1 色染課程の各学年において到達すべき具体的な目標
次に掲げる目標は将来染色工場の現場に働く中堅技術者の養成を目的とした場合の例である。
2.おもな繊維の性質を理解し染色加工への応用ができること。
3.糊抜剤を効果的に使うことができること。
4.精練剤や漂白剤の選定ができること。
5.おもな繊維やその製品の精錬・漂白ができること。
6.硬水の判定ができ,かつ染色と硬水の関係について理解すること。
7.簡単な試験染が正しくできること。
8.直接および酸性染料による浸染がむらなくでき,かつ適当な助剤の選定ができること。
9.塩其性染料による絹や羊毛の侵染ができること。
10.実験を正確に行う習慣と,その結果をありのままに発表し,希望的観測を加えない態度を養うこと。
2.媒染剤の選定や製造ができ,かつその応用ができること。
3.硫化染料でもめんや絹をいためないように浸染できること。
4.建染染料の還元染が正しくでき,かつその染色機構や還元剤について理解すること。
5.不透性アゾ染料による浸染が正しくでき,かつ下漬剤,顕色剤について理解すること。
6.カップリングや顕色処理が正しくでき,かつその機構を理解すること。
7.アリニンブラックもめん染がじょうすにでき,かつその機構や酸化剤について理解すること。
8.おもな植物および鉱物染料による浸染ができること。
9.いろいろの交織物の同色染や異色染ができること。
10.化学繊維について理解し,かつその染色ができること。
11.おもな繊維製品の製造法・性質・用途を理解し,かつそれらの規格試験ができること。
12.いろいろの染色物について理解し,かつ絞り染やローケツ染ができること。
13.簡単な色合せができ,かつ色混合および色合せ法を理解すること。
14.基本的な定性分析ができ,かつ染色用水や染色用薬剤への応用ができること。
15.工作図を正しく読むことができ,かつ染色機俄の見取図がかけること。
16.機械に関する基礎的事項を理解すること。
17.染色図案がかけ,かつ色彩理論や図案の構成について理解すること。
18.分団実習においてよく責任を果し,他の者と協同する態度を身につけること。
2.型紙および試験捺染機による写染・抜染・防染などができること。
3.いろいろの織物について最も仕上効果のある工程の選定ができること。
4.おもな織物の仕上法や仕上用薬剤について理解すること。
5.精錬漂白機械の取扱操作がわかり,かつ現場の精錬漂自作業を理解すること。
6.ウインチやジッカの取扱ができ,かつ現場染色作業を理解すること。
7.ロール捺染機の取扱や型紙捺染作業がわかること。
8.テンタ・カレンダおよび糊付機の取扱ができ,かつその他の仕上機械の取扱法を理解すること。
9.複雑の色合せ試染や染料試験ができること。
10.染色物試験や染色用薬剤の適否試験ができること。
11.染料・顔料・レーキについて製造のときの反応を理解すること。
12.おもな中間体や染料の合成実験ができること。
13.基本的定析ができ,かつおもな染色用薬剤の純度検定試験ができること。
14.染料の構造とその染色料について理解すること。
15.電動機の取扱ができ,かつ染他工場における電気設備について理解すること。
16.染色工場の経営について理解すること。
17.新しい試験を立案し,実験し,その結果を整理することができること。
かつ,くふう創造の能力を養うこと。
18.仕事を進めるのに計画を立て順序正しく,正確に注意深く行動する態度を養うこと。
19.仕事の手順の決定ができ,現場作業の指導できるような能力を養うこと。
20.従業員をよく理解し,よく指導ができ,よく掌握し,作業能率をあげることができる能力を養うこと。
2 色染課程の各科目の内容
1.染色実習
2)精錬漂白実習 7)染色用剤試験 3)侵染実習 8)染料中間物製造実験 4)捺染(なつせん)実習 9)顔料レーキ製造実験 5)仕上実習 10)染色試験
2)精錬,漂白 5)仕 上 げ 3)侵 染 6)染色用器具・機械 7)色混合・色合せ法 8)染色工場
2)繊維および製品 5)染 料 3)染色用水 6)顔料・レーキ
2)染色機械部分製図 5)染色作業工程図 3)染色機械見取図
2)模様の構成 4)染色工芸
2)材 料 5)ポ ン プ 3)機械製作法 6)ボ イ ラ
2)電気測定 4)交・直流電気機器
2)製造管理 5)労務管理 3)賃 銀 6)工場関係法規 |
3 色染課程の学習指導計画の試案
(1)教科課程の一例
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3
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3
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3
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5
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5
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10
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5
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5
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5
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5
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3
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3
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3
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9
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21
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6
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11
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38
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2
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4
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4
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10
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3
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3
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6
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2
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2
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2
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5
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2
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2
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2
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2
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4
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13
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13
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30
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25
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19
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24
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68
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5
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5
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3
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3
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3
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3
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2
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2
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2
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2
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2
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2
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30
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27
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28
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85
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1 | 染色の大要
(導入) |
16 | 11 | 基礎実験 | 19 | 染色概要 | 3 | 材料概説 | 3 |
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2 | 被染材料 | 38 | 27 | 繊維試験 | 16 | 繊維と染料 | 20 | おもな天然繊維 | 20 | |||||||||||
3 | 精錬漂白 | 50 | 36 | 精錬漂白実習 | 24 | 綿絹毛の精錬・漂白 | 8 | 染料用水糊拔精錬漂白剤 | 8 | |||||||||||
4 | 直接染法 | 36 | 26 | 直接染法実習 | 20 | 直接染法による浸染 | 4 | 染色助剤
後処理剤 |
4 | |||||||||||
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140 | 100 |
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70時 |
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35時 |
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35時 | ||||||||||||
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5 | 媒染染法 | 44 | 7 | 媒染染法実習 | 24 | 媒染染法による浸染 | 12 | 媒染・固着剤 | 8 | 染色製図の基礎 | 14 | 機械の要素 | 20 |
色 彩
図案の構成
染色図案
染色工芸 |
30
30
35
10 |
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6 | 還元染法 | 38 | 6 | 還元染法実習 | 24 | 還元染法による浸染 | 12 | 還元剤 | 2 | |||||||||||
染色機械
部分製図 |
26 | 材 料 | 15 | |||||||||||||||||
7 | 酸化染法 | 14 | 2 | 酸化染法実習 | 8 | 酸化染法による浸染 | 4 | 酸化剤 | 2 | |||||||||||
8 | 現色染法 | 42 | 7 | 現色染法実習 | 24 | 現色染法による浸染・処理 | 12 | 下漬・顕色剤 | 6 | 染色機械
見取図 |
10 | 機械製作法 | 10 | |||||||
9 | 化学繊維 染色 | 50 | 8 | 化繊染色実習 | 20 | 化繊の精錬・漂白・浸染 | 10 | 化学繊維 | 20 | |||||||||||
10 | 交織物染色 | 24 | 4 | 交織物染色実習 | 16 | 交織物浸染 | 6 | 交織物 | 2 | 染色機械
製 図 |
10 | 工作機械 | 10 | |||||||
11 | 色合せ法 | 18 | 3 | 色合せ試染 | 12 | 色混合,色合せ法 | 6 | |||||||||||||
12 | 染織物 | 50 | 8 | 染織物試験,工芸染色実習 | 12 | 染織物試験法
染色工業 |
8 | 繊維および製品 | 30 | |||||||||||
染色作業
工程図 |
10 | ポ ン プ
ボ イ ラ |
5
10 |
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13 | 定性分析 | 105 | 17 | 分析実習
染色用剤分析 |
105 | |||||||||||||||
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385 | 62 |
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245 |
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70時 |
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70時 |
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70時 |
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70 | 3単位 | 105 | ||||||
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14 | 手工捺染 | 55 | 9 | 手工捺染実習 | 30 | 手工捺染技法 | 21 | 捺染用糊料薬剤 | 4 | 基礎理論
電気測定
電燈照朋と電熱
交・直流電気機器 |
25
10
5
30 |
生産と工場
製造管理 賃 金 原価計算 労務管理 工場関係
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10
20 5 10 10 15 |
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15 | 機械捺染 | 50 | 8 | 機械捺染実習 | 25 | 機械捺染技法 | 21 | 4 | ||||||||||||
16 | 綿・麻スフ織物仕上 | 40 | 7 | 仕上実習 | 15 | 仕上効果
仕上工程 仕上機械 |
22 | 仕上用糊剤
〃 薬剤 特殊仕上用剤 |
3 | |||||||||||
17 | 絹・人絹織物仕上げ | 25 | 4 | 9 | 13 | 3 | ||||||||||||||
18 | 毛織物仕上げ | 40 | 7 | 9 | 23 | 3 | ||||||||||||||
19 | 染色工場 | 35 | 6 | 染色試験 | 16 | 染色機械・工場の諸要件試染室 | 16 | 染色用薬品の取扱および貯蔵 | 3 | |||||||||||
20 | 染科顔料レーキ | 105 | 18 | (同左)合成試験 | 36 | 染料の構造と染色性 | 19 | 染料・顔料・レーキ | 50 | |||||||||||
21 | 定量
工業 分析 |
105 | 18 | 分析実習染色用剤分析 | 105 | |||||||||||||||
39単位
1365時 |
13単位 | 455 | 77 | 7単位 | 245 | 4単位 | 140 | 2単位 | 70 | 2単位 | 70 | 2単位 | 70 | |||||||
合 計 | 980 | 72 | 16単位 | 560 | 7単位 | 245 | 5単位 | 175 | 2単位 | 70 | 2単位 | 70 | 3単位 | 105 | 2単位 | 70 | 2単位 | 70 |
A.単元の展開
単元 |
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1.繊維資源 | 1.繊維の歴史
2.繊維の生産と取引 3.繊維の応用 |
1
4 1 |
6 |
2.繊維の化学的処理 | 1.繊維の化学的組成
2.繊維の鑑識 3.漉合繊維の定量 4.繊維と薬品 5.繊維と染料 |
2
6 6 4 2 |
20(実験12) | |
3.繊維の物理的処理 | 1.繊維の形態
2.繊維の強伸度 3.繊維の吸湿性・弾性・可塑性 4.繊維の物理的処理 |
3
3 4
2 |
12(実験4) | |
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顕微鏡で繊維を見分ける
燃焼して繊維を見分ける 試薬で繊維を見分ける 混合繊維を分離定量する 繊維を薬品で処理する 繊維の水分をはかる 繊維の強伸度をはかる |
組織の形態
繊維の化学的組成 繊維の鑑識法 混合繊維の分離定量法 繊維に対する薬品の作用 繊維の水分 繊維の強伸度 |
繊維の歴史
繊維の生産と取引 繊維の応用 |
繊維の構造
繊維の弾性・可塑性 繊維の物理的処理 繊維の染料 |
Ⅰ.目 標
(2)混合繊維定量の基礎となる理論を理解すること。
(3)繊維試験の実験的技術に習熟すること。
(1)空気乾燥器 (5)ガラス棒 (1)綿毛交織布 (2)化単天秤 (6)時計皿 (2)苛性ソーダ (3)璽湯煎器 (7)紙 (4)ビーカ (1)試料2〜5gくらいととり化学用 (6)残留物を取り出し紙の間にはさ 天秤で秤量する。(a grとする) んで水分を除く。 (2)2%苛性ソーダ溶液をつくる。 (7)時計ざらにのせ,空気乾燥器中に (3)上液を試料の40倍量ビーカにと 入れ乾燥する。 り,その中に試料を入れる。 (8)だいたい乾燥したとき,取り出し (4)ビーカを重湯煎器にかけ, 室内に放置して最初の試料の状態 30分煮沸する。 になるまで吸湿せしめる(およそ (5)重湯煎器よりビーカを取り出しそ 一夜間放置しておく)。 の上澄液を去り,温湯を加え数 (9)試料を秤量する(b grあつたとする) 回洗う。 (10)計算によって混合割合を求める。 綿の混合率a/b×100=% |
(3)実験指導票に基づいて器具材料を用意する。
(4)実験中のあき時間の有効な使用法について研究しておく。
(5)生徒に記入させる実験報告書の用紙をつくる。
(6)生徒の自発的活動を刺激するにはどんなものがあるか,その誘導方法を研究する。
(7)生徒の活動に対して,これをまとめていくための協力の方法を研究する。
(2)参考書によって混合繊維の定量法を調べる。
(3)自分で実験法や結果の整理法についてそれを立案してみる。また話し合ってみる。
(4)教師の実験操作を見学し,話を聞く。
(5)指導票に基づいて実験してみる。自分の立案したものと比較してみる。
(6)実験の結果について批評し合い,教師の批評を聞く。
(7)実験報告書を作成する。実験経過やその結果について発表し合う。
(8)綿絹・絹毛・綿絹毛等の交織布について定量法を立案し,実施してみる。
作業要素(1)正しく秤量する。 (6)温度を正しくとる。
(2)速く秤量する。 (7)器具を正しく扱う。
(3)溶液を正しくつくる。(8)順序正しく実験する。
(4)溶液を正確にとる。 (9)器具を整理する。
(5)時間を正しくとる。 (10)計算が正しく速くできる。
(2)技術的な知識については実習の場における課題についての口問口答や報告書,論文またはテストに基づいた記述尺度法によって評価する。その結果を五段階に分ける(機械工作課程の同項参照)。
一般的知識については客観的テストを行い,その理解の程度を評価する。
(3)実習の態度については実習に対する熱意,研究的であるかどうか,実験を正しく順序よく遂行しているかどうか,また他人とよく協同して作業しているか,創意くふうをこらしているか等につき,記述尺度法で評価する。
書 名 著 者 発 行 所
繊維工学便覧 繊維学会 修 教 社
繊維性能表 〃 〃
繊物原料 大住吾八 株式会社コロナ社
紡織繊維 成田時治 〃
繊維の科学 櫻田一郎 三共出版社
紡織繊維学(総論) 祖父江 寛 裳 華 房
紡織繊維 〃 誠文堂新光社
実用色染学(正篇) 中島武太郎 丸善株式会桂
実験色染化学(後篇) 宮岡宇一郎 〃
岡田 晃
標 化学工業試験 田中一雄 〃
準 法 (中巻)
安藤一雄