望ましい計算方法の案
計算はいろいろな方法で行うことができる。ここでは,今日行なわれているいろいろな方法を比較研究して,望ましいと思われる方法を示唆することにした。しかし,この方法だけを用いて計算しなければいけないなどと,窮屈に考えてもらいたくない。計算の方法は,数学的に正しいものでありさえすればよいわけであるから。
ここにあげてある方法は,小学校・中学校からみて,方法的に統一されていて,その理法が理解しやすいところに重点をおいて選んだものである。
1.数の書き表わし方
大きい数を読みやすくするために,小学校では,4けたくぎりにすることにする。しかし,実際の社会では,3けたくぎりが用いられているので,中学校にはいってから,3けたくきりで書いたり,読んだりすることができるように指導することにする。
2.四則計算
(1) 加 法
(b) 指導の初期においては,数字は上から下へと加える。
(c) できるだけはやく,数字を上から下へと加えていくだけでなく,下から上へと加えていくこともできるようにする。
(d) 験算は,下から上へと加えるようにする。
(b) 験算は,よせ算で確かめる。
(c) 指導が進めば,験算をするときに,ことさらに書き改めないで,ひき算をするために書いたものを用いて,差と減数を加え(下から上へ加えて)るようにする。
(b) 験算は,もう一度計算しなおしてみることによって行う。必要があればわり算を用いる。
(c) 指導の初期においては,449×30を右のようにする。意味がわかってなれてきたところで,249に3をかけて,その数の末位の右に0を一つつけるようにする。
(b) 余りを書き表わすのに,小学校では,分数を用いないことにする。
(c) 験算には,かけ算を用いる。
(d) 除数が二位数あるいは,けた数がそれ以上の数であるときに,次に示す方法で,商の各位の数字を推定する。
○除数の左から第二番目の数字が4あるいはそれよりも小さいときには,首位の数字をそのままに用いて,わってみる。
○除数の左から第二番目の数字が5あるいはそれよりも大きいときには,首位の数字よりも1だけ大きいものを用いて,わってみる。
3.分 数
(1) 分数の分母,分子の間に引く線は,水平に引く。
(2) 異分母のよせ算は,次のようにする。
(3) 異分母のひき算は,次のようにする。
第 4 部
幼稚園および低学年の指導
ここでは,幼稚園および低学年のこどもに対して,算数についての指導をするときに,特に気をつけたらよいと思われる事がらを述べることにする。
1.この時期における指導のねらいは,どんなところにあるか
この時期における指導のねらいは,こどもに算数についての豊かな経験をもたせ,そのあとの学習が円滑に進んでいくようにするところにある。したがって,こどもが豊かな経験をもつように,注意して計画をたてることがたいせつである。これがじゅうぶんにできさえすれば,算数が個人生活にとっても.社会生活にとっても,重要なものであることを,こどもが理解するであろう。また,こどもに,算数を用いて,自分自身の当面している問題を解決していくような傾向の芽ばえができてくるであろう。また,そのような問題を解決する能力が伸びてくるであろう。このような意味から,この時期における算数についての指導は,これからあとの学習の基礎を作りあげることをねらっているのであるから,重要なものである。
これからあと,数学的な事がらについての理解や数学的な技能が伸びていくようにしていき,社会における数学の位置についての理解を深めるように指導していくのである。
2.実際の指導において,特に,どんなことに気をつけたらよいか
この時期における学習指導をしていくときに,特に気をつけたらよいと思われることがらを項目にまとめておく。
(1) 理解をもって学習していくようにする
理解するというのは,こどもに,計算のしかたを,わけがわかろうがわかるまいが,ともかく,のみこませることをさしているのではない。こどもが,計算のしかたをまとめて,いわば生み出してくることをさしているのである。これがないのでは,こどもがこれでよいという信念をもつことができないからである。しかも,こどもが計算についての理解ができていないのでは,これらの方法を忘れずにささえていくために,もっぱら記憶にたよらねばならなくなるであろう。また,これでは,科学的に物事を考える傾向を伸ばすとこともできなくなるであろう。
一般の国民として用いる数学の主要な部分は,小学校で学習したことであるといつでも過言ではないであろう。このようなわけで,小学校の算数科の責任は,実に大きいといわねばならない。この重要な基盤となるものが,低学年にあることを思えば,その指導に当って,慎重に計画をたて,理解をもって学習していくようにすることが必要である。
(2) 指導の出発点にいつも気をつける
学年がどんなであろうとも,こどもに学習の準備がじゅうぶんにできているところで,学習を始めるようにしなければならない。特に,新入学のこどもについては,どんなことができるかについての実態をつかむことが必要である。これについての研究なしに指導を始めたのでは,こどもは学習することができない。このようなことがもとになって,高学年におけるできないこどもができてくるのである。先に述べたように,この時期は,これからあとの学習の基盤を作りあげていく時期であってみれば,特に,指導をどこから始めてよいかについての研究が必要である。
(3) これからあとの指導を見とおしておく
先に述べたように,この時期は,学習の基盤を作ることをねらっているのである。したがって,これからあと,どんなことについて学習するかを調べ,それへの連絡や発展は,どのようにしたら円滑にできるかを考えて指導することが必要である。たとえば,数を書いたり,読んだり,あるいは個数を数えたりすることをとおして,位取りの原理についての指導をするのである。この位取りの原理についての理解や,個数を数えたりすることは,これからあとの四則計算の根本になるものである。ところが,このようなことについての考慮をしないで,数を読んだり書いたりする指導を形式的にすましていくと,そのあとの計算ができなくなったり,あるいは,その計算ができるようにするために,たいへんな努力をしなければならないようになるのである。このような意味で,この時期からあとの学習の見とおしをもって指導し,形式的に流れないようにすることがたいせつである。
(4) 視聴覚教具を活用する
こどもは,特に,この時期のこどもは,じっと抽象的に考えることができない。こどもは,手て動かしてみたり,さわってみたりなどして学習していくものである。このようなこどもの学習活動ができるようにするためには,視聴覚的な教具を必要とするであろう。このようなものを用いて,こどもの行為をとおして,はじめて,数学的な概念や理解を形成することができるのである。さて,このような教具をひとりびとりの教師が自分で用意したりすることは,労力も大きいし,経費もかさむことであろう。できれば,教授資料室を設けて,図書室のように整理しておけば,労力の面からみても,物資,経費の面からみても,節約することができるであろう。
(5) 何回もくり返し指導する
学習指導は,気ながく,根気をもっておらなければ,その目的を達成することができないものである。特に,低学年や幼稚園のこどもに対する指導については,特に,この点を強調する必要がある。
とくに,この時期に指導しようとする事がらは,おとなのわれわれからみると,実にやさしくて何でもないことのようにみられるものが多い。しかし,こどもにとっては,そんなにやさしいものではないのである。しかも,遊びなどに気をとられていて,教師の指導しようとしているねらいなどに,そんなに気のつくものではない。このような意味から,やさしいとみられるものに基礎的な事がらが多いのであるから,同じことを何回もとりあげて,くり返し指導することがたいせつである。
(6) こどもの主な問題を用いる
今までに何回もくり返し述べたところであるが,算数の重要なねらいは,問題解決の能力を伸ばしていくところにあるわけである。このような意味からも,こどもの生の問題は,重要な意義をもっているのである。
また,このような問題は,こどもの学習意欲をさかんにするものである。しかも,これをとおして,新しい事がらについての指導の機会も得られやすいものである。とにかく,こどものもっている生の問題を,時には反復練習の指導のために,時には新しい指導へのきっかけとして,全指導計画の中にうまくとり入れていくことがたいせつである。このような柔軟性をもった指導であって,はじめて,この時期のこどもに対しての,生き生きとした指導となるのである。
(7) こどもの能力に応じて暗算を指導する
暗算は,こどもの学習からみてだけでなく,一般のわれわれからみても重要なものである。というよりも,こどもに必要欠くことのできないものである。しかし,この指導にあたっては,特に,次の二つの点に留意することが必要である。
○こどもがいつも使う計算に限定する
○こどもの能力にふさわしい程度のものにする
(8) 楽しく学習できるように指導する
算数を楽しんで学習できるようにすることは,特にたいせつなことである。これなしには,こどもは学習しようとする意欲を起さないからである。とにかく,算数を用いて生活をし,算数を楽しむように指導したいものである。このような意味から,算数が有用なあらゆる学習の場や学習の機会をとらえて,これを逃がさず,算数について指導していくことが必要である。
こ の 章 の ま と め
この章は,算数についてのこどもの学習活動をどのように指導したらよいかということを主題として,次のような仕組みになっている。第1部では,学習指導に関する一般的な問題を取りあげ,第2部では,特殊な問題として診断的指導,反復練習,算数科における技能の維持,論理的な思考を伸ばすこと,個人差に応ずる指導について述べた。また,第3部では,計算の形式に関して望ましいと考えられる試案を掲げ,第4部では,幼稚園および小学校低学年における算数指導に関して基本的な事がらについて述べた。これらのことは,次のようにまとめることができる。
第1部 一般的な問題
(1) 学習指導の根本理念
b.こどもはこどもなりに目的を持ち,内面的に統一された行為をしている。教師は,それを指導するにあたって,まずこどものこうした行為を承認する寛容さがなければならない。そして,これをどのように導いたらひとりびとりのこどもに最も適切な学習活動を営ませることができるかを,こどもの立場に立ち.こどもとともに考えなければならない。
c.算数の指導は単に基礎的な技能を形式的に教えるだけで,じゅうぶんであるとはいえない。こどもが有能な社会人として,かれらの生活を合理的・能率的に処理することができるように,技能を伸ばし,また技能のよさをわきまえて,これをじゅうぶんに使いこなし,さらに賢明な批判力にまで高められるのでなければならない。
b.数学的目標とともに,社会的目標も達成できるように努力しなければならない。
c.こどもが新しい学習を開始するにあたって,自然に学習が発展していくために有効であるような既往経験を豊かに用意したり,あるいは実際に経験させて,そこに学習活動を誘発する糸口を見いだすがよい。
d.計算や測定などのような基礎的な技能は,常にこれを反復練習して,いつも正しく使えるようにしなければならない。
b.こどもが,一時にただ一つの困難だけと取り組み,かつ,努力しさえすれば,それが克服できるようにする。
c.具体的なものや事実を使って,こどもに学習の目標をはっきりとつかませる。
d.こどもが新しい問題の解決に当面したときは,その解決に有効な手がかりを与えるような既習の内容があることを示し,それがどのように新しい問題に役だつかを示唆してやる。
e.こどもにとって興味があり,または生活上の必要にこたえるような教材を選んで指導し,かれらが喜んでそれを迎え,乗気になって学習し続けるようにしむける。
b.単にことばの上の説明のみに依存しないで,なるべく具体的な教材や教具を用いて,こどもの理解を助ける。
c.こどもの発達程度や日常生活にふさわしい教材を選んで取り扱う。
d.こどもの誤りや誤解に対しては,時機を失わないで指導し,こどもが理解の筋道から遠く逸脱したり,脱落しないようにする。教師は,常にこどものしぐさを注意深く観察し,忠実に記録しておくがよい。
b.こどもが当面している直接的な問題を取り上げて指導し,その解決に役だった能力が,こども自身のものの考え方や生活を処理する実際的な能力として累積されていくようにする。
c.こどもが学習を進めていくにあたって,教師は,できるだけ似かよった事例を選ぶようにする。一つの問題解決から,それと全く同じではないが,似かよった問題の解決にたどりついた経験や能力が累積されて,こどもは問題解決の能力が伸びていくものである。
d.こどもの理解が確実になったことを見届けたら,基礎的な技能に属するものはじゅうぶんに反復練習して,それがいつでも,どこでも,やさしく使えるようにする。
e.こどもが当面する問題を解決するための手がかりは,こどもみずからが見いだすようにしむける。教師が必要以上に立ち入って,かえって,こどもの考える力や創造力をそいではならない。
f.算数学習以外の場であっても,算数を使う機会があったら,その機会をのがさないで指導し,算数が生活の各方面において有用であることに目を向けるようにする。
b.個々のこどもの能力差に応ずる幅があるように指導計画を立て,どのこどもも成功できるようにする。
c.こどもの反応を観察して,当面している困難や混乱をつきとめ,指導計画を修正したり,指導法を改善して障害を取り除くようにする。
d.おくれているこどもに対しては,小さな成功ても,それを認めてほめてやる。また,望ましい状態にまで到達するには,どこをどう改めればよいかを見いださせ,成功が手の届くところにあることを知らせる。
e.多くのこどもを指導しているからといって,たったひとりのこどもの必要でも無視してはならない。
f.こどもの学習をはばんでいるものが何であり,それを打開するにはどのような方法を用いたらよいかについて,こどもに納得がいくように指導する。
b.技能が学習の場において有用なものであることがわかり,さらにその学習の場だけではなく,他の学習の場で問題を解決するのにも有効であることを知ってから,反復練習をする。
c.反復練習したものを有効に使えるようにするために,形式的な練習にさきだち,技能などについての理解をじゅうぶんに伸ばしておく。
d.こどもが,算数を正しく使えることを,じゅうぶんに確かめてから,反復練習に進む。
e.こどもに,成功による満足感を味わわせて,反復練習に喜びやはりあいを感じるようにする。
f.反復練習したら,これを実際の場で活用する。
g.練習の機会をできるだけ多く作る。練習をだんだんに複雑な学習の場で行うように指導して,こどもが自信をもって算数の技能を使いこなすことができるようにする。
b.教科書の教材がこどもの実情にそぐわないような場合には,それを適当に修正し,または,それにかかわるべき必要な経験や材料を集める。
c.計算やその他の数量関係についての理解が適切に提出されているかどうかを教科書について調べる。もし,適切でないものがあったら,補助的指導をあらかじめ考えておく。
d.教科書に使ってある用語や文章が,こどもたちに理解しやすいものであるかどうかを検討する。
e.こどもは,当面している問題の解決について教科書から暗示を受けたり,自分の試みようとする考え方が妥当であるかどうかを教科書について確かめたり,学習事項を整理したりするのに,教科書を利用する。
f.こどもは,教科書にある問題を用いて,計算などの技能を実際に適用したり,練習したり,反復練習したりする。
第2部 特殊な問題
(1) 診断的指導
b.教師は,学習内容を細かに分析し,各段階の問題を準備しておく。また,各段階について,こどもにどんな点が困難であるかを予想し,それに関する具体的な指導の方策をたてておく。
c.診断的指導を行うにあたっては,次の点に留意する。
○一段階に一つの新しい要素がはいるように段階をくぎる
○おのおのの困難に当面しているこどもを指導するために,その困難を克服していくのに必要な段階を細かく分析して,こどもが努力しさえすれば,次の段階に進むことができるようにしてやる
○具体的なものを使って,こどもが困難を克服していくために必要な基礎的な概念をしっかり作り上げる
○いたずらに先を急ぐことをせず,一つの学習内容がじゅうぶんに熱するまでは,新しい事がらについての指導に移らない
○こどもの学習に用いる教材・教具は,個々のこどもの進歩に応じ,個別指導をするのに適するようなものを選ぶ
○こどもが百パーセント正しくできるまで指導を続ける
○こどもの当面している実際の問題やその他の学習の場においても,学習したことを適用してみるように心がけさせる
○診断テストは適時にこれを行い,どのこどもに,どんな点についての指導が必要であるかをはっきりとらえる
○この必要に応ずるように指導の対策をたてる
○—度得られた技能がいつまでも保持されるように,適当な機会をとらえて,反復練習する
b.こどもが学習の必要を感ずるものを取り上げ,それをきっかけとして反復練習にとりかかるようにする
c.反復練習は,こどもの個々の能力相応のものを,自分の程度に合うように行わせることがたいせつである。
d.簡単な計算や測定などでも,こどもがそれに習熟するために必要な時間を借しんではならない。
e.こどもに自分の進歩がわかるように,各自の成績を記録していく方法をくふうしておく。
f.こどもが小成に安んぜず,望ましい程度にできるようになるまで,反復練習する。
g.反復練習するに先だって,計算や測定などの手続が正しくできるようになり,それが習慣にまでなっていることを確かめる。
h.こどもが正しい手続でできるようにするためには,こどもが正しい形式をよく理解することがたいせつである。
i.反復練習の結果,正しい仕事の習慣ができるまで,教師はしっかりとこどもの練習を見守り,誤った習慣が固定しないように注意しなければならない。
j.準備的な反復練習をしていても,いつも全体を見とおして最終的にねらっている反復練習と結びつけるようにする。
k.ある一つの技能を導入するに先だって,その前に指導した技能を仕上げておく。
l.習慣形成の初期においては,急がず休まずに仕事を進めていく。
m.初めは重要なねらいが正しくできるよう専念し,しだいに他の要素を加味するようにする。
n.個人の困難の原因を診断することができるような,反複練習のための教材や教具を用意する。
o.初めは量を少なくして回数を多く練習し,あとになるほど練習と練習との間隔が遠くなるようにあんばいする。
p.すでにできている習慣は,それが明りょうに悪いものでないかぎり,改める必要はない。
q.困難の原因を見定めるために診断テストを行い,また時おりは大きな声で言わせてみて,こどもが誤って理解しているところを見いだす。
r.診断が終ったら,ある特定のこどもの持っている困難を克服するために反復練習を行う。
b.学年の初めに,指導計画をたてるときには,こどもの既往経験や現在の能力を調査し,その結果にてらして技能の維持をはかる。
c.診断テストによって,基礎的な技能で弱いところを見いだし,必要があれば,その弱いところを補強するために,もう一度教えたり,反復練習させたりする。
d.基礎的な技能をもっと進んだ実際的な仕事や問題に応用するような機会を作り,それがこどもの身についたはたらきになるようにする。
○こどもは,問題について,じゅうぶんに考えることをしないで,わからないとすぐに教師などにたよろうとする。また,考えるようにといわれても考える要領がわからないために,どうにもならないこともある。このようなこどもに対しては,問題の場を組織だてることができるまで,よく考えるように指導しなければならない。
○こどもが,いつも自信をもって学習していけるようにするためには,当面する問題をできるだけ自力で分析し,それに対して論理的に考えを進めることができるように指導しなければならない。
○論理的な思考力は,こどもにとってある程度抵抗を感ずるような問題と取り組み,その問題を構成する場を明らかにとらえようと努力することによって伸びるものである。
○問題の場を読みとることは,次のようなはたらきのことである。
ⅰ.まず,これは何についての問題であるかに対して答えることができる
ⅱ.どんな事実が与えられているかに対して答えることができる
ⅲ.この問題は,何をきいているかに対して答えることができる
b.論理的な思考を伸ばすための指導の計画
○問題に書いてあることをそのまま述べるのでなく,問題の筋道をつかむようにする
○どんな事実が与えられているかをわからせるために,必要な事実を文章の中から抜き出してくる要領を指導する
○問題が何をきいているかをわからせるために,問題はどんな関係を明らかにしようとしているかをつかむように指導する
○問題を読みとる力を伸ばすための上の三つの段階は,初めは各段階ことに練習してその要領をつかみ,その上で第1・第2・第3の段階の順序に一連のはたらきとして練習させるのがよい
○上の仕事は,始めは教師の指導が中心になって行われるが,しだいに教師の手をはなれて,こども自身が行っていくことができるようにする
c.この指導計画のもっている価値
○第1の段階では,問題の場の全体を容易に理解する要領を学ぶ
○話合いや記録をとおして,こどもの用語を改善することができる
○こどもが,筋道をたてて考えたり話したりするようになる
○事がらを分析したり,組織だてたりして,問題の場を全体としてつかむ能力が高められる
d.一段階の問題解決の手続
ⅰ.問題を読む
ⅱ.何についての問題であるかを明らかにする
ⅲ.どんな事実が与えられているかを明らかにする
ⅳ.何を求めればよいかを明らかにする
ⅴ.どんな演算を用いたらよいかを明らかにする
ⅵ.結果を椎定してみる
ⅶ.計算をする
ⅷ.結果を確かめる
b.教科書を用いるとして,どのように用いることができるかを,上の三つに分けた指導計画に照して考えてみる必要がある。
c.クラスの指導計画をたてるときには,時には全体での話合いをしてみたり,時に,ひとりびとりのこどもに特別な指導をしたり,さらに時には,グループにまとめて指導するというように,柔軟性のあるものでなくてはならない。
d.個人の指導計画をたてるときには,次のようなことについて,注意することが必要である。
○ひとりびとりのこどもが,どんなことはできるかを書きとめておくようにする
○あるねらいに到達しているかどうか,到達していなかったら,どこに原因があるかを知るために,診断テストを用意しておく
○自習のため,あるいは自分の学習の誤りを自分で直していけるようにするために,必要な教材を準備しておく
○教科書などを使って,教師の労力や時間を,できるだけ有効に使うよにすることも必要である。そのときに,次のことに留意する
(ⅰ) 仕事の割り当てに対する手びきを準備する
(ⅱ) 補足的な説明をしたり,こどもが実際に適用してみるための教材や教具,診断テストなどを準備する
e.グループの指導計画をたてるときには,次のようなことについて,注意することが必要である。
○仕事の割りふりは,グループごとに定めておくようにする。このようにして,おくれているこどもも,進んでいるこどもも,ともに学習に参加していくことができるようにする
○望ましい態度,とくに協調的な態度などの,こどもの社会性をつちかうようにする
○指導の能率をおとさないようにするには,個人の指導計画について述べたことがらに注意するようにする
第3部 望ましい計算方法の案
第4部 幼稚園および低学年の指導
(1) この時期の指導のねらいはこれからあとの学習の基盤を作りあげることにある。このような意味から,こどもに豊かな算数についての経験をもたせて,そのあとの学習が円滑に進んでいくようにすることにある。
(2) 実際の指導において,とくに次の事がらに留意することが必要である。
b.指導の出発点に,いつも気をつける
c.これからあとの指導を見とおしておく
d.視聴覚教具を活用する
e.何回もくり返し指導する
f.こどもの生な問題を用いる
g.こどもの能力に応じて暗算を指導する
h.たのしく学習できるように指導する