第2章 自動車課程の指導計画

1 自動車課程の各学年において到達すベき具体的目標

 次に掲げる目標は将来自動車製造工場の現場に働く中堅技術者の養成を目的とした場合の例である。

第 1 学 年
第 2 学 年
第 3 学 年
 

2 自動車課程の各科目の内容

 1.自動車実習

 2.自動車設計  3.自動車製図  4.自動車工作・修理法および材料  5.自動車材料  6.自動車構造  7.原動機Ⅱ  8.関連工業  9.電気一般  10.原動機Ⅰ  11.鉄道軌道  12.工場経営  13.自動車運転  

3 自動車課程学習指導計画の試案

 (1)教科課程の一例
教   科
第一学年
第二学年
第三学年
国   語
社   会
数学(解析Ⅰ)
理科(物理)
保健体育
 
 
 
 
 
10
自動車実習
設計製図
工作修理法および材料
自動車溝造
原動機Ⅱ
 
 
 
 
 
14
 
 
 
12
12
 
30
必 修 合 計
25
20
23
68
 
 
 
 
 
 
数   学
理科(化学)
英   語
芸 能 科
 
 
(3)
(2)
(3)
(5)
(2)
(2)
(2)
 
(3)
(2)
 
 
 
 
 
関連工業
機 構 学
応用力学
電気一般
原動機Ⅰ
鉄道軌道
工場経営
設計製図
自動車運転
(2)
(2)
(2)
 
 
(3)
(2)
(3)
(2)
 
 
 
 
 
 
(2)
(3)
(2)
 
合     計
30
27
28
85
 (2)学年の計画の一例
単   元
必 修 科 目 お よ び 指 導 内 容 (30単位)
選択科目(6単位)
学年ごとの割当
自動車実習(1)
   
設  計
製  図(1)
   
 
 
140時
1.木  工 30 22 木工・木型工作法とその作業
30
        文 字 と 線 

平面・立体容器画 

形体の図示法 

寸法の記入法 

機械工作図 

傾 斜 図

 

10 

24 

10 

16 

2.鋳  型 20 14 鋳型作業
20
3.鋳  物 20 14 鋳造法とその作業
20
2単位
70 50
2単位
70
       
2単位
70
    自動車実習(2) 自動車工作修理法 自動車材料(1)
設  計
製  図(2)
自動車構造
原動機Ⅱ
電気一般
 
 
 
16
 
 
 
 
 
 
 
 
 
560時
4.手仕上・穿孔 22 手仕上・穿孔作業 16 仕  上 自動車材料のあらまし 機械と機構 

力と材料と強さ 

梁・柱・構造物 

管に関する部分 

締結用機械要素 

軸に関する部分 

伝動装置

  

  

  

  

  

  

歯車伝動装置製図

 

 

14 

 

 

10 

24

自動車の概念 

走行抵抗出力と性能 

車枠と走行装置 

舵取と制動装置 

動力伝達装 
置と駆動方法 

車体構造 

牽引装置 

車体支持理論 

自動車性能試験 

自動車電気装置

12 

 
  
  

12 

15 

18 

 

 

 

 

15

内燃機関の概念 

熱力学の概要 

機関の出力 
熱効率振動 

燃焼・燃料 

電気着火装置 

燃料装置 

ガソリン機関 
代用燃料装置 

ジーゼル機関 

ガスタービン 

出力性能試験

 

15 

 
  

 

 

 

21 

 

 

  

基礎理論 

電気測定 

電燈・照明・電熱 

交・直流電気機器 

交・直流交換機器 

電動力応用

  

24 

 

10 
  

14 
  

 
  

10

5.溶  接 16 溶接作業 12 溶  接 溶接棒
6.火  造 26 火造作業 16 型鍛造・圧延 
型抜き・押出し
炭素鋼・特殊鋼 10
7.熱処理 14 熱処理作業 10 熱処理  
8.プレス 12 ブレス作業 プレス 合成樹脂類
9.自動車材料 14 材料試験 10 材料試験法 金属材料の選択
10.機械仕上 66 12 機械仕上作業 46 各種工作機械による切削研削法 硬質工具合金・切 

削材・研磨材料

20
11.精密工作 20 精密仕上・精密測定 10 精密測定具・検査具 (ラッピング材料) 10
12.治具取付具 16 治具取付具製作 10 治具取付具  
13.自動車電気装置 電気計器取 
扱電機運転
     
6単位
210 38
4単位
140  
2単位
70  
2単位
70
3単位
105
3単位
105
2単位
70
    自動車実習(3)   自動車工作修理法 自動車材料(2)
設  計
製  図(3)
工場経営
自動車運転
 
 
 
 
16
 
 
 
 
 
 
 
 
560時
14自動車専門工作機器 39 専門工作機械 
分解組立検査
24 専門工作機器 
の構造性能
  15 ブレーキとばね装置 

ガソリンとカム装置 

シリンダの設計 

クランク軸の設計 

トレーラ車台設計 

トラック車体設計 

パス車体設計 

工場と車庫設計

  

  

  

同左製図 

同左製図 

同左製図 

同左製図 

同左製図

12
24
18
21
18
生産と工場 

工場の組織 

作業研究 

生産管埋 

原価計算 

労務管理 

中小工場経営 

工場関係法規

20
18
道路交通取締法令 

道路輸送法令 

車両規則 

運転理論 

代燃車取扱 

運転実習 

自動車路上試験

10
10
10
20
10
   
15機関分解修理 75 13 機関分解・測定・修理作業 54 機関分解修理 潤滑剤 21
16車体分解修理 48 車台分解・測定・修理作業 30 車台分解修理 ゴム剤 18
17機関と車体組立 51 機械と車台組立 
検査・調整作業
30 機関・車体組立調整 
自動車整備基準規程
ガラス 21
18車体製造・塗装 51 車体製作塗装作業 42 車体製造塗装 塗  料
19機関試験検査 15 機関試験検査 機関試験検査  
20車両試験検査 15 車両試験検査 車両試験検査  
21自動車工場 21 工場・車庫実地調査 12 工場・車庫の施設 基礎・耐火・保温材
9単位
315 56
6単位
210  
3単位
105  
3単位
105
2単位
70
2単位
70
   
1260 時
合計17単位
595 47
12単位
420  
5単位
175  
7単位
245
  175   175   70
 (3)単元16.「自動車機関分解修理」の具体的学習計画の例

A.単元の展開
指 導 内 容
学  習
所要時間
 
 
 
 
 
 
 
 
1.分解の準備
2.分解前の検査
3.分解の順序・方法
4.分解作業
小        計
(11)
5.シリンダ蓋の検査
6.シリンダとピストンの磨耗測定
7.弁と弁座の検査測定
8.クランク軸カム軸とその軸受部の検査・測定
9.連接棒ピストンピンの検査
10.調時歯車装置の検査
11.機関附属装置の検査
小        計
(21)
12.シリンダの中ぐり修理
10
13.シリンダ・ライナの取換え
14.弁と弁座の修正
15.クランク軸・カム軸の修正
16.軸受メタルの鋳込みと仕上げ
17.機関附属装置の調整修正
小       計
(43)
合      計
(75)
 
自動車機関分解修理
作    業
(1) 

a.一定時間使用した機関を準備する。 

b.整備用工具・器具・測定具・検査具・試験機・工作機械を点検準備する。 

c.運転時機関の発する異音響により不良または衰損箇所の判断をする。 

d.シリンダの圧縮圧力を測定する(別途出力・燃料消費量試験を行う)。 

e.機関を車台から取りはずす。 

f.機関外部の清掃をする。 

g.機関を分解する。 

h.機関主要部の寸法磨耗度・機能衰損度を測定検査し,正しい修理方針をたてる。 

i.機関附属装置の機能を検査する。 

j.シリンダ弁・弁座などを削正・研磨あるいはすり合せを行い,その仕上精度を調べる。 

k.クランク軸カム軸連接棒のゆがみを修正する。 

l.軸受メタルを鋳込み精密中ぐり仕上またはすり合せ手仕上をする。 

m.シリンダライナの入れ換え,弁座口金の製作はめ込みの機関再生工作をする。 

n.機関附属装置の不調を修正する。

技術的知識
(2) 

a.自動車整備基準規程中,機関に関する条項に対して完全な技術的解釈ができる知識。 

b.専門整備用機械(シリンダ中ぐり盤・とぎ上げ盤・弁研磨盤・弁座研磨盤・曲軸研磨盤・主軸受ライン中ぐり盤・連接棒精密中ぐり盤・油圧プレス・メタル遠心鋳込機など)の用法。 

c.専門験査機器(電装品試験機・アーマチュアテスタ・コンロッドアライナ,弁ばね試験機など)の用法。 

d.専門測定器具(シリンダゲージ・ピストンリングゲージなど)の用法 

e.一般測定器具(マイクロメー.ノギス・イヤルゲージ・深さゲージ・角度計)の用法。 

f.潤滑油・研磨剤の種類と用法。

(3) 

a.内燃機関の作動,機関破損過熱などの原因。 

b.機関主要部の構造材質およびピストンリング・シリンダライナ・ブシュ・軸受メタルなど部品・減摩合金などの構造材質 

c.専門整備用機械・検査機器・測定器具などの構造・機能・精密度。

 
一般的知識
a.自動車製造または整備工場の立地。 

b.全国自動車整備工場従業員数。 

c.外国における整備の状況。 

d.整備用機械器具,および部品のメーカとその品質・価格。 

e.一定修理作業に要する人工数。

 注(1)は実習で行う作業。

  (2)は実習作業に直接必要な知識。

  (3)は実習作業に直接必要はないが,さらに啓発するための知識。

  (4)は知っているほうがよく,また役にたつが直接は必要でない知識。

  (1)と(2)は結合して一人の教師で指導する。

  (3)と(4)は実習と別の教師が指導してもよい。

B.副単元主要部の修理,12「シリンダの中ぐり修理」学習指導細案

 Ⅰ.目  標

 

 Ⅱ.教師の準備と活動

 
   可搬式中ぐリ盤と定置式とぎ上げ盤を用いて 

   偏耗してシリングの中ぐりをする    (所要時間10時間) 

   機械工具        測定器具        材  料 

  a)砥石車(刃研ぎ用)  a)シリンダゲージ    a)シリンダ体 

  b)リッジリ一マ    b)マイクロメータ    b)潤滑油 

  c)スパナ       c)回転計        c)ぼろ布 

作 業 の 順 序

1)油路の開き口などに切子がはいらぬようにぼろ布のせんをする。 

2)シリンダ体の上面をぼろ布で清掃する。 

3)中ぐり盤をシリンダ体の上にのせる。 

4)切削スピンドルの中心とシリンダ中心とを合わせて心出しをする。 

5)スパナで中ぐり盤の取付具のナットをまわし,中ぐり盤をシリンダ体にしっかり固定する。 

6)スピンドルに刃を取り付け,中ぐり盤附属の特殊マイクロメータを用い,刃先の回転円直径を調節する。 

7)モータを回転させ,中ぐり盤の予備運転(空転)をして調子を出させる——スンドルに滑油が一様にまわるのを待つ。 

8)自動停止装置を調節し,送りをかけ運転状態および切削の状況を調べる——回数も調べてみる。 

9)一つのシリンダの中ぐりを終れば,その上下・前後・左右の方向の直径を精密測定し.誤差と平滑度を調べて切削の良否を検査する。 

10)シリンダ体の上面を清掃し,次のシリンダに移り4)〜9)の操作をくり返す。 

11)全部の中ぐりを終れば中ぐり盤をシリン体から取りはずす。 

12)とぎ上げ盤の作業台の上にシリン体をのせる。 

13)砥石の中心とシリンダの中心を大体合わす。 

14)とぎ上げ盤を運転し,その運転状態を注意し,あるいは一定時の後それを止めとぎ上げ状況をべる。 

15)一つのシリンのとぎ上げが終れば9)と同様にしてとぎ上げの良否を検査る。 

16)全部のとぎ上げを終ればとぎ上げ盤がらはすして,シリンダ体全体を清掃する。 

17)潤滑油通路その他につめたぼろ布を取りはずす。 

18)中ぐりを必要としない時には,リッヂリーマによってシリン上部の段付けをり取る。 

19)砥石車による刃のとぎ直しの方法をおぼえる。

   
  すでに学習したこと。 

1)中ぐり盤・とぎ上げ盤の構造と機能。 

2)ピストン——クランク運動によるシリンの偏耗とオーバーサイズピストンの寸法。 

3)シリンダの構造すなわちシリン壁の厚さとそ材質。 

4)刃先の角度と形状。

  ここで新たに学習すること。 

1)中ぐ盤ととぎ上げ盤の取扱法。 

2)実際的に安当な修正切削代の決定(1回の)。 

3)最大可能限度の削正量の決定とシリング壁の硬度の切削面の平滑度との関係。 

4)刃先の状況と切削能率。

   

 Ⅲ.生徒の活動

 

 Ⅳ.結果の考査

C.この単元を研究するための参考書