1 建築過程の各学年において到達すべき具体的な目標
次に掲げる目擦は,将来建築工事の現場に働く中堅技術者の養成を目的とした場合の例である。
2.簡単な図面を正しく読めること。
3.基本用器画法に習熟すること。
4.簡単な素描ができること。
5.簡単な工作物の実測製図ができること。
6.建築物の簡単な模写と設計ができること。
7.木工用手工具と関係用具の名称,正しい使用法を理解し,板削り,柄孔彫り,のこぎり使いなどの基本作業が確実にできること。
8.簡単なものの曲尺使いができること。
9.普通動力木工機械類の操作が正しくできること。
10.建築用各種材料の性質を理解し,その判別と正しい使用が会得できること。
11.普通に行われる地業と基礎の種類を理解し,誤った工法を指摘することができること。
12.普通木工建築物の骨組を理解し,必要部分を図示することができること。
13.仕上仕事の順序工法を正しく知り,用材を選択することができること。
14.木造建物の構法の比較研究ができること。
15.れんが造り,石造り,の構法を理解し,簡易な積み方ができること。
16.労作をいとわぬ堅実な態度を養うこと。
17.機械器具を愛護する態度を養うこと。
2.青写真をつくることができること。
3.陰影と透視図法を理解し,簡単な透視図がかけること。
4.建築物の模写と設計ができること。
5.鉄骨構造の模写と設計ができること。
6.びょう打の検査と簡易な製作原寸図の検査ができること。
7.基礎用仮わく造,仮わくすえができること。
8.土台切込みと土台すえができること。
9.普通軸部まわり,小屋まわり,床(ゆか)組の墨出し,切組ができること。
10.小建物の建方ができること。
11.簡易な造作物のこしらえと取付けができること。
12.材料に生する外力と応力との関係を知り,簡易な梁(はり)・床・柱の大きさを定めることができること。
13.普通架(か)構物の解法を理解し,小屋組等の設計ができること。
14.鉄骨構造の理論を理解し,簡単な梁・柱・基礎まわりの設計ができること。
15.建物の示す美的表現の良否が差別できること。
16.土地の気候に応する建物を計画することができること。
17.採光・換気・照明・音響について正しい計画を定めることができること。
18.各室の機能と各室間の有機的関係について理解し,これに基づく平面計画をたてることができること。
19.建築設備の概要を理解し,これを設計に採り入れることができること。
2.巻尺などを用いて建築敷地の測量ができること。
3.平板などを用いて敷地周囲の見取図等を作製することができること。
4.レベルを用いて土地その他の高低測量ができること。
5.トランシットを用いて敷地その他の精密測量ができること。
6.測量器械の水準器の検査・調整ができること。
7.セメント規格に定められた品質の試験ができること。
8.砂と砂利の良否を見分けることができること。
9.コンクリート供試体の製作と圧縮試験機の操作ができること。
10.スランプ試験器とフロー試験器の操作によって,コンクリ一トの適当水量を定めることができること。
11.鉄筋コンクリート構造の原理を理解し,簡単な梁・床版・壁体・柱・基礎の設計ができること。
12.鉄筋コンクリート用仮わくの製作・取付けと打ち方の指導ができること。
13.配筋検査ができること。
14.工事現場の経営・管理・処理事務の大要を理解し,簡易な請負契約書・注文書・請書・工事日程表・仕様書・見積書を作ることができること。
15.普通施工用機械類の性能を知り,正常の状態で管理することができること。
16.普通施工用電動機の起動・停止,および電流計・電圧計・電力計の使用が正しくできること。
17.建築法規制定の趣旨を理解し,設計に際しては法規に適した設計図書を作製することができること。
18.住宅・小商店程度の工事関係の願・申請・届書の作製ができること。
19.作業の能率・資材の節約に留意するとともに,工場の災害防止について,日常に最大の注意を払う態度を養うこと。
20.工業技術者たるの自覚を持ち,卒先して工事作業員を指導しうること。
2 建築課程の各科目の内容
1.建築実習
2)木造住宅の部分模写 3)木造工作物の実測製図 4)木造矩計 5)素 描 6)木造住宅の模写と設計 12)特殊製図 13)工具と機械 14)基本木工作業 15)曲尺使い 16)れんがと石工事 17)左官工事 18)基礎工事 19)切組建て方 20)造作工事
2)粘土製品 3)ガ ラ ス 4)塗 料
2)静定構造 3)材料の応力
2)地業と基礎 3)木造骨組 4)木造仕上 5)屋 根
2)気象と室内気候 3)日照・日射・採光 4)照 明 9)建築行政 10)建築と都市
2)工事計画 3)機 械 4)電 力 |
7)陰影と透硯図法 8)鉄骨構造物の模写と設計 9)意匠設計 10)建築物の設計 11)鉄筋コンクリ一ト溝造の模写と設計 21)雑 工 事 22)基本測量 23)平板測量 24)レベル測量 25)トランシット測量 26)セメント試験 27)砂と砂利の試験 28)モルタル・コンクリ一トの試験
5)石 材 6)左官材料 7)雑 材 料
4)不静定構造 5)部材の設計
6)造 作 7)れんが造・石造 8)左官工事 9)鉄筋構造 10)鉄筋コンクリ一ト構造
5)換 気 6)音 響 7)平面計画 8)設 備 11)建築に対する諸制限 12)工事手続
5)施工機械 6)仕様と積算 7)現場処理事務 |
3 建築課程学習指導計画の試案
(1)教科課程の一例
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第1学年 | 第2学年 | 第3学年 |
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時数280
単位8
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建 築 実 習 時数140
単位4
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構 造 時数70
単位8 |
材 料 時数70
単位2 |
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時数 | % |
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時数 | 木造実習 | 時数 | 時数 | 時数 | |||||||||||||
1 | 建築の大要 | 24 | 9 | 基本製図 | 6 | 建造物調査 | 6 | 構造概説 | 6 | 建築一般と材料概説 | 12 | ||||||||||
2 | 地業と基礎 | 24 | 9 | 木造住宅基礎模写 | 6 | 木造工事調査 | 6 | 基 礎 | 6 | ||||||||||||
3 | 木造骨組 | 56 | 20 | 木造短計 | 24 | 木工実習 | 40 | 木造軸組 | 14 | 木 材 | 24 | ||||||||||
4 | 木造仕上 | 40 | 14 | 木造仕上 | 10 | ||||||||||||||||
5 | 屋 根 | 40 | 14 | 木造屋根模写 | 10 | 屋 根 | 10 | 粘土製品 | 10 | ||||||||||||
6 | 造 作 | 24 | 9 | 木造住宅模写と設計 | 30 | 造 作 | 6 | ガラス・塗料 | 6 | ||||||||||||
7 | れんがと石工 | 32 | 11 | れんが積・石積 | 8 | れんが・石造 | 8 | 石 材 | 8 | ||||||||||||
8 | 左官工事 | 16 | 6 | 左官工事 | 4 | 左官工事 | 4 | 左官材料 | 4 | ||||||||||||
9 | 木造住宅設計 | 24 | 8 | 雑工事 | 6 | 雑材料 | 6 | ||||||||||||||
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時数490
単位14
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建 築 実 習 時数175
単位5
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構 造 時数70
単位2 |
応用力学 時数140
単位4 |
計 画 時数105
単位3 |
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時数 | % |
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時数 | 工事実習 | 時数 | 時数 | 時数 | 時数 | ||||||||||||
10 | 準 備 | 56 | 12 | 陰影と透視図 | 20 | 鉄と非鉄金属 | 8 | 荷重と力 | 16 | 建築の歴史 | 21 | ||||||||||
11 | 基礎工事 | 42 | 9 | 木造住宅設計 | 27 | 基礎工事実習 | 6 | 鉄骨構造基礎 | 6 | 建築物に働く力 | 12 | ||||||||||
12 | 軸 組 | 84 | 17 | 木造墨出し | 12 | 鉄骨構造軸組と仕上 | 24 | 静定構造 | 24 | 計画の基本 | 63 | ||||||||||
13 | 建て方 | 84 | 17 | 鉄骨構造模写 | 18 | 建方実習 | 12 | 材料の応力 | 24 | ||||||||||||
14 | 造作工事 | 42 | 8 | 建 具 | 9 | 造作実習 | 6 | 鉄骨構造計算 | 18 | 不静定構造 | 12 | ||||||||||
15 | 構造計算 | 84 | 17 | 鉄骨建築設計 | 51 | 部末の設計 | 24 | ||||||||||||||
16 | 鉄骨建築設計 | 98 | 20 | 鉄骨工事実習 | 14 | 構造設計 | 42 | 設 備 | 21 | ||||||||||||
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時数595
単位17
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建 築 実 習 時数315
単位9
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構 造 時数70
単位2 |
計 画 時数35
単位1 |
建 築 単位105
施 工 時数3 |
機械一般 時数70
単位2 |
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時数 | % |
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時数 |
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時数 | 材料試験 | 時数 | 時数 | 時数 | 時数 | 時数 | |||||||||
17 | 準 備 | 51 | 9 | 意匠設計 | 18 | 基本測量 | 3 | 試験法 | 6 | セメント | 6 | 建築行政 | 3 | 建築現場 | 9 | 機械の要素 | 6 | ||||
18 | 工事計画 | 85 | 14 | 商店設計 | 30 | 平板測量 | 15 | 鉄筋コンクリート構造 | 38 | 建築と都市 | 5 | 工事計画 | 15 | 電 力 | 10 | ||||||
19 | 鉄筋コンクリート | 153 | 26 | 鉄筋コンクリート構造模写 | 54 | セメントコンクリート試験 | 27 | 建築と制限 | 15 | 仕様と積算 | 27 | 原動機と機構 | 18 | ||||||||
20 | 工事用機械 | 85 | 14 | 機械と木工製図 | 30 | レベル測量 | 15 | 施工機械 | 25 | ||||||||||||
21 | 現場処理事務 | 102 | 17 | 工事用図面 | 36 | トランシット測量 | 18 | 鉄筋コンクリート構造設計 | 22 | 工事手続 | 6 | 現場処理事務 | 30 | ||||||||
22 | 鉄筋コンクリート建築設計 | 119 | 20 | 鉄筋コンクリート建築設計 | 63 | 書類作製 | 30 | ||||||||||||||
合 計 時数1365
単位39
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時数630
単位18
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時数210
単位6
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70
2
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140
4
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時数140
単位4
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時数105
単位3
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時数70
単位2
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A.単元の展開
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1.基礎準備工事 | 1.準備工事一般
2.材料一般 3.地ならし 4.なわ張り 5.水盛り,遺方 6.基礎製図 |
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2.地 盤 | 1.土の種類と性質
2.地盤の性状と強さ 3.根切り・山留め 4.地業 |
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3.基礎工事 | 1.基礎材料
2.基礎の種類 3.まとめ |
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合 計 24 |
Ⅰ.目 標
(2)地盤の強さの概念を得,それに応ずる地業の計画ができること。
(3)地業の目的とその方法がかかること。
(4)根切・山留の目的と方法がわかること。
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1.土の種類と性質の実験
(1)各種の土の比較 (2)土の水分試験 (3)土の粘着力の実験 (4)息角の実験 2.地盤の性伏と強さの調査 (1)地盤組織の調査 (2)地耐力の実験と調査 |
1.土の種類と性質
(1)土の外見 (2)土の粒 (3)土の化学的性質 (4)土の鉱物学的性質 (5)土の水分 (6)土の粘着力と息角 2.地盤の性伏 (1)地盤の形成 (2)地盤の種類 (3)地耐力 3.根切・山留 (1)根切の意義 (2)山留の目的 (3)山留方法 (4)埋もどし 4.地業 (1)地業の意義と目的 (2)地業の方法 |
1.地殻の形成
2.土の凍結 3.郷土の地盤 |
Ⅲ.学習指導細案
時間配当
(2時間) |
作業─木造実習1(地盤2時間中前半)
知識─材 料1. |
Ⅰ.目 標
(2)土の物理的性質の実験操作ができること。
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1)土質標本
2)計量器(天秤) 3)ビーカ 4)加熱鍋 5)熱源 6)木板(15cm×15cm×1cmぐらい) 7)シャべル 8)角度測定器(直角定規と物指) 9)型わく(図の様なもの) 10)加圧機(耐圧試験機等) 11)漏 斗 |
1)土質見本(生徒採取)
2)砂
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実験1.水分
1)ビーカを秤量する(W0) 2)ビーカに土質見本を入れる。 3)秤量する。 (W1) 4)土質見本を加熱鍋に入れる。 5)加熱乾燥する─よくかき まわす,また成分の燃焼による減量のないよう加減する。 実験2.粘着力 1)土質見本約30ccをとる。 2)これを木板で圧縮する。 3)各種土質について比較する。 実験3.息角 1)シャべルで砂をすくい,漏斗を通す。 2)漏斗からの砂を円錐(すい)形に堆積させる。 3)角度測定器で傾斜角(息角)を測る。─側角は数カ所で行い平均する。 |
6)再びビーカに入れ秤量する。(W2) 7)水分の計算をする。 W=W1—W2/W2—W0
実験4.息角 1)土を型わくにつめる─各種の水分,加圧の別を作る。 2)側蓋を開いて崩壊の状況を観察する。 |
(3)実験報告用紙を準備する。
(4)各実験の能率的運営方法を研究しておく。
(5)学習結果の考査について準備する。
Ⅲ.生徒の活動
2)土質標本と比較し,そのいずれに属するか,または近いかを見る。
3)実験実施の順序を検討する。
4)実験の目標,繰作について教師の説明と注意をきく。
5)各実験を行う。
6)教師の批評を聞き,各自の実験につき話し合う。
7)実験報告書を作製する。
Ⅳ.結果の考査
2)実 技 については,作業中の観察に基づき,進歩表によって評価する。
進歩表の記入法については,機械工作課程の例に準するが,ここに関係ある作業要素ならびにその重要度比率は次表のとおりにする。
評 価
作業要素 |
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123456789 | 重さをはかる
加熱する 乾燥する 計算する 角度をはかる 材料をつめる 材料をつき固める 型から抜く 器械器具の取扱 |
10338833313 | 1544111144419 | 2055151555525 |
評 価
観察要素 |
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12345 | 計画力
速さ 正確さ 慎重さ 器用さ(美しさ) |
12913107 | 1713191512 | 2318252014 |
5)態度と習慣 については,作業中の熱意,研究的であるかどうか,協力の程度等について評価する。
箸 者
小林政一 山村 弘 狩野春一 実教出版株式会社 〃 〃 〃 〃 井坂富士雄 八木憲一他 日本建築学会
土木工学ポケットブック編纂会 |
書 名
建築構造1 和洋建築構造 建築材料 建築施工 土木施工1 建築製図1.2 高等建築学4土の力学 同上7—般構造 建築工学ポケットブック1
土木工学ポケットブック1
日本建築規格(建築3001) |
発 行 所
実教出版株式会社 産業図書株式会社 実教出版株式会社 〃 〃 〃 〃 〃 〃 常磐書房 〃 〃 丸善株式会杜
山 海 堂 |