高等学校図画教育の目標は第1章第3節で詳しく述べてあるので明らかであろう。本章においては,この目標を達成するために,高等学校の図画教育はいかなる内容を,いかなる組織で,どのようなコースで学習させたらよいかを述べるのである。
本書はわが国全地域を対象にする高等学校芸能科図画教育の計画であるから,いきおい具体性を欠くうらみがあるが,具体的な地方計画としての高等学校芸能科図画教育課程は,地域社会の要求や生徒の興味・適性・必要によって作らねばならない。さらに各学校においては,地方計画を,その学校の属する地域の実態や,要求に合う高等学校芸能科図画教育課程を作成すべきである。
本章は以上述べた考えから高等学校芸能科図画教育課程作成の参考として示すことにする。
高等学校芸能科図画教育課程は高等学校芸能科図画教育の目標達成のための指導内容と,その組織の方法を主として示すものであるから,それは高等学校の図画教育の目標から,導き出されなければならない。
第1章第3節に示されている高等学校芸能科図画教育の目標を達成するための図画における生徒の活動をあげると次のようである。
1 個人としての生徒をできるだけ完成する助けとして,
1) 美術の創造を通して生徒の興味・適性・能力をできるだけ発展させる。
(2) 美術の種々な表現形式および様式について理解する。……鑑賞・美術・一般の理解。
(3) 美術の表現技能を発展させる。……絵画・彫刻・図案・図法・製図など。
(4) 余暇を有効に過ごすための多くの興味や技能を発展させる。……鑑賞・絵画・彫刻・図案など。
(5) 情緒の過度の緊張を和らげるために美的情操を発展させる。……同上。
(1) 自己の生活を維持するために必要な美術的な作品を選択するにあたって高尚な趣味を発展させる。
(2) 美術的な作品の鑑賞を通して豊かな情操を発展させ,品位ある人格を完成する。 |
……鑑賞 |
1) 創造的な表現力および鑑賞力を社会生活に活用する技能を発展させる。
(2) 創造力・鑑賞力を学校生活の美化・改善に活用する技能を発展させる。
(3) 創造力・鑑賞力を地域社会の美化・改善に活用する技能を発展させる。 |
…… | 生活の美化
図案・図法 |
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(4) 創造的な表現を,対人関係の思想・感情の伝達技能として発展させる。 | …… | 美術の理解
鑑 賞 |
(1) 人間は何のために美的創造をするかの理解を発展させる。
(2) 美術品を愛護する精神を発展させる。 (3) 東西の過去および現在の美術の特性の理解を発展させる。 (4) 地域社会および国としての美術文化の施設および美術作品保護のための施設の理解を発展させる。 (5) 過去および現在の美術家の業績に対する理解を発展させる。 |
…… | 美術一般の
理解・鑑賞 |
(2) 多くの生徒を無視しないようにして,美術に特別の才能をもつ生徒の能力をできるかぎり伸ばす。
(3) 美術品の経済的価値に対する理解を発展させる。……美術一般の理解
(4) 工業美術および商業美術についての理解と技能とを発展させる。
(5) 商品の展示方法についての理解と技能とを発展させる。 |
…… | 図案・図法・色彩 |
第1節 高等学校生徒と図画教育
高等学校における教育は
(2) 社会人および公民として,できるだけ向上させ,国家および社会の有能な形成者として必要な資質を養うこと。
(3) 職業的興味・適性を発達させること。
このような目的を持つ高等学校教育は社会の必要と,個人の必要とに基いてなされることが根本である。一般に中学校の生徒は個性の自覚と発達がまだじゅうぶんに明らかでないが,高等学校ではようやく個性の方向もはっきりし,生徒自身もこれを自覚するようになるから,個性の必要に応ずる教育が大きな割合を占めるのである。
青年期に属する高等学校生徒は男女ともに身体および精神の両方面にわたって,著しく発達する時である。この時代はものについての考え方が理論的であると同時に,感情的である。すなわち,この二つの相反する性格を持っている。理論を振りまわして理屈をいうが,一面きわめて感情的,非合理的な反面を持っている。この時代の生徒が論理を重んじながら,感情的であることは,自我意識が発達して,個性の自覚が明らかになってくるからである。すなわち,高等学校の時代になると,他人のいうがままには動かなくなる。道徳的信念を持ってきて教師や親の考えを批判するようになり,こうして自分の意見や計画や理想が構成され,生徒の態度・興味・理想などはっきりしてくる。特に青年期である高等学校の時代はこの完成の時期である。このような時期である生徒の望ましい態度・興味・理想を完成させるためには,青年は主観的に考えたり行動するだけでなく,客観的に考えたり行動することが必要になる。このようにして自分の理想と現実社会との調和を求めることによって,生徒の成長・発達も期待できるわけである。
高等学校の生徒に表われる,この傾向は実際の学習において,いろいろな形に現れてくるが,高等学校芸能科図画の立場から,高等学校生徒の傾向をまとめてみれば次のようになる。
(2) 芸術に対する関心(特に表現的芸術および鑑賞・理解)が深い。
(3) 科学的なものに興味を持つわりに,実際的なものに関心が薄い。
(4) 一般に表現技術を軽んずる。
(5) 一部には表現技術を深めることに興味と能力と示すものが出てくる。
(6) 美術の中では絵画を最も好む。
(7) 超現実的な絵画を好むものが出てくる。
第2節 生徒の編成
高等学校芸能科図画は選択科目であるので,特に必修科目としている学校・学年のほかは小・中学校のように固定した学級単位で指導していくことはない。選択科目としての高等学校芸能科図画(自由選択や選択必修のいずれにしても)の指導では,固定した学級を解いて,生徒の編成は学校全体の教育課程の編成によって決定されるが,それは各教科の生徒数・教師・教室設備などで決定されるのであるから,芸能科図画として望ましい生徒の編成を研究して,学校全体の教育課程の編成に協力するとともに図画教育の目標達成に努めねばならない。芸能科図画の生徒編成は,一概にはいえないが,大別すると次のようになろう。
学年単位の編成
学年の組織を解いた編成
以下芸能科図画において,六単位の講座を持つ場合の編成を示してみよう。
1 学年単位の編成
学年を解かないで,同一学年で編成する場合次の三とおりが考えられる。
1)
学年
講座 |
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1) は図示のように各講座が学年で固定しているので,同学年生だけの級編成となる。各学年ではその学年の講座しか選択できない。すなわち,第二学年以後では前学年で図画の単位を習得した者と習得しない者とを同一に指導していくのであるから,じゅうぶんに生徒の必要や適性に応じた指導をするのに困難である。教員数・教室数などの少ない単位では,この編成になりがちであるが,生徒の編成という点からは高等学校教育の望ましいあり方にそわないので,できるだけ避けるべきである。
学年
講座 |
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2) は同学年生だけのクラス編成であるが,どの学年でも習得単位数の相異によって級の編成をするのであるから1)の欠点を補うことができ,選択制の本質をよく発揮したよい編成である。しかし,1)の編成は3学級6時間であるのに対して,2)は6学級12時間を要するので,理想的であるが多くの教師と教室数を必要とする。
学年
講座 |
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3) は同学年内でどの講座も選択できる編成であるが,2)以上に教室数や教員数を必要となるが,高等学校図画教育の点からは望ましい編成である。
学年のいかんにかかわらず同一講座の選択者で編成する場合には,次のふたとおりが考えられる。
1)
学年
講座 |
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1) は学年のいかんにかかわらず,どの講座も選択できる場合の編成である。1.の3)の学年を解いた,まったく自由に編成した場合で,教員数・教室数は1.の1)に比べて大きな変化はないが,学校全体の教育課程において選択科目が完全講座制をとることをたてまえとしなければ実現はむずかしい。完全講座制をとる学校および生徒数の少ない学校では実施が容易であるから,その実現が望ましい。
学年
講座 |
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または 2・3 |
または 2・3 |
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2) は1)の編成の場合に講座間の連絡や程度の差異などを考慮して,ある制限を加えるという,ガイダンスとして採用される場合である。
第3節 学習のコース
学習のコースは図画教育における生徒の歩むコースであるから,いかなるコースを設けるかは図画教育課程ではきわめてたいせつである。
学習コースはまず生徒の必要・興味・適性にかなったコースでなければならない。この原則によって決定されたコースが,図画教育の目標および社会の実態に照らし合わせて,これを調和させてはじめて高等学校芸能科図画教育課程の学習コースとなるのである。
第1節で高等学校図画教育における生徒の学習傾向について述べたが,さらに詳しく高等学校生徒はいかなる目標を持って芸能科図画を選択して学習しているかを調べてみると,一般に次のようである。
(2) 広い美術的教養を養うため,鑑賞を主として学びたいが,表現活動は望まない。
(3) 美術文化の理解に興味を持っている。
(4) 表現活動とともに,鑑賞および美術,文化の理解にも興味を持ち,これらを融合して学びたい。
(2) 表現活動を主にするもの。
(3) 表現活動や鑑賞や美術文化を配合したもの。
さらに高等学校教育および高等学校図画教育を過去の教育と比較して考えると,高等学校教育としての図画教育は,その目標でも明示してあるように,個人・社会人・職業人としての教育,すなわちよい市民となるための教育であり,現実の社会において,美術専門家は別として,絵画の表現力または彫刻の表現力だけを身につけていれば,よい個人であり,社会人であり,職業人であるといえるだろうか。これだけでは決してよい市民とはいえない。表現力を養っただけでは,高等学校芸能科図画の目標を達成したとはいえない。高等学校芸能科図画教育では,表現とともに,鑑賞・理解がなされ,これを実生活に役だたせることがたいせつである。
このような考えを基礎にして,高等学校における図画の学習のコースは次に示す三とおりに分けることができる。
1 美術の鑑賞や美術文化の理解を主にするもの
絵画・彫刻・図案の鑑賞,色彩の理解および応用,美術概論,生活の美化。
2 表現技術を主にするもの
絵画・彫刻・図案・図法および製図,生活の美化。
3 表現技術の習得や鑑賞や美術文化の理解活動を融合したもの
1・2に示した内容を含む。
1・2・3の学習コースは,その組合せによって,1,2,3,1・2,2・3,1・3,1・2・3の七とおりのものが考えられる。どのような内容を持つコースにするかは,生徒の実状・学校の施設や教員数,さらに地域社会の条件などを考慮して,指導しやすく効果のあがるようにすべきである。
第4節 指 導 内 容
1 絵 画
1) 指 導 目 標
(2) 色と形を中心にする製作を経験させ,理解させて,色と形による表現力を養う。
(3) 質と量を中心にする製作を経験させ,理解させて,それを表現する能力を養う。
(4) 空間の処理と拡充を実習を通して理解させ,それを表現する能力を養う。
(5) 分解と再構成ができるように絵画の実習を通して理解させ,その表現力を養う。
(6) (1),(2),(3),(4),(5)にわたることを経験させ,理解することによって,日常生活で必要な造形要素を中心にする表現力を養う。
(7) 絵画制作によって得た表現力を,日常生活に生かす力を養う。
(8) 造形文化を味わい,また進んで造形文化に寄与することのできる基礎的な力を養う。
(2) 絵画の対象となる題材はこれを広範囲に求めることができるが,生徒の生活に関連の深いものを中心にして求めるようにする。
(3) 基本になる形体をじゅうぶんに描き表わす力を養うことができれば,その応用は,生徒の能力に応じて発展させることができるであろうから,基本形体に関連のある題材を適当に取り入れるようにする。
(4) 題材は与えられた画面に調和よく自由に表現できるように指導しやすいものを選ぶようにする。
(5) 題材は,単に目に写る物体のみならず,生徒の心の中に形造られたものを抽象して描き出すことができる適当なものを選定することも望ましい。
(6) 表現は,今まで一般に考えられていた東洋的表現も西洋的表現も自由に取り入れ,ときには両者を混合して新しい表現方法を見いだすこともよい。
(7) 絵画の応用とみられる説明図も,取り入れて指導するようにする。
(8) 絵画のために使用する用具・材料は,できるだけ多方面にわたって扱うようにし,これによって,生徒が,絵画の目的によって適当な用具・材料を選択する力を得させるようにする。
(9) 指導にあたっては,鑑賞資料を活用する。
〔指 導 内 容〕
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静 物 画 | 各種の幾何形体・石こう胸像・ガラス器などの写生
1.量感・質感に注意した写実的表現 2.表現を助けるために,各種の線条や用具の使用法のくふう 3.画面の大きさと,表現題材の位置や大きさとの関係 各種の工具・機械・人形・はく製の鳥・草花・野菜・くだもの・布などの写生 1 精密描写・略写・スケッチその他各種の表現 2 明暗・色・質感の表現 3 対象の動勢をとらえた表現 4 余白・空間を生かした表現 円柱・立方体や身のまわりの品をいくつか組み合わせたものの写生 1 物体の形や質の相違したものを組み合わせることによって生れる対比美の理解と表現 2 各物体相互の関係に注意した写実的表現の発展 3 各種の安定感・動勢感のある構図によって,効果的に意図の表現 4 客観的な表現と主観的な表現 5 没骨描法や,こうろく描法による表現 |
鉛筆・木炭・墨・ペン・消ゴム類などを使用
(対象の取合せに注意)
鉛筆・鉛筆淡彩・水彩・油絵・毛筆彩色,など表現に適当した材料や方法を適切に取り入れる。 (対象の取合せに注意)
鉛筆・毛筆・鉛筆淡彩・水彩・油絵の具・ペン・パステル・ちぎり紙など各種の材料や用具を使用する (対象物の取合せなどに注意) |
風景画 | 家屋・樹木などの写生
1 主要線条と画面との関係を考えた表現 2 家屋・樹木の特徴をとらえた表現 3 空・建物・大地などの関係を考えた表現 4 線条・色・用筆・用具などに注意 道路や野原と大樹,工場と煙突その他町や村などの複雑な風景の写生 1 各種の構図をくふうした表現 2 版によるくふうした表現 3 客観的な表現力と主観的な表現 |
各種の材料や用具の使用 |
人物画 | 着衣人物の表現
1 特徴をとらえた表現 2 客観的な表現と主観的な表現 3 版による表現 組み合わされた人物の表現 1 ポーズを巧みにとらえた動勢感の表現 2 質感・量感・動勢・つりあいなどに注意した表現 3 各種の構図を中心にした表現 4 毛筆・墨絵による表現 |
鉛筆淡彩・毛筆彩色・コンテ・油絵・水彩・チギリ紙その他の材料や用具による表現
各種の材料や用具の使用 |
動植物画 | 鳥獣などの写生
1 特徴と動勢をとらえた表現 2 客観的な表現と主観的表現 3 版による表現 各種の花や花群の写生 1 特徴と動勢をとらえた表現 2 背景・空間の扱い方,花の位置づけなど,的確な表現力の発展 3 毛筆による没骨,こうろく描法などによる表現力の発展 4 異なった各種の花の組合せの表現 |
鉛筆・コンテ・色鉛筆・水彩など,各種の材料や用具を使用した表現
各種の材料および用具を使用した表現 |
説明画および構想画 | 描画力の発展とみられる説明図,案内図その他
1 各種の説明画を描くに適当した用具や材料を使用した表現 2 美的な表現よりも,的確な表現 総合表現としての壁画その他 1 写生した各種の資料を目的に応じて組み立てた構想画の表現(たとえばわれらの学園) 2 自己の感情に合う表現(たとえばしょうそう感の表現) 3 挿画の表現 |
製図用具・鉛筆・ペン・水彩・ポスターカラーなどによる表現力を得させるようにする
適切な用具材料の活用 |
2 彫 刻
1) 指 導 目 標
(2) 彫像や塑像に必要な基礎的な技術力を養う。
(3) 彫刻品に対する関心を高め,鑑賞力を養う。
(4) 彫像・塑像によって得た立体的な表現力を日常生活(たとえば余暇を有効に過ごすための助けとするなど)に生かすようにする。
(2) 鑑賞の指導では,すぐれた美術作品をただちに対象にして,扱うこともあるがそれらの美術作品の生れる過程を,直接実習を通して経験し,その後において,美術作品に接することは,鑑賞力を高める上に効果のあるものであるから,これを指導上に生かすようにする。
(3) 材料としては,粘土が主となるが,これらの選定については,製作の目的に従って,適当なものを入手できるように研究することがよい。
なお粘土以外にも彫像や塑像に適切なものがあったら,多くの材料に触れる意味で,適切な材料を活用して指導することがよい。
(4) 彫像や塑像の実習には適切な材料・用具・設備などを整えることが,指導を進める上に必要であるから,材料貯蔵装置(粘土などの貯蔵のため),共用具など,必要なものは,整えることがたいせつである。
(5) 指導にあたっては,模刻させる場合,写生させる場合,自由に作らせる場合などいろいろあるが,指導の目標,生徒の能力などを考えて適宜取り入れることがよい。
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彫刻の意義 | 美を対象にする純粋彫刻の特質について,どのような条件をあげればよいか。
量感・質感・形・調子などの彫刻品の持つべき条件について指導 木彫・粘土彫塑・石彫・金属彫造・げ彫などについて,その表現方法の理解や,作品の鑑賞について指導 |
講義および生徒の研究発表
鑑賞資料の使用 博物館見学 図版・写真の使用 幻燈器使用 その他の方法 |
彫刻の実習
1.彫刻の材料 |
各種の彫像塑像の材料の研究
(性質その他) たとえば
色沢・含有物の有無・乾燥収縮・焼しまりの度合 (2) 木材の強度・繊維・乾燥収縮・色・光沢木材欠点の有無 (3) 石こう・セメントなどの可塑性の有無,硬度・光沢・吸水性の適否 |
実験に必要な用具・材料 |
2.製作
薄肉彫 (レリーク) 厚肉彫 |
びわ・とち・やつでのようなはっきりした大きい葉をとり,粘土板上に模刻する。
(2) 上方からの光線をとって,だいたいの形を作り,凹凸(おうとつ)をつけて,順次細部を模刻する。 (3) 大きな基本になる形をよくみるようにする。 |
粘土・粘土板・粘土へら・湿布,模刻用の木の葉など。
模刻による。 |
丸彫 | 手・足・耳などを丸彫にする。
(2) 大きな基本の形を見落さないようにする。 (3) 作品は粘土の柔らかいうちに,石こうかけして,石こうどりをしてもよい。
(2) 模刻から始めることがよいであろう。 (3) 目・鼻・口などがばらばらになりがちとなるので,全体のつりあいを考えて実習を進める。 (4) 作品は石こうどりしてもよい。 |
粘土・石こう・粘土板・粘土へら・湿布・模刻用の手本。
模刻および写生作
粘土・石こう・粘土へら・湿布・イーゼル・模刻用手本・木心その他補助材料など。 模刻および写生作 |
石こうの型どり | 石こうの型どりは,粘土作品をほかの材料によっておきかえて保存に便利にすることや,石こうの美しさをねらって石こうを材料にする作品をうる目的などによって型どりする。
(2) 石こうの型どりの方法(たとえば,こわし型・よせ型・寒天型などの方法)の理解と,その技術について指導する。 |
石こう・石こう溶解の容器,はけ・粘土へら・はりがね,その他石こう型どりの補助用具や材料 |
3 図 案
1) 指 導 目 標
(2) 個人生活・社会生活を豊にするために,装飾図案・宣伝図案を作り,また必要な製作品を選択する能力を発展させる。
(3) 図案の創造力を生活の美化・改善に活用する能力を発展させる。
(4) 東西の現在および過去の図案の意匠の特性を理解する能力を発展させる。
(5) 図案と経済的価値との関係についての理解を発展させる。
(2) 図案の指導は,生活の美化の指導とじゅうぶんに関連をとって指導しなければならない。
(3) 図案の指導では,豊富な参考資料を用意し,生徒の創造力を引き出す刺激としたり,理解・鑑賞の助けとすることがたいせつである。
図案の参考資料としては,印刷された図案集や,参考書のようなものを備えることもよいが,それよりはむしろ実際に用いられているポスター・レッテル・包装紙のようなものや,宣伝に関係ある装飾や,設計図などを集めることが望ましい。
(4) 生徒の中には,よい構想は持っていても,これを表現する方法や技術を持たないために,できた作品がよくない場合もあるから,構想をたやすく表現できる表現方法の指導にも心を配ることがたいせつである。しかし表現方法の末に走って,図案作成の本質を見失うことのないように注意する。
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図案の意義および使命 | 1.図案には主として,製作の前提としてその形状・構造・装飾などに関する作者の計画を具体的に表示したものや商品の宣伝,広告また美化,展示などに対する計画図示が,個人生活や社会生活の生活美化に対することを目的にしたものなどがある。
2.計画の表示は,紙上でするのが主であるが,粘土,石こう,木材その他の材料で表示することもある。 3.紙上に表現された図案が一見よくできていても,それを実際に利用したとき,よくなかったならば,その図案はよい図案とはいえない。 4.図案の立案にあたっては,そのものがどんな目的を持っているか,どんな材料でかくか,どんな表現方法を用いるか,どんな構成にするか,製作費はどのくらいかかるかなどについて考え,じゅうぶんに創意を発揮しなければならない。 5.図案の立案にあたっては,その作品を使用する人(老・若・男・女)時(春・夏・秋・冬・朝・昼・晩その他)などを考え,それを用いる生活環境や自然環境への適応,時代の動きや民族性への適合を考え,清新なものとすることが必要である。 6.図案には,印刷物や染織物などのような平面図案と,器物・器具・建物などのような立体図案とがある。 7.図案には,目的の上からみて,商業図案・工芸図案・室内装備図案・生活図案などがある。(生活図案という語は,普通の図案書にはあまり出ていないが,個人生活や社会生活を営む上に必要な図案を意味する。たとえば,火災防止のポスターをかくとか,学校で展覧会を催すときに展示計画をかくとか,家庭の花壇の設計計画をたてることなどをさす) |
講義・指導・研究・発表・討議など |
図案の構成要素 | 図案構成の要素には,構成材料・構成美・内容の三つがある。
1.図案は色・形・空間・質感・量感などが構成要素となって構成されている。 2.図案の構成美は,対称・均衡・律動・調和・変化・統一など,美の構成要素と一致する。 3.図案する物の用が,図案の内容となる。物のもつ用は人間生活要件の上からくるものであるから,図案の内容とは人の生活要件または生活感情であるということもできる。 |
講義・指導・研究・発表・討議など |
図案の資料 | 1.図案の資料というのは,主として平面図案・装飾図案などに用いられる資料を意味する。その資料には次のようなものがある。
2.幾何形・抽象形 3.構造物 4.文字 5.象徴的な意義をもっているもの,図案を構成する資料が自然物であっても,その他の資料であっても,そこに歴史的・民族的・宗教的にある象徴的意義をもつことがある。したがって資料採用の際は,象徴的意義の有無に注意しなければならない。 6.各資料は原形に近い形で採用されることもあり,図案の構成につごうのよいように変化させて用いることもある。自然物から出た資料でも,極端に図案化をしたものの中には,抽象的意匠と区別のつきかねるようなものもある。 7.以上の事がらを,実際の面について理解し用いられた資料が作品の目的に適合しているか否かについて検討する。 |
講義・研究・討議(各種の資料および図版など使用) |
宣伝図案および商業図案
1.宣伝図案作成の基礎 |
1.宣伝図案には,商業的目的をもつものと,政治的・公共的目的をもつものとがあるが,いずれも宣伝・報道・啓発などのために利用せられるものである。 2.宣伝の手段としては,新聞雑誌広告・伝単・小冊子・ポスター・壁新聞,各種の展示その他がある。 3.宣伝図案は,告げようとすることを,正しく,強く,広く,認めさせることを目的とするものであるから,どんなことを,どんな方法で,いつ,どこで,だれに告げるのかをじゅうぶん検討して,的確な効果をあげるように立案する。 4.立案にあたっては,社会の情勢,人心の機微を察し,宣伝効果の現れるように留意する。 5.宣伝図案の紙上表示はポスターカラーその他の絵の具による描写,色紙・布などのはりつけによる表現,きりふき・スチンシルその他の方法による表現などがあるから,かく物に応じて適当な表示法をとらなければならない。 |
研究討議など(各種の図案,実際のポスターなど使用)
図案作成(各種の用具・材料・方法) |
2.宣伝図案の適否を評価し鑑賞する | 1.社会に実際に用いられているポスター・壁新聞・新聞雑誌などに出ている広告,その他の宣伝図案を集め,あるいはそれらが掲示されている場所について,前項宣伝図案作成の基礎項目に照合してその価値および効果を検討し,よい図案を鑑賞する。
2.外国の宣伝図案を集め,わが国の宣伝図案との違いや,宣伝効果についての考察をし,鑑賞する。 3.宣伝図案の効果について研究し,宣伝はけっきょく真実を語らなければならないことの理解 |
研究・討議・比較・鑑賞 |
3.ポスターまたは壁新聞図案の作成 | 1.ポスターと壁新聞はほとんど同じ目的を持っているもので,区別しにくい点もあるが,ポスターは主として動いている人に見せるものであるから,むだを避け,宣伝しようとすることが簡明率直に理解されることを主眼としなければならない。そのためには,注目性を重んじ宣伝しようとする標語,その他の文字や,全体の構成を明快・簡潔・強健なものとし,人に訴える力や,迫る力を強く持つことがたいせつである。壁新聞はポスターに比べ,やや落ち着いて見られるところに掲示するものであるから,全体の構成も落ち着いたものとし,宣伝の文も,やや長くて味わいのあるものにするのが普通である。
2.ポスターや壁新聞は,かいたままのものを,利用することもあるが,多くは印刷によって,多数複製して使用するものであるから,印刷に対するひととおりの知織を持っていることがたいせつである。 3.以上の点に留意して,適当に宣伝事項を選んで,ポスターまたは壁新聞の図案をかく。 |
ポスターカラーその他の表現・用具・材料
実習 |
4.展示計画を立て,これを実施する | 1.展示は屋外に会場を設ける場合,屋内に会場を設ける場合,店頭や飾窓などを利用する場合などいろいろあるが,展示は見やすくすること,図解や図表などが解りやすくて興味深いこと,主旨や強調点がじゅうぶん理解されること,観者に強い感銘を与えることなどに留意して,計画されなければならない。
2.個々の展示資料が正しく,すぐれているとともに全体の秩序が保たれて,効果をあげるようにしなければならない。 3.災害防止(たとえば,火災防止・交通安金・盗難防止・水害防止)に関する展示,生活改善に関する展示,図画その他の学習および学校生活に関する展示,生徒作品の展覧(これは宣伝の意味からは少し遠ざかるが,展示計画としてはよい材料である)商業的意図に基いて展示計面の中から適当な題目を選んで展示の計画を立てて実施する。 4.展示の計画は多くの場合,ほかの教科や特別教育の諸活動との総合の上に成立するであろう。 |
研究・討議・実習 |
5.その他の商業用の図案の価値評価および作成 | 1.商業用図案には前記のほか,看板・レッテル・商品の包装図案など多くのものがある。
2.環境にある看板を,調査検討し,その価値評価をする。 3.商品の包装やレッテル・店頭装飾について比較検討し,その価値評価をする。 4.適当な商業用図案の題目を選んで,その図案をかく。 |
研究・討議・実習 |
染織図案
1.染織図案の基礎 |
1.染織図案は,染色図案と織物図案とに分れるがいずれも地質・柄・色の三要素から成っている。 2.染色図案においては,地質(絹・麻・毛・スフ・人絹・糸の細・太,縦・横の組織など)染料・図案の間に密接な関係があることに留意して立案しなければならない。 3.織物図案は地質,織りの組織を予想してかからなければならない。 4.染織品の主要な用途は衣服用であるが,それを用いる者の年令・性別・用途(和服用・洋服用・また,ふだん着・外出着・儀式用など)を予想して図案をかく。衣服用以外の場合もその用途を予想してかからなければならない。 5.染織図案にはしま・小紋・かすり・友禅・絵羽などいろいろな名称を持つものがあり,それぞれ図案構成上の特異性を持っていることに留意する。 |
講義・研究・討議など
(各種の図版使用) 図案作成 (各種の用具・材料・方法) |
2.染織図案の評価および鑑賞 | 1.手近で集められる染織物につき,地質・織り・または染め・染料・図案の関係を研究し,その適否を評価し,鑑賞する。
2.染織図案と生活との関係について理解をする。 3.外国の染織図案を集め,民族による好みの違いや,その特色について,理解し,鑑賞する。 |
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3.染織図案の作成 | 適当な題目を選んで染織図案または織物図案をかく。 | |
服飾図案
1.服飾図案立案の基礎 |
1.服飾品には,かぶるもの,着るもの,締めるもの,はくもの,持つもの,などいろいろあるが,服飾図案はこれら相互の形体・色彩・質の上の統一調整をはからなければならない。 2.服飾品の図案は,それを用いる人の年令・性別それを身につける季節・環境・場合などに適合するような計画をしなければならない。 3.服飾品の図案は,民族性・生活様式・時代の動きなどに根底をおき,気候・風土への適合,保健・衛生の顧慮,運動の自由などの諸条件を満足させるように計画されなければならない。 4.服飾品の図案は,清新で,しかも品位があり,これを身につける人に喜びと誇りとを感じさせるように計画しなければならない。そのためには威容を保つこと,風教上の問題,流行などについて考慮する必要がある。 |
研究討議など(各種の図案使用)
図案作成(各種の用具材料・方法) |
2.流行に関する研究 | 1.流行はどうして生れるか,どのようにして流行するかについて研究する。
2.最近数年間における流行の変遷について研究する。 3.昨年と今年の流行を比較し,服飾品の備うべき要件を,どちらがより満足させているかについて研究討議する。 |
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3.服飾品の図案作成 | 適当の題目を選んで服飾品の図案をかく。 | |
室内の装備計画
1.室内装備図案立案の基礎 |
1.室内装備はその室の目的に応じて,室全体の空間・色彩・所要の器具類を美的合理的,統合的に整備する。 2.装備すべき室としては,住宅における各室,事務室・作業室などから,船舶・車両などの内部に至るまで,非常に範囲が広く,それぞれの室は性格を異にしているのであるから,その室の目的に応じ,その室における生活様態,人の動きを考え,能率上・健康上・経済上・心理上からの要求する諸条件を有機的に統一するようにしなければならない。 3.室内装備の立案では,その室を構成する諸要素の構成材料・工作法・仕上がりの効果を知って立案しなければならない。 4.室内を構成する各要素が,一つの空間に相対照し,結合されたときの空間的・立体的の構想をつかんで立案しなければならない。 5.量感・質感・色感上の構成調和に注意して,立案しなければならない。 |
研究討議など(各種の図案使用)
図案作成(各種の用具・材料・方法使用) 生活の美化と関連をとる。 |
2.住宅における室内装備の実地研究または図上研究 | 1.その地方における室内装備の数例について,実地を見学し,その適否について比較研究をする。
2.昔と今,わが国と外国の室内装備の図案または写真を集め,その違いや良否について比較検討する。 3.室内の装備と生活との関係についての理解 |
見学
比較・研究・討議 |
3.学校の諸室の装備立案 | 1.自分の学校の諸室の装備について考え,現状において,実現可能な範囲の装備の立案をし,それを実現させる。
2.諸種の社会情勢が好転し,もって理想的な装備をすることができるようになったならば,どのように装備したらよいかの理想案を立ててみる。 |
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器物・器具類図案
1.器物・器具類図案の基礎 |
1.器物・器具類は,用途の上から当然備えなければならない機能があるから,これを無視してはならないが,既定の規範にばかりとらわれていては良い創案は生れないから,それぞれの器物・器具につき,造形の自由の許される幅の大小を考え,用途と環境とに応じた創作をしなければならない。 2.器物・器具類図案の紙上表示法には,手がきのスケッチ・第1角法・第3角法・軸測投影図(等角投影図を含む)斜投影図などいろいろな表示法があるから,立案する物に応じて適当な表示法を選ばなければならない。 |
研究・討議など
(各種の図版使用) 図案の作成 (各種の用具・材料・方法の使用) |
2.器物・器具類の価値評価および鑑賞 | 1.手近にある器物・器具類につき,図案の基本要件からみて,その価値を評価し,鑑賞する。
2.外国ではどんな器物や器具類が使われているかを研究し,生活の改善と器物・器具類の図案との関係について考案する。 |
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3.器物・器具類の図案の創作 | 適当な題目を選び,器物・器具類の図案を創作する。 | |
緑地帯・小公園・校地などの図案
1.緑地帯・小公園・校地などの図案の基礎 |
1.緑地帯・小公園・校地などはそれぞれの設置の目的が違っており,同じ緑地帯にしても,小公園にしてもそれぞれ特殊の目的を持って設置されるものであるから,じゅうぶんにその設置目的を理解して美的に設計する。 2.地形に応じ,植えつける植物の選定,付設建造物の設置などに留意し,なるべく利用価値の多いように設計する。 3.全体の経費を考えて設計する。 4.後の管理,手入れなどの問題を考えて設計する。 |
講義・研究・討議など(各種の図版使用)
図案作成(各種の用具・材料・方法使用) |
2.緑地帯・小公園・校地などの設計 | 1.それぞれの地域における実際の場所に適合するよう緑地帯・小公園・校地の整備の図案をかく。
2.各家庭における庭園の設計をするのもよい。 3.地域社会の改善に対する計画を立てるもよい。 |
4 色 彩
1) 指 導 目 標
(2) 色の三属性以外の物体特有の質感について理解し,色の見方(比較方法)の技能を養う。
(3) 基礎的な色彩混合を理解し,日常生活に必要な混色技能を養う。
(4) 色に伴う感情,色の対比現象,色の明視性などを理解して,応用色彩の基礎を養う。
(5) 色の諸性質,色彩の原理,現象などと関連して,色を実際生活に活用する技能を発達させる。
(2) 基本的な色彩理論の指導では,文部省の中学校図画工作科学習資料色彩編を参照することもよい。
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三属性の相互関係・系統的変化 | 色彩の三属性の相互関係や,系統的変化を理解し,色の分類整理,色の選定,色の記憶などの助けとする。
1.清色や濁色など,いろいろな有彩色の色相がどの純色色調に従属するかについての色相を比較当合しそれぞれの色相を見分ける。 2.清色や濁色などいろいろな有彩色の明度が,無彩色の明度段階のいずれにあたっているかについて,明度の比較を当合し,有彩色の固有明度を見分ける。 3.清色や濁色などいろいろな有彩色の彩度を低彩度・中彩度・高彩度に分類する。 4.同一色相の色を,明度と彩度を基にして配列する。(色立体の等色相面) 5.同一明度の色を,色相と彩度を基にして,配列する。(色立体の等明度面) 6.あらゆる色を,色相・明度・彩度の三属性に従って配列する。(色立体) 以上の理解は次の諸項に関連をもつ。 1.色相関係における対照的配色と融和的配色 2.明度関係における対照的配色と融和的配色 3.彩度関係における対照的配色と融和的配色 4.無彩色と有彩色の関係における対照的配色と融和的配色 |
1.講義・研究・実験
2.色の配列は適当な標準色紙があれば各自に実習させたいが,標準色紙のない場合は単に理解させるにとめてもよい。 |
物体色 | 物体色という中には色料で塗装したものの色,染色したものの色,自然物である動植物の色,岩石・金属などの色などいろいろなものが対象となる。これらの色の特色を理解して,色彩の応用面(たとえば配色など)に利用する。このためには次のようなことを指導に取り入れる。
1.塗装による色と,染色した色との比較,またいろいろな色料を使わないものの色との比較 2.光沢色と無光沢色との比較 3.透明色と不透明色との理解 4.金属や金属粉末による色の理解 5.いろいろな物体の色を特定の標準色に合わせる技能 6.所要の色に染色または調色する技能 なお色の三属性の相互の関係による以外に,物の質感・光沢などの要素がはいってくることによって,結果として,違ったものになるので,これらの点も見落さないようにする。 |
講義・実験・実習 |
混 色 | 望む色を混合によって作ることは,日常生活でしばしば起ることで,このためには混色法を常識として身につけておくことが必要である。
1.明清色・暗清色・明濁色・暗濁色などそれぞれの有彩色の色相は,混色上からはどう違うか,これを絵の具の混色と関係して実習してみる。 2.色ごまによる混色法を実習し,色料混合法とを比較して,両者の相違を検討してみる。 3.スポットライト,または幻燈器を用い,色光混合を実験することにより,色料混合法・色ごま混合法との相違を比鮫検討する。 4.印刷における網版混合,絵画における点描式混合,織物における紡織混合法などを検討し,これらの混合法が,1,2,3の混合法のいずれにあたるかを調べてみる。 |
講義・実験・実習
(描画・図案などと関連) |
色の感情 | 色の感情は,色彩の応用には常に考えなければならないもので,特に配色作品の効果を左右する重要な要素となるものであるから,色彩の応用については第一に考えなければならない。
色彩の感情には,単純なもの,複雑なものなど,いろいろに考えられるが,これらのうち,基本的なものとして,一応次のものが考えられる。これを基礎として,特定の目的に対する配色を行い,色彩感情の表現法を理解する。 1.色の暖い涼しいの感情 2.色の軽い重いの感情 3.色のはで,地味の感情 4.色の強い弱いの感情 5.濁色に共通する感情 6.無彩色に共通する感情 7.個々の色に対する固有感情 8.材料や質感の相違による色の感情 以上の点を基礎にして,その応用例としては次のようなものが考えられよう。 1.暖かい配色と涼しい配色,暖かい色と涼しい色の配色 2.はでな配色と地味な配色,はでな色と地味な色の配色 3.軽快な配色と重厚な配色 4.情熱的な配色と理知的な配色 5.刺激的な配色と沈静的な配色 6.竪い配色と柔らかい配色 |
講義・研究・討議・配色
実習 (図案との関連をとる) |
色の対比 | 色の対比も色彩の応用には常に考えなければならない問題である。
一般に色の対比現象といえば,いろいろな対比が複合しているため複雑に見えるが,それらのものの中から基本的なものを取り出し,またそれを応用して,特定の目的のために対比現象を取り入れて,配色を行うことのできるものに次のものがある。 1.色相の対比 2.明度の対比 3.彩度の対比 4.補色の対比 5.面積の対比 以上の対比を基礎とし,その応用例として次のようなことを研究する。 1.日本人は黄色人種だといわれるが,色の対比上どんな色がよいか。 2.色の黒い人にはどんな色がよいか。 3.背の低い人にはどんな色がよいか。 4.肥満している人にはどんな色がよいか。 5.地味な服地をあざやかに見せるにはどうすればよいか。 |
講義・実験・実習・討議 |
色の明視 | 一般に明視は,照明の強弱,視標の大きさを条件にした視力をさすが,図画や工作の指導で扱う明視は,視標(文字や模様)の色と地色(バック)との相対的な色の差が視力に及ぼす影響を扱うことが主になるであろう。
基本的題材例を基礎にして,その応用的題材で,色の明視の法則を活用できるように指導したい。 1.いろいろな色紙を一定の大きさに切り,特定の地色の紙にはりつけ,見る距離をしだいに大きく取りながら目だつ色,目だたない色の順位を調べる。 2.1の実験を,地色のみをかえたものでやってみる。 3.1,2の実験の結果を図表で表わし,はられている色と地色との差が,どうなっている場合に目だち,または目だたないか,この結果を色相の差・明度の差・彩度の差に分けて観察してみる。 以上を基礎にした応用題材としては, 1.道路・標識・看板・ポスター・電車・自動車(特に大型バスなど),信号器などの明視を活用した配色を観察してみる。 2.看板・ポスターなどの作成に明視の法則性を活用する。 |
講義・実験・実習 |
色の活用 | 色の諸性質・色彩の原理・現象などと関連して,色の活用技能を発達させるには,次の指導内容が考えられよう。
A 室内の機能的配色 室内の配色を通して,色の機能に最も一致した表現技能を養うことができる。この指導としては, 1.教室の配色にはどういう色が,気分よく落ち着いて学習できるか,その配色設計をしてみる。 2.工場内部の色はどういう色が気分よく仕事の能率を上げることができるか,工場の種類,室の使用目的によって,その配色設計をしてみる。 3.住宅の配色にはどういう色がよいか,住む目的や作業目的によってその配色設計をしてみる。 4.商店の配色にはどういう色がよいか,商店の種類によって,配色設計をしてみる。 5.照明効果を上げるには,室内の色をどんな色にすればよいか,その配色設計をしてみる。 |
講義
同上または模型によって室内配色の実習 |
B 服装の配色における主調色
服装配色を通して,服装配色に重要な主調色を選ぶ技能を養うには,次のような指導内容が考えられよう。 1.事務服にはどういう色が主調色としてよいかを,図案の実習を通して色を決める。 2.運動服にはどういう色が主調色としてよいかを,図案の実習を通して色を決める。 3.外出着にはどういう色が主調色としてよいかを,図案の実習を通して,色を決める。 4.年令・性別・個性・季節・風習・流行などを考えた配色を行い,その主調色を決める。 5.2色配合・3色配合などのときには,その色の面積対比などを考えてどれかを主調色とする。また,ほぼ等面積の場合には配色によるその感覚を主として考えさせる。 |
講義・実習 | |
C 色彩批判
環境にある色彩作品について,その批判力を増し,日常生活に色を応用する技能を発達させるには,次の観点と指導を進めることがよいであろう。 1.そのものの色は,目的とするところが表現されているか。 2.そのものの色は,機能的な配色であるか。 3.そのものの色は,調和の上からよいか。 4.そのものの色は,目的に適合させるには,色をどうかえればよいか。 以上をとおして,目的・環境・場所・季節などに対応する配色を行い,よい調和をうる技能を身につけるようにしなければならない。 |
講義・研究
討議 |
5 図法・製図
1) 指 導 目 標
(2) 他人のかいた図を読み取る力を発達させる。
(3) 立体的に物をとらえる能力を発達させる。
(4) 正確・精密に仕事をする習慣を養う。
(5) 製図の発達が,造形文化の発達に大きな影響を持っていることを理解させる。
(2) 図法および製図が,造形的な教養として必要であるところに重点をおき,他の指導内容(描画・図案など)と,じゅうぶんに関連をとって,指導を進めることがたいせつである。
注,表中○印をつけた項目は,生徒の興味・必要・理解の程度によって省略してもよい。
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投影の意味および用途 | 1.投影図の意味
2.投影図の種類
正投影の特殊のものとして軸測投影図があり,軸測投影図の特殊のものとして等角投影図のあることの理解 各種の投影図中,正投影図が最も重要であるから単に投影図といえば正投影図を意味することの多いことの理解 3.投影図の約束 画面・画面の回転,各種の符号など。 4.投影図の用途 |
講義・研究・討議 | ||||||||||||||
点の投影図 | 1.第1象限における点の投影図
2.第2,3,4象限における点の投影図 |
講義・研究発表実習 | ||||||||||||||
線の投影図 | 1.線分の投影図
○2.直線の水平跡,直立跡 ○3.二直線の夾角の投影図 ○4.曲線の投影図 |
講義・研究発表実習 | ||||||||||||||
平面の投影図 | ○1.平面の水平跡
○2.二平面の交線の投影図 ○3.定平面の両跡間の角の求め方 (平面の廻転応用) ○4.平面上にある直線の投影図 ○5.直線を含む平面の投影図 ○6.直線と平面との交線の投影図 ○7.平面への垂線の投影図 8.平面形の投影図 |
講義・研究発表実習 | ||||||||||||||
立体の投影図 | 1.角柱の投影図
2.角すいの投影図 ○3.正多面体の投影図 4.円柱・円すい・球の投影図 5.立体の切断面 6.相貫体の投影図 7.立体表面の展開図 |
講義・研究発表実習 | ||||||||||||||
等角投影図 | 1.約束に従って作図の方法の理解
2.わが国の絵画には,軸測投影図風の表現法によるものの多いことの理解 3.立体図案や説明図のような表現には,等角投影図法が多く用いられることの理解 |
講義・研究発表 | ||||||||||||||
斜投影図 | 1.斜投影図の意味
○2.点の斜投影図 3.立画面への立体の斜投影図
(2) わが国の絵画には,斜投影図風の表現法によるものの多いことの理解 (3) 説明用の図として多く用いられることの理解
(2) この図法は,ある種の説明図の表現には,きわめて,便利な方法であることの理解 |
議義・研究発表 | ||||||||||||||
陰影図法 | ○1.陰影図の意味
○2.光線・平行光線・放射光線 ○3.平行光線による平面形および立体の陰影図 ○4.放射光線による平面形および立体の陰影図 |
講義・研究発表実習 | ||||||||||||||
透視図 | 1.透視図の意味
2.透視図の約束 基面・画面・視点・停点・心点・地平線・視線・視野各種の符号その他 ○3.点透視図,三平面法による透視図 4.線透視図
(2) 平行透視図・有角透視図・傾斜投影図の違い 6.平面形の透視図 7.立体の透視図 |
講義・研究発表実習 | ||||||||||||||
製図法 | 1.第1角法と第3角法
2.製図上の約束 各種の線の用法,寸法の記入法,省略描法・その他 3.線の練習 4.文字の練習 5.複写製図 6.実測製図 7.設計製図 設計製図は,図案その他の指導内容と関連をとって指導する。 |
講義および実習 |
6 鑑 賞
1) 指 導 目 標
(2) 自然や作品の鑑賞によって美に対する感覚を鋭敏にする。
(3) わが国および外国の現代絵画,彫刻の動向を理解させる。
(4) 東西の過去の絵画・彫刻の特質および各時代の思潮と美術との関連についての理解を深めさせる。
(5) 美術作品を愛好し尊重する態度を養う。
(6) 自然の美しさを発見し,それを味わう態度を養う。
(7) 生活環境を美化・改善する態度を養う。
(8) 郷土の美術作品に関心を持ち,これを理解し,鑑賞力を養う。
(9) わが国および外国の美術作品の鑑賞を通して,国際理解を深めさせる。
(2) 作者が自己の美的感銘を表現するために,構図・技法などの表現方法をいかにくふうしたかを味解するようにする。
(3) 展覧会・美術館・博物館などを利用して,できるだけ実際の作品を鑑賞させることに努める。
(4) 印刷物・写真などを利用するときは,できるだけできのよいものを選択すること,また,実物反射幻燈機を使用するなどよい方法である。
(5) 表現と関連して取り扱う場合や鑑賞だけを取り扱う場合など適宜に採択する。
(6) 東西の過去の作品の鑑賞については美術史と関連して取り扱うことが望ましい。
(7) 図画教室その他学校の適当な場所に作品や複製画などを展示して,常に鑑賞できるようにする。
自然および自然現象
各種表現様式による現代絵画・彫刻作品
各極表現材料による現代絵画・彫刻作品
東西の各時代における代表的な作品および表現様式の異なる代表作品
教師の作品および生徒の作品
(2) 次の表は東西の歴史的な著名作品の一部を示したものであるから実状に即して適宜に採択されたい。
(3) 次の表は特に歴史的な作品を重視する意味で示したのではない。現代の作品については,指導に適した作品を採択してほしい。
(4) 次表の○印は,文部省編集の図画工作科鑑賞資料に掲載されているものである。
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玉虫厨子装飾画
○法隆寺金堂壁画 麻 布 菩 薩 像 吉 祥 天 像 不 動 明 王 像 ○聖 衆 来 迎 図 普 賢 菩 薩 像 山 水 屏 風 ○源氏物語絵巻 ○鳥 獣 戯 画 巻 ○信貴山縁起絵巻 北野天神絵巻 一遍上人絵巻 伴大納言絵詞 平治物語絵巻 ○源 頼 朝 像 平 重 盛 像 ○那 知 滝 図 三 教 図 山 水 図 ○夏 冬 山 水 図 山 水 長 巻 山水花鳥図(松上鶴) 大 滝 松 鷹 図 屏 風 獅 子 屏 風 ○桜 楓 図 職 人 絵 書 雲 龍 図 猿 猴 図 鶏 図 屏 風 牟 礼 高 松 栗 鶉 図 屏 風 洛中洛外図巻 ○風 神 雷 神 図 宗達絵光悦書歌巻 ○燕 子 花 屏 風 紅梅白梅図屏風 写 生 帖 ○雪 松 図 保 津 川 屏 風
朝 暾 曳 馬 図 老 松 鳳 図 ○山 水 人 物 図 西 湖 図 竹 渓 訪 隠 図
○鷹 見 泉 石 像 佐 藤 一 斎 像 彦 根 屏 風 風 俗 画 〃 〃 〃 役 者 絵 〃 富嶽三十六景 ○東海道五十三次 白 雲 紅 樹 ○悲 母 観 音 ○落 葉 岡 倉 天 心 像 鯛 ○ 鮭 ○収 獲 図 洗 た く 場 風景(鉛筆画) ○てっぽう百合 大王岬に打ちよせるどとう 人物(習作) 読 書 田中館博士像 花 下 竹 人 福岡大学講堂壁画 れ い 子 之 像 裸 婦 |
伝 恵 心 僧 都
伝 藤 原 隆 能 伝鳥羽僧正(覚猷) 〃 伝 藤 原 信 実 伝 円 伊 伝 土 佐 光 長 伝 住 吉 慶 恩 伝 藤 原 隆 信 〃 不 詳 如 拙 周 文 雪舟1420-1506 〃 狩野元信1476-1559 〃 狩野永徳1543-1590 〃 長谷川等伯1539-1610 狩 野 吉 信 海北友松1533-1615 長谷川等伯1539-1610 曾 我 直 庵 狩野常信1635−1713 土佐光起1617-1691 住吉具慶1631-1705 俵屋宗達1576-1643 宗 達・光 悦 尾形光琳1658-1716 〃 〃 円山応挙1733-1795 〃 松村呉春1752-1811 英 一蝶1652-1712 伊藤若仲1713-1800 池 大雅1723−1776 〃 與謝蕪村1716-1783 田能村竹田1777-1835 谷 文晁1763-1840 渡辺華山1791-1841 〃 伝岩佐又兵衛1578-1650 菱川師宜1638-1714 勝川春草1726-1792 石川豊信1711-1785 喜多川歌麿1753-1805 歌川豊国1773-1828 東 州 齊 写 楽 葛飾北齊1760-1806 安藤広重1794-1858 橋本雅邦1835-1908 狩野芳崖1828-1888 菱田春草1874-1911 下村観山1873-1930 竹内栖鳳1864-1942 高橋由一1818-1894 浅井 忠1856-1907 〃 小山正太郎1858-1916 黒田清輝1865-1924 藤島武二1867-1943 中村不折1866-1943 満谷国四郎1874-1936 中村 彜1887-1924 片田徳郎1889-1933 青 山 熊 治 岸田嚠生1891-1924 岡田三郎助1869−1939 |
奈 良 〃 〃 平 安 〃 〃 〃 〃 〃 〃 鎌 倉 〃 〃 〃 〃 〃 〃 室 町 〃 〃 〃 〃 〃 桃 山 〃 〃 〃 〃 〃 〃 江 戸 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 明治大正 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 |
〃 〃 〃 仏画(密教) 仏画(浄土教) 仏画(法華経) 大 和 絵 絵 巻 物 〃 〃 〃 〃 大和絵絵巻物 〃 大和絵似絵 〃 大 和 絵 水 墨 画 〃 〃 〃 狩 野 派 〃 〃 〃 〃 〃 水 墨 画 〃 〃 狩 野 派 土 佐 派 住 吉 派 宗達光琳派 〃 〃 〃 〃 円 山 派 〃 四 条 派
南 画 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 浮 世 絵 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 官 展 系 〃 院 展 系 〃 官 展 系 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 在 野 系 官 展 系 |
〃 正 倉 院 薬 師 寺 高野山明王院 高野山大円院 国立博物館 京都教王護国寺 徳川黎明会 高 山 寺 朝護孫子寺 北野神社 歓喜光寺
神 護 寺 〃 根津美術館
国立博物館
妙 心 寺
東京芸術大学 御 物 智 積 院 川越喜多院 北野神社 相 国 寺 宝 亀 院
根津美術館
御 物 遍照光院
国立博物館
東京芸術大学
東京芸術大学 〃
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・仏画の美的価値
各作品の構図・表現技法
・インド・中国および西洋の宗教画との比較
・仏画の特質 ・大和絵の各作品の美的価値
・絵巻物の各種様式 ・絵巻物の特質 ・時代思想との関係 ・似絵の特質
・各作品の美的価値各作家の美的感銘
構図・技法などの表現方法
・各流派の表現の特質 ・時代思潮と絵画との関連
・中国絵画との関連
・浮世絵の美的価値 ・浮世絵の特質 ・版画の表現効果 ・各作家の個性 ・時代思想との関係
・各作家の個性 ・各作品の美的価値 ・伝統的な絵画と西洋絵画との比較
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その他の作家の作品
富岡鉄舟 南 薫造 長原孝太郎 鹿子木孟郎 山本森之助 森田恒友 小堀鞆音 小室翠雲 荒木十畝 松岡映丘 平福百穂 上村松園 橋本関雪 山村耕花 富田渓仙 小川芋 土田麦遷 速見御舟 荒木寬畝 五姓田芳柳
青木 繁 前田寬治
佐伯祐三 牧野虎雄 寺崎広業
現代作家の作品 |
絵 画(中国・インド)
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○女 史 箴 画 巻
○撥面狩猟図騎象鼓楽図 真 言 七 祖 釈 迦 三 尊 山 水 図 瀑 布 図 二 祖 調 心 蓮 花 図 桃 鳩 幕張萓搗練図巻 曲 り 竹 紅 白 芙 蓉 図 山 水 図 松 下 観 月 図 江 頭 泊 舟 図 山 水 図(双幅) ○観 音 猿 鶴 図 老松八哥鳥図 六 祖 図 ○雪 景 山 水 維 摩 詰 阿 羅 漢 図 雪 中 柳 鷺 図 桓 野 王 図 柴 桑 翁 図 巻 詠江南春文徴明補図 山 水 軸 蝦蟆鉄枴ニ仙図 蘭 図(四幅対) 桃 季 図 梅 花 双 維 図 風 雨 山 水 図 ○山 水 図 彷黄子久山水図 花 卉 冊 山 水 画 冊 蜀 猫 児 図 アジアンターの壁画 |
李 真 呉 道 子 伝 呉 道 子 伝 王 維 石 恪 徐 熈 徽 宗 皇 帝 〃 趙 昌 伝 李 迪 劉 松 年 馬 遠 夏 珪 〃 牧 谿 〃 梁 楷 〃 李 龍 眠 伝 李 龍 眠 趙 伸 穆 舜 挙 〃 倪 雲 林 黄 子 久 顔 輝 雪 窓 仇 英 呂 紀 胡 直 史 薫 其 昌 王 時 敏 惲 南 田 石 濤 沈 南 頻 不 詳 |
唐 〃 〃 〃 〃 〃 〃 宋 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 元 〃 〃 〃 〃 〃 〃 明 〃 〃 〃 清 〃 〃 〃 不 詳 |
〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 漢画(院外画) 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 漢画(院外) 漢 画 〃 〃 漢 画 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃
南 画 〃 〃 〃 〃 仏 画 |
正 倉 院 教王護国寺 東 福 寺 高 桐 院 智 積 院 正 法 寺 知 恩 院
ボストン美術館
大 徳 寺
国立博物館
東京芸術大学 西本願寺
知 恩 院 国立博物館 知 恩 院
久 遠 寺 国立博物館 |
・各作品の美的価値
・各作品の個性・構図技法・題材など
・各様式の特質 ・我が国絵画との関係 |
絵 画(西 洋)
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聖フランチェスコ |
(イタリア) 1266-1336 |
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・各作品の美的価値 | |
聖楽の天使達 |
ア イ ク (フランドル) |
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・各作品の個性・題材・構図・技法 | |
楽園を追はれるアダムと
エヴァ |
(イタリア) 1401-1428 |
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マニフイカートの
マドンナ |
(イタリア) 1444-1510 |
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・各様式の特質 | |
ヴィナスの誕生 |
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・時代思想と絵画 | ||
○モンナ=リーサ |
=ダ=ビンチ (イタリア) 1450-1519 |
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サンス |
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・我が国絵画との関連 |
最後の晩餐 |
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・現代絵画の特質 | |
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(イタリア) 1483-1520 |
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ラヴイ=イア |
(イタリア) 1477-1576 |
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(ドイツ) 1471-1527 |
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肖 像 画 |
(ドイツ) 1479-1547 |
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女王マリア=ド=メディ
ティ |
(ベルギー) 1577-1640 |
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二 人 の 息 子 |
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自 画 像 |
(オランダ) 1606-1669 |
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夜 警 |
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肖 像 画 |
(オランダ) 1580-1666 |
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〃 |
(スペイン) 1542-1625 |
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(スペイン) 1599-1660 |
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メロンを食う少年 |
(スペイン) 1618-1682 |
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御用聞きの女 |
(フランス) 1699-1779 |
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少 年 像 |
(スペイン) 1746-1828 |
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婦 人 像 |
(イギリス) 1727-1788 |
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ホラチィウスの誓い |
(フランス) 1748-1825 |
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裸 婦 |
(フランス) 1780-1867 |
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○聖 母 の 教 訓 |
(フランス) 1799-1863 |
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難 波 船 |
(フランス) 1791-1824 |
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風 景(水彩画) |
(イギリス) 1775-1851 |
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風 景 |
(フランス) 1796-1875 |
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落 穂 拾 い |
(フランス) 1814-1875 |
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石 割 り |
(フランス) 1819-1877 |
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自 画 像 |
(フランス) 1832-1883 |
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睡 蓮 |
(フランス) 1840-1926 |
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風 景(田園小景) |
(フランス) 1830-1903 |
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モ レ ー の 橋 |
(フランス) 1840-1899 |
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耕 作 |
(イタリア) 1830-1903 |
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アルプスの真昼 |
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踊 子(パステル) |
(フランス) 1834-1917 |
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少 女 |
(フランス) 1841-1949 |
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グラン・ジャットの
日 曜 日 |
(フランス) 1859-1891 |
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風景(サントロペ風景) |
(フランス) 1865-1936 |
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○サンヴイクトワール山 |
(フランス) 1839-1906 |
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向 日 葵 |
(オランダ) 1853-1890 |
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タ イ チ の 女 |
(フランス) 1848-1903 |
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自 画 像 |
(フランス) 1845-1910 |
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聖ジェヌヴィエープ |
(フランス) 1824-1898 |
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サ バ の 女 王 |
(フランス) 1840-1916 |
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(スイス) 1853-1918 |
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母 の 像 |
(アメリカ) 1834-1903 |
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アメリカン=ゴジック |
(アメリカ) 1892-1942 |
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彫 刻(日 本)
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○法隆寺 夢殿観音像
○中宮寺 如意輪観音像 ○広隆寺 彌勒菩薩像 ○薬師寺 薬師三弁像 三月堂 執金剛像 三月堂 金剛力士像 三月堂 不空羅索観音像 ○戒壇院 持国天像 聖林寺 十一面観音像 唐招提寺 千手観音像 新薬師寺 十二神将像 三月堂 月光菩薩像 ○興福寺 十大弟子像 鑑 真 和 上 像 行 真 僧 都 像 御 物 伎 楽 面 法華寺 十一面観音像 ○観心寺 如意輪観音像 浄瑠璃寺 吉祥天女像 鳳凰堂 阿彌陀如来像(定朝作) ○良 弁 僧 正 像 舞楽面 (舞楽採桑老面) ○東大寺 金剛力士像(運慶快慶作) ○興福寺 天燈鬼・龍燈鬼像 吉野水分神社 王依り姫 上 杉 重 房 像 大宝神社 狛 犬 惟 賢 和 尚 像 能 楽 面 連尉(赤鶴作) 〃 中将(蔵右衛門作) 〃 俊寛(日氷作) 女 荻 原 守 衛 作 猿 高 村 光 雲 作 裸婦 藤 川 勇 造 作 |
〃 〃 奈 良(白鳳) 〃 (天平) 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 平 安(前期) 〃 〃 (後期)
鎌 倉
室 町
現 代
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〃 〃 鋳 金(銅) 木 彫
塑造着色 木心乾添
木 彫 〃 〃
木 彫
寄 木 造 木 彫
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〃 〃 ・ 奈良東大寺 〃 〃 〃 奈 良 〃 〃 奈良東大寺 奈良興福寺 奈良唐招提寺 奈良法隆寺 奈良東大寺
大 阪 府
宇 治 奈良東大寺 厳島神社 奈 良 〃 奈 良 県 明 光 院 滋 賀 宝 戒 寺
東京芸術大学 国立博物館 |
・仏教彫刻の美的価値
・時代思想と様式 ・各種様式の特質 ・各種表現材料と表現の効果 ・我が国彫刻の特質 |
その他の作家の作品
建畠大夢 内藤 伸 其の他の作品 |
彫 刻(東 洋・西 洋)
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○雲岡石仏
慶州石仏 アジヤンター ボロブヅール アンコール=トム |
朝 鮮 インド |
新 羅 6世紀頃 8.9世紀頃 9.13世紀頃 |
朝鮮慶州 イ ン ド ジ ャ ワ 印度支那半島 |
・各作品の美的価値
・各国各時代の特質 ・各作品と個性 ・表現材料と表現の効果 ・我が国美術との関連 ・現代彫刻の特質 |
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○書記の像
円盤投げの青年(ミューロン作) ○とげをぬく少年 ○パルテノン破風女神(フイデアス作) へルメス像プラクシテレス作) 汗を拭う青年(リュシッポス作) ○ミロ島のヴイナス ラオコン群像 羅馬皇帝シーザー像 オクタビアス像 ガツタメーラータ将軍騎馬像 ダビテ像(ミケランゼロ作) ○モーゼ像( 〃 ) 奴隷( 〃 ) 進軍(浮彫)(リュード作) ユーゴー像(ロダン作) 考える人( 〃 ) バルザック像( 〃 ) 青銅時代( 〃 ) フルーデル作 マイヨール作 デスピオ作 |
ギリシア ギリシア ギリシア 〃 〃 〃 〃 ローマ 〃 イタリア 〃 〃 〃 フランス 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 |
B.C.5 〃
B.C.4
A C 1
〃 15 〃 16
〃 19
現 代
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ローマ 大英博物館
ルーブル博物館
大英博物館 ヴアチカン美術館 パドヴア フローレンス
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7 生 活 の 美 化
1) 指 導 目 標
(2) 生活の美化の要点,方法を研究し,理解する。
(3) 生活の美化へ美的な感覚と技能を活用する態度と習慣を養う。
(4) 個人生活・家庭生活・社会生活の美化に関心を持ち積極的に参加する態度と実行力を養う。
(5) 図案やその他の学習で養われた知識・感覚・技能を実生活に活用する能力を養う。
(2) 生活の美化とはどのような事であるかを具体的に理解させる。単に飾るという意味だけではなく,整理・整とんへの方法もまた生活の美化の要素として考えなければならない。
(3) 指導にあたっては,単に具体例により批評・検討するだけでなく,その改善効果をも体験し得るように心がけることがたいせつである。
(4) 生活の美化の問題を考えることによって,図画の学習問題をその中から見いだすことが非常に多いのであるから,その機会をじゅうぶん活用しなければならない。
(5) 服装,室内の配置構成,庭園,公園,公共施設,美しい街等,および生活の美化に関連する展覧会,展示会の見学など,なるべく生活美化のすぐれた実例に接する機会を与えるようにする。
(6) 特定の個人に関係するような具体例はなるべく避けたいが,やむを得ない場合には本人に不快の感をいだかせないよう,じゅうぶん注意して取り扱われなければならない。
(7) 次に示す指導内容の項目に関しては,特に時間を設けて取り扱うこともよいが,他の学習に関連して取り扱ったり,またいくつかの項を整理統合して組み合せて取り扱ったりして,それぞれ生徒の実情に応じて具体的に取り扱うことが望ましい。
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家庭生活の
美 化 |
生徒各自のへや
2.室内調度品の配置配合 3.室内の採光・照明についてのくふう 4.机上の整備・美化 5.案内,壁面の装置,装飾および各自の趣味に合う表現
2.各室を美化するために整理・整とんしたり,その他,花を飾ったり,絵をかけたりするなど,適切な方法を考えて実施する。
2.屋外の設備・装置などを改善美化する計画をたてて実施する。 一般に食物の味については関心が持たれているが,気持のよい食事をするための食卓や食事室の配置配合は,軽くみられがちになるので,この方面に関心を持つように指導する。 料理と食事
2.食器の形と色や質の点も考えてよい取合せを考える。 3.弁当箱の形・色・質について,それぞれの特徴を理解して,日常生活に生かすようにする。 |
生徒各自の研究発表,その他討議
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学校生活の
美 化
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教室の美化 1.学習室の机の配置,器具・備品の整とん・整備 2.壁面の装置・装飾 3.掲示板や告知板の美的配置 校舎内の美化 1.ポスターなどによる校舎内の美化活動,校具・備品の整とん・配置 2.掲示場の美化 3.集会場(生徒控室・講堂など)・特別教室・廊下広間・階段などの美化整備 4.展覧会・展示会その他の行事に関連する設備などの美化計画実施 校庭の美化 1.学校園の計画 2.屋外掲示場の計画 3.校内案内図 4.運動会場その他学校行事に関連する会場などの計画 |
生徒の研究
発表・討議・実習など,(図案・色彩・鑑賞の指導内容と関連をとる。) |
社会生活の
美 化 |
町,村の美化(地域社会) 1.街頭の広告・ビラなどが,適切にはられたり,おかれたりしているかについて検討して関心を高める。 2.商品やその他看板などが,おかれたりはられている実際について検討し,改善美化に関心を高める。 3.道路標識の形体・着彩・配色の効果について研究し,よい標識を図案設計をする。 4.緑地運動と関連して,街路樹の配置,形などについて研究する。 公共施設の美化 1.公会堂・公民館・音楽堂・公衆便所などを主として,形体の美しさの点から検討し研究する。 2.交通・運輸機関に関する形体・色彩などの研究 都市の美化 1.地域社会の実情を調査研究し,改善案の設計 2.都市美と自然環境との調和 3.都市美と建築との関係 4.都市美と道路との関係 5.理想の農・山・漁村・小都市・中都市・大都市などの図上設計 住宅地域・官庁街・学校・公園・緑地などを一つの都市としてまとめて理想的に図上設計 |
生徒の研究
発表・討議・見学・実習(図案・色彩・鑑賞の指導内容と関連をとる。) |
服飾の美化 | 生徒各自の衣服
1.衣服は,どのような目的や機能を備えていなければならないかの理解 2.各自の衣服について,構造・形・色・生地などについて調査研究 3.各自の衣服が生活に適しているか否かについて研究し,よい点と改めたい点について,調査を進める。 4.服装に調和する付属品として,帽子・はきもの(くつ・げた・ぞうりなど)・
5.学校の制服および,それ以外の衣服についても研究する。 美しい服装 1.衣服の機能・用途・種類などについて考える。 2.衣服の種類 儀礼用衣服・外出着(晴着)・平常着(仕事衣)・学生服などのそれぞれの機
3.衣服の差異 性別・年令別・職業別・季節別の点について,考える。 4.衣服に調和する付属品について研究する。 5.流行と服装,趣味と服装について考える。 6.服装は,着用される時・場所,着用者によく適合しているとき美しいもの
7.美しい服装は,装飾の多いこと,豪華であることよりもむしろ,着用する
和服と洋服 1.現在,われわれは,服装の点で二重の生活をしているが,これはどんな理
2.住居の問題が服装に関係することの理解。 3.和服・洋服のそれぞれの特質について考える。 4.和服・洋服のそれぞれの欠点について考える。 5.和服・洋服のそれぞれの付属品について考える。 6.和服・洋服のそれぞれの美しさについて考える。 服飾美化の実習 服飾品の現物を中心にして,その色・形・質などを中心にして,目的によっ
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講義,生徒の研究発表実習など
図案の指導と関連 |
8 美 術 概 論
1) 指 導 目 標
(2) 美に対する感受性を鋭敏にする。
(3) 美術に対する鑑賞力を発展させる。
(4) 情緒の過度の緊張を柔らげるための美的情操を発展させる。
(5) 美術の人生に対する意義および価値の理解を発展させる。
(6) 美術愛護の精神を発展させる。
(7) 東西の過去および現在の美術の特性および各国,各時代の文化を理解する能力を発展させる。
(2) 自然美と,芸術美とに対する考え方や見方,また鑑賞の立場より両者の性質を比較してみたりすることがあるので,これについて一応指導することが望ましい。
(3) 美術の形式および様式については,具体的なものに即して扱い,理解を深めるようにする。
(4) 美術と生活との関係については,人がいかに美の要素を生活の各面に取り入れることに努力をしたか,またその努力の結果,具体的にどのようなものがあるかを,生活を中心にして美術を理解するように指導することが望ましい。
(5) 美術の鑑賞については,美術の鑑賞の意味,その対象,その対象のどんなところを見るのか,美術の鑑賞を深めるにはどんな方法によるのかなどについて指導する。
(6) 美術の鑑賞と鑑定との相異を指導するには,鑑賞と鑑定とは,美術面のどんな価値をねらって見るのかを理解させるようにする。
(7) 日本美術の変遷の指導では,美術思潮の流れの特色や,生れた美術品の特色によって,それぞれの時代に分けられているが,これも考え方や見方によって一定していないので,一つの分け方にとらわれないように指導する。
(8) 日本美術の変遷は,流派によって分類し系統をたてて理解を深めることも一つの方法であることを注意したい。
(9) 美術の変遷の指導では,過去・現在というように時代を追って扱うこともできるが,現在に美術の問題を持ち,逆に過去にさかのぼって扱うこともできるので,生徒の興味や要求によって,適宜指導することが望ましい。
(10) 西洋美術の変遷の指導においても,その扱い方は,日本美術の変遷の指導と同様である。
(11) 日本現代美術の動向の指導では,美術思潮,形式・様式などについて西洋美術とを比較して,それぞれの特色を理解させ,わが国を初め,広く外国の美術文化を理解するように指導することが望ましい。
(12) 現代における日本の美術団体(絵画・彫刻・工芸など)やその発表機関などについて,指導し,機会があれば,見学などによって理解を深めるようにする。
(13) 現代の日本の絵画や彫刻と外国のそれぞれとの関係を指導することが望ましい。
(14) 鑑賞の指導などでは,できうれば,幻燈使用などの方法で興味深く指導することが望ましい。
〔指 導 内 容〕
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美術の種類
と性質の 大 要 |
芸術の分類については古来いろいろ考えられてきたが,完全な分類はできに
くい。次にあげる分類例はこれまでに試みられたおもなものであるが,いずれもぴったりあてはまらないところがあったり,欠点があったりする。しかし,このような分類によって考えたり,討議したりすることによって芸術の各分野の性質がだんだん理解されてくる。 芸術の分類例 1. 自然の模倣をする芸術…絵画・彫刻など……直観の形式が具象的,事物的 自然を模倣しない芸術…建築・工芸・音楽など…直観の形式が抽象的…非事物的 2. 実用性の少ない芸術…自由芸術・・・絵画・彫刻・音楽・詩文など 実用性の多い芸術…実用芸術…建築・工芸・造園など 3. 視覚芸術…絵画・彫刻・工芸・建築など 聴覚芸術…音楽 視聴芸術…演劇その他 想像芸術…文学 4. 空間芸術…絵画・彫刻・建築・工芸など………造形芸術…美術 時間芸術…音楽・文学など 総合芸術…劇・舞踊・映画など |
講義・研究・発表・討議など(芸術についていくらかの理解を増す程度でよい。) |
美術の性質 | 美術の性質については,いろいろな見方から,種々の説が立てられている。その例をあげると次のようなものがある。
1.美術は視覚によって認識される人工形体であるとの説 2.美術は美的判断の対象となる形体であるとの説 3.美術は,美術家の生活感情に造形的表現を与え,鑑賞者が直観することによってこれを享楽することを目的としたものであるとの説 4.絵画・彫刻などいわゆる純粋美術といわれるものは,直接に功利目的は持たない。工芸・建築など,功利目的を持つものは,普通に応用美術といわれ,純料美術と区別されている。 |
講義・研究・発表・討議などによる。 |
自然美と芸術美との異同 | 自然と芸術美との異同についてもいろいろな意見が述べられている。その代表的な例をあげると次のようである。
1.自然美も芸術美もともに鑑賞の対象となることができる。しかし鑑賞という語は芸術美に対してのみ用いられるもので,自然美に対しては用いないとする意見もある。 2.芸術美は芸術家の精神を通して再生した美であるから,自然美以上である。この意味では,ニつの美には程度の差があることになるとの意見 3.自然美は鑑賞者の個性によって内容が非常に違って見えるが,芸術美は芸術家の個性によって解釈され創造された美であるから,作者と同じ解釈を鑑賞者に強要する性質を持っているとの意見 4.芸術美の鑑賞は,作品の内容と同時に芸術家の様式を享楽するが,自然美には様式はないとの意見 |
講義・研究・発表・討議などによる |
美術の要素 | 1.美術は,材料美・形式美・内容美の三つの要素によって構成されている。
2.美術は,色・形・空間の三つの材料によって構成されている。またこれらの材料は,画布・紙・絵の具・金属・木材その他の物質的材料によって支持されている。 3.美術を構成する材料の配列法を美の形式(美術の形式とは違う)という。美の形式には対称・均衡・従属・対立・リズム・統一・調和などいろいろなものがあげられている。 4.表現するものの意味を美術の内容という。美術は作者の精神や生活感情を表現するものであるから,その精神や生活感情は美術の内容となる。また絵画における風景画・静物画・人物画・動植物画などにおいて,その描かれた風景・静物・人物・動植物を美術の内容とみる場合もある。彫刻においても同様である。建築は直接に人の生活感情を表現したものとみられる。 5.美術には,物質的表現材料からみて,次のようなものがある。 絵画=油絵・水彩画・パステル画・墨絵・版画・鉛筆画,その他 彫刻=木彫・石彫・銅像・塑像・その他 建築=木造・石造・れんが造・鉄筋コンクリート造・その他 工芸=木材工芸・金属工芸・陶磁器工芸・染織工芸・その他 |
講義・研究・発表・討議など |
美術の形式および様式
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1.絵画における額ぶち絵・壁画などの別は形式の差である。また軸物の絵・びようぶ絵・絵巻物などの別も形式の違いである。
彫刻における丸彫・厚肉彫・薄肉彫などの別は形式の違いである。また座像・立像などの別も形式の違いである。 建築における神社建築・寺院建築・廟(びょう)建築・住宅建築・茶屋などの別は形式の違いである。また,五重の塔・三重の塔・多宝塔などの別も形式の違いである。 2.美術の表現上における技巧・材料・構造などの一致を指して美術の様式という。 3.美術の様式には次のようなものがある。
ふたり以上の作家のおのおのの作品を多数集めて比較してみると,そこに個人様式のあることがわかる。 (2) 集団様式 師弟関係その他ある集団の作家の作品は,そこにある共通の性格をもつ。その共通の性格を集団様式という。わが国において特殊の発達をした各種の流派は集団様式の特異なものである。 狩野(かのう)派の絵と土佐派の絵というように流派の違う絵を比較してみたり,主義主張を異にする二つの会や展覧会の作品を比較してみれば,そこに集団様式のあることがわかる。 (3) 時代様式 作家の違いによるその表現の差異はあっても,ある時代の作品には,共通のところがある。これを時代様式という。飛鳥(あすか)式とか,天平(てんぴょう)式とかいうのはこれである。 時代の違った作品を集めてみると,時代様式のあることがわかる。 石山寺の多宝塔(たほうとう)と浄瑠璃寺(じょうるりじ)の三重の塔とは形式は違うが様式はほぼ同じであるとか,法隆寺の五重の塔と醍醐寺(だいごじ)の五重の塔とは,形式は同じであるが様式は違うというように,「形式」「様式」という語が用いられている。 (4) 民族様式 個人・集団・時代の違いにかかわらず,一つの民族には,他の民族とは違った美術様式がある。エジプト様式・バビロン様式・ギリシア様式などといわれるのがこれである。 展覧会などの見学などのときは,各作家の様式を鑑賞するとともに,団体様式や時代様式などにも注意するがよい。 |
講義・研究発表・討議,展覧会の見学などによる。
(実物模型,各種の図版など使用)
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美術と生活との関係 | 1.美術の創造は人間本来の欲求からなされるもので,これによって人間の生活はたいへん豊かになった。
2.建築物には,それぞれの建築物のもつ実用目的以外に人間の美意識を満足させるための創意が施されている。すなわち美術的要素が盛られている。 3.衣服は寒暑を防ぎ,身体を保護するという目的以外に形や色にいろいろくふうを施して,人間の美意識を満足させている。すなわち衣服も美的要素が多く盛られている。 4.われわれが日常生活に用いている器物,器具の類も,その実用目的を満たす以外に,美意識を満足させるためのいろいろなくふうがなされている。 5.交通機関その他いろいろな施設も,単に実用目的を達するだけでなく,人間の美意識を満足させるためのくふうがなされている。 6.以上あげたように普通に実用品といわれているものでも,そこになるべく多量の美的要素を盛りこんで美意識を満足させ,生活を明るく豊かにするための創意と努力とがなされるのが常である。 7.絵画・彫刻・庭園・生(いけ)花などを創作したり鑑賞したりして楽しむような特別な実用目的をもたないで,単に美的享楽を目的とするものも,われわれの生活には,ずいぶん多く取り入れられていて,これによって人間は美意識の拡充,自己主張をし,生活を人間らしく営む助けとしている。 8.美術を保護し,またこれを一般に公開するために国およびその他の団体がどのような政策をとり,施設をしているかについて関心を高めるようにする。 |
講義・研究・発表(実物図版・展覧会の見学など)
(図案・生活の美化・鑑賞などと関連)
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美術の鑑賞 | 1.美術品には,審美的価値・歴史的価値・経済的価値・その他いろいろな価値があるが,鑑賞は審美的価値が対象となる。したがって美術品の鑑賞には,時代・作者・流派・イズムなどは第一義的の意味は持たない。
2.美術の創作が個性的であるように,鑑賞もまた個性的であり,主観的である。 3.鑑賞は直観的であり,超理論的であるが,鑑定は美術品の製作年代・作者・流派・価値・真偽などの点について研究し判断するものであるから,客観的であり,理論的でなければならない。したがって鑑定には豊かな知識と広く深い経験が必要であるが,鑑賞には個人のセンス・教養・感覚などが必要である。しかし作者や年代・流派などを知ることも,鑑賞眼を養う助けとはなる。 4.鑑賞眼を養うには,すぐれた作品を,できるだけたびたび見ること。よく見て味わうこと。よい評論を読んだり聞いたりして参考とすること。できれば自分でも美術品を創作してみること。美術についての研究をしたり,美術の変遷について研究することなどが必要である。 5.絵画の鑑賞では画因(モチーフ),調子(トーン),色,線や面の階調・構成・技法・運筆(タッチ)などに注意してみる。 彫刻の鑑賞では作因・調子・質・形・技法・タッチなどに注意してみる。 |
講義・研究発表など
(実物・図版・展賢会などの見学) (鑑賞と関連)
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日本美術の変遷 | 1.日本の上代の美術
2.飛鳥時代の美術の特色(仏教美術の発生)とおもな遺品の鑑賞 飛鳥(あすか)時代の美術に影響を与えた六朝美術の概観 3.奈良時代の美術の特色(仏教美術の発展)とそのおもな遺品の鑑賞 奈良時代の美術に影響を与えた唐朝美術の概観 4.平安時代の美術の特色(仏教美術の全盛,公家趣味美術の発展,国風美術の完成)とおもな作者,おもな遺品の鑑賞 5.鎌倉時代の美術の特色(武家趣味美術の発展)とおもな作者,おもな遺品の鑑賞 鎌倉時代の美術に影響を与えた宋朝美術の概観 6.桃山時代の美術の特色(近世的国風美術のぼっ興)とおもな作者,おもな遺品の鑑賞 桃山時代の美術に影響を与えた明朝美術の概観。 7.江戸時代の美術の特色(近世国風美術の発展)おもな作者,おもな遺品の鑑賞 江戸時代の美術に影響を与えた明・清美術の概観 8.明治・大正時代の美術の特色とおもな作者,おもな作品の鑑賞 明治・大正時代の美術に影響を与えた19世紀以降の西欧美術の概観 9.以上の日本美術の変遷を通して,仏画・土佐派・狩野派・光琳派・浮世絵派・南宗派・四条派・円山派など,絵画の流派別の系統を立てたり,作品の鑑賞をしたりする。 |
講義・研究発表など(図版,展覧会見学など)(鑑賞と関連)
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西洋美術の変遷 | 1.ギリシアの美術の理解および鑑賞
ギリシア美術の理解をめいりょうにするため,エジプト美術との比較,鑑賞。ローマ美術との比較,鑑賞もする。 2.ルネッサンス美術の理解および鑑賞 ルネッサンス美術を理解するため,中世キリスト教美術をも取り扱い,イタリアルネッサンス美術の栄えた原因,絵画が発達した歴史的原因などを鑑賞を通して理解する。 3.古典派・浪漫派・写実派などの特色の理解および作品の鑑賞 フランス革命後の古典派と浪漫派との対立,浪漫派から写実派への転移などを鑑賞を通して理解し,美術と社会思潮との関係を研究する。 4.印象派以後の美術の諸派についての理解および作品の鑑賞 印象派・新印象派・後期印象派・野獣派・立体派・表現派・未来派・ダダイズム・抽象派・超現実派など。 (注意)
(2) 美術史はどのような方法によるにしても単なる理論に終ることなく,鑑賞を中心として研究を進めることが望ましい。 |
講義
研究・発表 (実物および図版,展覧会見学など)
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日本現代美術の動向 | 1.日本画と洋画
現在では日本画と洋画との区別を単に作画上の使用器具や材料からみる方法しかないようになっている。しかしその材料使用法や材料の示す性格の裏に伝統がからまってくるので,そこに改めて判然と日本画と洋画が区別され始めることになる。 2.現代日本の美術家は,日本伝統の反省吟味,個性の掘り下げ,欧米美術の研究,それらを通して世界性の獲得などを目ざしている。 3.日本の洋風画の発表機関および団体 4.日本画の発表機関および団体 5.彫刻の発表機関および団体 6.工芸の発表機関および団体 7.現代日本の絵画・彫刻・工芸・建築と外のそれらとの関係 |
講義・発表など
(図版,展覧会見学など)
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