ま え が き
(一) 芸能科書道の評価とはどんなことか。
(1) 技術に偏していたこと。
(2) 成績物の処理に終ったこと。
(3) 客観性が乏しくて、科学的でなかったこと。
などが、評価の実態であった。これからの評価は、理解・技術・鑑賞・態度の全般にわたって、生徒の実態を知り、適切な計画をたてるための調査を行ったり、学習の前後を通じて、一貫した行き届いた観察をしたり、また、適宜にテストを行ったり、学習の結果を正しく測定したり品等したりして、生徒の成長発達を明らかにしなければならない。また、その資料を再計画にじゅうぶん役だてるようにしなければならない。
学習指導の方法が適切でなければ、その目標の効果的な達成を望むことはできない。生徒の書道に関する経験・興味・能力は、地域・学校・学級・個人によって百人が百人みなちがう。書道の学習指導は徹底した個人学習・個人指導でなければ、じゅうぶんな効果は期待できない。そのためには、個人個人について、綿密な評価が行われ、方法の改善のための豊かな資料を用意しなければならない。
書道の学習指導の計画は、生徒の必要・興味・能力に応じ、かつ、社会の必要を考慮して目標がたてられ、その学習指導が組織される。しかし、流動する社会と成長する生徒を対象としている学習指導計画であるから、絶えざる再計画・再組織が行われなければならない。評価の結果は、ことごとくそのための貴重な資料となる。書道の教育課程の改善は教師のたいせつな仕事の一つで、ここにも評価の高い意義がある。
評価は、学習の結果としての成績物の検討や、教師作製のテストだけに終ってはならない。学習指導の過程において精密に観察し、記録し、理解・技術・鑑賞・態度の全般にわたって、その実態をつかまなければならない。
書道の経験は、教室における書道学習の時間内に限らない。学校のいろいろな行事、国語科・社会科、職業に関する教科、家庭科などの教科活動、ホームルーム・生徒会・クラブ活動などの特別教育活動においてもなされる。したがって、書道に関する評価の機会は相当多く、学校長や他教師の協力を得ることがたいせつである。
書道は、社会にも家庭にも生きている。生徒の父兄や地域社会の人々には、特に書道に興味を持っているものも多いのであるから、一般的な欠点や望ましい方向について、その意見をたずねることもたいせつである。学校内外の書道展示会などは、そのためのよい機会を提供する。資料や環境の調査と利用は、これらの人々の協力なくしては行うことができない。
生徒の自己評価・相互評価および教師・生徒共同の評価は、高等学校生徒において特に意義がある。その学習目標を自覚し、効果的な学習を展開するためには、生徒自身の批判と反省の上に立って、自発的な活動を導くことがたいせつである。
(一)観察法
次に、芸能科書道の理解・技術・鑑賞・態度の評価について述べる。
l 口問口答によるテスト。
2 論文体テスト。
3 客観的テスト。
(ロ) 形態
(ハ) 運筆
(ニ) 墨色
(ホ) 精彩
(ヘ) 創意
下
全級作品 中 上
下
下 上
下
五段階の場合をいうと、
(1) 不正確。
(2) 少し形がわるい。
(3) 普通。
(4) 整っている。
(5) 非常にすぐれていて、しかもおおらかさが見える。
1 一対比較法
優劣のある作品一対を並べておいて、どちらがすぐれているかを判断する方法である。この場合、あらかじめ、二つの作品の価値が非常に差のあるものから、非常に差の少ないものまでを、十組ぐらい準備しておいて、これを比較判断させれば鑑賞の力を評価することができる。
2 順位法
一対比較法では比較するものが二つであるから、でたらめに答えても、二分の一の確率がある。したがって、その判定が絶対正確なものであるとはいえない。そこで、たとえば、ABCの優劣のはっきりしたもの三つの順位をつけさせて、鑑賞の力を評価するのが順位法である。その答としての並べ方には、次のようないろいろなものが考えられる。
(1) ABC
(2) ACB
(3) BAC
(4) BCA
(5) CAB
(6) CBA
一対比較法や順位法は作品全体から受ける感じを好悪や快・不快によって、全体としてとらえて、比較するのであるが、さらに一歩を進めて、その作品が持ついくつもの要素を分祈して、その一つ一つについて記述尺度を作り、これを総合することによって、より正確に鑑賞の力を評価することができよう。しかし、表出される美は、単なる要素の一つ一つからでなく、これらの要素が有機的に結合されるところに生れるものであるから、この方法が必ずしも正確なものとはいえないが、一つの有力な手がかりとなりうる方法である。(二 芸能科書道の評価例 参照) (四)態度の評価
学習指導がいかに行われたか、その計画がどうであったか、
どう修正したらよいかを評価するためには、次のように単元の計画および展開の記録を残すことがたいせつである。一般に単元の計画および展開は、1 設定の理由
3 内容
4 資料
5 学習活動
6 評価 の六頂目の上に考えられるのであるから、その各項について、目標を中心にして、一貫した評価をすることがたいせつである。(二 芸能科書道の評価例 参照) 二 芸能科書道の評価例
学 年 | 氏 名 | ||||||||
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解 |
書 道 史 | ||||||||
書 論 | |||||||||
用 具 | |||||||||
作 品 形 式 | |||||||||
書の芸術性がわかる | |||||||||
術 |
用 筆 | ||||||||
形 の 整 え 方 | |||||||||
速 度 | |||||||||
全体のまとめ方 | |||||||||
墨 色 の 出 し 方 | |||||||||
創 意 | |||||||||
賞 |
運筆の美を味わう | ||||||||
形体の美を味わう | |||||||||
空白の美を味わう | |||||||||
個性の美を味わう | |||||||||
墨色の美を味わう | |||||||||
度 |
楽しんで書く | ||||||||
熱心に書く | |||||||||
用具をたいせつにする | |||||||||
生活に生かす | |||||||||
(二) 学級別観察記録簿
価 事 項
徒 氏 名 |
|
|
|
態 度 | ||||||||||||||||
道
史 |
論 |
具 |
式 |
術
性 |
筆 |
の
整
え
方 |
度 |
体 の ま と め 方 |
色 の 出 し 方 |
意 |
筆
美 |
態
美 |
色
美 |
白
美 |
性
美 |
し ん で 書 く |
具 を た い せ つ に す る |
心
に
書
く |
活 に 生 か し て い る |
|
(三) 単元計画展開記録簿
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習
指
導
案 |
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1設定の理由
(1) (2) (3) |
1導入
(1) (2) (3) |
1導入
(1) (2) (3) |
||
2目標
(1) (2) (3) |
2班別
(1) (2) (3) |
2班別
(1) (2) (3) |
||
3内容
(1) (2) (3) |
3練習
(1) (2) (3) |
3練習
(1) (2) (3) |
||
4資料
(1) (2) (3) |
4鑑賞
(1) (2) (3) (4) |
4鑑賞
(1) (2) (3) (4) |
||
5学習活動
(1) (2) (3) (4) |
5章法
(1) (2) (3) |
5章法
(1) (2) (3) |
||
6評価
(1) (2) (3) (4) |
6………
(1)……… (2)……… |
6………
(1)……… (2)……… |
(四) 技術の記述尺度
4 かなりおもしろい
3 普 通
2 あまりよくない
1 乱雑である
4 適切である
3 普 通
2 平凡
1 全然調和がなく魅力がない
4 おちついている
3 普 通
2 やや不安定
1 非常に不安定
(2)つりあいと調和
4 かなりとれている
3 普通
2 わるい
1 非常にわるい
(3)おもしろさ
4 おもしろい
3 普通
2 ほとんどない
1 全然魅力がない
4 かなり正確
3 普通
2 不正確
1 非常に不正確
(2)伸びやかさ
4 伸び伸びしている
3 普通
2 鈍感
1 いしゅくして死んでいる
(3)線の変化と味わい
4 おもしろい
3 普通
2 平凡
1 全然動きがなく死んでいる
4 生きている
3 普通
2 ところどころおもしろい
1 きたない
4 新味がある
3 普通
2 その人らしさが出ている
1 まねばかりである
4 かなりとれている
3 普通
2 ややとれている
1 ばらばらである
(2)調和
4 かなりとれている
3 普通
2 ややとれている
1 ばらばらである
(3)形象美
4 おもしろい
3 普通
2 少しはある
1 全然ない
(4)線条美
4 おもしろい
3 ややおもしろい
2 平凡
1 美しくない
(5)脈絡美
4 相当ある
3 普通
2 少しはある
1 全くない
(6)章法美
6 かなりよい
3 普通
2 あまりよくない
1 乱雑である
(7)墨色美
4 生きている
3 普通
2 少しおもしろい
1 きたない
(8)精彩美
4 かなり生きている
3 普通
2 少しある
1 ほとんどない