第五章 芸能科書道の評価

   ま え が き

(一) 芸能科書道の評価とはどんなことか。

1 評価は、体系的、科学的に行われなければならない。 2 評価は、生徒の成長のため、学習指導法の改善のため、教育課程の再組織のために行われる。 (二) 芸能科書道の評価は、いつだれが行うか。 1 評価は、学習指導の前後を通じ、絶えず行われなければならない。 2 評価は、教師だけでなく、生徒や父兄や地域社会の人々も参加して行う。 一 芸能科書道の評価の方法  芸能科書道の評価は、知識・理解の面よりも、技術・鑑賞ウ・態度の面が困難である。その方法にはいろいろあるが、今二、三のものについて述べる。

(一)観察法

 生徒個人個人の書道における成長発達を、長期にわたって観察し、記録する方法である。この方法は、生徒に対する個人別の詳しい観察記録簿を用意し、随時生徒の書道の学習活動を観察し、記録していくのである。これは必ずしも全評価項目について一時に実施するのではなく、特に目立った点、必要な点について、随時しるしをつけておくのである。(二 芸能科書道の評価例 参照) (二)テストによる方法 (一)理解の評価  書道に関する知的な面、すなわち、書の必要性、書風・書体・書道史・書論・碑法帖・芸術性・用具などについて、どの程度の理解を持っているかを評価するには、次のような方法が用いられる。

l 口問口答によるテスト。

2 論文体テスト。

3 客観的テスト。

(二)技術の評価  従来、技術の評価は、概して主観的で、妥当性が乏しかった。これをより客観的なものとするためには、少なくとも次のような点に着目して、比較法や見本法や対比法や記述尺度法などを用いて評価することが望ましい。 1 比較法 2 見本法  形の取り方を例にとっていえば、同一学年あるいは同一コースの作品を三段階ぐらいに分け、その各段階について、最も共通性を持つものを一枚取り上げて、これを一つの見本として、他の作品をその見本と比較する方法である。こうすれば、形において、その学年あるいはそのコースとしての一つの尺度が得られ、これと比較することによって、形の良否を容易に見わけることができる。 
 あるいはまた、清書を総合的に分類して三段階とし、一つの見本を作ることもできる。この見本と比較することによって、客観性の高い評価を行うことができる。
3 対比法  全級生徒の作品を上・中、下の三段階に分け、さらに、これを上・下あるいは、上・中・下に分けて、六段階または九段階にして、評価する方法である。        上 

          

全級作品 中 

          

       下  

          

4 記述尺度法
(三)鑑賞の評価  鑑賞の力のいかんを評価するには、次のような方法を取ることが効果的である。

1 一対比較法

 優劣のある作品一対を並べておいて、どちらがすぐれているかを判断する方法である。この場合、あらかじめ、二つの作品の価値が非常に差のあるものから、非常に差の少ないものまでを、十組ぐらい準備しておいて、これを比較判断させれば鑑賞の力を評価することができる。

2 順位法

 一対比較法では比較するものが二つであるから、でたらめに答えても、二分の一の確率がある。したがって、その判定が絶対正確なものであるとはいえない。そこで、たとえば、ABCの優劣のはっきりしたもの三つの順位をつけさせて、鑑賞の力を評価するのが順位法である。その答としての並べ方には、次のようないろいろなものが考えられる。

3 記述尺度法

 一対比較法や順位法は作品全体から受ける感じを好悪や快・不快によって、全体としてとらえて、比較するのであるが、さらに一歩を進めて、その作品が持ついくつもの要素を分祈して、その一つ一つについて記述尺度を作り、これを総合することによって、より正確に鑑賞の力を評価することができよう。しかし、表出される美は、単なる要素の一つ一つからでなく、これらの要素が有機的に結合されるところに生れるものであるから、この方法が必しも正確なものとはいえないが、一つの有力な手がかりとなりうる方法である。(二 芸能科書道の評価例 参照)

(四)態度の評価  態度は、芸能科書道の理解・技術・鑑賞が身について、生活に生きている書道の習慣をいうのであるから、具体的目標にあげた各項目について、観察記録を累加して行くことによって、態度の評価ができるのである。その資料が豊富であればあるほど、好ましい書道の態度について、妥当な評価が行われるのである。 (五) 学習指導計画の評価

  学習指導がいかに行われたか、その計画がどうであったか、 どう修正したらよいかを評価するためには、次のように単元の計画および展開の記録を残すことがたいせつである。一般に単元の計画および展開は、

の六頂目の上に考えられるのであるから、その各項について、目標を中心にして、一貫した評価をすることがたいせつである。(二 芸能科書道の評価例 参照)
二 芸能科書道の評価例 (一) 個人観察記録簿  芸能科書道における個人の成長発達を詳しく記録するためには、個人観察記録簿や学級別観察記録簿を作っておくことがたいせつである。その一例を示せば次のようである。
学 年   氏 名  
 
月 日
月 日
月 日
月 日
月 日
月 日

 

 

書  道  史            
書     論            
用     具            
作 品 形 式            
書の芸術性がわかる            
             
             
             

 

 

 

用     筆            
形 の 整 え 方            
速     度            
全体のまとめ方            
墨 色 の 出 し 方            
創     意            
             
             
             
             
             

 

 

 

運筆の美を味わう            
形体の美を味わう            
空白の美を味わう            
個性の美を味わう            
墨色の美を味わう            
             
             
             
             
             
             
             
             

 

 

楽しんで書く            
熱心に書く            
用具をたいせつにする            
生活に生かす            
             
             
             
             
             
             
             
             

 

(二) 学級別観察記録簿
 


 
 

理    解
技     術
鑑   賞
態   度

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         

 

(三) 単元計画展開記録簿
 
単  元

 

 

 

 

月   日
第   時限
備 考
原   案
修   正
1設定の理由

(1)

(2)

(3)

1導入

(1)

(2)

(3)

1導入

(1)

(2)

(3)

 
2目標

(1)

(2)

(3)

2班別

(1)

(2)

(3)

2班別

(1)

(2)

(3)

 
3内容

(1)

(2)

(3)

3練習

(1)

(2)

(3)

3練習

(1)

(2)

(3)

 
4資料

(1)

(2)

(3)

4鑑賞

(1)

(2)

(3)

(4)

4鑑賞

(1)

(2)

(3)

(4)

 
5学習活動

(1)

(2)

(3)

(4)

5章法

(1)

(2)

(3)

5章法

(1)

(2)

(3)

 
6評価

(1)

(2)

(3)

(4)

6………

(1)………

(2)………

6………

(1)………

(2)………

 

 

(四) 技術の記述尺度

1 章法の記述尺度 2 形態の記述尺度 3 用筆の記述尺度 4 墨色の記述尺度 5 創作性の記述尺度 (五) 鑑賞の記述尺度