われわれは、本書の「まえがき」に、「本書は、また、国語科の資料としての教科書を編集するために基準を提供しようとする」と書いておいた。われわれは、著者たちが本書をよく研究して、新しい国語科の目標と計画とに合致した、いろいろのよい教科書を作ることを望んでいる。また、各学校の教師が自分の学校の教育課程に合ったよい教科書を選んで、りっぱに活用することを望んでいる。
ここでわれわれは、本書に書いたことをもう一度ふりかえって、国語科の教科書はどういうものであるべきかについて考えていることをまとめておきたい。
(二) 中学校の習字とローマ字と高等学校の漢文とのために特別の教科書が作られてもよい。
(三) 少なくとも国語科に関しては、男女の差、生徒が将来大学へ進むか、どんな職業を選ぶかの差によって、教科書を別々にする必要は認められない。
(四) 教科書の各単元は、本書の「中学校・高等学校の単元の例」の意に示したような注意を考慮の上、生徒の必要と興味と能力とに合わせて選ばれなければならない。
(五) 現代文学偏重でも古典偏重でもいけない。両者の比重がどうであるべきかについては国語科の目標から考えてくふうすべきである。
(六) 漢字や語句の提出をくふうし、生徒の学習がうまく進むようにしなければならない。
(七) 必要な「注」をつけて、生徒の自学自習を助けるのはよいが、それが必要以上にくわしくて、生徒の注意をそのほうにそらさせるようなことがあってはならない。
(八) 「学習の手びき」などをつけて、生徒が自発的に学習の計画を立て、方向を決定していくのに資するのはよい。
(九) 教師は、教科書を自分の学校の地域の特殊性や自分の受持の生徒の興味や能力の違いに合わせて使っていかなければならないから、教科書を選ぶ場合にはその点をよく考えなければならない。