第3章 社会科の学習内容

幼 稚 園

 このころの幼児は好奇心が強く,手足や感覚器官を盛んに動かして周囲の事物に触れたり,その名前を知りたがったり,用途を知ることに興味をもったりする。自己を強く主張し,じぶんのしている事をじゃまされれば強く怒るというようなこともあるが,社会的協同性もしだいにめばえてきて,他のこどもと協同して遊んだり仕事をすることを好むようになる。ことに,ごっこ遊びを好み,これによっておとなの生活をまねることに興味をもつ。まだ想像の世界と現実の世界とがじゅうぶんに分化していないので,ごっこ遊びによっておとなの生活を細かいところまで忠実に表現しようとはしないし,使う道具などもきわめて簡素なもので満足し,たとえば積木に用いる木片を押したり引いたりして,汽車や電車を動かしているつもりになったりするが,このような遊びを通じて,おとなの仕事や,事物の用途などをしだいに理解していくのである。幼児たちは,かれらの経験を言語や絵画によって表現することは,まだじゅうぶんにできないから,ごっこ遊びが最もよい学習の方法であろう。

 したがって幼稚園では,おうちごっこ,おきゃくごっこ,お店ごっこ,乗物ごっこなどによって,おとなの仕事や,周囲の事物の用途などを,ごくおおまかに,初歩的に理解させるとともに,次にあげるような生活態度を養うことをめざすべきであろう。

○仕事のしかたをよく守る。

○仕事をやりとげる。

○自分から進んでやる。

○材料や道具を分け合って使う。

○物や道具をたいせつにする。

○遊び方や道具の使い方をくふうする。

○ひとと仲よく遊ぶ。

○ひとの物を大事にする。

○順番をよく守る。

○ひとに迷惑にならないように静かにする。

○慎みのある動作や態度がとれる。

○ひとに親切にする。

○公正に遊びや仕事をする。

○責任をもって分担した仕事をする。

○ひとに協力する。
 
 

第 1 学 年

 発達の特性

 1年の児童は盛んに,手や足を動かし,感覚器官を通じて周囲の人々や事物に触れようとする。そしてそれらの名前を知りたがり,その役割用途についても簡単なものは知ろうと努める。特にはじめて学校にはいったので,通学の途上でも,学校の中でも,目に触れる事物はみな珍しいのである。

 いずれにせよ,かれらはあらゆるものに好奇心をもち,それらについて知り,それらと親しもうとしている。そしてひとたび自分の家庭以外の学校や通学路上で触れる人や事物について知ったり,友だちの家庭の人々と知り合ったりすると,新しい関心をもってじぶんの家庭をながめるようになるであろう。

 したがって,家庭や学校などで接する人や事物について,児童相応の知識理解をもたせ,これに慣れさせ親しませるには,どうすればよいかということが,1年生指導の重点であろう。

 目  標

○おとなはみな何かの仕事をもっている。

○家の人たちはみな何かの役割をもっている。

○親は常にこどものために配慮している。

○家ではわたくしたちの衣食住など毎日の暮しの世話をしてくれる。

○家の人々は植木・作物・家畜などの世話をしている。

○人々は家庭や学校でみんなで楽しい生活をするためにいろいろな行事をしたり施設を設けたりする。

○互に親切を尽し合えばわたくしたちの生活は楽しくなる。

○規則をよく守れば楽しく遊ぶことができる。

○注意して物を整頓したり,飾ったりすれば,家庭や学校をもっと美しくすることができる。

○家庭や学校では健康と安全のために必要な施設を設けている。

○からだがじょうぶであると,楽しい生活ができるようになる。

○人々は種々の交通機関によってゆききしたり,物を運んだりする。

○ほかの人といっしょに生活するためには時間をよく守ることがたいせつである。

○ほかの人といっしょに生活するためには,決して人に迷惑をかけてはならない。
 

  単元の基底の例 〔身近な生活〕

○学校における生活

○家庭を中心とする生活

   〔  〕の中に示すものは学年主題である。

第 2 学 年

 発達の特性

 2年の児童は,1年に比べれば,身近な生活環境にずっと慣れてきている。したがって,その活動はいっそう活ぱつになり,その生活経験もさらにまとまりをもってくる。そこで,たとえば商店・郵便集配人・警官・医師・消防にたずさわる人・新聞配達人・牛乳配達人・行商人・御用聞き・ポスト・交番などの,人や事物の役割を理解することができるようになる。もちろんそれはだいたいにおいてこれらの人や物の役割を部分的にとらえているにすぎないが,これらの人や物の役割相互の関連も,簡単ではっきりしているものならばとらえることができる。

 したがって,そのような角度から,児童の生活経験の発展をはかり,人や物の役割を進んで学ぶ態度,自分から何かの役を進んで果そうとする態度を身につけさせることが,指導の重点である。

 目  標

○世の中には種々の職業があって,わたくしたちの生活を便利なものにするのに役だっている。

○店で売っている品物は社会の多くの人々の手で作られ,運搬されてきたものである。

○人々は動植物を育てて生活に役だてている。

○どこの家でも必要な物を手に入れるためにいろいろくふうしている。

○家や学校や近所では,それぞれ厚生慰安のためにいろいろなくふうをしている。

○人々はみんなで集まって,楽しもうとする。

○近所の人々は必要なときには力を貸し合っている。

○近所の人々は便利な施設などを共同で利用する。

○社会にはわたくしたちの生命や財産の安全を守るための施設がある。

○世の中には健康のための施設がある。

○公衆衛生は各人がよい規則や習慣を守ることによって維持される。

○人々は健康で楽しい生活をしようとして協力している。

○互に他人のことを考えれば楽しい生活ができる。

○どうすれば生活をよくすることができるかということを,よく他人と相談すれば,もっと便利な生活ができるようになる。

○交通通信機関はわたくしたちの生活をたいへん便利にしている。

○公共のために働く人々に感謝し,いつでも進んでその人々に協力できるようでなくてはならない。

○医師・警察官・消防にたずさわる人などは,わたくしたちを安全にするために働いている。

○それらの公共のために尽す人々はいつでも仕事にかかれるように準備している。
 

  単元の基底の例
 
   〔身近な生活〕 ○近所の生活

○わたくしたちの生活を守ってくれる人々。
 
 

第 3 学 年

 発達の特性

 1・2年の児童でも,人や事物の間の関係をつかみとるととができないわけではないが,多くの場合,それらは,いわば,ばらばらの形で経験される。ところが3年生になると,人々と社会の関係がわかりかけてくる。そして人間と自然との間の基本的関係,あるいは社会の基本的なかたちに関心が向かってくる。またじぶんの属している郷土社会(町や村)についての関心が強いこともこのころの特色である。そして,もし大昔の人々や未開人の生活が紹介されれば,それに強い関心もち,熱心に究明しようとする傾向も見られるであろう。

 児童は人や物の間の関係が一定のきまりに基いているということに気がついてくる。そしてまた一方,じぶんたちの社会,すなわち教室や校庭でも,やはり同じようにきまりがあって,それを守ることがたいせつであるということに気がついてくる。ことにそのようなきまりが,じぶんたちで責任をもってつくったものである場合には,かれらはそれを守ることについて特にやかましくいうものである。かれらは,もちろんじぶんも進んでそれを守ろうと努めるが,そればかりでなく,時としては,きまりを破るものに対して,激しくとがめるようなことも起るのである。

 教師は,人間と自然との関係,社会生活の構造を児童に初歩的に理解させ,そしてかれらが属する社会における自己の立場を見いださせ,さらに他人の立場を正しく尊重することがたいせつであるという点に眼を開くように指導しなければならない。

 目  標

○人々が生計を立てるために行う仕事はその土地の地理的条件に影響されることが多い。

○自然的条件はわたくしたちの衣食住の様式と深い関係をもっている。

○わたくしたちが衣食住に使う物は土地によって大いに異なる。

○異なった土地に生活する人々はその産物を交換し合う。

○道路や交通機関は一つの土地と他の土地との相互依存を増進する。

○道路や交通機関の発達は土地の人々の生活のありさまにいろいろな変化を与える。

○町の人と村の人はその生活の種々の面で依存合っている。

○町や村は住みよい条件の整っているところに発達しやすい。

○町や村にはいろいろな公共施設があって人々の生活を便利にしている。

○人々はみんなが健康で安全な生活をするためにさまざまな協力をしている。

○人々は住んでいる土地に応じて厚生慰安の施設のくふうをしている。

○人々はじぶんたちの村や町を美しくするためにいろいろくふうをしている。

○人々が共同生活を営むにはいろいろなきまりが必要である。

○種々の職業は互に関係をもっている。

○動植物を保護し育成すれば生活を向上させることができる。

○動植物がわたくしたちの日常生活に役だつ面は非常に広い。

○役にたつ動植物は今後いっそう愛護していかなくてはならない。

○わたくしたちは互に考え方が違っている場合にも,それを喜んで検討し受け入れることよって,いっそうよい考えを生み出すように努めるべきである。

○わたくしたちはみな,何か人のためになる長所をもっているものである。

○人はみなその長所を生かすことによって他の人々の役にたつことができる。
 

  単元の基底の例

   〔郷土の生活〕

○郷土の生活

○動植物の利用
 
 

第 4 学 年

 発達の特性

 四年生になれば,活動欲や想像力が盛んになり,それがしだいに発達してきた推理力とあいまって,おう盛な冒険心や探険心を生み,その関心は一段と拡大されてくる。すなわち空間的には,身近な環境を越えて,広い地域や未知の世界に関心が広まり,時間的には,過去にさかのぼって,昔の生活はどのようであったかということを知ることに興味をもつようになる。

 したがって,指導の着眼点としては,人間と自然との交渉のしかたを調べさせたり,身近な生活と他の遠い地域の生活と比較させたり,現在と過去の生活を対比させたりして,社会生活の形態にはさまざまの差異のあることに気づかせることがたいせつである。また私たちの地域の生活と他の地域の生活との間の関連や,過去と現在とのつながりを,かれらの力相応に理解させて,人間生活への理解の目を一段と広く開かせることがたいせつである。

 目  標

○天然資源を保護し利用する方法をくふうすることによって,わたくしたちの生活は著しく進んできた。

○人々はこれまで長い間互いに協力することによって,全体の福利をもたらそうと努めてきた。

○困難な環境で生活する人々は,じぶんたちの問題を解決するために,特に協力する必要がある。

○社会生活を向上させるために,新しい道を切り開くには,不屈の勇気と忍耐が必要である。

○郷土の人々のこれまでの経験は,今日のわたくしたちの生活にも非常に役にたつ。

○わたくしたちは今の時代の人々のことばかりでなく,後世の人のことをも考えて,仕事をすべきである。

○町や村その他人々の住む場所は,自然的条件によって左右される。

○村や町や都会の発達には,自然的条件以外に,社会的条件も大きく働いている。

○道路や交通機関の発達は,自然的条件に大きく影響される。

○人々はさまざまなくふうをして,不利な自然の条件を克服し,交通の便宜をはかってきた。

○人々はよりよい生活条件の備っている場所に移動する傾向がある。

○人々は土地に住み着くとその土地の環境に適応しようと努める。

○世の中が開けるにしたがって,いろいろな種類の職業ができてきた。

○保健や厚生慰安の方法や施設はしだいに変化し増加してきた。

○交通機関の発達は一つの土地と他の土地との関係を緊密にするのに大きな働きをした。

○交通機関の発達によって,はやく,安全に,遠くまで交通することができるようになった。

○交通機関が発達して,わたくしたちはこれまでより効果的に時間を利用することができるようになった。

○人々はみんなにつごうのよいように,生活の様式を変えてきた。

○集団生活を望ましいものにしていくためには,他人の建設的な意見を重んじなくてはならない。

単元の基底の例

 〔わたくしたちの生活の昔と今〕

○郷土の開発

○町や村の発達

○交通の昔と今
 
 

第 5 学 年

  発達の特性

 5年の児童は,ものごとを系統的な,そして首尾一貫した立場でとらえるということはまだできないけれども,事物の論理的関係,特に因果関係を追求する傾向は著しくなる。かれらが自然資源の開発や,それらの資源の利用の進歩,発明発見によって家庭生活や社会生活が便利になった点,文明の威力,などに興味を強くもつようになるのはこのためである。

 そこで,教師の指導としては,文明の進歩,特に科学の発達によって,人間生活がどのように変化してきたかということを考察させることがたいせつである。そして科学の発達がわれわれの生活に著しい変化をもたらしたことを理解させ,いっそう有効な合理的な生活に目を向けさせていくことがたいせつである。

 目  標

○産業の発達は,気候・地勢・資源などの自然条件にまつところが大きい。

○産業の方法は科学の発達によって著しく改良されてきた。

○自然資源の利用のしかたは,産業の発達によって進んできた。

○産業の発達により衣食住の様式も変化してきた。

○資源の利用が進んでくると,資源を濫費し枯渇させる恐れがある。

○産業に機械を利用したり交通運輪が発達してくると,人々は多種多様の物資を手に入れることができるようになって,生活が便利にかつ豊かになってきた。

○分業が進むほど生活は能率的になる。

○分業が進むほど社会生活における相互依存も著しくなり,したがって他に対する責任も大きくなる。

○機械生産の発達は動力の利用のしかたに負うところが大きい。

○科学が発選するにしたがって,これを適当に利用すれば人間の労力は少なくてすむようになる。

○機械生産を活用すれば,人々は厚生慰安や,文化活動の余裕をもつようになる。

○大量生産は公共の福利を目的とすべきである。

○機械器具はわたくしたちの生命財産を保護するが,また時には損傷することがある。

○人類の幸福をはかることに科学を利用することが望ましい。

○工業の発達は人口の集中をきたす傾向がある。

○交易のしかたは世の中の進歩とともに変ってきた。

○物資が不足すればするほど生産と消費を調節することが必要になる。

○商品を手に入れる径路は,価格を左右する大きな要素である。

○金を使う場合には予算を立てる必要がある。

○物を買う場合にはよく品質を調べて選ぶこともたいせつである。

○商工業の発達は交通運輸の発達と相伴なってきた。

○商工業の発達は土地の特殊条件によって,しばしば促進されてきた。

○人々が,それぞれじぶんの納得できないことはしないようにしなければ,よい社会にはならない。
 

  単元の基底の例
  
  〔産業の発達と現代の生活〕 ○生活に必要な主要物資の生産

○手工業から機械生産へ

○商業の発達と消費生活
 
 

第 6 学 年

 発達の特性

 6年の児童は,5年に引続いて同じ方向に経験を発展させるように指導されるのであるが,5年生よりはいっそう統一的に生活の意味をつかむことができる。もちろんこれは,かれらの知的発達にも大いに関係があるが,かれらが最上級生として学校生活を大処高処からながめることができるようになったことにもよっている。

 このようにして,かれらは,じぶんたちの住んでいる社会が,精神的にも物質的にも相互に依存し合って形づくられたものであることに気づくであろう。

そして人々をこのように密接に結合する通信・報道・政治・貿易・外交などについて,もっと関心をもち,もっとはっきりした理解がもてるようになってくるであろう。したがって,わが国現代の生活がどのようにして近代化されてきたか,個人個人の立場がどのようにして尊重されるようになったかを理解するであろう。

 教師は児童に,種々の社会事象がどのようにして有機的な関連をもつようになったか,したがってまた,世界の国々に住む人々の生活が,どのように密接に結びついてきているかを理解させるように努めることが必要である。児童が民主主義・国際親善・世界平和の真の意味を理解できるように巧みに導いていくことは,一に教師の力にまたなくてはならない。

 目  標

○通信,報道機関の発達は,わたくしたちの意見の交換や,知識を豊かにすることを容易にした。

○通信,報道機関は,人間生活のいろいろな面に非常に役だつ。

○通信,報道機関の発達は,わたくしたちの相互の理解を進めるのに役だってきた。

○人々はみな幸福になれる権利をもっている。

○すべての人が幸福になれるように,みんなで協力することが政治でなければならない。

○政治上のあらゆる制度や施設の役割は,社会生活を合理化して,すべての人を幸福にすることにある。

○社会の秩序を維持するためには,個々の人々の協力による民衆の自主的統制が必要である。

○昔は身分に区別があって,人々の自由な活動が妨げられていた。

○昔は,国の政治が一部の人々の意見で行われ,一般民衆は参与できなかった。

○世界の国々は物的な面ばかりでなく,文化的な面でも,密接な相互依存関係にある。

○国を異にすれば,生活の形式も異なってくるけれども,人々はやはり人間としての共通の欲求もっている。

○国を異にする人々も,等しく人類の一員であるから,互に尊敬し合い互に幸福を願わなければならない。

○戦争は人類にとって最大の不幸である。

○わたくしたちは全力をあげて,戦争の回避に努めなければならない。

○自由はつねに責任をともなわなくてはならない。

○わたくしたちは絶えず自分たちの生活を改善して,合理的で意義のあるものにするように努めなくてはならない。

○学問の進歩と人々の協力とに努めれば,わたくしたちの生活はますます豊かなよいものにしていくことができる。
 

  単元の基底の例

  〔世界における日本〕

○通信報道機関の発達と現代の生活

○わたくしたちの生活と政治

○わたくしたちの生活と外国との関係