第1篇 工業課程一般篇
第1章 高等学校における工業教育の目標

 高等学校における工業教育の一般目標  高等学校における工業教育は,将来,日本の工業の建設発展の基幹である中堅技術工員となるべきものに必要な,技能・知識・態度を養成するもので,次の諸目標の達成とめざすものである。

 以上は,高等普通教育において共通に達成すべきもののほかに,工業教育において,工業の各分野の学習を目的とするそれぞれの課程に共通に求められるべきものと思われる目標を掲げた。ところで,ここに云う工業教育の対象とする工業の種類はどんなものか。そしてその工業のそれぞれの課程で達成を目ざす必要技能と知識の程度はどんなものであるか。それはその時々の社会の必要によって決まるものであることは云うまでもない。新しく改正された教科課程においては,社会が必要とするどんな課程でもおくことができるようになっている。しかしこの学習指導要領では,現在の日本の経済にとって最も基本的であると思われる工業の14の種類についての課程を例として示した。また,それぞれの課程において達成を目ざす必要技能や知識の程度については,次に述べるような社会の必要の分析,すなわち経済状態の分析に基づいて,それぞれの課程において各学年に到達すべき具体的目標を定めて,その一つ一つを達成して行かなければならない。各課程の各学年で到達すべき具体的目標については,第2篇の各章に例示してある。

 目標産決定するための条件  教育の目標は「社会的必要」と「児童生徒の必要」によって定められるものであることは「学習指導要領一般編」に示されている。さきに述べたように,高等学校の工業教育は,将来中堅技術工員となるべきものを養成するものであるから,工業教育の目標を決定するに当って特に社会的必要が重要である。

 工業教育の目標としてどのようなものを定めるか,どんな課程をおき,その内容をどのように定めるか,各課程はどんな具体的な目標を定めるか,どれだけの技能と知識をもったどれだけの数のものを養成するかを考えるに当って,産業全体の計画を知らなければならない。そのために次の各項目についての研究を進めなければならない。

 このような調査研究立案計画のためには,経済諸官庁・産業団体との提携協力がなければならず,日本の産業そのものを,国民の生活を豊かにし,国民の進歩発展をささえるようなものにするために,産業計画の立案には教育者が広範に参加しなければならない。この研究の結果に基づいて,妥当であり,具体的であり,達成可能な目標を定めなければならない。そして定められた目標は次のようなものでなければならない。  
第2章 工業課程の構成

 学習内容の選択  学校教育としての工業教育は,工業のうちのある職業そのままを学習するものでもなけれ,その全部を学習するものでもない。したがって,職業分析を行い,生産の場の分析から得た内容のうちから卒業後実際の職業についてから学習したほうが効果的であるものや,学校や課程の目的に沿わないものを除去し,選ばれたものを教育の場に適合するように構成しなおさなければならない。

 この学習内容を選択する指針として次のものが考えられる。

 これらの指針は,学習内容を選択する場合,いすれも矛盾したり抵触したりすることなく考慮されるものではなく,なるべく多く満足されるような妥協点を見いだして行くことが必要である。

 学習内容の配列  学習内容を選択する指針のなるべく多くを満足させるために,ある工業の部門をいくつかの部分(ブロック)に分け,各ブロックの中では上に述べた指針のうちの(4)(5)(6)(7)が満たされるような類別をすることが必要である。このブロックは実際の職業上の類別というよりもむしろ学習の便宜上の類別である。実際に学習を進めて行く場合は,このブロックをそのまま単元とし,あるいはブロックをいくつかに細分したものを単元として指導することが,学習者の発達程度や能力からみても将来の就職の場合の,職業上の実際に適応して行く上からも適切である。以下にそのブロック分けの例を示す。

 機械工作課程の一例

  鋳   造       平 削 盤

  木   型       フライス盤

  手仕上・穿孔      研 削 盤

  火   進       測   定

  熱 処 理       プ レ ス

  機械材料の試験     工具の設計と製作

  溶(よう)接       治具・取付具の設計と製作

  旋   盤       工作機械の分解・組立・検査とすえつけ運搬

  形 削 盤

 他の課程の例は,第2篇のそれぞれの課程の「学年の計画の一例」に示された「単元」がだいたいこのブロックに相当するので,その箇所を参照せられたい。

 このようにして分けられたブロックまたは単元の指導の順序または配列も,さきに述べた内容選択の指針をできるだけ多く満たすようにして決めなければならない。ここで特に考慮しなければならないことは,ま第一に,ブロックまたは単元は相互にそれぞれ独立のものではあるが,先行のもので得た経験がこれに続くものとじゅうぶんに関連をたもち,その学習に既習の経験がじゅうぶんに生かされるようにすることがたいせつである。次に,単元の学習の難易の程度が,できるだけ漸進的になるようにすることが必要である。したがってこの二つの点を考慮に入れれば,学習の順序は必ずしも職業的な順序と一致させる必要はない。たとえば,バイトの研磨は材料の旋削に先だって行われなければならない仕事であるが,この困難な仕事を最初に行わせるよりも,あらかじめ研磨したバイトを与えて材料の旋削を学習させ,その経験を生かして後にバイトの研磨を学ばせるほうが効果的である。仕事に先だって必要な計画や製図と,必ずしも仕事に着手する前に学習させる必要がないのと同じである。

 職業分析の技術  学習内容の選択とその配列は職業分析によって得られることは本章の初めに述べた。次に職業分析の技術の大要を述べる。

 工業課程において学習すべき工業は技術的な職業であり,その学習内容を分類すれば次のようなものである。

 1.オペレーション(要素作業)

 オペレーションは,あるものの製作・修理等の仕事の1単位で,描写(設計・製図・スケッチ等),成形(加熱・溶接・鋳造・曲げ等),形削(孔あけ・旋削・かんな削り・やすりがけ・リーマ通し等),組立の仕事の単位である。このオペレーションを識別する要点は次のようなものである。

 2.関係知識

 工業あるいは技術的職業は,手の技能だけでなくその仕事を遂行するのに必要なあるいはよりよく遂行できるのに役だつ知識を含んでいる。これが関係知識で,手の技能こ教えると同時に,また技能と教えながら教えるべきものである。これを3種類に分類する。

 技術的知識は,仕事な行う場合に仕事に対する正しい判断を形成するために知っていなければならない知識で,数学や理科に関するもの,その職業の技術に関するもの,危害予防に関するもの等である。

 一般的知識は,知っているほうがよく,役にたつものであり,しかし仕事を行うのに欠くことができないものではないような知識で,職業の社会的側面・経済的側面に関するものである。

 職業指導的知識は,職業の選択,職業への準備,就職,その職業の持続,職業での成功等に関係した知識である。

 関係知識の例(機械工作課程)

  技術的知識

    工作図の読解        割出しの計算

    切削速度と送り       研磨剤と冷却剤 等々

    勾(こう)配の計算

  一般的知識

    きりもみの歴史       旋盤の発達

    鉄および鋼の製造      砥(ご)石車り製造 等々

  職業指導的知識

    機械工の職業につく機会   作業場の所有者となること

    昇進の機会         雇用関係  等々

 以上に説明し例示したように,オペレーションと関係知識の項目を,さきに定めたような各ブロックについて析出する。工業課程において学習することは,手の技能の習得がおもな目的であるので,まずオペレーションの配列について必要な手続をとる。すなわち一つのブロックの中で行われるオペレーションをその行われる頻度数に従って配列換えを行う。その方法としては,一つのブロックの中で,その学校の施設,入手できる材料,実習の時間等を考慮して,考えられる代表的な仕事(ジヨブまたはプロジェクト)をひろいあげる。そのそれぞれのプロジェクトの中にどんなオペレーションが含まれているか,そのオペレーションを析出する。そのオペレーションと頻度数の順に並べ換え,プロジェクトは頻度数の多いオペレーションを含み,含まれるオペレーションの数の少ないものから多いものへと配列する。その配列換えを終った一例を示すと前ページの表のようになる。
機械工作の仕事の分析  旋盤作業
          関東地区中等致育研究集会工業部会
         1950.6.7〜13
オペレーション
(要素作業)
 
 
 
 
 
1マンドレル 2リ 
 
3タ 
 
4ブ 
 
 
 
 
5セ 
 
6ナ 
ット
7ス 
 
 
8ポ 
 
9リ 
 
 
 
 
10丸 
 
 
 
11ミ 
 
 
 
 
 
 
12平 
 
13勾 
 
 
 
 
14ボ 
 
15セ 
 
 
 
 
16木 
 
 
 
17v 
 
 
 
 
 
18旋 
 
 
 
 
 
 
 
19工 
 
 
 
25下げ 
 
21タ 
 
 
 
 
22あ 
 
 
 
 
23ジ 
 
 
 
 
 
旋盤を掃除注油点検する 1
旋盤を始動停止逆転する
けがき・心立てする
砥右車にドレッサをかける
バイトをとぐ
バイトを取り付ける
送りと速度をきめる
両センタをそろえる
荒削りする
10 仕上削りする 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10
11 鋼尺で除る 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11 11
12 カリパスで測る 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12 12
13 材料の端面を削る 13 13 13 13 13 13 13 13 13 13 13 13 13 13 13 13 13 13 13 13 13 13 13
14 やすりがけする 14 14 14 14 14   14 14 14 14 14 14 14 14 14 14 14 14 14 14 14 14 14
15 みがく 15 15 15 15 15   15 15 15 15   15 15   15 15 15 15 15 15 15 15 15
16 センタの取はずし取付をする         16 16 16 16 16 16 16 16 16 16 16 16 16 16 16 16 16 16 16
17 旋盤のセンタを均正にする 17 17 17 17 17     17   17 17 17   17 17 17 17 17 17   17 17 17
18 材料をセンタ間に取り付ける 18 18 18 18 18     18   18 18 18   18 18 18 18 18 18   18 18 18
19 面板または回し板の取はずし取付する           19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19
20 チヤツクの取はずし取付する           20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20
21 チヤツクに材料を取り付ける           21 21 21 21 21 21 21 21 21 21 21 21 21 21 21 21 21 21
22 段付旋削する 22 22 22 22 22     22   22       22 22   22 22 22 22 22 22 22
23 マイクロメータで測定する 23 23 23 23 23           23 23 23 23 23       23   23 23 23
24 突切りする         24 24 24 24 24 24     24 24 24 24   24   24 24 24 24
25 ドリルをとぐ           25 25   25   25 25 25     25 25   25 25 25 25 25
26 面取りする       26     26 26 26         26     26 26 26 26 26 26 26
27 ドリルであなをあける           27 27   27   27 27 27     27 27     27 27 27 27
28 ローレツトをかける       28       28 28 28         28 28   28 28 28 28    
29 曲面削りする                   29           29 29 29 29 29 29 29 29
30 リーマ仕上する                     30 30         30       30 30 30
31 複式刃物台によりテーパ削りする         31 31               31 31         31     31
32 三角おねじを切る     32                     32         32 32 32 32  
33 材料をマンドレルに取り付ける                     33 33         33         33 33
34 溝削りする                           34         34 34   34 34
35 中ぐりする           35 35   35                         35 35
36 輸かく(プロファイル)削りする                     36           36 36   36      
37 テーパ削り装置によりテーパ削りする     37   37                 37                  
38 心押台を心違いにしてテーパ削りする                     38         38 38            
39 タップ立てする                                       39 39    
40 端ぐり(カウンタボア)する                       40                     40
41 三角めねじを切る           41                                  
42 静止振れ止めの取付取はずしする                         42                    
43 静止振れ止で材料の位置を調整する                         43                    
44 テーパ削り装置でテーパ中ぐりする                         44                    
45 移動振れ止めの取付取はずしする                                   45          
46 移動振れ止めで材料の位置を調節する                                   46          
47 あなの刃物の逃げみぞを削る                                             47
48 角おねじを切る                                             48
49 角めねじを切る                                             49
 

 このようにてして得られた順序に従ってプロジェクトを行えば,頻度数の多いオペレーションをくりかえして行うことができ,次々に新しいオペレーションを附加していくことができる。頻度数の少ないオペレーションや複雑なプロジェクトは,実習時間や課程の長さに従って適宜加除できる。

 しかし,上に述べたように頻度数に従ってオペレーションの順序を変えて指導することは,どの課程の仕事においてもできるとはかぎらない。機械工作の作業や木材工作の作業以外の複雑で総合的である作業は,このような配列換えを行わずに,むしろ作業の工程順あるいは理諭的な体系に従って並べることが適切であろう。

 関係知識の項目は,それぞれのオペレーションに最も密接に関連する箇所において指導すればよい。

 現在の日本のように施設その他において実習の便宜をじゅうぶん得られない条件においては,実習は不可能であってもどうしても知らなければならない知識や,将来の日本の工業を科学的に高めるために必要な知識や,日本の工業の将来の目標や理想を立てるために必要な産業の基礎構造の分祈についての知識は,それぞれのブロックまたは単元のところに含めることが必要である。第2篇の各課程の「単元の一例の展開」の箇所の関係知識の下欄に特に示してあるのは,これらの一例を示唆したものである。

 それぞれの課程において,必要と思われるブロックを設定し,各ブロックについて上に述べた分析を行い,一つの課程における各ブロックの位置や重要度や相互関係を考え,また工業の学習に割り当てた時間を考慮し,それぞれのブロックについて必要な学習内容を選択することが必要である。このような手続をへてはじめて適切な教科課程の構成ができるのである。

 工業に関する科目とその取扱  昭和24年度に改正され実施されている教科課程の中の,工業の科目とその単位数は次のとおりである。
教科
科  目
単位数
教科
科  目
単位数
 
 
 
 
 
機械実習
電気実習
化学実習
紡織実習
木工実習
製  図
電磁事象
応用力学
工業化学
材  料
鉱物・地質
採  鉱
選  鉱
冶  金
炉・燃料
計  画
設  計
図  案
土木施工
建築施工
工場経営
鉱山管理
工芸史
10〜37
10〜37
10〜37
10〜37
10〜37
2〜20
3〜10
2〜10
3〜5
2〜10
3〜5
2〜15
2〜10
2〜15
2〜10
3〜10
3〜15
3〜10
3〜15
3〜5
2〜10
2〜5
2〜5
 
 
 
 
 
構  造
木材工作
金属工作
機械工作
船舶工作
紡  績
染  色
機  織
窯  業
印  刷
船舶艤装
化学機器
電気機器
通信機器
電  力
電気通信
原動機
各種機械
機械一般
電気一般
工業関係法規
工業に関するその他の科目
3〜10
3〜15
3〜15
2〜15
5〜15
3〜15
3〜15
5〜15
3〜15
3〜15
3〜15
2〜15
3〜15
3〜15
3〜15
3〜15
2〜15
2〜15
2〜5
2〜5
2〜5
 

 これらの科目をどのように組み合わせ,どんな課程を構成するかは,学校や教育委員会において決定することであるが,本要領には最も代表的と思われる14の課程の例を示した。工業課程においては30単位以上の工業科目を必修することになっているので,この要領では必修として30〜35単位と履習する場合の例を示した。選択科目の選び方は生徒の自由であるが,ここではその一例とを示した。これは,ある生徒が選択した一例とも考えられるが,またその課程を選んだ生徒として,これらの科目を選んだほうが有利であろうと思われるものを教師が勧めた場合の例とも考えられる。いずれにしても学校の施設や教師の陣容によってかなり制限をうけることはやむを得ない。

 ここに列挙された科目の内容は固定したものではなく,これを構成単位とする課程の内容によってそれぞれ異なるものである。これらの科目を便宜的に基本的なものと関係的なものの二つに分けて考え,基本的なもの(機械工作課程の場合では,機械実習・機械工作・材料等)は一体として扱い,それに関係的な科目を配するのが便利である。この科目の組合せや課程の構成は,本章の前の各節に述べた手続を終了した後に,これに適合するように行うべき手続である。したがって前各節の手続に従い,あるいはその結果を予想して各科目の内容を細分し,基本的な科目については一つのブロックあるいは単元としてまとまるように相互の細部の配列換えを行っておくことが必要である。そうすれば基本的な科目のうちの実習がオペレーションの群となり,その他の科目が主として関係知識の群となる。一つのオペレーションに対して,これに関連する関係知識を一体として指導できるような単元を構成して指導する,あるいはこれが不可能な場合には相互の関係を考慮して配列換えを行ったあとで,その順序で各科目をそれぞれ独立に指導すれば,実習と学科が遊離することもなく,科目相互の重複もなく,じゅうぶん有機的な関連を保って指導することができる。

 

第3章 学習指導計画

 上述のような手続によって工業のそれぞれの課程を構成したならば,次に学習指導計画を作成しなければならない。工業の科目の設定の仕方が簡単ではなく,将来中級技術工員として職業に従事するもののためと,やや専門的な職業に従事したり,上級の工業の課程を修めるもののためとを考慮して設けられてあり,さらにまた課程の構成に先んじて行われるべき職業分祈の技術がいまだ広く用いられていないために特に学習指導計画の作成を周到に行い,各科目の取扱にじゅうぶんな考慮を払い,その計画が職業分析を行った結果にできるだけ近づくようにした。

 年次計画の作成  前章の工業に関する科目の中から,その課程の学習に適当と思われるものを取り出し,それらの科目の内容を細分してブロックまたは単元としてまとまりをもつように配列換えを行う(各課程の学年の計画の一例参照)。この一例に示したように基本的な科目はできるだけ融合して学習内容の重複をさける。このような融合を行うものは,この例では横線を引いた一つの欄に並べた。その他の科目と選択科目は関連をもたせることもできるし,独立のものとして指導することもできるように,同一の欄に並べていない。二三の科目の相互の内容を融合して扱うか否かは,それぞれの学校の事情によっ異なる。機械工作課程とその他の二三の課程では、ブロックまたは単元全体の相互の関係を理解し,その職業全体の概要を初めに理解しておいたほうが,今後の学習を進めて行く上に効果的であると思われる課程には,導入のための単元を初めにおいた。

 工業の必修科目を30〜35単位とし,選択科目を7単位程度として例示した。必修の単位を30とした場合に,各学年への配分の例として,機械工作課程の場合,第1学年に8単位,第2学年に10単位,第3学年に12単位として計画を試みたのは,低学年では普通科目を多くし,高学年では工業科目を多くしたほうがよいと考えられたからである。

 学年の学習計画の作成  次に,年次計画に基づいて各学年の学習計画をつくる。次に示した例は機械工作課程の第1学年の学習進度計画の例である。この計画と同時に,教師の任務の分担を初めに一応決めておくことが必要である。

 機械工作課程第1学年の学習進度計画の例

 時間割作成の例
  教師A——鋳型作業 

教師B——木型作業・工場見学 

教師C——手仕上・穿孔作業 

教師D——機会工作・材料・製図 

(注意)教師A,B,C,Dは左表の火木の8時間には他の授業には出ないように時間をあけておくこと。

 

 こに例示した学年の学習計画は,1学級全部が同一の実習を行いうる場合の例で,工業高等学校一般の設備の現状では,1学級をいくつかの班に分けて実習せざるを得ないので,この計画の例のような学習を行いうるのは一つの班だけである。したがって他の班では,導入のための学習の時間を長くし,先行すべき実習に代わるものを知識として指導し,後に改めてその実習を行い必要な技能を習得するとともに,各ブロック相互の関連と理解するようにしなければならない。

 単元の具体的指導計画の作成  次に,各単元またはブロックの具体的指導計画をつくる。職業分析の技術によって各単元を細分して,オペレーション,技術的知識,一般的知識,職業指導的知識の各項目を析出し,それぞれの項目を,一つずつ,単独であるいは二三を組み合わせて,それぞれ一つの学課に組織し,それぞれの学課相互の有機的な関連を考慮して指導の計画を作成する。前に掲げた機械工作課程中の旋盤作業の分析を例にとって,オペレーション,技術的知識,一般的知識,職業指導的知識のそれぞれの項目をどのように組み合わせて学課に組織するかを示そう。

 旋盤作業の分析の際に得られた知識の項目は次のとおりである。

技 術 的 知 識
T.1. 一般安全規則 

T.2. 工作図の読み方 

T.3. 仕事の段取り 

T.4. 青図の記号 

T.5. 嵌合(かんごう)公差 

T.6. 工具の種類と選定 

T.7. 送りと速度の計算 

T.8. 各種金属材料の工作上の特質 

T.9. J.E.S.金属材料の分類 

T.10. 切削剤と冷却剤 

T.11. スパナの種類と選定 

T.12. やすりの種類と選定 

T.13. 研削剤の種類と選定

T.14. スリーブとアダプタの種類と選定 

T.15. テーパの種類 

T.16. チヤックの種類と選定 

T.17. マイクロメータの読み方 

T.18. ドリルの種類と選定 

T.19. リーマの種類と選定 

T.20. テーパの計算 

T.21. マンドレルの種類 

T.22. タップの種類と選定 

T.23. 歯車の速度比の計算 

T.24. ねじとねじの用語 

T.25. 歯車の公式と計算 

T.26. 旋盤の附属装置

 
一 般 的 知 識
G.1. 鉄と鋼の製造 

G.2. 旋盤の歴史 

G.3. 旋盤の製作 

G.4. アルミニウム工業 

G.9. 生産方式 

G.1O. 産業界における工業の変遷

G.5. 油の話 

G.6. 研削剤の製造 

G.7. やすりの製作 

G.8. ドリルの製作 

G.11. 過去の工作機械

 
職業指導的知識
V.1. 工業界における機械工場の作業の重要性 

V.2. 機械操作工 

V.3. 熟練機械工 

V.4. 段取工 

V.5. けがき工 

V.6. 見習工養成課程 

V.7. 現場訓練 

V.8. 雇用主と被雇用者の関係

V.9. 監督職長 

V.10. 工具製作工 

V.11. ダイス工 

V.12. 労働関係の法規と労務関係諸組織 

V.13. 作業と生産工場 

V.14. 諸負制と時間給制 

V.15. 作業者の福利施設

 

 析出したオペレーションはその頻度数に従ってその順序に指導するものとし,各知識の項目はそのオペレーションに最も密接に関連するものを,そのオペレーションの学課の前後で,あるいはそのオペレーションと融合して一つの学課とし,指導することが望ましい。

 次に,どのオペレーションにどの知識の項目が関連するかを示そう。ただし職業指導的知識の項目についての学課は適宜の箇所で指導することができるので特に明示しない。
オペレーション 左のオペレーションに関連し,これと前後して指導すべき関係知識 

技術的知識     一般的知識

1.旋盤を掃除注油点検する。  

2.旋盤と始動停止逆転する。  

3.けがき,心立てする。  

4.砥石車にドレッサをかける。  

5.バイトをとぐ。  

6.バイトを取り付ける。  

7.送りと速度をきめる。  

8.両センタをそろえる。  

9.荒削りする。 

10.仕上削りする。 

11.鋼尺で側る。 

12.カリパスで測る。 

13.材料の端面を削る。 

14.やすりがけする。 

15.みがく。 

16.センタの取はずし取付をする。 

17.旋盤のセンタを均正にする。 

18.材料をセンタ間に取り付ける。 

19.面板または回し板の取はずし取付をする。 

20.チャツクの取はずし取付をする。 

21.チャツクに材料を取り付る。 

22.段付旋削する。 

23.マイクロメータで側定する。 

24.突切りする。 

25.ドリルをとぐ。 

26.面取りする。 

27.ドリルであなをあける。 

28.ローレットをかける。 

29.曲面削りする。 

30.リ一マ仕上する。 

31.複式刃物台によりテーパ削りをする。 

32.三角おねじを切る。 

33.材料をマンドレルに取り付ける。 

34.みぞ削りする。 

35.中ぐりする。 

36.輪かく(プロファイル)削りをする。 

37.テーパ削り装置によりテーパ削りをする。 

38.心押台を心違いにしてテーパ削りをする。 

39.タップ立てする。 

40.端ぐり(カウンターボア)する。 

41.三角めねじを切る。 

42.静止振止めの取付取はずしする。 

43.静止振止めで材料の位置を調整する。 

44.テーパ削り装置でテーパ中ぐりをする。 

45.移振止めの取付取はずしをする。 

46.移動振止めで材料の位置を調整。 

47.あなの刃物の逃げみぞを削る。 

48.角おねじを切る。 

49.角めねじを切る。

T.1,T.11 

T.2,T.13 

T.2,T.3 

T.13 

T.6,T.8,T.9 

T.1,T.11(再び) 

T.7,T.23 

  

T.4,T.10 

T.5 

  

  

  

T.12 

  

  

  

  

  

T.16 

  

  

T.17 

  

T.18 

  

T.14 

  

  

T.19 

T.15,T.20 

T.23,T.24,T.25 

T.21 

  

  

  

T.26 

  

  

T.22 

  

T.26

G.5 

G.2,G.11  

  

G.6 

G.1,G.4 

  

  

  

  

  

  

  

  

G.7 

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

G.8 

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

G.9 

  

  

  

  

  

  

G.3 

G.10

 

 次に,学課一つ一つについては,具体的な授業計画(レッスンプラン)をつくっておく。学課の授業計画には次のようなものを含んでいなければならない。

 次に授業計画の一例を作業(オペレーション)の場合について示す。  
予定時間

5分 

  

  

  

  

  

2分 

  

  

20分 

  

  

  

  

  

  

  

  

5分 

  

  

  

  

  

  

  

5分 

  

5分 

3分 

35分 

  

  

  

  

  

  

  

  

  

5分 

5分  

計90分

教師の活動

1.すでに学習した次の経験に対して注意をうながす。  

 a.直円筒形の丸棒を取り付け削る 

 b.手動.自動送りを用いる。 

 c.バイトを研磨する。 

 d.速度と送りを調節する。 

 e.教室でねじの性質について学ぶ。 

2.行うべきジョブを説明する。 

 径1” 1”に8山 長さ2” 

 嵌合度任意 

3.実  演  

 a.バイトを研磨し,ゲージに合わせる。 

 b.刃物台にバイトを取り付けゲージに合わせる。 

 c.求めるねじに対して歯車を調節する。 

 d.切削速度を調節する。 

 e.荒削りする。 

 f.1”のねじ山を調べる。 

 g.じょうに切削する。 

 h.ねじゲージおよびテストナットに対し嵌合度を調べる。 

4.次の注意事項を強調する。 

 a.センターと取り付ける前にスピンドルホールを清掃する。 

 b.スピンドルノーズに回し板を締めつけすぎるな。 

 c.バックラッシュを防ぐ。 

 d.切削中随時潤滑する。 

 e.最初の切込みを深くするな。 

 f.仕上削りを数回行う。 

 g.材料ががたいほど切削速度をおそくする。 

5.生徒から次のことを誘い出す。 

 a.ねじを切る場合,どんな順序で行うとうまく行くか。 

6.材料と取り去り,旋盤をもとへもどす。 

7.材料と研磨しないバイトを生徒に与える。 

  生徒に実施させる 

  点検する。 

   〃 

   〃 

   〃 

   〃 
  

  点検する。 

  よく観察する。 

  必要な箇所を修正する。 

  点検する。 

8.ジョブの評価を生徒に尋ねる。 

9. 生徒の仕事を評価し記録する。 

10.ねじ切削の次の課題を与える。

生徒の活動

聞く。 

質問に答える。 

  

  

  

  

  

  

  

観  察 

わからないときは質問する。 

  

  

  

  

  

  

  

聞く。 

  

  

  

  

  

  

  

  

質問に答える。 

  

  

  

バイトを研磨しゲージで調べる。 

旋盤に材料を取り付ける。 

ゲージを用いてバイトを刃物台に取り付ける。 

歯車を調節する。 

切削速度を調節する。 

荒削りし,点検する。 

荒削り・仕上削りをうまく行う。 

ねじゲージで調べる。 

ナットで嵌合度を調べる。 

点検の基準に対しジョブの評価を述べる。 

 

 
    必要設備と材料  

旋盤,センタ,回し板,回し金,バイトホル 
ダ,油かん,ブラシ,ねじゲージ,センタゲージ, 
テストナット,バイト2,心立てし,径1〃 
に旋削した長さ8〃の 

鋼棒2.

点検の基準

バイトは正確に研磨されたか。 

バイトはホルダに正しく調節されたか。 

ホルグは刃物台に正しく取り付けられたか。 

換歯車は正しく選ばれ,調節されたか。 

荒削りは正しく行われているか。 

ねじはなめらかで,ねじゲージに正しく合っているか。 

テストナットは自由にまわるか。

 

 知識についての授業計画も上の例にならって作ることができる。この授業計画の中の生徒の活動の部分で,生徒が実施する部分に段階に分けて列記した諸活動の項目が,次節に述べるオペレーション指導票の主要な部分になる。

 指導票の作成  授業計画が完成すればそれに基づいて授業を行うのであるが,この授業を効果的にするために指導票を用いることが望ましい。指導票には次のような利点がある。

 この多くの利点がある反面また欠点もあるが,利用施設の現状や,時間の不足にかんがみて,これを利用することが,指導の効果をあげる上にきわめて有効である。

 指導票にはその使用の目的,指導すべき項目の違いにより,次のような種類のものがある。

1.オペレーション指導票

 この指導票は,一つのオペレ—ションを行うときに,その各段階を明確に指導するためのものであり,何かある一つのプロジェクトを生産する場合に使われるようには作られていない。これにはいろいろの様式のものが考えられるが,普通使われているものは,使用設備,使用材料,オペレーションの各段階,危害予防の注意事項,参考書等が書かれている。その一例は,第2篇の各課程の単元の一例の展開の部分に示してあり,また前節の授業計画の例の中にもこれのもとになるべき部分が述べられてある。なお次にその一例を示す。

 関東地区中等教育研究集会工業部会    1950.6・7〜13

         分析作業表       op—4

 オペレーション      No.9荒削りする

————————————————————————————————

使用工具と設備  1.旋盤         5.チヤック締め

         2.チヤックまたは回し板 6.スパナ

           ドッグとセンタ    7.鋼尺

         3.バイトとバイト持たせ 8.外径パス

         4.刃物台        9.内外共用パス

————————————————————————————————

使用材料     1.切削

         2.鉛白

————————————————————————————————

参考資料

————————————————————————————————

指導のステップ

2.知識指導票

 この指導票は,一つの知識の項目を指導するためのもので,一つの知識の項目の各条項が簡単にしるされ,参考図書があげられている。

 次にその一例を示す。

         分 析 作 業 表     T1—6

技術的知識   No.1O  切削剤と冷却剤

————————————————————————————————

使用工具と設備

————————————————————————————————

使用材料

————————————————————————————————

参考資料

————————————————————————————————

指導ステップ

3.ジョブ指導票

 これはある特殊な製品を作るために必要な指導事項を,全部含んでいるもので,したがってこれには多くのオペレーションが含まれ,オペレーション指導票によっていっそう完全に指導が行われる。これにはつくられるべきジョブの説明,ジョブの明細書,工具と材料の表,ジョブを行うための一連の段階の一般的な指示にとどまり,どのようにして行うかは示していない。むしろ新しいジョブに着手する前の計画である。

4.研究指導票

 これは学習と研究を課するためのもので,数学・理科・製図等の関係的な科目を指導するのに役だつ。これには,指導すべき原理の説明,応用の例,問題,研究すべき事項,解答を見いだすための指導等が記入されている。

5.実験指導票

 これは実験を指導するためのもので,実験の指針,その順序,必要器具等が記入されている。

 

第4章 学習結果の考査

 学習の指導にはその目標とするところがあるから,生徒がその目標にどの程度に到達し,予期した結果をどの程度に達成したかを知り,それによって生徒の直面する困難を打診し,指導の方法を改善するために,学習結果の考査をすることが必要である。ことに工業課程は,将来つくべき職業を目ざすものであるから,生徒の適性の発見,職業の選択の資料を得るために考査が必要である。

 考査の方法  考査すべき目標を大別して,技能・理解・態度とすれば,それぞれその目標によって考査の方法も異なる。工業課程において第一に目標とすべき技能は,職業分析によって得たオペレーション一つ一つについて,どのように進歩を遂げているかを,日常の作業の観察によって各単元ごとに記録しておくことが必要である。職業分析の図表のプロジェクトの名称を記入する欄に生徒の姓名を記入しておき,個々の生徒の,一つ一つのオペレーションの上達の程度を記入しておく。その一例を次に示す。
進 歩 表
機械工作課程
施盤作業
オペレーション
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
10 11 12 13 14 15 16
旋盤を始動・停止・逆転する 1 
2
3
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
1 
2
1 
2
2
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
3
旋盤を掃除し注油する 1 
2
3
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
1 
2
3
切削工具を研磨する 1 
2
3
1 
2
1 1 
2
1 1 
2
1 
2
3
1 
2
1 1 
2
1 1 
2
1 
2
3
1 
2
1 
2
1
チャックの取付およびチャックの仕事 1 
2
3
1 
2
1 1 
2
1 
2
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
1 
2
3
1 
2
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
1 
2
1 
2
旋盤の速度をきめる 1 
2
3
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
3
1 
2
1 
2
1 
2
3
1 
2
1 
2
1 
2
送りをかける 1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
1 1 
2
1 
2
1 1 1 
2
チャックに取り付けた材料の正面を削る 1 1 1   1 1   1 
2
1 1   1 1 
2
3
1 1 1 
2
けがきし心を立てする 1 
2
3
1 
2
1 
2
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
2
センタを取付取りはずす 1 
2
3
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
3
1 1 
2
1 
2
3
1 
2
1 
2
1 
2
3
10 回りセンタを正しく合わせる 1 
2
1 
2
1 1 1 1 1 1 1 
2
  1 1 1 1 
2
1 
2
 
11 止りセンタを正しく合わせる 1 1   1   1     1 
2
  1   1 
2
1 
2
  1
12 両センタを一線にする 1 
2
1 
2
1 1 
2
1 1 
2
1 1 1 1 
2
3
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
3
1 
2
1 
2
3
13 加工物をセンタ間に取り付ける 1 
2
3
1 
2
1 
2
1 1 1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
1 1 
2
3
14 バイトを取り付ける 1 1 1 1   1 1 1 1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
1 1   1
15 センタに取り付けた材料の端面を削る 1 
2
1 1 
2
1 
2
3
1 
2
1 1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
1 1 
2
1 1 1 1
16 荒削り 1 
2
3
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
3
1 
2
3
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
1 
2
1 1 1 
2
1 
2
17 キャリパーの寸法に合わせて削る 1 
2
1 
2
1 
2
1 1 
2
1 
2
3
1 
2
1 1 
2
1 1 1 1 1 1 
2
1 
2
18 仕上削り 1 1 1   1 1 
2
1 1 1 1   1   1   1
19 マイクロメータで測定する 1 
2
3
1 
2
1 1 1 
2
1 1 
2
1 1 1   1   1 
2
1 1
 

 次に分析によって得たオペレーションの指導順序と作るべきプロジェクトの順序に従って考査の水準を決めて,等級づけを行うことが必要である。このオペレーションの組合わせとして,製作品による技能の総合的評価,作業日誌や記録による実務能力・計画能力等を考査する。

 理解の程度の考査は,客観テストや論文テストによって行う。この場合の考査の問題は,客観的で,確実な論理的根拠をもち,正確で,それぞれの課程や科目の中で適切なものでなければならない。

 評価の基準  各課程各単元により,それぞれ考査すべき目標に多少の相違があるので,各課程ごとに考査の目標を定め,また各単元により考査の目標の比重すなわち重点のおき方を定め,単元全体の評価をその比重に従ってあん分し,その単元の学習時間や重要度の程度に従って比率を考えて,評価の基準をつくり,これを五段階にわけて評価し,その総和を作っておけば,精緻一人一人のそれぞれの考査の目標に対する到達の程度すなわち生徒の個性や能力を知ることができ,生徒の能力に応じた職業の選択のためにきわめて役にたつ,次にある課程のある単元の評価の一例を示す。
評価の目標
(1)段階5の合計を100とする。 

(2)各段階の等級づけは正常分配曲線をつくってみなければわからないが,ここに示したものはその結果の例である。 

(3)評価の目標は課程や単元によって,適切なものと選定することが望ましい。( )内の細分は評価すべき目標となるものの目安を示した。 

(4)単元ごとのこの表の作成や,各表の合計の結果の取扱は生徒指導要録とは一応切りはなして考える。

 

  

  
  

作業技術
操     作
取     扱
製品のきれいさ
正  確  さ
速     さ
0-20 22 24 26 28
製図技術
き れ い さ
正  確  さ
文     字
速     さ
0-6 10
実務能力
計     画
実     践
経     営
管     理
指     導
0-8 10 11 12
応用と創造の能力
考     察
工夫,創造,改善
応     用
表     現
批     判
0-9 10 11 12 13
関係知識の理解
技術的知識
一般的知識
職業指導的知識
0-16 17 18 19 20
態度と習慣
興     味
協     力
責  任  感
誠  実  性
習     慣
0-13 14 15 16 17
 

 この五つの段階の等級づけは,正常分配曲線をつくってみての結果ではあるが,第5段階すなわち最高点をきめるには,一応次のことを考慮に入れておくことも必要である。すなわち,