにますます広くなり、豊かになってくるのであるから、ひとりひとりの生徒の必要に応じうる読書指導が考えられるべきである。
それぞれの学年に応じた読み物を選定する基準が立てられるとともに、個人差に応じた読み物が用意され、生徒が楽しんで読むことができ、みずから進んで読もうとする意欲が高められるように読み物が選定されることが望ましい。
読み物選定の一般的な基準は、
2 生徒の興味・関心に適応していること。
3 生徒の生活上の必要に応じうること。
4 読むことによって、生徒に価値ある経験を与えうるもの。
5 読むことの技術(たとえば、黙読・音読、要点の拾い読み)を高めるに適切なもの。