第11章 紡織課程の指導計画
1 紡織課程の各学年において到達すべき具体的目標 次に掲げる目標は将来もめんおよび毛工業を主とした紡織工場の現場に働く中竪技術者の養成を目的とした場合の例である。
第1学年
第2学年
第3学年
 2 紡織課程の各科目の内容 1 紡織実習  2 機織  3.紡績  4.材料  5.製図  6.機械一般  7.電気一般  8.工場経営  3 紡織課程の学習指導計画の試案 (1)教科課程の一例
教    科
第1学年
第2学年
第3学年
 
 
 
 
 
国  語
社  会
 
10
数  学
   
理科(物理)
 
 
保健体育
紡織実習
15
機  織
紡  績
 
材  料
   
工業必修計
13
30
必修総計
24
20
24
68
 
 
 
 
 
製  図
 
 
機械一般
 
 
電気一般
   
工場経営
   
英  語
   
化  学
 
 
染  色
 
 
選択合計
17
合    計
29
29
28
85
 (2)学年の計画の一例
単     元
工業必修科目および指導内容  (30単位)
選択科目および指導内容  (8単位)
 
280
学年ごとの割当
紡績実習
維  織
紡  績
材  料
時数
製  図
機械一般
電気一般
工場経営
文化と衣服
30
11
繊維製品の観察
10
織物編物等の製造
10
    繊維および製品 10                
織物製造
110
40
製織実習
76
原組織と織方
34
       
織物のくふう
52
18
変織および図案実習
36
変化組織
16
       
織物原料
88
31
繊維実験
18
繊維と織物
10
    綿・麻・毛・絹繊維等 60
小計
8単位
280
100
4単位
140
2単位
70
   
2単位
70
13
 
455
織物設計
45
10
分解実習
35
織物設計
10
        文字と線図  形投影図機械部品製図紡織機見取図紡織機の設計 555252010 機械と機構機械の要素運動の伝達材料力学機械工作搬送機類動力発生温湿度調整 5510101551010        
晒染加工
30
精織・漂白・染色実習
20
精錬漂白,染色
10
重  機
65
12
複雑な織物製織
35
一重特別組織重機および応用
30
綿糸紡績
119
26
綿紡実習
55
綿織物製造
10
綿糸紡績 54
綿紡績
56
12
綿紡織計算実習
30
綿布の特長
10
綿紡の重要性綿紡計算 16
9単位
315
69
5単位
175
2単位
70
2単位
70
   
2単位
70
2単位
70
17
 
595
10
毛紡織
102
17
毛紡実習
40
毛織物製造
12
毛糸紡績 50             基礎理論電気測定材  料電燈照明と電熱交直流電気機器交直流変換機器電動力応用 255510
 
15
 

 
生産と工場作業研究製造管理賃金制度原価計算労務管理工場関係法規 1010155101010
11
特殊糸紡機
58
10
絹紡・特紡実習
20
絹その他織物製造
18
絹糸その他の紡績 20
12
紋織物
74
12
撚糸・紋織実習
42
紋織物製造
23
撚  糸
13
編  組
90
15
編  組
49
編  組
35
絹糸の紡績
14
仕上げ
87
15
仕上実習
59
織物仕上
40
繊維実験
15
鑑別と管理
44
鑑別実習
工場調査
20
織物検査法管理
12
製品鑑別経営 12
13単位
455
6単位
210
4単位
140
8単位
140
           
2単位
70
2単位
70
(36単位130時)合   計
15単位
525
8単位
280
5単位
175
2単位
70
1単位
70
2単位
70
2単位
70
2単位
70
 (3)単元2.「織物製造」の具体的学習計画の例A.単元の展開
単元
副 単 元
指導内容
学  習
所要時間
 
 
 
1.織物組織 1.織物組織図示法2.完全意匠図3.原組織(平織,斜文,繻子)
10
2.織方図 1.綜絖び通入2.綜絖と踏木の結附3.織方図示法
13
3.製織準備工程 1.糸・綜絖・筬の準備2.経糸準備3.緯糸準備
13
4.力織機および製織 1.力織機の構造2.力織機の運動3.力織機の織付狩よび調節4.力織機のすえ付5.製織
15
20
27
74
  合          計              110
 
 
織物製造
 
作   業
技術的知識
一般的知識
織物組織図をかく織方図をかく糸を計算する綜絖・筬を準備する糊附をするくり返をする整経をする機上をする管巻をする織付をする製織をする 織物組織のかき方完全意匠の織方綜絖・筬・踏木の用い方織方図示法経糸・緯糸の設計くり返・糊附・整経糊の調合準備工程機械力織機の構造と運動力織機の調節と運転 織機の発達史力織機の生産高力織機の分類織物工場建設環境主要織物産地織物の用途
  織物分解法織物製造規格糸の撚(よ)りと組織糊の化学作用織機の種類とその性能  
(1)は実習で行う作業。(2)は実習作業に直接必要な知識。(3)は実習作業に直接必要はないが,さらに啓発するための知識。(4)は知っているほうがよくまた役にたつが,直接必要でない知識。 (1)と(2)は結合してひとりの教師が指導する。 (3)と(4)は実習と別の教師が指導してもよい。B.副単元3「製織準備工程」,2「経糸準備」学習指導細案 Ⅰ 目標 (1)経糸の表面を滑らかにし糸を織りやすくするため糊附をする。 (2)必要数の木管に糸の欠点を除きつつくり返をする。 (3)織物に必要な経糸数を同弱力にそろえながら整経する。 (4)経糸を上下させ,織物の密度と幅を整えるため綜絖の目を筬羽の間に経糸を通入する。Ⅱ 教師の準備と活動 (1)次のような作業指導票をつくる。
経糸の準備工程(糊附・くり返・整経・機上)
器 具               機 械      材 料 所要時間6時間糊煮鍋(のりになべ)ガスコンロ    くり返機     経糸糊附桶(のりつけおけ)ギリ棒     整経機      水物干竿(ものほしざお)柄杓(ひしゃく)             小麦粉またはでん粉比重計  木管                       ロード油綜絖 筋 ノッタ                   糊剤 防腐剤                              塩化亜鉛等 (1)経糸の総数を調べ重量を秤る。   (11)くり返機で糸を巻返する。 (2)要量の糊材を用意する。      (12)糸の欠点を除いて結び直す。 (3)糊煮鍋で煮る。          (13)クリ一ルに必要数の木管をかける。 (4)少量の油と防腐剤を入れる。    (14)整経機で張力をそろえて整える。 (5)糊附桶へ糊を移す。        (15)ワープビームに巻返する。 (6)を入れ糊附する。        (16)綜絖通で一々綜絖の目に糸をとおす。 (7)ギリ棒で糊を絞る。        (17)筬通で筬羽目間に糸をとおす。 (8)膠(こう)着を防ぐためさばきをする。(18)織機の上に全部を取り付ける。 (9)物干竿にかけて乾かす。 (10)取入れて次の実習まで保存する。
(2)この作業に必要な技術的知識をあげてみる。
経糸準備に要な技術的知識
経糸の設計織物の製造規格織方図示法綜絖の種類と用い方筬羽の密度と引込方  すでに学習したこと。 糸別による糊附の方式糸の撚と糊附程度整経長と織物長の関係糸の結方の種類と良否織方図による糸の通入方ワープビーム幅と織物幅の関係準備工程が織物に及ぼす影響 ここで新たに学習すること。
 (3)上の作業指導票に基づいて糊附整経等の材料を用意する。 (4)生徒に記入させる実習報告書の用紙をつくる。 (5)生徒の自発的活動を刺激するにはどんなものがあるか,その誘導の方法を研究する。 (6)生徒の活動に対してこれをまとめていくための協力の方法を研究する。 (7)学習結果の考査について準備する(詳細は別項にある)。Ⅲ 生徒の活動 (1)すでに学習した織方図とこの機仕掛とを比較してみる。 (2)糊附した糸としない糸とを比較してみる。話し合う。 (3)綜絖通と仕掛けおよび組織について調べる。 (4)筋通と組織関係を調べる。 (5)糸の結方が織物に及ぼす影響を考える。 (6)教師の糊附操作について見学し,話を聞く。 (7)糊附前と後とで糸の結方を変えねばならぬ点を実験して比較する。 (8)経糸の種類によって,準備方法を変えねばならぬことを教師から聞き,準備工程の重要性を認識する。 (9)経糸準備工程の良否は製織および製品に及ぼすいろいろなことを教師から聞き,この工程を反省する。 (10)各自の実習して得た糊附糸に対して批評し合い,教師の批評を聞く。 (11)試験的に糊材の調合を変えて実験してみる。 (12)糸の張力を変えてくり返をなし,木管に巻いてこれを整経クリ一ルにかけ糸の引出しぐあいを研究する。 (13)糸の引出し角度を変えて張力その他を調べる。 (14)綜絖通,筋通を変えて研究してみる。 (15)実習報告書を作製する。 (16)実習経過やその結果について発表し合う。Ⅳ 結果の考査 (1)技能について実習中の観察や成績品により,織物製造の単元を通じて作業要素について経糸準備の技術がどのような速さで正確にじょうずにできるようになっているか,知識・理論の実習への応用がどの程度身についているかなどを進歩表によって記述尺度法で評価する。 この進歩表に記録し,評価すべき作業要素は次のようなものである。  (2)技術的な知識および理解については,実習場において課題について口問口答させる方法や,論文・実習報告に基づいて記述尺度法によって評価する。その結果を次のような五段階に分ける。  また次のような客観的な問題によっても評価する。技術的な知識と理解を調べる考査問題の例  (3)実務能力については作業の計画,能率的進行等を観察によって評価する。 (4)応用と創造の能力については作業中に表われたくふう・改善・批判等の能力を評価する。 (5)態度と習慣については作業中の熱意,研究的であるかどうか,協力の程度等を評価する。C.この単元を研究するための参考書