本章においては,中学校における図画工作教育の指導内容をどのような順序に組織するかについて述べるのである。
図画工作の指導内容は,主として図画工作教育の目標を達成するためには,どんな内容を持ってくるべきかの検討によって決定せられ,またその指導内容をどんな順序に組織するかは,主として生徒の興味・理解・技能などの発達段階からみてどのようにすれば,生徒が学習しやすいかの検討によって決定される。この両者は互に関連して決定されるべきもので,このようにして,図画工作教育の課程が組成されていくのである。
ここにおいて述べる各学年の図画工作教育課程の生れてきた根本となる考えの概要を述べておこう。
1 図画工作指導内容の範囲
図画工作指導の範囲の決定は,いろいろな観点から検討を加えてなされなければならないが,本書では主として,人間の個人としての生活,社会人としての生活,経済人および職業としての生活に必要な造形活動を,いろいろな観点から分析して,表現活動・理解活動・鑑賞活動・技術活動の四つにまとめて指導の範囲を決定することにしたのである。その各活動の内容を例示すれば次のようである。
1) 表 現 活 動
(2) 説明的な図をかいたり,模型や実用的なものを作ったりするような用を目的とする表現活動。
(3) 各種の図案構成をしたり,工芸的なものを作ったりするような用と美とを目的とする表現活動。
(4) いろいろな物を配置配合し環境を美化・改善する活動。
そ の 他
(2) 造形品を構成する木材・金属・粘土・紙その他の物質素材に関する理解。
(3) 造形品の構成に必要な用具に関する理解。
(4) 造形品の構成形式および様式に関する理解。
(5) 造形品を構成する方法に関する理解。
(6) 均衡・リズム・変化・統一・調和・強調・適合のような美の構成要素に関する理解。
(7) 造形品の価値評価に関する理解。
(8) 造形活動の人生における意味の理解。
(9) 造形活動が情緒の安定に役だつことの理解。
(10) 造形活動が余暇を有効に過すに必要なことの理解。
その他の理解。
(2) 造形美を鑑賞する活動。
(3) 前二者と関連して環境から美を発見する活動。
(4) 理解と関連して造形品の価値判断をしてこれを選択する活動。
(5) わが国の過去の美術作品を研究し鑑賞して,いろいろな時代の文化を理解する活動。
(6) 外国の美術作品を研究し鑑賞して,外国の文化を理解する活動。
技術活動は主として表現活動に伴って起るものであるが,表現活動の主体となるものは創造力であるが,しかし創造を離れた技術そのものも人生にとって重要な意義を持つものであるから、別の項目としてあげたのである。具体的な例は各学年の課程に譲ることにする。
本書では,以上のような観点から各学年の指導内容を,表現教材・理解教材・鑑賞教材・技術熟練の教材の四つに分けて,中学校における図画工作の指導の範囲を示すことにした。
2 図画工作の指導の順序
図画工作の指導の順序は,生徒の興味・理解・技能その他心身の発達段階に応じて決めなければならない。
中学校時代の,生徒は身体的には身長や体重の増加が目だち,握力・背筋力などの体力も増加し,内臓器管の働きも強くなるが,しかし,まだその発達はじゅうぶんではなく,不安定な時期である。このような身体的変化とともに,精神的方面にも変化を生じてくる。そのおもなものは,情緒の動揺に悩むことである。仲間との関係が重大な問題として考えられるようになり,自分自身に敏感になる。日常生活に関係の深いことに関心を高めるようになる。また理知が発達し,知的理解が増してくることなどの特色がみられる。
このような生徒の心身の発達が,どのように図画工作に対する興味や理解や技能の発達として現れるであろうか。これについては種々な調査の結果にまたなければならないが,その概要は次のようである。
(2) 表現よりも,理解・鑑賞により多くの興味を示すものがだんだん増してくる。
(3) 表現においては,幅よりも深さに興味と能力とを示す傾向がある。
(4) 技術的な興味と能力とが一般的には増してくるが,自己批判力と鑑賞力との発達に伴って,自分の技術に対して不満を覚えてくる結果,表現に興味を失うものもでてくる。
(5) 環境から美を発見し,環境を美化する技能がだんだん増してくる。
(6) 習得した技能を生活の上に生かしてくるようになる。
(7) 物の実用価値や美的価値がある程度理解できるようになる。
(8) 企画性が増してくる。
(9) 知力と体力との増加は,工作において硬材料や程度の高い工具をある程度まで使いこなせるようになる。
(10) 社会生活の実状がある程度までわかってきて,図画工作の学習と社会とのつながりが理解できるようになる。
(11) 級友と協力して仕事をすることが相当うまくいくようになる。
(12) 第3学年くらいになると,創造的な表現に著しい適性を示すものと,そうでないものとの区別がだんだんはっきりしてくる。
(13) 第3学年くらいになると,創造や,鑑賞に対する考え方や態度がだんだんおとなと変りがなくなってくる。
3 本課程の扱い方について
1) 本章では,前記の図画工作の指導内容の範囲と指導順序決定の方針に従って,実際に中学校の第何学年ではどのようなことを学習させるべきかの教材を示したのであるが,これは全国に共通して,このくらいは指導内容として適切なものであると考えたのであるが,それぞれの地域の学校においては,適宜加除修正を加えて,それぞれの学校の実情に即したものを作らなければならない。その場合,各学校でどんな指導内容をどんな基準によって選ぶべきかの具体的な問題は,第7章に示しておいた。
2) 本章に示した課程は適宜学校の実情に応じて加除修正を加うべきではあるが,基本的なことまで省いてしまって,著しくかたよったものにしてしまわないことがたいせつである。
3) 本章で示す指導内容は,このままの形で学習させるのではなく,適宜分解総合して,適当なまとまりを組織して学習させるのである。したがって本章にあげてある表現教材・理解教材・鑑賞教材・技術熟練の教材は,単独な形で学習される場合もあるが,多くは互に関連を保って種々に複合されて学習されることが多いのである。
以下節を追って,各学年の図画工作教育の課程について述べる。
第1節 表 現 教 材
1 描 画
1) 目 標
(2) 描画の学習によって造形的な創造力を発展させ,ことばでは表現できない思想や感情を表現する手段を得させる。描画の応用として説明的,記録的に表現(描図)する能力を発展させる。
(3) 描画の学習によって得た表現力を,個人生活や社会生活に役だてるようにする。たとえば描画能力を余暇を有効に過ごす助けとするとか,描画によって養われた美的情操を,家庭生活・学校生活・社会生活などの環境の美化・改善に役だてるようなものをさす。
(4) 美術的職業への興味と適性とを持つものには,これを伸ばす機会を与える。
(2) 遠近・明暗・質・量などの表現方法や,構図法その他先人によってくふうせられた種々の表現方法中のおもなことは,ある程度知らせる必要はあろう。しかし,実際の表現にあたっては,必ずしもこれにとらわれることなく,生徒の個性に応じ,自由に創造的にかかせることがたいせつである。
(3) 指導内容はかたよったものとなってはならないが,生徒の能力・適性・必要に応じて,多少の軽重をつけて扱うことはむしろ望ましい。
(4) 指導内容は第1学年は主として静的で基礎的なものとし,学年の進むに従って動的で応用的なものを扱うようにする。
(5) 指導内容の配列は,地域の事情や,生徒の興味・能力・必要に応じ,また季節に対する考慮を払わなければならない。
(6) 次に示す指導内容は一つの参考として示したものである。
学年および
項目備考 |
(第7学年) |
(第8学年) |
(第9学年) |
|
静物画 | 1.表現題材
遊具・文房具・野菜・ くだもの・花その他を 生徒の身辺から適宜選 択させ,それを単独ま たは組み合わせてかく。 のような素描材料と水絵 の具などのような彩画材 料から,かくものに応じ て適当なものを選ぶ。 を主とする。遠近による形 の変化や色の変化をある程 度表現できるようにする。 物の明暗・陰影をある程度 正しく表現する経験をさせ 物の質感表現にも注意を向 けはじめるようにする。 静物画の構図を変化があり
|
1.表現題材
やや程度を高める。 2.表現材料 材料として墨を加 える。 3.表現様式 を加える。遠近に よる形の変化や色 の変化を表現でき るようにする。 |
第2学年に準
|
1.第3学年にも静物画をかかせ
てもよい。
2.表現様式の大要は各学年のと
4.構図については物の位置,組
5.実際の学習においては,理解
6.遠近・明暗・質・量などの表
|
風景画 | 1.表現題材
路・建築物などのある風景 画,その他学校や家庭の近 くの風景画などの構成の比 較的簡単なもの。
3.表現様式その他 を主とする。
遠近による形の変化や色の
物の明暗・陰影をある程度
風景画の構図を変化あり統
|
1.表現題材
や進んだもの,ま た春・夏・秋・冬 などの風景画をか かせてもよい。
3.表現洋式その他洋
物の説明的な表現
|
1.表現題材
じさらに程度 を進める。
3.表現様式その
同左
同左
同左の発展
|
1.静物画の備考の2・3・4・5
は風景画にも適用する。
味と適性とを持っているものの 指導とは取扱上に手心を加え, 特に描画に向かない生徒には学 年の進むに従って描画の負担を 軽くし,理解・鑑賞などによっ て,美術的な教養を与えるよ うにする。 |
人物画 | 1.表現題材
明暗・陰影の表現に留意し質感・量感の表現にも留意する。 説明的な表現よりも美の表現にいっそうの注意をはじめる。 人物画の構図を変化あり統一あるようにする。 人物スケッチ
|
1.表現題材
同左
3.表現様式その他
同左の発展
同左
|
1.第1学年にも人物の学習を
させてもよい。 2.静物画の備考 の備考2は,人物画にも適用 する。 |
|
動植物画 | 1.表現題材
|
1.表現題材
植物,鳥・獣など のスケッチ
2.表現材料 同左
3.表現様式その他 |
1.表現題材
洋画風の花鳥 の作画など。
2.表現材料 同左
3.表現様式その他 同左 |
ここに動植物画というのは,植物画として扱うくだもの,野菜・魚貝の類や風景画として扱う草木など以外の動植物を主題とした画(花鳥画)を意味するのであるが,二つの間に厳密な区切りはつけにくい。 |
説明的な描写 | 1.表現題材
2.表現材料 |
1.表現題材
機械的または構造 的なものの説朋的 な精密描写,ある いは単化描写,絵 地図・案内図 写においては,ポ スターカラー,色 紙などを用いるも よい。 |
1.表現題材
じ程度を高め る。
2.表現材料 同左 |
1.表現題材は他教科との関連
をとり,生徒の環境から選ぶ。
2.生徒の中には,絵画的表現は得意としないが,説明的の表現には興味と適性とを示すものもあるから,そういう生徒には説明的な絵を多くかかせるようにする |
2 図 案
1) 指 導 の 目 標
(2) だれにでも必要な程度の図案の技能を発展させ,それを実際生活に適用する能力を発達させる。
(3) 美術的職業への適性を有するものはそれをじゅうぶんに発達させる。
(2) 図案は物を作る場合に,作者の案を具体的に表わしたものであるから,単に紙にかいただけでしまいにしたのでは,ほんとうの価値はわからない。これを実材の上に移してはじめて価値を表わすものである。したがって,何に使うかの目的を持たないものは図案としての意味をなさない。しかし図案学習の手段としては,直接的に何に使うかの目的を持たないものをかかせることもあってよい。
(3) 工芸図案や商業図案は,中学校における図案の主要な教材となるが,すべての生徒に巧みな図案ができるようになることを望むことよりも,工芸図案や商業図案の良否を判断し,それを生活を豊かにするために役だてることに主眼をおくべきである。したがって工芸図案や商業図案は理解教材に属する部分が多いのであるが,その理解に到達するための実験として,いくらかの表現を試みることもたいせつである。
(4) 図案表現の技術的抵抗をなるべく少くし,容易に楽しく学習できるようにする。
(5) 教材は地域社会の要求や生徒の興味・適性・必要に応じて選択する。
(6) 次に示した指導内容は一つの参考として示したものである。
学年および
項目備考 |
(第7学年) |
(第8学年) |
(第9学年) |
|
図案の資料 | 1.文字
種の立体など。
以上の資料の写生図案化・図案への適用の研究 |
前学年に同じ。
|
前学年に同じ。
|
2.図案資料の学習は,単独に学習させることもあるが多くは実際的な図案構成に伴なって学習させる。 3.伝統的な図案資料の研究や民族的な図案資料の研究というのは,ある民族は,ある種の資料を喜んで用い,ある民族はある資料をきらうというようにそのだいだいの研究をして,それを表現に生かすようにする。 4.各学年にあげた資料は
5.植物・動物・鉱物および天然現象資料はそれを用いる場合によって,写実風のものを用いることもあり,写実から離れたものを用いるともある。 |
生活図案 | 1.ポスター(学校生活や社会生活に必要なもの,商業図案と関連)
2.書物やノートブックの表紙
4.手さげ,買物袋
5.小家具など。 家庭生活や学校生活に必要なものの中から地域の実情に応じて選ぶ。(工芸図案・工作などと関連) |
1.ポスタ一(前学年の継続)
2.家具・文房具(日常生活に関係の深いもの)
3.家の間取や庭園の配置
4.学校の美化
5.服飾品などの中から,地域の実情に応じて選ぶ。(工芸図案・工作・配置配合の学習と関連) |
1.前学年2・3・4・5の継続
2.小公園緑地帯などの設計
3.地域社会の美化改善などの中から地域の実情に応じて選ぶ。(工作・配置配合などの学習と関連) |
1.生活図案と,工芸図案・商業図案との間には,図案する物の上からの区別はつけられないものが少なくないが,自己の生活および自己の属する社会の改善美化に主眼をおくものを生活図案という。
2.生活図案と配置配合との間にもはっきりした区別はないが,配置配合はすでにできているものの取合せや組合せに主眼をおき,生活図案は新しい物を創案するところに主眼がある。
3.表現材料としては水絵の具・ポスターカラー・グワッシュ・色紙・各種の素描材料,その他から適宜選ぶ。 4.立体的なものの表現方法は,手がきの写生風,等角投影図・傾斜投影図・正射投影図など表現するものに応じて適当なものを選ぶ。 |
工芸図案 | 1.しま,かすり,その他染織物の模様
2.クッション・座ぶとん・テーブルセンターのようなものの図案 |
1.文房具類の図案
2.容器・注器などの図案
3.簡単な家具類の図案
4.はきもの・こうもり・ハンドバック・ベルト,などのような装身具の図案 |
1.前学年の3・4の継続
2.いす・テーブル書だななどのような家具 |
1.生活図案と関連をとって指導する。
2.工芸図案の簡単なものは,生徒に立案させてみるがよいが,その立案は主として工芸図案の理解を助けるための手段として実習させる。
3.表現材料は生活図案に準ずる。
4.表現の方法は生活図案に準ずる。 |
商業図案 | 1.レッテル・包装紙などの図案 | 1.新聞雑誌などの広告図案
2.ポスタ一図案
3.看板の図案 |
1.ポスタ一図案
2.店頭,店内の装飾図案
3.商品の展示計画 |
1.ポスター展示計画などは生活図案との関連をとる。
2.表現材料は生活図案に準ずる。
3.表現手段は生活図案に準ずる。 |
3 配 置 配 合
1) 目 標
(2) 物を配置配合することによって,美的情操を豊かにする。
(3) 物を配置配合することによって,意図を表現する技能を発展させる。
(4) 配置・配合によって,造形品を有効に使用する能力を発展させる。
着物の表地と裏地との質・色・柄などを調和よく取り合わせること。
着物の頁の文章とさし絵とをうまく配置するようなこと。室内にいろいろな家具を,使って便利に見て美しいように配置すること。その他すでにある自然物や人工物を配置したり配合したりすることによって意図を表現し,生活を明るく豊かにすることなどを意味する。
(2) 図画工作の学習はすべての教材が,生活から遊離してはならないが,特に配置配合は生徒の日常生活から題目を選んで,生活指導の実をあげるようにすることが肝要である。
(3) 配置配合は,図案の一分野であるともみられるものである。したがって図案における美の構成要素は配置配合にも適用される。
(4) 次に示した指導内容は,一つの参考として示したものであるから,生徒の興味や能力,地域の実情に即した,適当な題目を選んで学習させなければならない。
学年および
項目備考 |
(第7学年) |
(第8学年) |
(第9学年) |
|
学校生活に必要な配置配合 | 学校生活を明るく豊かにするために必要な配置配合をする。
例 1.学校で回覧雑誌や生徒の文集などを作るとき,頁の上の文章,カットさし絵などを調和よく配置配合する。
3.教室の壁面に額ぶち,成績品,その他学習上必要なものをかけたりはったりする。
4.学校の掲示場にポスター,告知書類などをはるとき配置よくはる。
5.展覧会などのときに大きな台紙に幾枚かの生徒作品を配置よくはる。 |
第1学年に準じやや程度を高め,取り扱うものの範囲を広くする。
例 1.第1学年の(1)から(5)までの各教材は機会あるごとにくり返し練習をする。
3.教室や学校園などの配置をよりよくするための計画を立てる。その計画を実現できるものは実現する。
4.いろいろな会合のときの座席の配置をしたり,必要なところに花を飾ったりする。 |
第2学年に準じ,程度を高め取り扱うものの範囲を広くする。
1.第2学年の1の継続練習
3.学校の校地・校舎・運動場・学校園などの配置を改善するための計画を立てる。また諸室の配置その他の改善についての計画を立てる。 |
1.配置配合の教材の分類は,個人生活のため必要な配置配合,家庭生活・学校生活・地域社会の生活などに必要な配置配合というように生活領域から見た分け方もあり,主として平面上の配置配合,立体的なものの配置配合というように,配置配合の形態の上からの分け方もあろうし,衣・食・住の観点からの分け方もあろうが,ここでは,便宜的な分け方をした。
2.配置配合の学習題材は,必ずしも各学年ごとに単なる題材を選ばなければならないというのではなく,類似の題材をくり返し学習させだんだん巧みな配置配合ができるようにするがよい。ただし,全学年を通じて,なるべくいろいろな配置配合の経験をさせることはたいせつである。 |
家庭生活に必要な配置配合 | 家庭生活を明るく豊かにするために必要な配置配合をする。
例 1.写真帳や絵はがきのはりこみ帳などのはりこみ
2.いろいろな茶のみ茶わんと茶たくとを集め,どれとどれとが調和するかについての研究
3.花びんと花との調和を考えていける。 これは流儀を問題にしないでいける程度でよい。
4.いろいろな花びん・花びんしき・花台を集め,その調和についての研究
5.机の上や室内の家具類の簡単な配置配合 |
第1学年の継続拡充
例 1.いろいろな食器類を集めどれとどれとが調和するかの研究
3.食器と食物との調和についての研究。たとえば,菓子ざらと菓子といったようなもの。
4.ふすまびょうぶなどに,絵や書などをはり交ぜるときの配置配合
|
第2学年の継続拡充
例 1.食卓に花を飾ったり食器類の配置をよくしたりする。
4.家の間取,庭と建築などの配置の設計
5.室内の装備 |
1.家庭生活に必要なものの配置配合は学校で実物によってその実習をすることのできないものが少なくない。そのようなものは,写真や図によって研究したり図上で計画を立てたり,模型を作ったりする。そして機会があればそれを家庭で実行させる。
2.配置配合に用いる材料は,なるべく生徒が家庭で日常使用しているような,ありふれたもので学習させ生活と離れないようなものにしなければならない。 |
服飾品の配置配合 | 着物・はき物・持ち物を,質・形・色の調和に注意して取り合わせる。
例 1.実物または図によって,着物とくつ下,くつの色の調和について研究する。
2.実物または図によって持ち物と,着物との調和について研究する。
3.どんな服装が通学・運動・よそゆきなどそのときどきの人の行動と調和するかの研究を実物または図についてくふうする。 |
第2学年の継続
例 1.第2学年の1・2・3の継続
2.どんな服飾がどんな人に調和するかの研究をする。 |
服飾品の配置配合については,必要もないのに他の生徒の服飾を批評して,一部の生徒に肩味の狭い思いをさせてもならないし,また服飾品の配合に気を配ることはぜいたくのように思わせてもならない。むしろちょっとした心づかいで,安価な物を用いても趣味の高い選択のできることを理解させるように指導することが肝要である。 | |
地域社会の生活に必要な配置配合 | 地域社会の環境の改善美化のために,いろいろな施設や道路・住宅その他のものをどのように配置配合するかの研究
例 1.小公園や,緑地帯,こども遊園地などの計画,できればその模型
2.部落環境の改善のための計画,できればその模型 |
地域社会の環境の改善・美化のための配置配合は,ただちに実施できるというようなものはほとんどないかもしれないが,図上計画や,模型によって,改善・美化についての関心を高めておくことは将来その実現が可能になったときに役にたつであろう。 |
4 工 作
1) 指 導 の 目 標
(2) 造形的な創造力を発展させる。
(3) 製作を通して,意図を表現する技能を発展させる。
(4) 表現を通して,日常用いられている工芸品を構成している材料の良否,構成方法の適否などを判断する力を発達させる。
(5) 工作によって得た表現力を,個人生活・家庭生活・学校生活・社会生活の改善や余暇を有効に過すために役だてるようにする。
(6) 技術的な職業への興味と適性を発展させる。
(2) 工作の学習では,なるべくいろいろな材料を使う経験をさせる。たとえば各種の木材・接着剤・緊結材料・各種針金・板金,その他生活に広く関係し,造形上にも便利な各種の材料を使うようにする。
(3) 材料・工具の面から,なるべく技術的抵抗を少くして,創造的の意図を容易に表現しうるようにする。木工を例にとっていえば,いつでも,素材からのみ作って,かんなかけなどのために多大の時間と労力とを費すというようなことをしないで,両面を削ってある板材や四面を削ってある角材・小割材や合板などを使うとか,治具を使ってのこぎりびきを容易にするようなことである。しかし,近頃市販されているような,ただ接着するだけや,くぎづけするだけで作品ができあがるようなものは,生徒の創造的意図を実現させるさまたげになるから,避けたがよい。
(4) 工作の指導においては,木工・金工・粘土工・手芸など,主として材料や工作法の上からの分類に従って教材組織をするやり方と,生活環境から適当な題材を選び,材料や工作法などをそれに結びつけて,教材組織をするやり方とがあるが,この両者はそれぞれ特色があって,いちがいにどちらがよいということはできない。したがって次に述べる教材を木工・金工というように分けてかいたのは,ただ教材の系統を示す便宜のためであって,このような教材組織がよいという意味ではないのであるから,各学校においては,実情に即した,適当な教材組織をして学習させなければならない。
(5) 工作の指導においては,まず基礎的な学習をさせてから,応用的な学習に進むやり方と,はじめから実際生活に即した作品を作らせ.その間に基礎的な練習を折り込んでいくやり方とがあるが,前者は技術熟練の上に幾分有効であり後者は生徒の興味を利用し,製作と生活とを結びつける上に長所がある。この点は指導計画を立てる場合の重要な留意点である。
(6) 製作にあたっては,なるべく設計図案をかいてから作らせるがよい。図案の表現は主として正投影図によるがよい。しかし,物によっては等角投影図や斜投影図などによるもよい。(設計図の表現については製図の項参照)
(7) 次に示した指導内容は参考として示したものであるから,これを参考にして,各学校に即したものにされたい。
学年および
項目備考 |
(第7学年) |
(第8学年) |
(第9学年) |
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木工 | 1.製作題材
土びんしき・花びんしき・えもんかけ・羽子板・ピンポンバット・手さげの口・花びん台・ブックエンド・ペンざら・ほうちょうさし・簡単な本立・木製がん具・文房具およびこれらに類するものの中から適当なものを選んで製作する。
2.材料 せん・とち・ぶな・かつら・ほう・まつ・すぎ・ひのき・その他の木材を用途と生徒の技術とに応じて選ぶ。 木くぎ・竹くぎ・鉄くぎ・木ねじその他の緊結材料 各種の接着材料 簡単な塗装用材料
3.工具 両刀のこぎり・糸のこぎり・まわしびきのこぎり・平かんな・各種ののみ・各種のきり・木づち・金づち・直角定木・直角木口台・けひき・曲尺,ねじまわし,各種の彫刻刀の類 簡単な治具類 |
1.製作題材
本立・箱・がくぶち・たな・簡単なテーブル・腰掛けその他これに類すものの中から,適当なものを選んで製作する。
2.材料 第1学年に準ずる。
3.工具 第1学年に準ずる。 |
1.制作題材は単に例として示したものであるから,生徒の事情や必要に応じ適当なものを選んで課するがよい。
2.第3学年で木工を課すこともよい。
3.使用材料はその土地にあるなるべくいろいろな材料を使う経験をさせるがよい。
4.細木・あき箱その他のものを用いるもよい。
5.材料の進歩に留意し,教育的価値に富む新しい材料を用いることに留意する。
6.数少い工具を活用するとともに,進歩した工具にも留意する。
7.手まわし機械,足ぶみ機械・動力機械なども,できれば設備して,使用になれさせるようにする。 |
|
金工 | 1.製作題材
針金の魚 焼き網・もち焼網・とり小屋・うさぎ小屋などに使う金網その他の簡単な針金製品 板金のじょうご・ちりとり・パレット・筆洗・簡単な箱や筒,その他の簡単な板金製品
各種の針金,たとえば,あえん引き鉄針金・銅・しんちゅうなどの針金の細太各種 ブリキ板・トタン板・銅板・しんちゅう板・アルミニウム板・半田ろう その他
3.工具 くいきり・ペンチ・ヤットコ・はし・打木・折台・曲げ棒・はんだごて・金切はさみ・押し切り・各種のやすり・たがね・各種のつち類 その他 |
1.製作題材
簡単な火造り,たとえば,きり・ねじまわし 簡単な小刀などの製作 簡単な板金の打出し,たとえば,ペン皿・さじなど。 簡単な板金の加工,たとえば,バックル・ブローチ・ペーパーナイフなど。 以上のほかに第2学年に準ずる針金・板金工 2.材料 第2学年に準じ,さらに丸鋼・角鋼などを加える。
3.工具 第2学年に準ずるもののほか,火造り用工具・金ひき糸のこぎり手万力などを加える。 |
針金・板金等の工作は,第1学年から課してもよい。ここには他の教材との関係上とらなかったのである。
かん詰のあきかんその他の廃品を用いるのもよい。
なるべく小数の工具をくふうして使うようにする。 |
|
粘土セメント工 | 1.製作題材
手びねりまたは巻き作りの器物,たとえばさら・茶わん・つぼ・花びんなど。 建築物の模型,簡単な浮きぼり,たとえば,植物の葉・花・動物・人物など,または建築装飾などに使う浮きぼりなど。 簡単な丸ぼり,たとえば野莱・くだもの・動物・人物など。 製品は焼成したり石こうとりしたりする。
2.材料 粘土・うわぐすり・石こうなど。
3.工具 粘土板・粘土べら・かきとり・粘土焼きがまその他。 |
1.製作題材
流し込み作りの器物,器具たとえば灰皿・ブックエンドなど 型作り器物・がんぐ たとえば人形・動物・灰皿・角形の菓子ざらなど。 簡単な浮ぼりや丸ぼり(第1学年の継続) 製品の焼成,製品の石こうとり
2.材料 第1学年に準ずる
3.工具 第1学年に準ずる。 |
1.製作題材
簡単なコンクリート工 たとえばコンクリートのブロック・植木鉢・流し・花壇のへり 簡単な道路舗装など。
2.材料 各種のセメント 砂・砂利・型わく用木材など。
3.工具 セメント 練り台・こて・シャベル・その他型わくを作るための木工具など。 |
1.粘土の仕事は焼き物その他の工芸的な仕事と,彫刻のような仕方との両方面があるが,この両方をやるがよい。
2.第3学年におけるセメント工はやめて,粘土を第3学年まで延長してやってもよい。 |
その他の工作 | 以上あげた工作のほか,生徒の希望,土地の状況等により,適当の学年に以下示すような工作を課すこともよい。
1.編み物 4.簡単な織り物 6.編組細工 8.その他,その地方に特有な工作など。 |
5 製 図
1) 指 導 の 目 標
(2) 製図によって形・空間等の観念を発達させる。
(3) 製図の技能を図案・工作・その他の表現に役だてる。
(4) 技術的な職業への興味と適性とを持っている者には,それを伸ばす機会を与える。
(2) 製図の表現は,表現する物により,また,場合によって,定木やコンパスをもってする表現と,手がきの表現との両方法を適宜採用する。
(3) 製図教材として,ここには相当多くのものをあげておいたが,この全部をやらなければならないというのではなく,必要に応じてこれらのものから適当なものを選んで学習させる。
学年および
項目備考 |
(第7学年) |
(第8学年) |
(第9学年) |
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線および平面形 | 多角形
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曲線形
|
線および平面形は,図表その他の表現で必要の起ったときに学習させる。
製図用具としては,ものさし・三角定木 鉛筆脚コンパス 分割器 製図板 丁形定木 分度器 からす口コンパスなどを適宜使用する。 |
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正投影図法による製図 | 第1角法による簡単な製図。たとえば,ブックエンド・本立・箱・その他工作で作るものの平面図・正面図・側面図など。 | 第1角法または第3角法による簡単な製図。たとえば,本立・テーブル・たな・その他工作で作るものや図案の表現に必要なものの平面図・正面図・側面図など。 | 第2学年に準じ,かくものの範囲を広め,やや程度を高くする。 | 1.製図に関する理解教材参照のこと。
2.平面図・正面図・側面図の関係的表現・線の用法・寸法の記入法などに注意して指導する。 |
展開図 | 工作における板金工に関連あるものの展開図 | 第2学年に準ずる。 | ||
等角投影図による製図 | 等角投影図による簡単な製図
主として直方体および直方体の組み合わせによって構成されているようなもの 図案の表現に必要なもの 図解のために必要なもの。 などの中から適当な題材を選んでかく。 |
等角投影図による製図第1学年の学習を継続し,簡単な曲面を持っているものに及ぶ。 | 第2学年の継続 | 1.等角投影図は正投影図の特殊の場合であるが,便宜別項目として扱ったのである。
2.等角図をかくには正三角形のけいの引いてある紙か,ひし形のけいの引いてある紙を用いると便利である。 |
斜投影図による製図 | 斜投影図による簡単な製図
主として直方体および直方体の組合せによって構成されているもの 図案の表現に必要なもの 図解のために必要なもの などの中から適当な題材を選び,立画面への斜投影図をかく。 |
斜投影図による製図
第1学年に継続し,簡単な曲面を持っているものに及ぶ。必要に応じて平画面への斜投影図かかせる。 |
第2学年の継続 | 1.正投影図によるか等角投影図によるか,斜投影図によるかは,かく物と,かく目的とによってきめなければならないことを理解する。
2.正面の形が重要な場合は立画面への斜投影図が便利であり,上面の形が重要な場合は平面図への斜投影が便利であることを理解させる。 |
地図図表
年表その他 |
各種の形式の図表
各種の形式の年表 地図 |
第1学年に準ずる。 | 第2学年に準ずる。 | 他教科の学習との関連をとる。 |
第2節 鑑 賞 教 材
1) 指 導 の 目 標
(2) 美的情景を発達させる。
(3) 生活に必要な工芸品を選択する能力を発達させる。
(4) すぐれた作品や技術を尊重する態度を養う。
(5) 自然美や,美術品の美を味わい楽しむ態度を養う。
(6) わが国の現在および過去の美術品のいくらかについて研究し,鑑賞してその時代の文化を理解する能力を養う。
(7) 外国の現在および過去の美術品のいくらかについて研究し,鑑賞して外国の文化を理解する能力を養う。
(8) 幾人かの美術家の業績について研究し,それが,その時代,その国の文化にどんな影響をおよぼしているかについての理解を発展させる。
(9) 美術の国民性に及ぼす影響についての理解を発展させる。
(10) 美術の保護についての関心を発展させる。
(2) 名作品の鑑賞については,そのよさがある程度わかるようになることのたいせつであることはいうまでもない。しかし,鑑賞はただそれだけではなく,日々の生活環境から美を発見し,それを鑑賞することは,名作品の鑑賞以上に必要であることを忘れてはならない。
(3) 鑑賞は作品に接したとき,そのよさを直接に心に感じることがたいせつで美術史的の知識や芸術学的の知識など必ずしも重要ではない。しかし,これからの知識も鑑賞力をつけるために間接的に役だつものであるから,だれでも常識として知っていなければならない程度のことは指導することの必要がある。
(4) 鑑賞指導の結果,どのくらいの鑑賞力がついたかを評価する方法は現在完全と思われるものはないであろうが,指導上この評価の問題は重要であるから,絶えずその研究を続けて,教育課程の組織や,指導の上に生かすことがたいせつである。
(5) 生徒に鑑賞力をつけるには,鑑賞する資料をできるだけ豊富に備えておくことがたいせつであって,鑑賞資料としては,名作品の複製や写真などをはじめとして,日用使用の工芸品の中にも,ポスター・レッテルなどや,その他環境にあるいろいろなものの中にも,見方により扱い方によって鑑賞資料に適するものがあるのであるから,常に注意し資料を集めることがたいせつである。
(6) 具体的な指導題材は,それぞれの学校の実情や,地域の実情に即して採用しなければならないが,参考までにそのだいたいを示せば次のようなものがある。
学年および
項目備考 |
(第7学年) |
(第8学年) |
(第9学年) |
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日用品の鑑賞 | 日常使用する工芸品の美的観点からの比較鑑賞
例 ○食器・注器・容器の類 ○学用品の類 ○服飾品 などの中から身辺にあるものを選ぶ。 |
第1学年の継続
例 第1学年に準ずるもののほか, ○学校の設備品 ○家具の類 ○その他 一品製作の工芸品と量産工芸品との普及性・大衆性・価格その他の点についてわかりやすい例について理解し鑑賞する。 |
第2学年に準じてその範囲を広めやや程度を高める。
第2学年に準じて,その範囲をひろめ,やや程度を高くする。 |
1.使用目的の類似しているものをいくつか集め,一対比較法・並立比較法・順位評価法などによってその美的価値を判断したりそれについて話し合ったりする。
2.日用品の鑑賞はその実用価値の理解と密接に関連をつけて扱うようにする。 3.同一のものでも見る方向や角度によって,美しく見えることもそうでないこともあることを知り,美しく見える方向を発見するようにさせることもたいせつである。 また服飾品などは室内で見る場合と屋外で見る場合,昼見る場合と夜見る場合とではずいぶん違って見えることが少なくないから,そのようなことも注意して見させるようにする。 |
郷土の美術品・工芸品・建築などの鑑賞 | 郷土にどんな美術品や工芸品があるか,またどんな美術家や工芸家がいたかについて,調査し,それらの美術品や工芸品を鑑賞する。 | 第1学年の継続
郷土の住宅その他の建築物についての調査と鑑賞
例 ○いろいろな屋根の形,屋根の形と材料との関係,できれば屋根の形と年代の関係の有無,屋根の形と気候風土との関係家屋の形と屋根の形と家屋の他の部分との調和 ○したみ板,壁などにはどんなものがあるか,それらと他の部分との調和 ○家屋と庭園,環境との調和 ○その他 |
郷土の過去現在にどんな工芸品が製作されているかの調査をし,その特質について研究し鑑賞し,工芸品の進歩改善について話合をする。
郷土の住宅その他の建築物の改善についての話合をする。
例 ○郷土の住宅と他の地方の住宅とを比較して,その長所短所について比較研究をする。 ○住宅その他の建築物の美化改善について,人人はどのような努力をしているかについての研究 ○どんな住宅が見て美しく住んで住みよいかについての話合い ○その他第2学年に準ずる事項 |
1.住宅その他の建築物についての学習は,理解と鑑賞とを一体として行うことが少なくない。
2.住宅については社会科・理科・職業家庭科などとの指導題材と関連をとる。 |
古今東西の美術品の鑑賞 | 幾人かの美術家の業績とその作品の鑑賞。
初めは生徒の理解しやすい作品を選んで鑑賞する。 初めは世の中によく知られている美術家の業績について調べる。
美術館・博物館・美術展覧会などの見学 |
第1学年の継続
だんだん知っている美術家の数を増し,鑑賞する作品をだんだんいろいろな方面をとり入れ美術の世界の広いことを知らせる。 東西・古今の絵画・彫刻・建築のいくつかについて比較鑑賞をしその特質を理解する。
第1学年の継続 |
第2学年の継続
古今東西のおもな美術家および作品におよぶ。
第2学年の継続
第2学年の継続 |
1.鑑賞は絵画・彫刻・建築・工芸におよぶ。
2.美術家および作品は,歴史的順序による必要はない。わかりやすいものからはいるようにする。 3.美術家および作品の数は必ずしも多いことは望まないが,だれでも知っているような美術家および作品についてはひととおり知らせたい。
なるべく特色の理解しやすい作品を選んで比較鑑賞させる。
効果のあるように,見学に対する準備や見学方法を研究する。 |
美術品の保護および取扱 | 美術品を鑑賞するときの態度・心得についての話合い | 第1学年の継続 | 美術品の保護施設 | 美術品の保護について,国家としてどのように考えているかを必要によって指導することもよい。 |
自然美の鑑賞 | 植物・動物・天然現象・風景などの美を発見しそれを味う。 | 第1学年の継続および郷土のよい風景を発見し,それの保存について話し合う。 | 第2学年の継続 | 鑑賞は人の作ったものの美を味わうことが,主となるが自然の美しさを見て楽しむことも適宜鑑賞の中に入れておくことにした。自然美の鑑賞は,描画の指導などと関連をとって行う。 |
注 美術品の鑑賞資料としては,文部省編,図画工作科鑑賞資料を利用するがよい。なおこれだけでは資料が不足であるから,適宜補充して鑑賞させる必要がある。次に文部省編鑑賞資料の目次を掲げておく。
図 画 工 作 科 鑑 賞 資 料
絵 画 編 第1集
図
番 |
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1
2 3 4 5 6 7 8 9 10 |
法隆寺壁画 阿弥陀浄土図
伝隆能筆 源氏物語絵巻 伝鳥羽僧正筆 鳥獣戯画 伝藤原隆信筆 源頼朝像 雪 舟 筆 夏冬山水図 尾形光琳筆 燕子花図 渡辺崋山筆 鷹見泉石像 狩野芳崖筆 悲母観音図 菱田春草筆 落 葉 高橋由一筆 鮭 図 |
同 同 全 図 同 一 隻 全 図 同 一 隻 全 図 |
平 安 同 鎌 倉 室 町 江 戸 同 明 治 同 同 |
同 同 同 同 同 同 同 同 同 |
徳川黎明会 高 山 寺 神 護 寺 国立博物館 根津美術館 国立博物館 東京芸術大学
東京芸術大学 |
絵 画 編 第2集
図
番 |
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1
2 3 4 5 6 7 8 9 10 |
作者不詳 信貴山縁起絵巻
同 阿彌陀聖衆来迎図 同 那 智 滝 図 伝長谷川等伯筆 桜 楓 図 宗達筆 風 神 雷 神 図 広重筆 東海道五十三次 池大雅筆 山 水 人 物 図 円山応挙筆 雪 松 図 浅井忠筆 収 穫 図 黒田清輝筆 てっぽうゆり |
全 図 同 屏風八面 二曲屏風 部 分 襖絵八面 一 隻 全 図 同 |
同 鎌 倉 桃 山 江 戸 同 同 同 明 治 同 |
同 同 同 同 同 同 同 同 同 |
大円院他十八箇院 根津美術館 智 積 院 建 仁 寺 国立博物館 遍照光院
東京学芸大学 同 |
絵 画 編 第3集
図
番 |
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1
2 3 4 5 6 7 8 9 10 |
伝顧愷之筆 女 子 箴 画 巻
正倉院 撥面,狩猟図・騎象鼓楽図 梁楷筆 雪 景 山 水 図 牧谿筆 観 音 猿 鶴 図 董其昌筆 山 水 図 ボッチチェルリ筆 マニフィカードのマドンナ レオナルド=ダ=ヴィンチ筆 モンナリーザ ドラクロア筆 聖 母 の 教 訓 セザンヌ筆 サンヴィクトワール山 ルノアール筆 小 女 |
同 全 図 同 二 面 全 図 同 同 同 同 |
唐 代 宋 代 同 明 代 15世紀 16世紀 19世紀 同 20世紀 |
同 同 同 中 国 イタリヤ 同 フランス 同 同 |
正 倉 院 国立博物館 大 徳 寺 国立博物館 フローレンス パ リ 国立博物館 |
彫 刻 編
図
番 |
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1
2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 |
法隆寺夢殿 観 音 菩 薩 像
中宮寺 彌 勒 菩 薩 像 薬師寺 薬 師 三 尊 像 東大寺戒壇院 持 国 天 像 興福寺 十 大 弟 子 像 観心寺 如 意 輪 観 音 像 東大寺開山堂 良 弁 僧 正 像 東大寺 金 剛 力 士 像 興福寺 天 燈 鬼・龍 燈 鬼 中国 大 同 の 石 仏 エジプト 書 記 の 像 ミロ島 ミ ロ の ヴ ィ ナ ス パルテノン神殿 パルテノンの彫刻二女神像 ギリシア スピナリオ (とげをぬく少年) ミケランジェロ モ ー ゼ 像 |
同 同 同 一 体 全 像 同 一 体 同 同 同 同 部 分 一 体 同 |
同 奈 良 同 同 平 安 同 鎌 倉 同 六 朝 第 五 王 朝 紀元前第2世紀 紀元前第5世紀 同 第 16 世 紀 |
同 同 同 同 同 同 同 同 中 国 エジプト ギリシア 同 同 イタリア |
中 宮 寺 薬 師 寺 東 大 寺 興 福 寺 観 心 寺 東 大 寺 同 興 福 寺 雲 岡 ルーブル博物館 同 英国博物館 ロ ー マ 同 |
建 築 編
図
番 |
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1
2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 |
法 隆 寺 金 堂
薬 師 寺 東 塔 唐 招 提 寺 金 堂 法 隆 寺 夢 殿 正 倉 院 平 等 院 鳳 凰 堂 東 大 寺 南 大 門 鹿 苑 寺 金 閣 姫 路 城 妙 喜 庵 待 庵 桂 離 宮 松 琴 亭 京 都 御 所 清 涼 殿 赤 坂 離 宮 パ ル テ ノン 神 殿 セント=ソフィア寺院 サン=ピエトロ寺院 ベルサイユ宮殿 タージ=マハール 天 壇 祈 年 殿 |
同 同 同 同 全 景 同 同 同 同 内 外 部 全 景 同 同 同 正面全景 全景部分 全 景 同 |
奈 良 同 同 同 平 安 鎌 倉 室 町 桃 山 同 江 戸 同 明 治 紀元前第5世紀 紀元第6世紀 紀元第17世紀 同 同 紀元第15世紀 |
同 同 同 同 日 本 同 同 同 同 同 同 同 ギリシア トルコ イタリア フランス インド 中 国 |
同 同 同 同 京 都 府 奈 良 県 京 都 府 兵 庫 県 京 都 府 同 同 東 京 都 ア テ ネ コンスタンティノーブル ロ ー マ ベルサイユ アグラの東部 北 京 |
第3節 理 解 教 材
1) 指 導 の 目 標
(2) 表現に必要な材料,用具および表現方法について理解し,それを表現活動に役だてる。
(3) 対称・均衡・リズム・変化・統一・調和・強調・適用など美の構成要素を理解し,それを表現および鑑賞に役だてる。
(4) 日常使用する物の製作材料の良否,構成方法の適否を判断し,より価の高いものを選択する能力を発達させる。
(5) 美術品や工芸品の用と美との関係を理解し,これを造形品を選択する能力を発達させる上に役だてる。
(6) 人間の造形活動および造形技術の発達が,いかに生活を豊かにする上に役だっているかについての理解を発展させる。
(7) わが国の現在および過去の美術品・工芸品の特質および価値についての理解を発展させる。
(8) 外国の現在および過去の美術品・工芸品の特質および価値について理解し,外国文化を理解する能力を発達させる。
(9) 一品製作の工芸品と,量産工芸品との異同について理解し,またそれが大衆の生活にどのような関係があるかについての理解を発展させる。
(2) 理解は,表現活動や鑑賞活動にはいる前に必要なこともあり,また表現活動や鑑賞活動の結果,より高い理解に到達することもあって,理解と表現および鑑賞は,お互に有機的関係をとって指導を進めるようにじゅうぶん注意しなければならない。
(3) 理解教材の中には,表現教材や鑑賞教材と直接には関係を持っていないものもある。このような教材はとかく忘れられがちだが,図画工作教育の目標上から見て重要である事項は,たとえ表現や鑑賞に直接的な関連がなくとも,じゅうぶん指導をしなければならない。
(4) 理解教材の選択や組織は,表現教材・鑑賞教材・技術熟練の教材との関連において,地域の実情や生徒の興味や能力に応じてなされなければならないが,一つの参考として次に例をあげる。
1 表現に即した理解教材
(ここには表現に直接必要な理解教材のおもなものをあげる)
学年および
項目備考 |
(第7学年) |
(第8学年) |
(第9学年) |
|
描画に関する理解 | 1.描画に用いる各種の用具・材料の特質および良否,使用法についての理解
2.物の形は見る方向・位置・遠近によって変化して見えることの理解,およびその表現方法の理解 3.物の明暗・陰影についての理解およびその表現方法の理解
4.描画・描図において色彩を表現する方法の理解,たとえば絵の具を混合して望みの色を出す方法の理解や,周囲の色と対比関係によって望みの感じの色を出す方法の理解など。 5.描画によって物の質感や量感を出すことの初歩的な理解
6.構図における面積の分割,形・色・明暗などの変化・統一・調和などに関する理解
7.表現様式に関する,ある程度の理解 表現の様式には東洋的なもの,西洋的なもの,写実的なもの,抽象的なものなどいろいろあることおよびそのおもなものについての理解 |
1.同左の理解の程度を高め範囲を広くする。
2.同左の程度を高める。
3.同左の程度を高める。
4.同左の程度を高める。
5.同左をやや程度を高める。
6.同左の程度を高める。
7.同左の程度を高める。 |
1.同左
6.さらに同左の程度を高める。
7.さらに同左の程度を高める。 |
用具・材料についてはなるべく多種類のものについて理解させる。
用具・材料についてはなるべく多種類のものについて理解させる。
絵具の混合については色彩に関する理科教材と関連をとる。
1から5までの各項とも各学校の実情,生徒の能力に応じて各学年に適当する段階を設けて指導する。 構図についての理解は図案その他の美の要素に関する理科教材との関連をとる。 |
図案に関連ある理解 | 1.図案の資料に関する理解
2.図案の構成に関する理解。たとえば対称・均衡,従属関係による変化,対立関係による変化・リズム・統一・調和といったようなことの理解,また図案上における用と美との関係についての理解その他
3.図案構成方法に関する理解。主として平面図案構成方法についての理解
4.図案の表現方法に関する理解 |
1.同左
2.同左の程度を高める。
3.同左 主として平面図案および立体図案構成方法についての理解 4.同左 |
1.同左
2.さらに同左の程度を高める。
主として立体図案構成方法についての理解 4.同左 |
美の構成要素に関する理解は描画・工作・配置配合などすべての造形に共通するものであるから,他の教材との関連をじゅうぶんにとる。 図案構成に関する理解はいたずらに抽象的,理論的に走らないで,実際の物に即して理解することが望ましい。 |
配置配合に関連する理解 | 1.配置配合の原理に関する理解
これは図案構成のと同様のものであるが,その要素の表われ方には多少の相違がある。 |
1.同左 | 1.同左 | 理解は抽象的,理論的に流れないようにし,実際のものに即して理解する。 |
工作に関連ある理解 | 1.木工材料に関する理解
例
(2) 主要木材の個々の特質および用途についての理解 (3) 木材を緊結・接着する材料についての理解 (4) 木材塗装材料についての理解
例
(2) 両刄のこぎりの構造および使用法 (3) 各種のみの構造および使用法 (4) 規く類の構造および使用法 (5) その他の木工具の構造および使用法 3.木工工作法の理解 例
(2) 柱の削り方 (3) 板の接合 (4) 柱の接合 (5) 塗装方法 (6) その他
7.簡単な窯芸および彫塑用の材料・工具・製作方法に関する理解
9.以上あげた以外のいろいろな工作に必要な,材料・用具,工作法についての理解 |
1.同左
2.同左
3.同左
4.金工材料に関する理解 例 各種の針金・板金・その他の補助材料の特質についての理解
5.主要な金工用具についての理解
(2) 板金工用具 6.金工工作法についての理解 例
(2) 板金の切り方,曲げ方・接合法その他 7.同左の継続
9.同左 |
4.同左 例 各種の板金および鋼材その他の補助的材料の特質についての理解
5.同左 簡単な火造り用工具を加える。
6.同左
(2) 簡単な火造り方法および仕上げ方法,その他
8.コンクリート工の材料・用具・工作法についての理解
9.同左 |
製作実習に即し,適宜各学年に適当する段階を設けて指導する。
工具の構造および使用法に関連して工具の修理,手入れ法やと石についても理解させる。
同上
土地の情況,生徒の希望によって選んだ編みもの・刺しゅう・皮細工・染織・編組細工・製本・その他 |
製図に関する理解 | 1.製図用具についての理解
例 製図用具の良否の理解,使用法の理解など。 2.製図における線の用法に関する理解 3.多角形の性質かき方についての理解,たとえば正三角形・正方形・正五角形・正六角形・正八角形など。
4.第1角法による正投影図についての理解
5.等角投影図のかき方についての理解 6.斜投影図のかき方についての理解
8.図表・年表・地図などのかき方についての理解 |
2.同左
3.おもな曲線形・うず巻き線などの性質,かき方についての理解,たとえば,だ円・弧成だ円・弧成うず巻き線など。 4.同左および第3角法による正投影図についての理解 5.同左の理解の程度を高める。 6.同左の理解の程度を高める。 7.展開図についての理解
8.同左 |
4.さらに同左の程度を高める。 5.さらに同左の程度を高める。 6.さらに同左の理解の程度を高める。 7.同左
8.同左 |
製図の指導にあたっては,図案・工作などの実習と関連をとり,図法をただ理論的にのみ教えこまないように注意し,実際生活に結びついた指導をする。 |
2.その他の理解教材
理解教材の中には,表現教材や鑑賞教材との関連は間接的ではあるが,図画工作科の目標上からみて重要な理科教材がなお相当ある。それをまとめてここにあげる。
学年および
項目備考 |
(第7学年) |
(第8学年) |
(第9学年) |
|
色彩に関する理解 | 1.色には明度・色相・彩度の三つの要素のあることの理解
2.実験をとおして色料混合について理解する。 絵の具その他の色料を混合して新しい色を作るときは混合した色の平均明度より暗くなること(減算混合) 彩度も一般に低くなること,特に色相距離の遠い場合は著しく彩度が低くなることなどを理解する(この項は描画その他と密接な関連をとる。)
色相距離の遠近による配色効果についての理解 明度距離の遠近による配色効果についての理脇 彩度距離による配色効果についての理解 5.色の対比および明視に関する理解 |
1.同左の理解をいっそう深め,色を合理的系統的に並べると一つの立体(色立体)となることの理解
2.色光の混合,回転板による色の混合,色の並置混合などについての理解。色光の混合の場合は,もとの色の明度より高くなること(加算混合)回転混合や並置混合の場合はもとの色の平均明度となること(中間混合)などの理解,減算混合と加算混合および中間混合では混合によってできた色の明度にちがいができるばかりでなく,色相の上にも差異のあることを理解する。
3.進出色・後退色・膨張色・収縮色に関する理解
4.同左の拡充
5.同左 |
5.同左 |
1.なるべく生徒各自に実験させて理解させるようにすること。
2.色彩に関する理解は図案・描画などとの関連を密接にする。 特に配色に関する理解は図案との関連をじゅうぶんにとる。 |
日用品の選択使用に関する理解 | 1.日用品の形体構造などがよりよくその使用目的に適しているか否かの理解
例 食器・注器・容器類 学用品の類,服飾品その他身辺にある適当なものを選び,その製作材料の良否,製作方法の適否を比較検討して理解する。
2.日常使用する物品の用と美との関係についての理解 例
これは実用目的からきているものか,美しく見せるためか,軸は多くは美しい塗料が塗ってあるがこれは実用上からか,美感の上からかといったようなことを理解する。 (2) 着物は寒暑を防ぎ,また人の品位を保つ必要から選択されるものであるが,着物の色柄,各部の形状などはこれらの実用目的からきたものであるか,また美意識を満足させるためのものであるかなどについて理解する。 (3) その他これに類する問題について,用と美との関係について理解する。 3.物の形は何によってきまるかの理解 物の形はその物の備うべき実用目的の上からきまることを理解 物の形は使用材料の上からきまることの理解 たとえば同じ目的をもつ火ばちでも木製・金属製・陶器製などの別々によって形の上にも差のできてくることなどの理解 物の形は製作方法の進歩によって変ることの理解。 たとえば一品製作品と量産品との形の上の違いについての理解のようなもの 以上身辺にある具体的な物について理解させる。
4.日用品の手入れ保存に関する理解 例
(2) 学用品の手入れ,保存についての理解
(3) 簡単な木製品の手入れ・保存・修理法などに関する理解 (4) 普通のは物(工作用は物以外)の手入れ・保存・研磨法などの理解 その他これらに類する事項 |
1.同左
例 第1学年に準ずるもののほか学校の設備品,家具の類その他製作材料の良否,製作方法の適否を比較検討し使用者の立場に立って親切に作られているか否かについて理解する。
2.同左
例
3.同左の継続拡充
4.同左
例
(2) 身辺にある金属製品の手入れ・保存,簡単な修理に関する理解その他これらに類するものの理解 |
1.同左の程度を高め理解する範囲を広くする。
2.同左
例 交通機関機械その他身辺にあるものにつき,用と美との関係を理解する。
3.同左の継続拡充
4.同左 例 第2学年に準ずる。 |
1.日用品の良否に関する理解は,一面においては工作の実習と関連し,他面鑑賞と一体不離のものとして扱う。
2.1,2,3項は互に関連を保って指導する。 |
人類の過去および現在の造形活動の理解 |
2.人類造形活動の進歩が人間の生活にどんな影響を与えたかについての理解 |
1.わが国の過去・現在における造形文化の理解。いくつかの実例についてわが国の過去および現在の造形品を研究し,その時代の文化について理解する。
2.同左 |
1.外国の過去現在における造形文化の理解。いくつかの実例について外国の過去および現在の造形品を研究しその時代の文化について理解する。
2.同左 |
鑑賞教材との関連をとる。
この教材は第1学年から学習させてもよい。 |
第4節 技 能 熟 練 の 教 材
技能という語の解釈は,人によって,多少の違いがあって,一定していないが,ここでは技術を身につけ,それを使いこなす能力といったほどの意味で用いる。
1) 指 導 目 標
(2) 技術の基礎としての触覚・筋覚を鋭敏にし,それを表現および造形品の使用に役だてる能力を養う。
(3) だれにでも必要な技術を身につけ,それを個人完成のためや社会生活を営むために活用する能力を養う。
(4) 技術的な職業への興味と適性を持っているものの個性をじゅうぶんに伸ばすようにする。
(5) 技術の習得をとおして,技術と創造性との関係,技術と生活との関係,技術と経済との関係を身をもって認識させる。
(2) 技術は一度身につければ容易に離れないものであるが,一般に技術を身につけるためにはくり返しくり返し練習しなければならないものであるから,同じ技術をたびたび練習する機会を与えるよう,指導上注意しなければならない。
(3) 個々の技術は他の技術と結びつき,総合されて実際の役にたつことが多いのであるから,技能の学習においては一つ一つの技術を習得するとともに,他の技術と総合された技術としての習得を忘れてはならない。
(4) 先人によって築かれた伝統的技術を重んずるとともに,技術は常に創造され成長するものであることに留意し,各自の個性に即した技術を創造する態度を忘れないように指導する。
(5) 次に述べる各指導内容は,だれでもこのくらいは身につけておけば日常生活にも便利であり,また表現の裏づけになると思われるものを集めたのであるが,このほかにもまだいろいろあるであろうから,適宜つけたして指導されたい。
学年および
項目備考 |
(第7学年) |
(第8学年) |
(第9学年) |
|
図をかくのに必要な技術 | 1.定木やコンパスなどを使って意図を発表するある程度の技術
たとえば,定木で直線や平行線をかく技術 定木で直角その他の角度をかく技術 ものさしで寸法を測定したり,寸法を紙の上に正確に移す技術 定木やコンパスなどを使って必要な図形をかいたり,図表をかいたりする技術,簡単な工作図をかく技術など。
2.手がきで工作図をかく技術 たとえば,簡単な形や構造の物体の工作図を,方眼紙を利用して手がきでかく技術
3.説明的な図をかく技術 たとえば,植物・動物などを精密に説明的にかくある程度の技術 地図をかくある程度の技術 |
1.同左に準じ図の正確度や美しさを増すようにする。たとえば模様をかいたり工作図をかいたり,図表などをかくときの必要に応じ,定木・コンパスなどをより有効に使う技術など。
2.同左の程度をやや高める。たとえば描線の数のやや多い物体や曲線・曲面を有する物体,直角以外の角度に交わる部分のある物体などの工作図を,方眼紙を利用してかく技術
3.同左 たとえば植物・動物・器具・機構的なものなどを精密に説明的にかく技術 地図・案内図などをかく技術 物の構造生産工程といったようなものを単化してかく技術 |
1.同左をさらに熟練する。
例は第2学年に準ずる。
2.さらに同左の程度を高める。 たとえば描線の数のさらに多い物体や,曲線・曲面の多い物体などの工作図を方眼紙を利用してかく技術。 簡単な図形のものは白紙の上にもかける技術など。
3.同左 例 第2学年に準ずる。 |
定木・コンパスを使ってかく図は,正確さを要求されるものであるが,ある程度の誤差は認めなければならない。その誤差の程度はかく図の性質や大きさなどによって異なるものであるから,一概にいうことはできないが目で見ただけでは誤差のわからない程度にはかかせたい。
工作図は,手がきの図でじゅうぶんに間に合うことが少なくないのであるから,手数を省く上からも,手がるに図をかく習慣をつける上からも,手がきの図をかくことを奨励したい。
説明的な図とは,標本的な精密描写を必要とする場合と,その逆に複雑なものを単純化してかく場合もあり,その両者の技術が必要であるが,その程度は,生徒の学習上および将来の生活上必要な限界を考えて定めなければならない。 |
描画および図案の表現に必要な技術 | 1.いろいろな材料を使って意図の表現に必要な線のかけるある程度の技術
2.鉛筆で望みの調子をかけるある程度の技術
3.顔料の混合および塗り重ねによって,望みの色を出せるある程度の技術
4.顔料を平に塗ったり,ぼかしたりするある程度の技術 |
1.同左の程度を高める。
2.同左の程度をやや高める。 3.同左の程度をやや高める。
4.同左の程度を高める。 |
1.同左の程度をさらに高める。
2.同左の程度をさらに高める。 3.同左の程度をさらに高める。
4.同左の程度をさらに高める。 |
描画・図案,説明的な図の表現と一体のものとして指導する。
描画の表現と一体のものとして指導する。 色彩に関する理解や,描画・図案の表現と一体のものとして指導する。
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工作に必要な技術 | 1.糸・ひも・なわなどを結ぶ簡単な技術
2.いろいろな材料を切削するある程度の技術 たとえば,小刀やはさみで紙を切断する技術 のこぎりで竹や木をいくらかの誤差で所定の寸法に切る技術 小刀で竹や木を所定の形に削るある程度の技術。 かんなで小さい板をけずるある程度の技術など。
3.いろいろなものを接合する技術 たとえば,のりで紙を接合する技術 くぎで木材を接合する技術 にかわ,その他の接着剤で木材を接合する技術など。
4.各種の材料を用いて生活上有用なものを成形する技術 たとえば,粘土で簡単な物を作る技術 紙で生活上必要なものを作る技術 竹や木材で簡単な物を組み立てる技術など。 |
1.同左およびひも・なわなどで物をしばる技術
たとえば,のこぎりで木をより正確に切る技術 かんなや小刀で木を前学年よりも誤差を少なく削る技術 針金や板金を所定の長さや形に切る技術など。
3.同左 たとえば,くぎ・にかわその他の接着剤で木材を接合する。第1学年よりやや程度の高い技術 針金を接合する技術 板金をはんだろうで接合したり,からくって,接合する簡単な技術など。
4.同左 たとえば,第1学年よりやや進んだ程度において,粘土で造形する技術 第1学年よりやや進んだ程度において,木や竹で生活に必要なものを作る技術 針金や板金で生活上有用なものを組みたてる技術など。 |
1.同左
たとえば,板金をより正確に切る技術 金属をたがねや,やすりで切断する初歩的な技術 やすりで金属をけずる技術など。
3.同左 前学年よりやや程度を高める。
4.同左 たとえば,セメントで生活上有用なものを作る初歩的な技術 諸種の金属その他の材料で生活上有用なものを作る初歩的な技術 諸種の金属その他の材料で生活上必要なものを作る技術など。 |
これは工作教材として単独にとり上げることは少ないであろうが,どこかでこれらの技術を習得させる必要がある。
この種の技術はだれにでも必要な程度のことを,工作の表現教材と一体のものとして指導する。
この種の技術はだれにでも必要な程度のことを,工作の表現教材と一体のものとして指導する。
この種の技術は非常に範囲が広く,どこに限界をおくかが問題であるが,地域社会の実情にあわせて必要の限界を求めなければならない。指導は主として表現教材との関連において行う。 |
生活の美化改善のための技術 | 1.生活上の必要なものの手入れおよびちょっとした修理の技術
たとえば金属製の工作に使う工具や家庭用品などに油をひいてさびないように保持したり刃物をといでいつでも切れるようにしておくような技術 紙製品,木竹製品などのちょっとした修理技術
2.日常使用する器物・器具・服飾品などを巧みに使用するいくらかの技術 主として図案や配置配合の学習と関連のある技術 |
1.同左
たとえば第1学年に準ずるもののほか金属製品の手入れやちょっとした修理の技術 各種の塗装品の修理技術など。
2.同左の程度をやや高め,範囲を広くする。 |
1.同左
たとえば第2学年に準ずるもののほか,いろいろな家具建具などの手入れや小修理の技術家屋のちょっとした修理や塗装技術など。
2.同左の程度をさらに高め範囲をさらに広くする。 |
かかる技術は大いに必要である。しかし現在の学校における学習形態では,指導上いろいろな困難を伴うであろうが,努めて技術修得の機会を見つけて指導されたい。
この技術もまたきわめて重要であるが,これも現在の学校においては指導上種々の困難を伴うであろうが,努めてその機会をとらえて学習させる必要がある。 なおこの教材は配置配合の表現教材と一体のものとして指導する。 |