Ⅱ. 算数科の一般目標

 算数科の一般目標として,どんなものをあげることができるか。

 

Ⅱ.算数科の一般目標

算数科の一般目標として,どんなものをあげることができるか。

 

1.算数とわれわれの生活
 
算数は,われわれの生活に,どのように役だつか。

 人類の長い経験と努力によって現在の文化が作られてきたことは,ここに改めて言うまでもないことである。この文化の中でも,算数の発生は古く,その発展に従って,生活の改善に必要な考え方を生み出し,また,その考え方で処理するのに必要な,すぐれた用具としての役目を果してきた。

 このような算数の生いたちを考えていくと,今までと同様に,現在も,また将来も,おとなの生活に役だつとともに,こどもの生活にも必要であることはすぐうなずくことができる。本節では,算数の基礎的な事がらについて,その発展の筋道を明らかにするとともに,算数がわれわれの生活に,どのように役だつかを述べることにする。

 われわれは今日,命数法・記数法・計算・測定などを用いているが,その便利さになれすぎてしまっている。そのために,何が,どんなときに,どのように便利であるかということに,ほとんど注意しなくなっているといってもよいであろう。このように,算数が日常の生活にしみこんで生活化されたのは,先人の長い間のくふうのおかげであるということができる。

 教師は,命数法・記数法・計算・測定・図形・用語などについての指導をするときに,これらのものが,どんなにすぐれたものであり,われわれの生活にどのような関係があるかを知っていることが必要である。それは,これらのことがらを学習すると,生活がどのように改善されるか,また,数量的な処理がどのように進歩するかが,はっきりわかるからである。

 これがわかって,はじめて,算数の本質や価値が明らかにされるといえる。また,学習指導の方法は,これによって,有効適切なものとなるであろう。

 (1) 命数法や記数法は,われわれの生活に,どのように役だつか。

 (2) 計算は,われわれの生活に,どのように役立つか。  (3) 量の測定は,われわれの生活に,どのように役だつか。  (4) 図形は,われわれの生活に,どのように役だつか。  (5) 用語や記号は,われわれの生活に,どのように役だつか。  

こ の 節 の む す び

 人類は,生活を合理化しつつ,よりよい生活を常に求めてきた。その一面として,数量関係をとらえ,これを正確に,的確に,能率的に処理しようと努力してきたといえる。したがって,このような必要から,これまでに述べてきたような,命数法や記数法・計算・測定・図形・用語や記号などに対して,改善を加え続け,今日のようなすぐれた方法や原理を生みだしてきた。その結果,数量関係をやさしく,手軽に,必要に応じて処理できるようになったのである。

 算数が,以上のように,人類の進歩に伴って生れてきたものであってみれば,今日のこどもにとっても,必要なものであり,また,役だつものであるといえる。

 こどもは,これまでの人類の進歩を受けつぎ,更にこの向上に貢献していく使命を持っている。つまり,こどもが環境にはたらきかけて,自己を更新していくとともに,われわれの現在の思考や行為を改善していくべき使命をも,になっているのである。

 算数科は,このような必要にこたえようとするものである。

 したがって,このような意味から,こどもは,算数を必要とするだろうし,さらに改善の必要を見いだし,改善し続けていくであろう。

 このように,こどもが,思考や行為を改善していくようにするにはどうしたらよいか。それには,こどもが,人類の進歩に尽してきた努力や,算数がはたしてきた貢献を知り,数量的な処理の方法を,具体的な生活をとおして理解し,さらに生活の処理に,これを適用する能力を伸ばすことが必要になるであろう。また,これと同時に,自己の生活を改善し,社会の進歩に協力する態度を伸ばしていくことも必要になるであろう。

 

2.算数と教育の一般目標
 
算数は,教育の一般目標を達成するのに,どのように役だつか。

 算数の指導は,小学校教育全般の中で,どんな役割を果すのであろうか。どの教科も、それぞれの性格に従って,その目標を達成しようとするが,常に教育全般の目標を忘れずに,互に協力してこそ,教育の一般目標を達成することができるといえる。

 本節では,教育の一般目標が,算数とどんな関係にあるかを述べてみよう。そうして,とれをとおして,教育の一般目標を達成するのに,算数はどのように役だつかも,明らかにしてみよう。

 (1) 算数は,教育の−般目標とどのような関係にあるか。

 (2) 算数は,個人生活をよりよいものにしていくのに,どのように役だつか。

 個人生活を充実するには,日常生活に必要な,基礎的な知識・理解・能力・態度を身につけて,生活を改善していくために必要な問題を解決し,環境にはたらきかけていく能力を伸ばすことがたいせつである。

 しかも,このようなことができるようになるためには,数えたり,計算したり,測ったりするようないわゆる,数量関係を処理する能力を伸ばすことがたいせつである。

 算数が,数量的に物事を,正確に,的確に,能率的に処理する能力を伸ばすものであってみれば,個人生活を向上させる上にも,欠くことのできない重要なものである。

 これを具体的に説明するために,一般編にあげてある,いくつかの項目について,算数がどんなに役だつかを述べてみよう。

 (3) 算数は,家庭生活および社会生活を,よりよいものにしていくのに,どのように役だつか。

 こどもが,家庭や社会で生活するときに起ってくる問題を理解したり,処理したり,発展させたりしていく上に必要なものとして,いろいろなものをとりあげることができる。社会制度や組織についての理解,そこに起る問題を処理する能力,お互に個性を尊重したり協力したりして,家庭や社会の秩序を保持したり,社会を健全に発展させようとする努力,また,その一員としての責任を果そうとする努力などは,どれも重要なものである。

 こうした家庭生活や社会生活の中には,その中から数量関係を見いだし,これを正確にとらえて,能率的に処理することの必要なものがある。これを具体的に説明するために,一般編にあげてある,いくつかの項目について,算数が,どんなに役だつかを述べてみよう。

 (4) 算数は,経済生活および職業生活をよりよいものにしていくのに,どのように役だつか。

 経済生活や職業生活を改善していくことは,わが国で最も重要なことの一つである。言い換えると,生産や消費の面において,数量関係をとらえ,これを正確に,的確に,しかも能率があるように処理することが要求されている。

 たとえば,品物の計量,金銭の勘定,製品の規格の正しさ,期限の厳守などがそれである。

 また,経済生活をじょうずに営むには,需給の様子や物価などを概観することが重要である。

 このような数量関係を正しくとらえ,これを正確にしかも能率のあがるように処理する方法や態度を養うのに,算数を役だてることができる。

 これを具体的に説明するために,一般編にあげてあるいくつかの項目について,算数科が,どんなに役だつかを述べてみよう。

 

こ の 節 の む す び

 算数が,教育の一般目標に対して,どのように役だつかについて述べてきた。

 算数は,生活の各分野を,数量的な立場から考察し,これを,正確に,的確に,能率的に処理するためのものであり,個人生活とともに,社会全般の改善向上をはかることをねらっている。

 すなわち,算数は,数量関係をうまく処理するための,すぐれた道具であるばかりでなく,物の見方や考え方を伸ばしてくれるものでもある。しかし,これは,算数科だけでできることではなく,他教科との関連協力によって,はじめて,できることである。教育の一般目標を達成することも,このようにしてはじめてできるといえる。

 われわれは,算数をじゅうぶん使いこなせるようにするとともに,これを善用して,個人生活の向上はいうまでもなく,人類の進歩と社会正義のために貢献していこうとする態度を伸ばさなければならない。この後者の望ましい態度が伸ばされて,はじめて,算数は,社会において役だつものであるということがいえることを忘れてはならない。

 

3.算数科の一般目標
 
算数科の一般目標として,どんなものが考えられるか。

 第1節では,算数が,われわれの生活に有用であるとともに,こどもの必要にこたえるものであることを述べた。

 第2節では,教育は,社会の理想を実現して,人類の進歩をはかるための,重要な社会機能であること,算数はその中にあって,教育に欠くことのできないものであること,伸びようとするこどもの数量的な必要を満たすものであることなどを,個人・社会・経済の生活の面から述べた。

 本節では,前の二つの節を受けて,算数科の一般目標の意義とその内容について述べよう。

 (1) 算数科の一般目標は,どんな意義をもっているか。

 教育が,社会の理想を実現するために企画されるものであるから,その理想は,どんなところにあるかを,めいりょうに示さなければならない。これが何であるかを示したものが,教育基本法にある教育の目的であり,一般編にある教育の一般目標である。

 さて,これらの教育の目的や教育の一般目標を実現しようとして,こどもの具体的な生活を分析したり,おとなの社会生活を考察したりして,それらの生活に必要なのものの中から,数量的な処理に関するものをとりだし,これを,こどもの成長発達を考慮してまとめたものが算数科である。

 算数科は,教育の一般目標の中で,主として,どんな分野を担当しているか,また,その学習は,どんな点をねらいとして進めたらよいかを示したものが,算数科の一般目標である。

 次に,その内容を述べてみよう。

 (2) 算数科の一般目標として,どんなものをあげることができるか。

 (1) 算数を,学校内外の社会生活において,有効に用いるのに役だつ,豊かな経験を持たせるとともに,物事を,数量関係から見て,考察処理する能力を伸ばし,算数を用いて,めいめいの思考や行為を改善し続けてやまない傾向を伸ばす。

 (2) 数学的な内容についての理解を伸ばし,これを用いて数量関係を考察または処理する能力を伸ばすとともに,さらに,数量関係をいっそう手ぎわよく処理しようとして,くふうする傾向を伸ばす。  

こ の 章 の ま と め

 この章は,算数とわれわれの生活,および算数と教育の一般目標の二つの面を考察し,これに基いて,算数科の一般目標をあ明らかにした。これを要約すると,次のようになる。

 (1) 算数とわれわれの生活

 (2) 算数と教育の一般目標  (3) 算数科の一般目標