一 国語の学習は、どんなところで、どんなふうに行われるか
国語は、国民生活のあらゆる面で、欠くことのできないものとして使用されている。また、国語は日常の生活のあらゆる場面で使用されている。このように考えると、国語の学習は、単に学校の門内だけに限られないことがわかる。また、学校の内部でも、他教科の教科書や参考書を読み、教師やほかの児童の話を聞き、各種の報告や調査を書く。学習の話合いはもとより、テストの大部分でさえ、国語によってその目的を果している。それゆえ、児童は読んだり、聞いたりしたことについて、その意味を正しく理解したり、自分が考えたり、調べたりした事がらをはっきりと正しく有効に話したり、書いたりすることは、他教科の学習にとっても絶対に必要な条件である。
国語はこのように、学校をも含めた社会生活全般にわたって、基本的な役割を果しているものである。したがって、すべての学習指導計画は、国語の有効な使用を考慮に入れてたてられなければならないとともに、国語の学習指導計画も、国語が学校の内外を通じて現実に使用されているという事実の上にたてられなければならない。ここに、国語の学習指導計画を社会の要求や他教科から孤立させてたててはならない根拠がある。
国語の学習は、このように生活のあらゆる場面で行われるけれども、それだけでは、偶然的であり、他動的である。また他教科の学習を通じて行われる国語の学習もやはり付随的であることを免れない。
児童のすべてが国語の習慣・態度・技能・能力・知識・理解・鑑賞にわたるすべての面をじゅうぶんに伸ばしていくためには、独自の学習活動や訓練が必要である。小学校における国語の学習は、まさに、このような必要に応じるものである。したがって、国語の学習指導計画をたてるにあたっては、学校外の国語の学習を効果的に指導し、他教科の学習を通じての国語の学習と密接な関連をもたせながら、国語科それ自身として、特別な、集中的な学習活動を展開させるように計画しなければならない。
二 国語科は、教育課程の中で、どういう位置を占めるか
前に述べたように、生活全般にわたって果している国語の基本的な役割や、国語の学習の場面の広さを考えると、教育課程の中で占める国語科の位置も、おのずから明らかとなってくる。
一般教育課程の目的は、帰するところ、児童を民主的社会の一員としてふさわしい人間に育成していくことであるが、そのために学習すべき各教科も、国語の学習指導計画の適・不適によって、その効果は左右されることが多い。ことに低学年では、国語の学習の失敗が、他教科の学習の失敗の決定的な原因となるものである。
それゆえ、国語科の学習指導計画は独自な目標と学習時間とを必要とするものである。したがって、国語科の学習内容は、他教科の学習に際して要求される基本的な理解・技能・態度、たとえば、どう考え、どう読み、口頭や文字によってどう発表するかということは、国語科の学習時間で特に練習を必要とするものである。このような基本的な理解・技能・態度は、もちろん他教科の学習に際しても有効に働くのであるが、国語科としての学習計画において、特に、じゅうぶんに発達させられなければならない。これらの基本的な項目は、さらにいくつかの項目に分けられ、各学年の児童の精神や身体の発達に適応させながら配当される。
国語科の学習内容の学年別の配当にあたっては、児童の知能の発達や特殊な必要についての科学的な調査や研究をもとにして決定しなければならない。この本にあげてある学年別の諸目標は、そうした考え方についての一つの参考案である。
国語科として強調される学習活動には多くのものがあげられる。特に留意すべき項目としては、会話・話合い・相談・口頭による報告や説明・劇化、通信文の書き方、報告や記録の書き方などがある。これらの学習活動の基礎として、特に低学年では、ことばを話すこと、文字を読むこと、文字を書くことなどについての技能的な方面の確実な習得を重んじることがたいせつである。
三 国語科の目標と、児童や地域の実態の関係をいかに考えたらよいか
国語科は全国共通の学習指導目標をもつものであるとともに、国語学習の場面が他教科の学習ばかりでなく、広く学校外の児童生活までにもおよぶことを考えると、児童の生活全般と、その児童がおかれている地域についての実態をはっきりつかむことが、国語の学習指導計画をたてる場合のたいせつな条件になってくる。
教育の新しい傾向として、児童を中心とする学習活動が重要視されなければならない。児童を主とした学習活動は、児童の生活経験全体に基礎をおくものである。したがって、経験カリキュラムやコアカリキュラムによる国語学習の指導計画をたてる場合はもとより、教科書を中心とした学習指導計画をたてる場合でも、児童の心身の発達や児童の生活経験の実態についてのだいたいの理解がないかぎり、国語の学習は効果があがらない。
児童はひとりびとり皆違っている。知能の発達や身体の発達が違っているばかりではなく、児童の経てきた社会環境や家庭環境がさまざまであることから、児童ひとりの過去の経験の量と質もさまざまであるし、情意・態度・習慣はもとより、社会性の発達もまちまちである。児童のこのような各種の違いは、児童の言語能力や言語活動にも大きく影響を与えている。語いの範囲や種類、話し、聞く力の程度、書物に対する親しみの程度、これらは、ほかの教科の学習にとっても同じであるが、特に国語の学習にとっては決定的である。もし、児童ひとりびとりの、こうした実態に対して、理解をもたず、同じ教科書で、一律な学習指導をさせるならば、学習の効果はなかなかあがらない。
児童の実態は、テスト・調査・個人観察・父母との面接などによって、ある程度まで確かめることができる。教師は、それに基いて、国語の学習指導計画を真に児童中心となるように編成しなければならない。
次に、児童は現にそれぞれの地域に住み、卒業後多くはそれぞれの地域の一員となるのであるから、それぞれの地域の実態やそれぞれの地域が特に必要とするものについても絶えず調査をして、その結果を国語の学習指導計画に反映させなければならない。
国語の学習指導計画には全国共通の画一的なものがあるわけではない。この本に述べてあることは、一応の基準であって、これらを参考にしながら、各地域の実情に応じ、各学校の特殊性を考え、それぞれの学級の児童の実態に即して、実際的な学習指導計画がたてられなければならない。
四 興味と練習をどう組織したらよいか
興味のないものを学習しても効果をあげにくい。国語の学習指導の場合でも、児童の興味に基いた計画をたてることが必要である。しかし、児童の興味の対象は、自然のままでは、範囲も狭く種類も少なく、かたよっていることも多いので、単に、興味調査をした結果だけを学習指導計画に取り入れることは危険である。
児童の興味の対象を調べる方法には、いろいろあるが、次にあげる方法は、そのおもなものである。
2 話合いで取り上げられる話題
3 作文などの主題
4 読書傾向の調査
5 遊びの種類
2 児童の心身の発達や、理解の程度に応ずるものであること。
3 言語活動が集中的に行えるものであること。
4 望ましい学習の展開が予想されるものであること。
5 望ましい経験や見聞や、知識を豊かに与えられる見込があるものであること。
2 望ましい興味を起してやること。
3 望ましい興味が衰えないように指導すること。
次に、練習が、国語の学習指導計画において、重要な位置を占めることはいうまでもない。特に、技能的な方面の学習では、同じ性質の問題をくり返し練習させたり、似かよった性質の問題を機会があるごとに練習させたりすることが必要である。
練習を学習指導計画の中へどう組織するかは、その計画のたて方によって違ってくる。しかし、どの場合でも、練習だけを孤立させて機械的に行うことは、できるだけ避けるべきである。また、適切な動機づけを行って、練習の目的や効果について児童に知らせ、練習に対する興味と必要とを起させることが望ましい。練習による進歩の状態を児童にも絶えず知らせることは、とかく機械的になりやすい練習に興味をもたせる一つの有効な方法である。
要するに、日常生活のときどきの必要や興味を逸することなく、これを有効に組織して、国語の学習指導を行うべきである。どこまでも総合的・全体的な立場にたたなければならない。ことばをしつけるにも、正したり、教えたりすることを本体とはせず、ひとりでにそうなるような環境の中で、知らず知らずの間に、ことばに対するよい態度が身につき、それが習慣となるように気をつけていかなければならない。しかしながら、総合的・全体的に、自然にことばの使用に慣れることを本体としながらも、系統のあることばの練習に、興味と必要とを感ずるようにしむけていくことがたいせつである。
したがって、国語の学習とその指導は、興味と練習が、児童本位に、関連して進められるように組織しなければならない。
五 資料と方法をどう考えたらよいか
国語の学習指導は、材料や学習指導の方法から切り離しては計画がたてられない。たとえば、地域差・学校差・設備差などの差異を初め、男女の性別・個性・家庭環境の相違などによって、受け持つ児童は皆違ってる。都会といなか、農・山・漁村などの違いによって、国語の学習指導計画や指導の方法に大きな相達がある。それゆえ、受け持つ学校に応じて、資料や指導の方法も違ってくるのが当然である。
生活環境からくる直接経験は、国語学習にとって主要なものであるが、言語活動に応ずる各種の教材や教具や備品は、国語学習の資料として欠くことができない。たとえば、教科書・学習帳・ワークブック・新聞・雑誌・辞書・参考書・地図・絵画・写真・スライド・フィルム・おもちゃ・カタログ・実物模型・電話・マイクロフォン・蓄音器・ラジオ・録音器・紙しばい・人形しばいなどを初め、各種文学作品・各種の見本・プログラムなどいろいろな教具や備品があげられる。
学習指導の方法についても、画一的であってはならないことはいうまでもない。それぞれの学級の実情に応じて最も適切なものを取り入れるべきである。
一般に学習指導の方法が抽象的、一般的に考えられて、画一的になると、次のような危険が生じる。
2 学習のための学習となり、生活上の必要や興味によって生きた学習をしようとする機会を失わせる。
3 学習が児童の興味から離れて、教師から与えられた学習となる。
4 方法の展開が機械的な過程となり、生気を欠くものとなる。
六 国語学習の話題には、どんなものがあるか。
ことばは内容と切り離して学習することができない。児童は現実の事象について話し、書き、あるいは読むのである。すなわち、生活のやむにやまれぬ興味と必要から生れるさまざまな話題や問題をもつのである。これらは、学習活動を展開する動機となり、学習の題材となるものである。
国語学習における話題や問題の範囲は広いが、これを児童の日常生活を主にして分けてみると、次のようになろう。
2 家庭・学校・社会の行事。
3 四季自然のうつりかわり。
4 学級・学校の環境や設備。
5 公共の建造物や設備。
2 遠足・旅行。
3 ラジオのプログラム。
4 映画。
5 日々のニュース。
6 さまざまなごっこ遊び。
7 社会活動(休日・防火・運動場・キャンプなど)。
2 児童のための有名な文学作品。
3 児童を楽しませ、情感を豊かにするような神話・伝説。
4 美術・建築・音楽に関するもの。
5 文化の創造に寄与した人々の伝記およびその話。
6 宇宙の神秘、自然の法則、生物の生態など自然科学の原理に関するもの。
7 生活環境を科学的に観察したもの。
8 協同奉仕の精神を示したもの。
9 人類愛・国際平和・国際協調などの精神を啓発するもの。
10 国語に関するもの。
(1) 言語の働き
(2) 国語愛
(3) 言語の本質
(4) 日本語の成立
(5) 外来語
(6) 言語生活
11 自由・平等・博愛・平和・正義・寛容の思想の理解と発達を助けるもの。
12 真・善・美に対する理解を与えるもの。
13 信仰心を養い、ぎせい・責任の精神生活を表わした物語。
14 児童の体験記。
この学習指導要領で、文法の学習指導を独立の章節にしないのは、文法の学習指導をしなくてもよいという意味ではない。国語の学習指導に文法を取り入れることは当然なことであるが、文法を独立させ、孤立させて指導することよりも、国語の学習指導のあらゆる面に取り入れる取扱い方が望ましい。特に小学校の国語学習指導では、文法を体系や知識として孤立させて学習させるべきではなく、国語を正しく効果的に使いこなすために、文法的な事実を児童に自覚させてやる指導が主となるべきものである。
本来、児童は、国語を無意識に使っている場合でも、ある程度文法上の規則に準じているものである。それを児童に自覚させて、正しく効果的に国語を使いこなせるように導くことが文法指導のおもなねらいである。それゆえ、文法の指導は、国語の学習指導のうちでも、特に話すことと書くことの学習指導に有機的に取り入れることが必要である。
小学校で、学習指導の予想される文法の内容としては、だいたい次のことが考えられる。
2 発音には正しいと考えられているものがあること。
3 単語には正しいと考えられているものがあること。
4 単語はいくつかの種類に分けられること。
5 単語の組立には、ある程度のきまりがあること。
6 文における単語の役割は、だいたい決まっていること。
7 文を組み立てるには、単語の並べ方に一定の順序があること。
8 文を表記するときには、だいたい決まったきまり(句とう法)によること。
9 漢字やかなの使い方には、だいたい決まった習慣があること。
10 日常生活に使う漢字の範囲やかなづかいには、一応決められた基準があること。
一 国語能力表とは、どういうものか
国語の能力表というのは、国語のさまざまな能力を、児童の発達段階に照して、学年別に、一つの表として、組織・配列したものである。
教師がそれぞれの児童に適応した学習指導計画をたてる際には、まず、具体的な学習指導目標を考えなければならない。この具体的な学習指導目標を考える場合に、その基準となるものが、この国語能力表である。最近、国語の学習指導において国語能力表が取り上げられるようになったのは、主として、次のような理由からである。
2 学習指導目標というとき、教師の学習指導の方向が考えられやすいのに対して、能力表では、児童の学習活動の結果が主となっている。
3 学習指導目標というとき、教師が指導を予想する内容のすべてが考えられやすいのに対して、能力表では、児童の学習の範囲や程度に幅をもたせている。
4 能力表でいう能力とは、いわゆる能力心理学でいうような特定の固定した能力をさすのではなく、学習が可能になる一般的な力を意味している。
5 学習指導目標は、指導の目標という点に意味が限定されているので、全国一様の教育課程が行われていた場合にはよかったが、今日のように、地域社会やそれぞれの学校の特殊性を取り入れる傾向になった教育課程では、いっそう広い意味をもつ能力表のほうが、必要であり、便利になってきた。
国語能力表は、次のような特質をもっている。
2 学習指導によって到達され、発達すると予想される力が取り入れられている。
3 現代の社会が要求する学習内容の種類と範囲とが取り入れられている。
4 以上の三つが、各学年に配当されている。
5 各学年の指導の重点的な項目が示されている。
国語能力表は、さきにも述べたように、さまざまな性質をもっているものであるから、学習指導計画をたてる場合、じゅうぶんにこれを利用することが望ましい。具体的な利用のしかたは、次のようである。
2 各題材なり、単元なりを決定するときには、この能力表に準拠して決定する。
3 国語能力表によって、指導の重点を知る。
4 国語能力表によって、その学年の最低水準を知る。
5 国語能力表は、日常の学習に際して、評価の範囲と基準とを知る。
この国語能力表を利用する場合には、次の諸点に注意することが必要である。
最低水準とは、たとえば、三年生のこどもならば、三年生の学年末において、三年生の欄に掲げた諸能力が、だいたい、学級の七、八十パーセントぐらいまでの児童によって習得されていればよいという意味である。
2 この国語能力表では、ある学年で記載した能力は、ほかの学年では二度と記載せず、きわめて重点的に掲げて、努めて重複を避けてある。
3 したがって、この表に掲げられた国語の諸能力は、その学年において、特に指導すべき能力であり、またその学年で、最も顕著に現れる徴候である。もちろん前後の関連のないものではない。
4 その学年で取り上げられた能力であっても、ほかの学年では「継続学年」の欄を設けて参考にした。
5 「継続学年」というのは、たとえば、五年生の学年にあげられた「4−6」としるされた能力は、その学年では、重点的に指導するが、四年生で、まず種まきの仕事をし、六年生では、さらに指導を継続して、その能力の発達を計るようにすることである。
この場合〔5−〕の継続を示すものは五年から、さらに中学校に継続することを示し、〔5〕のみのものは、五学年においてのみ重点的に指導することを示すものである。
6 したがって、教師は、この能力表で、まずその学年に掲げられたものは、その学年内で重点的に指導することを第一の仕事とし、今までの学年で育成してきた能力のうちその学年に継続するものは、さらに、その発達を助長するように指導することを第二の仕事とし、また、次の学年で指導する能力であって、この学年で芽ばえのあるものの指導を第三の仕事としなければならない。もちろん、指導の順序を第一、第二、第三とするものではないが、この三つの仕事に注意しなければならないという意味である。
7 この能力表は、全国の地域差に応じ、個人差に応じて、扱われるべきもので、決して一様に扱われてよいものではない。弾力性のある取扱いが望ましい。
8 この能力表については、今後の実践の結果の報告や調査の成果を得て、さらに、より科学的なものに改訂を計ろうとしている。
一 聞くことの能力
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1 仲間にはいって、聞くことができる。
2 いたずらをしたり姿勢をくずしたりしないで聞くことができる。 3 相手の顔をみながら、静かに聞くことができる。 4 物語を読んでもらって聞くことができる。 5 返事ができる。 6 簡単な問に答えることができる。 7 簡単なことを聞いて、動作ができる。 8 短い、簡単な話なら、復唱ができるように聞くことができる。 9 簡単な話なら、その内容がわかる。 10 三千語から五千語のことばを理解することができる。 |
1−2 1−3 1−2 1−2 1−2 1−3 1−2 l−3 |
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1 話を楽しんで聞くことができる。
2 放送を聞いて楽しむことができる。 3 話の荒筋をつかむことができる。 4 かわるがわる聞いたり、話したりすることができる。 5 話しぶりのよしあしがわかる。 |
1−3 1−3 1−3 2−4 |
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1 相手が話しやすいような態度で聞くことができる。
2 進んで新しいことを知るために聞くことができる。 3 簡単な作法を守って聞くことができる。 4 話の荒筋を順序だてて、聞くことができる。 5 自分の経験を思い出しながら、聞くことができる。 6 話のたいせつな点を忘れないように、聞き取ることができる。 7 感想や質問をもつように聞くことができる。 |
3−5 2−4 2−4 3−4 3−4 3−5 |
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1 映画をみて楽しむことができる。
2 相手の気持をのみこんで、聞くことができる。 3 相手の意見を尊重して聞くことができる。 4 儀礼的でなく、知識を求めるために聞くことができる。 5 話のよりどころを考えながら、聞くことができる。 6 話の主題と内容を考え合わせながら、聞くことができる。 7 音のよく似た語を区別することができる。 8 聞くことによって、語いが豊富になる。 |
3−5 3−5 3−5 4−6 4−6 3−5 3−5 |
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1 相手の話を卒直な態度で聞くことができる。
2 あらかじめ準備して、聞くことができる。 3 聞いたことをうのみにしないで、疑問の点は聞き返すことができる。 4 要点をまとめながら聞き、必要によっては、メモを取りながら聞くことができる。 5 聞きながら、自分の意見をまとめることができる。 6 ことばづかいのよしあしを聞き分けることができる。 |
4−6 4−6 5−6 5−6 4−6 |
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1 どんな場合でも、注意深く聞くことができる。
2 話の内容と相手の意図を正しく早くとらえることができる。 3 話のじょうずへた、話す事がらの適否を聞き分けることができる。 4 話の内容を批判しながら、聞くことができる。 5 聞いた話に関係のある資料を集めて、話を役だてることができる。 |
5—— 5−6 5—— 6—— |
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1 相手をみながら、話すことができる。
2 知らない人の前でも、話すことができる。 3 たやすく仲間にはいって、友交的な態度で話すことができる。 4 絵について、話すことができる。 5 好奇心をもっていることや、知りたいと思っていることについて質問することができる。 6 生年月日・住所・学校・学年・家庭の職業などについて、話すことができる。 7 身近な生活経験を話すことができる。 8 日常の簡単なあいさつができる。 9 簡単な伝言がいえる。 10 簡単なさしずをすることができる。 11 主述のはっきりした話し方ができる。 12 幼児語を使わないで話すことができる。 13 なまりのない発音で話すことができる。 14 気持よく、調子のよい声で、話すことができる。 |
1−2 1−3 1−2 1−3 1−3 1−3 1−3 1−3 1−3 1−3 1−2 1−3 1−3 |
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1 立ったりすわったりする動作や姿勢に気をつけて、話すことができる。
2 はっきりと、人にわかるように話すことができる。 3 ゆっくりと落ち着いて、注意深く話すことができる。 4 適当な順序を立てて、話すことができる。 5 話題を選ぶことができる。 6 家庭のことや社会の簡単なできごとについて話すことができる。 7 読んだり聞いたりしたことについて、話すことができる。 8 身ぶりを用いて、見たり、聞いたり、読んだりしたことを劇化することができる。 |
1−3 2−4 2−4 2−4 2−4 2−4 2−4 |
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1 楽しんで話すことができる。
2 あいそうよく、グループの話合いに仲間入りすることができる。 3 自然な態度で話すことができる。 4 筋の通った話ができる。 5 観察したことや計画したことを順序だてて話すことができる。 6 話をとぎらさないように続けることができる。 7 正しいことばづかいで話すことができる。 8 その場にあった語調で、話すことができる。 9 抑揚のある声で話すこどができる。 10 話合いができる。 |
2−4 3−5 3−5 3−5 2−5 3−4 3−5 3−5 3−6 |
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1 じょうずに話そうとする心構えができる。
2 他人の意見を尊重して、話すことができる。 3 親しみのある態度で話すことができる。 4 読んだ本について、簡単な報告をすることができる。 5 理由や根拠をあげて、自分の意見を述べることができる。 6 要点をつかんで話すことができる。 7 電話をかけることができる。 8 適当な速さで話すことができる。 9 方言を使わないで話すことができる。 10 適当な修飾語を用いて、話すことができる。 11 自分の話法の誤りを認めることができる。 12 ある程度、話の切り出しや結びをじょうずにすることができる。 |
3−6 4−6 3−5 4−6 4−6 3−5 4−5 4−6 4−6 4−6 4−6 |
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1 相手の気特を尊重して話すことができる。
2 礼儀正しく話すことができる。 3 話の内容にふさわしい身ぶりや表情ができる。 4 自分の考えをまとめ、内容を整えて話すことができる。 5 メモをもとにして話すことができる。 6 一つの話題を続けていくことができる。 7 質問や報告、説明や発表がはっきりと要領よくできる。 8 グループの話題・意見をまとめて発表することができる。 9 その場にふさわしい話題を選ぶことができる。 10 敬語を適当に使うことができる。 11 語や句をある程度選択して表現に富んだ話ができる。 12 物語をおもしろく話すことができる。 13 劇の役割をじょうずに務めることができる。 |
4−6 5−6 5−6 5−6 4−6 5−6 5−6 4−6 5−6 5−6 4−6 4−6 |
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1 正しいことばの自覚にたって、話すことができる。
2 むだのない力強い話ができる。 3 自分のことばに責任をもつことができる。 4 話題をじょうずに展開することができる。 5 じゅうぶん自信をもっていることだけ話すことができる。 6 会議やグループなどの司会が要領よくできる。 7 時間を考えて、ほどよく話すことができる。 8 改まったあいさつができる。 9 ことばを自然に使うことができる。 |
6−− 6−− 5−6 5−6 5−6 5−6 5−6 6−− |
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1 本や絵本を読みたがるようになる。
2 本の持ち方やページの繰り方に慣れる。 3 文をどこから読み始めたらよいかがわかる。 4 文のどの方向から読めばよいかがわかる。 5 正しく行をたどって読むことができる。 6 拾い読みでなく、文として読むことができる。 7 声を出さないで、目で読むことができる。 8 声を出して読むことができる。 9 自分の名まえが読める。 10 自分の経験と文字とを結びつけることができる。 11 短い文章なら、そのだいたいの意味がわかる。 12 簡単な入門準備書または、入門書的な読み物を娯楽のために読むことができる。 13 初歩的な読み物を即座に読むことができる。 14 ひらがなが読める。 15 アラビア数字が読める。 16 文字のほかの諸記号(てん・まる・かぎ)がわかる。 17 漢字は、だいたい三〇字ぐらい読むことができる。 |
1 1 1 1 1 1−2 1−2 1 1−2 1−2 1 1−2 1 1 1−3 1 |
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1 読むことにだんだん慣れてくる。
2 考えながら読む態度が、高まってくる。 3 黙読するとき、くちびるを動かさないで読むことができる。 4 大ぜいの前でじょうずに読むことができる。 5 一年生の初歩読本程度の読み物を即座に読むことができる。 6 二年生程度の読本を読んで理解し、練習してなめらかに読むことができる。 7 長い文でも、最後まで読み通すことができる。 8 問に答えるために、黙読することができる。 9 文の荒筋をとらえることができる。 10 情報や知識をうるために、本を読む度数がますます多くなる。 11 読んだ本の内容を、他人に伝えて喜ぶようになる。 12 絵および文の前後の関係を手がかりにして、ことばを理解することができる。 13 かたかなのだいたいが読める。 14 文字のほかの諸記号がわかり、それに注意して読むことができる。 15 漢字は、だいたい一三〇字ぐらい読むことができる。 |
2−4 1−3 1−3 1−2 2−3 2−4 2−3 2−4 2−4 2−4 1−3 2 2−3 2 |
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1 長い文でも、楽しんで読むことができる。
2 ひとりで本を読む習慣ができる。 3 音読より早く黙読することができる。 4 いろいろな目的のため、本を読む能力と意欲がだんだん増してくる。 5 自分の興味をもっていることについて、読み物を選択することができる。 6 内容の要点をじょうずに読み取ることができる。 7 文の好きなところや、おもしろいところを抜き出すことができる。 8 文の常体と敬体との区別がわかる。 9 手びきや注釈などを利用して読むことができる。 10 目次を利用して読むことができる。 11 他人を楽しませるために、なめらかに、わかりやすく音読することができる。 12 かたかなが読める。 13 漢字は、だいたい二八〇字ぐらい読むことができる。 |
1−3 2−4 3−4 3−5 3−4 2−4 3−5 3−4 3−4 2−4 3 3 |
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1 物語・実話・ぐう話・時事などの種々の読み物に対する興味がだんだん増してくる。
2 文の組立がわかる。 3 文の段落がわかり、その要点がつかめる。 4 問題を解決するために読むことができる。 5 読書によって得た知識や、思想をまとめることができる。 6 前後の意味から、わからないことばの意味をとらえることができる。 7 一つのことばのいろいろな意味について、考えることができる。 8 ことばの構造とか意味について、一段と強い興味ができてくる。 9 よい詩を読んで楽しむことができる。 10 児童のための新聞や雑誌を楽しんで読むことができる。 11 漢字はだいたい四六〇字ぐらい読むことができる。 12 (ローマ字文が読める。) |
3−5 3−5 4−6 4−6 4−6 4−6 3−6 3−6 4−6 4 3−6 |
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1 良書に対する興味が増してくる。
2 文意を読み取ることができる。 3 長文でも、その要点を書き抜きしながら、読むことができる。 4 文の内容や表現について、こどもらしい批評ができる。 5 読む速度がだんたん増してくる。 6 物語などを脚色して、演出することができる。 7 参考書や地図・図面などを利用して調べることができる。 8 辞書のひき方がわかる。 9 辞書をひいて、新出語の読みや意味をとらえることができる。 10 漢字はだいたい六八〇字ぐらい読むことができる。 |
3−5 5−6 4−6 4−5 4−6 4−6 4−6 5−6 5 |
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1 よい文学に対して興味が増してくる。
2 多種多様な文に興味をもつようになる。 3 本を選択して読むことができる。 4 序文を読んで、本を選択することができる。 5 文意を確かに早くとらえることができる。 6 文の組立を確かに早くとらえることができる。 7 叙述の正しさを調べることができる。 8 案内や注意書きなどを利用して読むことができる。 9 読む速度がいよいよ早くなる。 10 感想や批評をまとめながら、読むことができる。 11 参考資料・目次・索引などを利用して読む能力が増してくる。 12 新聞・雑誌などを読む能力が増してくる。 13 娯楽のためや知識をうるために、黙読する能力が増してくる。 14 他人を楽しませたり、情報を伝えたりするために、明確な発音でなめらかに音読する能力が増してくる。 15 漢字は、だいたい当用漢字別表を中心とした八八一字程度の文字が読める。 16 (ローマ字のつづけ字を読むことができる) |
5−6 5−− 5−− 5−6 5−6 5−− 5−− 5−6 5−− 5−− 5−− 5−6 5−6 6 6 |
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1 文字で書くことに興味がわいてくる。
2 簡単な口頭作文ができる。 3 自分で書いた絵に、簡単な説明をつけることができる。 4 家庭への伝言など、簡単なメモを書くことができる。 5 自分の行動や身辺のできごとなどについて、簡単な文を書くことができる。 |
1−2 1−2 1−2 1−2 |
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1 生活を主とした絵日記を書くことができる。
2 簡単な絵話を書くことができる。 3 感情のこもった短い文を書くことができる。 4 身近な生活の報告や記録を主とした簡単な文を書くことができる。 5 親しい友だちや先生などに簡単な手紙を書くことができる。 6 簡単な礼状や招待状を書くことができる。 7 順序正しい筋の通った文を書くことができる。 8 お互の作文を読み合って楽しむことができる。 9 文の時の使い分けができる。 10 てんや、まるをうつことができる。 |
1−− 1−− 2−3 2−3 2−3 1−3 2−4 1−3 1−4 |
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1 飼育栽培などの長期にわたる記録が書ける。
2 簡単な紙しばいの台本が書ける。 3 日記・手紙・報告などを書くために、その素材をまとめることができる。 4 児童会やクラブ活動に必要な情報を、短い文にまとめることができる。 5 文を詳しくするために、必要なことばを書き加えることができる。 6 文の筋をはっきりさせるために、不必要なことばを削ることができる。 7 自分の作品を整理したり、文集をつくったりすることができる。 8 新しいことばを使用する興味が出てくる。 9 ことばの正しい使い方の基礎ができる。 10 よく推考することができる。 11 自分の作文や人の作文について、評価を始める。 12 文字のほかの諸記号の使い方がわかる。 |
2−3 2−4 3−4 3−4 3−4 2−5 3−5 3−5 3−6 2−3 2−3 |
|
1 読んだ本について、その荒筋や感想が書ける。
2 いろいろな行事についての標語や宣伝・広告の文が書ける。 3 見学、調査などの簡単な報告の文が書ける。 4 ゲームの解説や作業計画などについて、説明の文を書くことができる。 5 児童詩をつくるととができる。 6 物語や脚本を書くことができる。 7 多角的に取材して、まとまりのある生活日記を書くことができる。 8 文の組立を考えて、段落のはっきりした文を書くことができる。 9 敬体と常体との使い分けをすることができる。 |
3−5 3−4 3−5 3−6 3−6 3−6 3−5 4−5 |
|
1 調査や研究をまとめて、記録や報告の文が書ける。
2 児童会やクラブ活動などのいろいろな会の、簡単な議事録をつくることができる。 3 注文・依頼・お礼など、いろいろな用件に応じた手紙が書ける。 4 電文が書ける。 5 書いたり話したりするために、素材を整えて簡単な筋書きをすることができる。 6 一つの文を補記したり、省路したりして、主題のいっそうはっきりした文にすることができる。 7 小見出しをつけて、文を書くことができる。 8 方言を区別して書くことができる。 9 敬語を適切に使って、文を書くことができる。 10 適切な語を選ぶ能力が高まってくる。 11 語いが増大してくる。 12 表現が創造的になってくる。 13 多くの作品を読んで、書く能力を高めることができる。 |
4−6 4−6 5−6 5−6 4−6 4−6 5−6 5−6 5−6 5−6 5−6 4−6 |
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1 映画・演劇・放送などについて、感想や意見を書くことができる。
2 自分の意見を効果的に発言するために、原稿を書くことができる。 3 自分の生活を反省し、文を書くことによって思索することができる。 4 読んだ本について紹介・鑑賞・批評の文を書くことができる。 5 学校の内外の諸活動に必要なきまりを書くことができる。 6 学校新聞を編集することができる。 |
5− 5−6 5− 5−6 6−− |
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1 文を書くことに興味をもち、書くことに意味がわいてくる。
2 書くときの姿勢や用具の扱い方がわかる。 3 鉛筆で字を書くことができる。 4 一・五センチ角ぐらいの文字が書ける。 5 自分の名まえを書くことができる。 6 簡単な問に対して答を書くことができる。 7 視写することができる。 8 簡単な語や文を書くことができる。 9 文字に筆順のあることがわかる。 10 ひらがなが書ける。 11 読める漢字のだいたいが書ける。 12 アラビヤ数字が書ける。 |
1−3 1−2 1−2 1 1 1−3 1−3 1−2 1−2 1 1−2 |
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1 運筆がだんだん楽になってくる。
2 聴写ができる。 3 簡単な文の句点・とう点などを書くことがきる。 4 文字の形が、だんだん整ってくる。 5 ノートの使い方がわかる。 6 かたかなのだいたいが書ける。 7 読める漢字のだいたいを書くことができる。 |
2−4 1−3 2 2−3 2−3 2 |
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1 一・二センチ角ぐらいの大きさの字が書ける。
2 横書きができる。 3 白紙や、けい紙が使えるようになる。 4 はがきや手紙を書くことができる。 5 封筒の上書きを書くことができる。 6 標準的な筆順で書くことができる。 7 文字を組立る基本の形(へん・つくり、かんむり)のあることがわかる。 8 文字の形を整えるための能力がだんだん発達してくる。 9 読める漢字のだいたいが書ける。 10 かたかなが書ける。 |
3−5 3−5 3−5 3−5 3−6 3−4 3−4 3 3 |
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1 文字の形・大きさ・配列などに気をつけて、書くことができる。
2 標語やポスターなどを書くことができる。 3 原稿用紙が使えるようになる。 4 いろいろな表や、こづかい帳の記入などができる。 5 読める漢字のだいたいが書ける。 6 (毛筆で字を書くことができる。) 7 (ローマ字が書ける。) |
4−6 3−5 4−5 4 4−6 4−6 |
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1 一センチ角以内の細字が書ける。
2 書いた文字のよしあしがわかり、進んで上達しようと努力するようになる。 3 名札・表紙・案内・掲示などを書くことができる。 4 ペンで字を書くことができる。 5 読める漢字のだいたいが書ける。 |
4−6 4−6 4−6 5 |
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1 自然な姿勢で、能率的な運筆ができる。
2 欠席届や、願書類などを書くことができる。 3 文字の形、大きさ、配列などが整ってくる。 4 行書が書ける。 5 早く自由に書けるようになる。 6 鉄筆を使うことができる。 7 読める漢字のたいたいが書ける。 |
6−− 5−− 5−− 5−− 6 6 |
第四節 幼稚園におけることばの指導はどう進めたらよいか
一 この期のこどもの一般的な傾向は何か
この期のこどもは、身体的にも精神的にも幼児期に属している。したがって、その指導は、この時期の心理的および身体的な発達に適応して、幼稚園という教育環境における指導を考える必要がある。ことばの指導という教育の一面を考える場合にも、この時期特有の目標と方法とをたてなければならない。
この時期のこどもは、一般的にみて、社会性がじゅうぶんに発達せず、家族関係を除くほかは、人間相互の関係がはっきり意識されず、遊ぶ仲間も、せいぜい三、四人である。話す語いは、三千に満たず、それもみな話しことばとして、身近な日常生活の用を弁ずるにすぎない。しかも、たぶんにいわゆる幼児語を用い、片言を使うことが多い。ことばに対する自覚もじゅうぶんでなく、ことばをことばとして反省したり、学習したりすることができない。ことに、発声諸器関の発達がじゅうぶんでないから、その発音や表現には、この時期らしい特徴がある。ただ、日常生活の中で、その時その場の必要と興味とによって、ことばを使用するにすぎない。したがって、この期のこどもは、あらゆる生活経験を通して、聞き慣れ、話し慣れることによってことばを習得していくのである。ここに「環境」の問題が大きく考えられてくる。こどもは、よい環境の中で、活発な言語生活ができて、言語に対するよい習慣・態度・技能が育っていくのである。この期のこどものことばの指導について、以上のような一般的な傾向を考えながら、その目標と方法を決めるべきである。
二 この期のこどもの具体的指導目標は何か
この期のこどもの多くは、まだ精神年齢が満六才と六か月に達しないのであるから、読むことの準備ができていないので、文を読んだり、書かせたりすることは、一般的にはありえない。したがって、ことばの指導としては、「聞くこと」と「話すこと」の二つに限定され、次のようなことが具体的指導目標となる。
2 聞いた話を人に話すことができる。
3 絵を見て、話すことができる。
4 喜んで、話を聞くことができる。
5 仲間にはいって聞くことができる。
6 簡単な色や形を見分けることができる。
7 さまざまな音や声を聞き分けることができる。
8 語いがだんだん増してくる。
幼稚園には、異なった生活環境と経験とをもち、違った人格的要素をもったこどもたちが集まってくる。
(1) 集団活動の興味のあるこどもと、ないこども。
(2) 仲間と協調できるこどもと、できないこども。
(3) がまんのできるこどもと、できないこども。
(4) 人と人との関係のわかるこどもと、わからないこども。
(5) 乱暴なこどもと、おく病なこども。
(6) 出過きたこどもと、ひっこみがちなこども。
(7) 見さかいのつかないこどもと、ひとみしりをするこども。
などさまざまである。しかしながら、社会性は、社会関係の中で、育つのであるから、忌避したり隔離したりすることなく、次のように指導しなければならない。
(1) 集団の中で、感情的に、落ち着いた安定感をもつようにする。
(2) 仲間のものと、いつも仲よくするようにする。
(3) 遊びや仕事に人と協調するようにする。
ことばの指導は、この社会性の指導に即して、次のように行うべきである。
(1) 人の話がよく聞けるようにする。
(2) よくわかるように話ができるようにする。
(3) 話をするときの表情や身ぶりや態度をしだいに育てていくようにする。
(4) 聞くことや話すことには、個人差が多いから、あらゆる機会に、個人差に応じた指導をする。
2 聞くこと、話すことの指導に終始する。
この期のこどもの言語生活は、すべて話しことばの世界である。いつ、だれが、だれに、何を、どのように話すかという具体的な場面にたって指導しなければならない。この時期の話しことばは、著しく地域的で、方言・なまりが多く共通語に遠い。したがって、指導としては、この現実を離れることなく、ごく自然に、その中で理解される程度で、よい模範を示すことに努めなければならない。この期のこどものことばは、幼児語であることは、生理的、心理的に根拠のあることである。急がずに、根気よく長期にわたって、正しくなるように指導しなければならない。また、使用することばの中には、ときにおとなのことばをまねて、観念的なことばや、新奇な流行語を交えることもあるが、しだいに経験の裏づけのある、正しいことばを増していくことに努めなければならない。
接続詞や、助詞や、副詞なども、一応使いこなすことができるが、「あの」とか、「それから」とか、「それで」とか「ねえ」とかいう語をむやみにくり返すのも、この時期の特徴である。友だちどうしの自然な比較や、よい模範が、指導上特に必要である。
この期のこどものことばには、省略が多くて、身振りや表情によってことばを補い、文字どおり舌たらずに陥って、ひとりがてんの表現をすることがある。したがって、主語や、助詞や、その他の語が省略されて文として不完全な表現をすることが多い。また、ひとつの事件を話す場合も、時間を隔てて、ぽつりぽつりと思い出しながら話をすることがある。そこで、要領を得ない話し方になる。だから、まず正確な表現を、常に耳に聞くことができるような環境をつくってやる必要がある。
この期のこどもは、聞く能力も、なお未発達で、長い話や、興味のない話や、自分に関係のうすい話や、大ぜいといっしょに聞いた話を、正しく聞き分ける能力がない。たとえ、聞いているようにみえても、自分に興味のある部分だけがわかっていたり、自分かってに事がらを変えて聞いていることがある。
人と話をする場合も、おしまいまで聞かないで、ほかの動作を始めたり、だしぬけに自分のことばをさしはさんだり、はやがてんをしたり、ろこつに飽きたふうをみせたりすることが多い。
程度に合った話をすること、返事をまとめること、さしずによって行動させること、伝言したり復命したりさせること、電話ごっこやラジオごっこをさせること、使いにやること、友だちの聞き方に気をつけさせること、常に、人の話をよく聞かせるなどがたいせつな指導法である。
そのほか、ラジオ放送を聞かせる、よい映画をみせる、紙しばいやスライドをみせる、劇をみせる、集会でおもしろい話を聞かせる、音楽を聞かせることなどは、この時期にわけても必要な経験である。
以上のように、幼稚園のこどもは、精神年齢が満六才と六か月に達しないので、ことばの指導は主として、聞くことと話すことに終始するが、絵をみさせるとか、色や形の識別をさせるとかして、将来の読むことの学習への準備をすることはいうまでもない。
3 ことばの指導に役だつように環境を整える。
幼稚園におけることばの指導は、初めに述べたように、環境が大きな力をもつ。したがって、幼稚園では、まず、こどもに働きかけるような環境を整えることが必要である。
特に、教師の人格と、そのことばづかいは環境構成のたいせつな一つの要素である。豊かな感情と、きびしい行動と、ほがらかなユーモアをもって、常にこどもたちに適応した生き生きとした話をしなければならない。そうすることによって、こどもたちは、自然に安定感をもち、喜んで聞いたり、話したりする意欲がわき起るようになる。
友だちどうしも、またこの場合有力な要素の一つである。しかし、社会性の未発達なこの期のこどもたちは、みずから、それを環境として生かすことはできない。教師の巧みな指導によってのみ、おもしろく、生活に役だたせることができる。
こどもに喜ばれるような各種の施設も、もたなくてはならないものである。
4 ことばの指導のために、いろいろな調査をする。
ことばの指導においては、教師は何よりもさきに、まずこども自身の個人差をじゅうぶんに検査しておかなければならない。
たとえばそれぞれのこどもについて、身体検査・健康調査・家庭環境調査・知能検査・性格行動調査などの標準的な検査や調査をして、それに基いてさらに、ことばに関する各個別の事例研究や観察記録を取り、そこからその場その場の生活場面において、懇切に個人指導をしていかなければならない。ことに、目・耳・口などの障害は、早く見いだして、善処しなければならない。
この期のこどもの特殊性から考えて、次のようなことが強く要求せられる。
2 ことばの指導は、家庭と緊密に連絡の上で指導する。
3 こどもの個人差に応じた指導をする。
4 ことばの指導は、いつも、楽しく、ほがらかな、気持のよい環境において指導する。
一 教師が手をつける第一の仕事は何か
新入学児童にとっては、学校はまったく新しい世界である。すべてのことが入学と同時に大きな変化をする。
入学以前における児童の生活経験の範囲は、家庭とその身近な近隣である。したがって、その行動も、習慣も、家庭環境によって左右されている。また、身体的にも、教育的にも、多くの個人差をもって入学してくるのが普通である。
新入学児童を受け持つ教師は、学校教育の系統をそのまま機械的に課そうとしてはならない。まずそれぞれの児童が、家庭環境の中でどういう経験をしてきたか、そうして、どういう人格的要素を身につけているか、目や耳はいうまでもなく、健康はどうか、という、児童の実態を細かに観察調査して、ひとりびとりの児童をよく理解しておかなければならない。
もし児童が、幼稚園教育を経てきているものであれば、すでに国語の教育を受ける基礎ができていると考えられる。したがって、新入学児童を受け持つ教師は、幼稚園の課程をよく理解しておく必要がある。
幼稚園の経験をもたない児童に対しては、入学当初の指導に、幼稚園の経験をじゅうぶんに加味していくことがたいせつである。この場合に「幼児指導要録」は、よい研究指針である。
さきに述べた、児童の家庭生活の実態と、「幼児指導要録」の理解の上に、はじめて教師は、児童の必要と興味にかなった教育計画をたてることができる。
2 父母と協力する。
児童は、定まった授業を受ける前に、学習に関する心身の用意ができていなければならない。読み書きができる年齢だからというだけで、読み書きの用意ができているということにはならない。児童をむりに形式的な教育におしつけることは、児童が学校をきらいになり、将来の発展をそこなうことになる。
ところが、父母の中には、児童が就学すると、すぐに正規の授業が始まるものと思いがちである。そういう父母たちは、たとえば、その児童がまだ読むことの学習への準備ができていないというと、ふしぎに思うことがある。それは、その父母たちが、この読むことの学習への準備という原理が、今日ほど問題にならない前に小学校の教育を受けたからである。だから、学校教育計画の進歩をよく納得させるように、同情と自信をもって、父母とよく理解し合うために話し合うことがたいせつである。
また、教師は、第一学年の課程の基礎になる児童のいろいろな能力を、じゅうぶんに父母に説明しなければならない。すなわち、すべてのあかんぼうが、同時に話し始めるようにはならないことや、どのこどもも同時に歩けるようにはならないことを、改めて父母たちに気づかせるようにする。あかんぼうを育てた経験のある親たちは、歩くことや話すことが少しばかり遅れても、長い間には追いつくことができるのと同じように、読むことも、むりをしては、かえって悪い結果を招くことに気がつくに違いない。
さらに、読むことや、作文の形式的な作業を始める前に、児童のしている多くの活動が、やがて、学校教育で意外に役だつことを、実例をあげて父母に話すようにする必要がある。
(一) この学年の一般的傾向は何か
この学年の児童の一般的心理傾向は、まだたぶんに幼児的心性をもっているということができる。しかし、言語生活においては、大部分の児童は、幼児語の域を脱して、家庭の人たちや友だちと話合いができる。けれども、自己中心的な傾向は、感情的で、大きな声で話をしたり、またひとりで話しがちであり、他人の話に、黙って耳を傾けるというような態度は、まだじゅうぶんに現れてこない。
この期の児童の聞いて理解できる語いは、約三千語から五千語あるといわれ、あらゆる種類の品詞が相当に使われている。しかし、その表現は、ら列的であり、まとまった文としての形は、まだ整わない。
読むこと、書くことの方面からみると、はじめて文字ことばの世界に足を踏み入れるのであるから、児童は、驚異の目を見はって、文字を学んでいく。
文字ことばの世界における、児童の読書傾向は、まんが・おとぎ話・ぐう話・逸話・伝説などの想像的、空想的な読み物を喜んで読んだり、聞いたりしているのである。
(二) この学年の具体的指導目標は何か
この学年の指導目標は、話し、聞く生活を地盤として、読み、書く生活への目を開かせていくところにある。そのためには、興味ある話題を中心として、言語経験を豊かに営ませていくことに心がけなければならない。次に、その具体的目標をあげる。
2 聞くこと、話すことを地盤として、読むこと、書くことの生活に発展し、読むこと、書くことについての基礎的な態度や習慣や技能をみがいていく。
3 ひらがなを習得させて、読んだり、書いたりする技能を身につけさせる。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
聞くことの習慣や態度を養い、技能をみがくためには、必然的な聞く機会と場をとらえて、指導を進めていくことが望ましい。これが指導の目あてとしては、次のことがあげられる。
2 短い話ならば、注意力を持続して黙って聞く習慣や態度や技能を養う。
3 簡単な話ならば、その大要がわかり、復唱ができるようにする。
4 話を聞き終ったならば、「わかった」「わからない」「おもしろかった」など、判断ができるようにする。
聞くことの指導は、聞くことの必要の場に立ち、その機会をとらえて指導を進めることが効果的である。
次に、その指導の要領を述べる。
2 次にあげる機会は、聞くことの指導に効果的な場である。
(1) 朝の相談の時間
(2) 休み時間
(3) 昼食の時間
(4) 放課後の時間
(5) 教科の学習の時間
(6) いろいろな会合や催しのとき
これらの機会に聞いたことについて、「わかった」「わからない」などの話合いから、その話の大要をとらえることに指導の重点をおく。
3 いろいろな集団的な遊びをさせて、聞く必要の場にたって、聞く技能や習慣や態度を導く。たとえば、ままごとあそび・お店ごっこ・お客さまごっこなどは、そのよい機会である。
4 種をまいたり、草花を育てたり、動物を飼育したり、いろいろなものをつくったり、さまざまな活動をする機会をとらえて、質問したり、復唱したり、話の大要をとらえたりする技能を育てる。
5 興味ある童話や絵話や紙しばいなどを聞いたり、劇や映画を見たりして、話を楽しんで、静かに聞く態度や、話の大要を聞き取る技能を身につける。
6 ラジオを静かに聞いたり、レコードを楽しく聞いたりして、発音・発声・アクセントなどを正したり、聞いた内容について大要をとらえさせたりする。
7 学芸会・児童会その他、学校や学級の諸活動において、劇を見たり、話を聞いたりして、静かに聞く態度や、話の大要をとらえる技能をみがく。
8 いろいろの機会に、教師の指示に従って行動させたり、家庭への伝言を取り次がせたりして、理解力を養っていく。
2 教師は、自分自身の話しぶりに注意し、児童によくわかる語いを用い、歯ぎれよく、はっきりとしたもののいい方をして、児童の理解を正しくするように努力する。
3 教師は、生き生きとした話を、要領よく簡単に、わかりやすく話をする。
4 児童が楽しんで聞くためには、話の中にユーモアを交えて、おもしろく話をし、児童が聞きたがるように話す。
5 一年生の語いの範囲を考え、常に語いを広げてやるように考える。
6 経験を豊かに与えて、聞いた話が理解できるような配慮をする。
7 家庭とたえず連絡して、それぞれの児童の言語能力に応じた指導を加える。
8 聞くことの遅進児は、精神的、身体的発達を診断して、進歩を妨げている条件を発見し、常に専門家と協力して、その治療に努め、個人指導にあたる。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
話すことの学習指導の要領は、児童を集団生活の場において、話す必要とその機会を与え、話すことの必然の場において指導することが何よりも望ましいことである。次に、この学年の指導の目あてをあげる。
2 知らない人の前でも、話すことができる態度を養う。
3 日常生活において、簡単なあいさつができるようにする。
4 自分がしたこと、聞いたこと、考えたことなどについて、どんどん話せるようにする。
5 幼児語を使わないで、普通のことばで話せるようにする。
6 主語・述語のはっきりした文で話せるようにする。
7 好奇心をもっていることについて質問したり、先生や、父母の伝言がいえるようにする。
8 簡単なさしずができるようにする。
9 なまりのない、はっきりした発音で話すことができるようにする。
この期の児童には、まず安定感をもたせ、楽しくのびのびとした場を与えて、自由に話合う機会と場を豊かに用意していく。
(1) 登校・下校のとき
(2) 朝の相談の時間
(3) 休みの時間
(4) 昼食の時間
(5) 放課後の時間
(6) 他教科の学習の時間
2 興味ある話題を常に用意させる。たとえば、うちの人のこと、うちのできごと、遊んだこと、見たこと、どこかへいったこと、何か観察したこと、何かつくったこと、本を読んだこと、人から聞いた話などについて、常に用意させておき、話したいという意欲を起させておく。
3 話をするときには、相手の顔を見ながら、相手にわかるように、なまりのないはっきりした声で話すように導く。発音のふめいりょうなものは、ラジオ・レコードなど聴覚教具を利用したり、音楽の指導と関連したりして、発音・発声・アクセントなどについて指導を進めていく。
4 絵を見て、考えたり、思ったりしたことを話させたり、自分の書いた絵について話をさせたり、紙しばいをさせたりして、はっきりした声で、筋の通った話をみんなにわかるように話させる。
5 いろいろな集団的な遊びをして、話合いをさせる。たとえば、お客ごっこ、お店ごっこ、電車ごっこなどのような集団的な遊びをさせ、あいさつのしかたや、対話のしかたや、相手を見ながら話す作法を導いていく。
6 動物を飼育したり、植物を栽培したりして、観察したことを、友だちや先生に順序正しく、はっきり報告させる。
7 ごっこ遊びや劇などをして、幼児語を直したり、発音を正したりして、身ぶりに即して自然な態度で話すようにする。
8 読むことの学習では、次のような活動を導くことができる。
(1) 文の意味を理解するとともに、朗読することによって、正しい発音や語調などを身につけさせる。
(2) ことばに伴う表情や身ぶり、また、休止について気をつけさせる。
(3) さし絵や文について問答したり、話し合ったりさせる。
(4) 文の意味について話し合わせる。
(5) わからないことを質問させる。
9 作文学習では、次のような活動を導くことができる。
(1) 口頭作文として、日常経験に取材したことをまとめて話させる。
(2) 黒板に、みんなで書いた絵や文章について、話合いをさせる。
(3) 作文を読み合って、いろいろな話合いをさせる。
10 社会科の学習では、あいさつや応答などの態度を身につけさせる。
11 算数や理科や図画工作では、調べたり、観察したりしたことを報告できるようにする。
12 音楽では、発音・発声などの指導をして、なまりをなおす。
13 朝会・発表会・学芸会・児童会などの学校の諸行事や会合などでさしずをしたり、知らない人や、大ぜいの人の前で話す態度や技能を養う。
14 学校放送を利用して、簡単な発表をしたり、朗読をしたりして、機械を使って話す技能を身につけさせる。
2 教師は常に、児童の話しぶりに注意し、みずからよい話しぶりの手本となるように努力する。そのためには、次のことに注意していく。
(1) 歯ぎれよく、はっきり話をする。
(2) 短く、わかりやすい話をする。
(3) 生き生きとした話をする。
(4) 快活に話す。
(5) 筋の通った話をする。
(6) 語いに注意し、語いが広くなるようにさせる。
(7) あいまいなことばを避ける。
(8) ていねいなことばを使う。
3 学校外の指導にも努め、家庭とよく連絡して、児童の話すことの実態をよく知っておく。
4 ラジオ・レコード・紙しばい・映画などの視聴覚教具を利用して、話すことの意欲を高める。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
はじめて文字ことばの世界にはいるのであるから、読みの準備の整ったころをみはからって、読むことの指導に進む。読むことは、何かを知るために、また、楽しみのために読むのであるから、豊かに読む材料を用意し、読む習慣・態度・技能を育てていくことを目あてとする。
この学年の指導の目あてをあげると
2 正しく行をたどって読むような習慣をつける。
3 音読もたいせつであるが、黙読の習慣をしっかり養っていく。
4 進んで、広く読書する態度に導く。
5 自分の経験と文の内容とを結びつけて文の大要を理解させる。
6 ひらがなが読めるようにする。
7 漢字はだいたい三十字ぐらい読むことができるようにする。
8 文字のほかの諸記号を理解させる。
読むことの指導を効果的に発展させるためには、読みに対する児童の心溝え−−読むことの学習への準備ができたころを見はからって、指導を始める。この読みの準備をしないで指導を始めるところに、読むことの遅進児を生み、遅滞児を生むことになる。であるから児童の読みが始められるためには、まず児童に読みに対する準備ができているかどうか診断して、準備のできた機会をとらえて始めなければならない。
では、読むことの学習への準備ができているかどうかを知るにはどうすればよいか。それは、児童が普通次のような兆候を示したときに、読むことへの学習の準備ができたといえるのである。
2 本を読んでもらいたがるようになる。
3 話を五分間か十分間ぐらい静かに聞くことができるようになる。
4 何かまとまった話をするようになる。
5 児童の詩や歌をあんしょうするようになる。
6 絵本を見ながら、読みたい話を拾い出すことができるようになる。
7 自分のしたことを自分のことばと結びつけることができようになる。
8 文字というものが何であるかわかりだしてくる。
9 文字の形がわかり、ことばと結びつけられるようになる。
10 話を聞いて、その順序が記憶されるようになる。
そのためには、絵本を見せたり、読みの背景となるような経験を与えたり、文字板学習をしたりして、読むことへの経験を与えるように環境を整理し、その地域や学校に応じた指導をくふうしなければならない。
また、個人的には、読みの障害となる身体的、精神的方面を診断して、治療していくことを忘れてはならない。たとえば、栄養障害があるとか、目や耳の欠陥があるとかなどの身体的障害はできるだけ早く発見し、その除去について、専門家や父母と相談していくことがたいせつである。また、精神上にその障害の認められるものは、感情上の不安や恐怖を除去し、安定感をもって学習するようにさせる。知能の低い児童にあっては、できれば特殊学校へ、できなければ、特別に指導していく以外にない。
次のように指導を進めていく。
2 おもしろい童話や紙しばいなどをして聞かせたり、ラジオ放送を聞かせたりして五分間か十分間ぐらい静かに聞くことができるような態度を養い、話を聞きたがるような欲求を起させていく。
3 絵本を見たり、お話を聞いたり、また日常の経験を話題として、まとまった話をさせたりして、自分の経験と自分のことばを結びつけてまとまって話をするように導く。
4 音楽と関連して歌を歌ったり、動作化したりして、短い詩や歌をあんしょうして楽しみ合うように導く。
5 教室にある事物や、校庭の草花や、木など目につきやすいものに名札をつけておき、事物の名と文字を結びつけ、文字はそれらの名を表わす記号であることに気づかせる。そうして、文字で書かれてあるものを知ろうとする意欲を高め、文字とことばを結びつけられるように導く。
6 いろいろな事物を見させて、その形や色の異同に注意させ、文字の形を見分ける力を育てていく。
7 先生や友だちの名まえカードをつくり、カード遊びをして、人の名まえと文字とを結びつけていくように導く。また、事物の名まえをカードにつくって、カード遊びをさせ、文字がなんであるか、文字はどこから読むかについて気づかせていく。
8 文字板学習をして、読むことに慣れさせていく。
文字板学習というのは、児童の共通経験を話題にして話合いさせ、その話を教師が黒板に書きとめて、それを読んだり話したりさせ、文字に親しませていく学習である。したがって、文字板学習では、読むことの意義に気づかせて、経験と文字を結びつけていくのである。
9 掲示やポスターなどに注意させ、常に、はりだされたりしたものを読むようにしむける。
10 学級文庫・学校図書館などに、簡単な読み物や、絵本を整えて本に親しませ、また本の扱い方や、姿勢などに注意させる。
以上述べたような要領によって指導を進め、読むことに興味と欲求をもたせ、進んで読むような態度を育て、次の段階に進むのである。
11 文の大要を理解するには、児童は自分の経験と思い合わせて理解するのであるから、読むことの指導にあたっては、経験を豊かにしていくことが望ましい。
内容を理解させるには、行動化させたり、絵にかかせたり、未知の経険であるなら絵や写真など視覚教具を活用して経験を豊かにしていくように導く。
12 また、文の意味を理解させるためには、想像や連想の働きをじゅうぶんにさせて、話したり、行動化したり、絵にかいたりさせて、豊かに意味をとらえさせる。
13 読みの速度を増すためには、上から下へ正しく行を追って目を動かし、次の行に移る視線の訓練をする必要がある。だからときに眼球運動の練習をして、読みの速度を増していくように努力する。
14 読むことの一般的指導過程としては、次の段階をとるとよい。
(1) 準備
まず、新出の文字や新出の語句などをわからせて読みの障害となるものを除去する。また音読して、発音・アクセントなどを指導したり、未知の経験を内容とした文にあっては、視覚教具を用いて理解させる。
(2) 読み(黙読)
読み(黙読)によって、文の意味をつかむ。このときは、学習の手びきや学習帳、(ワーク・ブック)などを用意して能力に応じた仕事をさせる。
(3) 話合い
文の大要や意味について、問答をさせたり話合いをさせたりして、文の内容を正しくつかむ。
(4) 読み(音読)
話合いによって、文の内容を正しく読み取っているかどうかがわかったならば、次に、文を音読させる。そうして、だんだんうまく朗読できるようにしていく。
(5) 練習
新しく学習したり、指導したりしたことについては、じゅうぶんに練習して、正しく身につけていく。
(6) 評価
観察や客観的なテストによって、読字力・読解力・書写力などを確かめたりする。
15 つねに目的をもって読ませる。
なんのために読むのか、読むためには、どういう目的があるか、それを確かめてから読ませるようにする。そうして、自分から読もうとする習慣や態度を養う。たとえば、学芸会をするために、脚本を読んで劇をするとか、物語を読んで紙しばいをつくるとか、日記を書くために、資料として日記文を読むといったように、ある目的をたてて読物を選ばせて読んでいくようにする。
2 児童のことばカードをつくり、言語の発達について記録していく。
3 音読指導は、わざとらしくない話しことばの調子や語調で読むように導く。
4 入門期においては、文をことばとして読ませ、一字一字読ませることは避ける。
5 発音指導にあたっては、ことばとして指導するとともに、一音一音について正しく指導する。
6 児童の読みの能力を調査して能力的にグループを編成して、指導を効果的にする学習を計画する。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
書くこと(作文)は、相手に何か自分の考えを伝えるために話しことばのかわりに、文字記号をもってする働きであるから、話すことを地盤として指導を進めていくのが自然である。
2 自分の書いた絵に、簡単なことばや説明が書けるようにする。
3 自分の行動や身近なできごとなどについて、簡単な文を書くことができるようにする。
4 家庭への伝言など、簡単なメモが書けるようにする。
5 経験や行動の順序に、まとめて書くようにする。
6 文に句点をうつことに慣れさせる。
(1) 口頭作文として、話すことから出発する。
(ロ) 自分のかいた絵や、掛図などについて思ったこと考えたことなどを話させる。
2 やや進んだ段階の指導
文字を使って書けるようになったら、次の指導に移る。
(1) 自分のかいた絵に添えて簡単なことばや簡単な文を書かせて、話し合っていく。そのうちに、文が主となり絵は従になるように導く。
(2) 日常生活で経験したことに取材させて絵日記を書かせる。
初めは、絵ばかりの日記から出発してその絵の話をしていくうちに、簡単なことばや文を書き添えるように導く。
(3) 事物に名まえを書いたり、観察したりしたことについて話合いをしていくうちに、報告的な文を書くように導く。
(4) 学用品のお金や、給食費のことや、学校からの通信など、簡単な伝言をメモさせたり、また家庭からの伝言をメモさせてきたりして、書くことの必要を自覚させる。
(5) 遠足・運動会・学芸会などの共通経験を話したり、その様子を父母に知らせるなど相手をきめて、報告する文を書くように導く。このように、作文を書くときには、常に相手をきめて、はっきり書くように導く。
(6) 身近なできごとや、どこかへいったことなどについて、友だちに知らせる文を書かせる。書く順序は、行動や時間的経過の順序に書かせる。この指導では、共通の経験事項を話題として、共同制作したり、共同批正をしていくとよい。
(7) 書いた文を読み返して、てんやまるをうたせる。
(8) 観察力を養って、正しく物を見る力、感じる力を養う。それがためには草花・事物・人物などを観察し記録する練習をじゅうぶんにさせる。
(9) 書いた作文を読み合って、おもしろいところを話し合い、つくる意欲を高めていく。そのためには、文集を編集して多くの文を読み合わせる。
(10) 筋の通った平明な文を書くには、相手に話をする態度で、自分のことばで話すことをまとめてから書くようにする。
(11) つくることの指導過程は、次の段階をとる。
(ロ) 取材や文の構想について話し合い、書く事がらをまとめる。
(ハ) 文を書く。
(ニ) 読み返して、句とう点をうったりまちがいの文字を正したりする。
(ホ) 読み合って楽しむ。
2 書いた文は、あとで読み返す習慣を養うこと。
3 多読・多作を重視すること。
4 相手と書く目あてをきめて、話しかける態度で書かせること。
5 文字はていねいに書くこと。そのためには、書写能力をじゅうぶんにつけておくこと。
6 作文は能力に応じた個人指導を重視していき、書けない児童のないように導くこと。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
書き方は、自分の考えたことや感じたことを、他人に伝えるために、自分の心覚えや研究調査のために書くときに行われる働きである。したがって、書き方は作文と一体となって、その学習と指導の機会と場を見いだすことができる。そのとき、相手に正しく読んでもらうためには、文字を正しく効果的に書くことが要求されるのである。
そこで、この学年の指導の目あてとしては次の諸点があげられる。
2 書くときの姿勢や鉛筆の持ち方をわからせる。
3 ひらがなや、簡単な漢字や、アラビア数字が正しく書けるようにする。
4 文字に筆順のあることがわかり、筆順によって書けるように導く。
5 視写ができるようにする。
6 学年の終りごろまでには、一・五センチメートルぐらいの大きさの文字が書けるように導く。
書き方は、読み方よりやや遅れて始まる。文字板学習や読むことの学習によって文字に親しみ、文字の形の識別がよくできるようになってから、はじめて書き方を課するようにする。
たとえば、絵に添えて書いたことばの文字が、字形が不正で、筆順も違っているといった場合には、その文字を取り出し、正しく書く練習をして、正しく絵に添えることばとして書かせたり、家庭通信のメモを書くとき、正しく書くためにその文字を練習して、家庭にもっていくといったような機会をとらえて指導することである。このために手本の文字を見たり、それを見て基本的練習をしていくといった指導をする。
2 ひらがなを書くときは、あまり小さすぎす、ほどよい、よい形の字を伸び伸びと書かせる。
3 習慣によるだいたいの筆順によって、大きく書かせる。
4 チョークで、黒板に大きな文字を書かせて、字形・筆順・運筆などの要領を知らせる。チョークは、親指と、人さし指と、中指の三本の指ではさみ、チョークの一端がたなごころの中央をさすようにもたせる。
黒板とからだとの距離は、あまり接近しないで、適当な間をおき、運筆が自由で書いている文字の全体が見える位置にたち、左手は、左側のよい位置におかせる。
5 クレヨンを使って五センチメートル角ぐらいの文字を紙に書かせる。そして、筆順・字形を会得させる。クレヨンは、クレヨンはさみではさんで、折れないように、一本がけで軽く持ち、あまり下すぎぬようにする。
6 鉛筆で、文字を書くには、まず、鉛筆の持ち方を指導する。鉛筆を一本がけで持ち、あまり下すぎないところを持って書く。
鉛筆の先は柔らかく太い2B−3Bあたりの鉛筆で、少し大きめな文字をていねいに書かせる。角度は右手前へ五、六十度に傾けるようにする。
落ち着いてゆっくり運筆するような習慣をつける。
常に鉛筆のしんの削り方を指導し、しんを長く出さないようにする。二、三字書いたら鉛筆をまわして書くようにしつける。
7 書くときの姿勢を導き、これに慣れさせるようにする。
腰かけたときは、いすに深くかけ、背筋を伸ばし、胸を机に押しつけないようにさせる。
目と紙は三十センチメートルぐらいに保たせ右前で書かせる。
左手を紙に載せ、ひじを前に張らない。
足はひざからほぼまっすぐに垂れ、少し、つまだちの姿勢がよい。
すわったときの姿勢は足の親指を重ね、上体が前かがみにならないことが望ましい。
8 視写練習は、教師の板書や教科書などによって導く。
語句や文を読みながら書かせ、一字の一点一画をみながら書く癖を正していく。教科書を視写するときは、左方におき、字画をまちがわないように書かせる。自由な表現をするように気軽に書かせる。
2 文字練習がある特定の文字の機械的練習になることを避け、興味あることばの学習としてくふうしていくこと。
3 消ゴムは、なるべく使わない習慣をつけること。
4 学習帳を常に検査し、そこから、練習問題を発見し、個人の指導問題や学級の指導問題をとらえて指導したり、正しく書けている児童は、励まして、正しく書くことを習慣づけること。
5 正しく書くことを中心にしていくこと。
6 左ぎきの児童は、むりに右手で書かせない。左ぎきが正常な児童は、左手で書かせてもよい。
一 この学年の具体的指導目標は何か
(一) この学年の一般的傾向は何か
二年生になると、児童は、学校生活にも慣れ、落ち着いた態度を示してくるが、まだたぶんに幼児的な傾向にあるといえる。
身体的な発達においては、全身的な力量の発達が見られ、手先の運動の速さ。巧みさの増してくることが認められる。したがって、書くことにおいては、字形も整ってくるし、速く書けるようにもなる。
考える働きにおいては、一年生の初期にみられたような、自己中心からだんだん脱却し、社会性が芽ばえてくるから、仲間にはいって盛んに話し合ったり、活発な友人相互の交渉をもつようになる。普通はおしゃべりで、話しことばはだいたいにおいて完成の域に達する。発育も整ってきて、おとななみにすらすら話のできるようになるのが普通である。
読むことの場合には、文字に親しみを覚え、読書力は大いに進歩するが、まだ絵の媒介がないと、興味は持続しない。絵入りの童話や、紙しばいに異常な興味をもつ。また、読む内容も、ぐう話から生活童話に向かい始める時期でもある。
文は、ら列的であり、表現形式も並べていくだけで表面的な叙述が多い。したがって、描写の細かい整った文は書けない。語いはかなり発達し、助詞の用法も、広く、深く取り入れて、使用するようになる。
要するに、二年生としての一般的傾向は、幼児的な特質の終りの段階にあり、したがって、言語生活は過渡期にあり、混乱期にあるといえる。
(二) この学年の具体的指導目標は何か
二年生の一般的傾向に照し、この学年の指導目標には、次のようなものがある。
2 話を聞いて、その話のよしあしがわかるようにする。
3 話題を選んで、いつ、どこで、だれが、何をしたかというように適当な順序をたてて話すことができるようにする。
4 ゆっくりと落付いて語勢や語調に注意しながら、人にわかるようにはっきりと共通語を話すことができるようにする。
5 読むことにだんだん慣れて、長文でも最後まで読みとおすことができるようにする。
6 問に答えるために黙読することができ、また、文の荒筋をとらえることができるようにする。
7 感情のこもった短い文を書くことができるようにする。
8 親しい友だちや先生などに簡単な文を書くことができ、また簡単な礼状を書くことができるようにする。
9 簡単な文の句点・とう点などをうつことができるようにする。
10 ノートの使い方がわかるようにする。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
二年生では、まだ注意力が長く続かないから、少し長い話になると、ほかのことを考えながら聞いていたり、ぼんやりして聞いていたりする場合が多い。
聞くという積極的な努力なしに、聞こえるという程度にしか聞いていないのである。これは一対一の場合より、ひとりの話を大ぜいで聞く場合に多い。他人の話をしっかり聞いて、よく理解し、その話の荒筋がつかめるようにすることが、この学年ではたいせつな仕事である。
また二年生では、話合いの基礎的練習をしなければならない。自分のいうべきときと、聞くべきときをはっきりわきまえる態度が必要である。さらに進んで、他人の話がやや批判的に聞けるようにすることもたいせつである。
次に、その目あてをあげてみる。
2 話の荒筋をつかむことができるようにする。
3 相手とかわるがわる、話したり、聞いたりすることができるようにする。
4 話を聞いて、その話しぶりのよしあしがわかるようにする。
聞くことは、話すことと表裏一体のものである。学習において聞くことが孤立していることは、きわめてまれである。聞くこと、話すことは、交互に連関して、しだいに練習されていくものである。したがって、聞くことの指導は、話すことと融合させて、この二つの言語活動を相関的に指導していくのでなければ、その効果があがらない。
次に、聞くことの機会と場をあげて、指導の要領を述べる。
教師の話を聞く機会と場は、あらゆる学習や学校生活の中にある。
各教科の学習の時間、遊びの時間、始業前の時間、放課後の時間など、あげれば限りなく豊かである。
教師の話は、常に効果的であることがたいせつで、はっきりと、正しく、わかりやすく話さなければならない。
教師は、自分が話をしたあとで、いつも必ず、児童がどのように聞きとっているかを調べる必要がある。「今の話はどんな話だったでしょう。」と反問して答えさせる。この場合、児童はとぎれとぎれに話し、数人の答を総合して、はじめてまとまった一つの話になる場合が多いから、このようなときには教師は、「それからどうしましたか。」というように、あくまで追求して、なるべく一つのまとまった話としての答をさせるようにする。
2 児童相互の話や、報告を聞かせる。
これも国語の時間はもちろん、社会科の時間、理科の時間、算数の時間など、あらゆる学習時にあるし、学校生活の場に数多く見られる。
特に、児童の感想の発表や、グループ学習における報告などが重要な位置を占める。
このときも、教師は、「今の話はどんな話でしたか。」、「どこがおもしろかったでしょう。」「わからないところがありませんか。」などと反問することが必要であろう。発表した児童に「質問はありませんか。」、「わからないところはありませんか」などときかせて、自発的に「ことば」の練習をさせていく指導が望ましい。
3 話合いをさせる。
朝の話合い、学級会、学習計画の話合いなどは、国語はもちろん、他教科の学習においても重要な学習の形態であるが、この話合いを通じて、聞くことの学習をじゅうぶんにさせる必要がある。
この場合は、自分のいうべきときと、聞くべきときをはっきりと区別して、相手とかわるがわる話したり、聞いたりする態度を指導することがたいせつである。
4 遊びの時間を利用する。
遊びの時間は、「はなしことば」の自由に伸び伸びと行われる場である。友だちの身辺雑事や、家庭のできごと、運動や遊びの規則についての話などが、自然に、活発に行われ、児童相互の意志交流の場となるのである。この場合は、よく相手の顔を見て話したり、聞いたりすること、相手に愛情をもって聞くなどの指導がたいせつである。
5 朝礼や全校集会を利用する。
朝礼や全校集会で校長や係りの先生から、いろいろな学校生活のきまりや注意を聞く機会が多い。
この場合、この学年の児童には、聞いた話をじゅうぶんにのみこんでいないものがあるので、教師はその直後ただちに、どんな話であったかと聞いて、話を整理して、はっきりと聞きとらせるようにしむける。
6 自治委員の報告を聞かせる。
これも二年生ぐらいでは、聞き漏らしている児童が非常に多い。したがってこれもやはり聞いた直後にその内容を答えさせるようにして、いつもはっきりと聞きとらせるようにしむける。
7 聞いたことについて、メモをとらせる。
学校では、教師が明日の準備をいいつけたり、いろいろな注意を与えたり、また、家庭への伝言を与えたりすることがある。この場合には、簡単なメモを話の直後にとらせると、話を聞くことに注意力が持ちえて、効果的であるばかりでなく、作文の学習にもなる。
8 お話会をさせる。
これは、長い興味のある話を聞く場合である。教師が話す場合もあり、また児童が話す場合もある。内容的には、昔話・童話・ぐう話・伝記・物語などがある。
この場合は、終ってから、その内容について話合いをさせたり、文や絵にかかせたり、批判させたりする。また、話す人の態度や聞いている仲間の態度などについて感想や批評をさせる。
9 誕生会や学芸会をさせる。
これらの催しにはお話ばかりでなく、音楽・紙しばい・人形劇・児童劇、ときにはスライドなども加えられる。紙しばいや劇は、見ることであり、聞くことであるから、他人のせりふや話し方を、楽しんで聞く態度を指導しなければならない。
何がおもしろかったか、どこがおもしろかったか、などの話合いから、そのよしあしを批判させるように指導していく。
10 ラジオを聞かせる。
ラジオは、あらゆる学習において利用しなければならないものの一つである。ラジオ放送の低学年の時間をよく考慮して、学習指導計画をつくることが望ましい。
ラジオを利用するには、一年間の放送プログラムを参考として、カリキュラムの中に生かしていくことが理想的である。
ラジオの利用の要領としては、次のようなことが考えられる。
(1) 放送前の指導。
教師は、その日の放送プログラムをよく研究し、できれば、歌詞、重要なせりふ、人物の名まえなどを板書したり、放送内容のあらましを話しておく。
(2) 聴取中の指導。
低学年であるから、落ち着いてしんみり聞くというよりも、積極的にラジオと一体になって楽しむようにしたい。音楽の場合には、拍子をとったり、手をたたかせたり、いっしょに歌わせたりする。劇や話の場合は、人物の名まえや、話している人の名まえを書いたり、今はこの人が話しているとか、川の音だとか、虫の音だとか、汽車の音だとか、教師がいろいろと示唆を与えながら聞かせるようにする。
(3) 聴取後の指導。
どんな話だったか、どんな劇だったか、どんな音楽だったとか聞いてみる。特に必要なものは文に書かせたり、報告的な絵をかかせたりする。
11 校内放送を聞かせる。
ここでは、学校全体の指示事項や伝達を、要領よく聞いて、行動に移せるように指導する。
また、話や劇の場合には、ラジオの指導と同じであるが、特に、今放送しているのは、何学年のだれだとか、何先生だとか、だれの兄さんだとか話してやれば、児童は興味もあるし、喜んで聞くようになる。
よい聞き相手があってこそ話じょうずが生れるものであるが、この学年ぐらいでは、内容、表現ともによい効果的な話があってこそ、よく聞く活動が生れてくる。これは、二年生の一般的な傾向や、注意力や、興味の問題につながる。児童の興味のない話を聞かせることは、この学年の児童には、まだむりである。教師は、正しく、はっきりと、わかりやすい話ができるように、まず自分自身の練習をつむ必要がある。このことは教師が、児童の聞くことや話すことの指導で備えなければならない最大の要件である。
聞くことの指導上注意すべき点については、次のようなことが考えられる。
2 落ち着いて、注意を集中して聞くような態度や習慣を養う。
3 くつろいだ態度で聞かせる。
4 教師は、話術の練習に心がけるとともに、二年生の児童に要領のつかみやすい話をする。
5 聞かせる場合の動機づけをしっかり与えておく。
6 聞くことの実態を調査して、参考にする。
(1) その目標が何パーセント達せられたか。
(2) 遊びの中での応答の状態はどうか。
(3) 要領のつかみ方はどうか。
(4) どのくらいの長さの話なら、聞くことができるか。
(5) どのくらい注意力を持続して聞けるか。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
二年生になると、話すことの活動が盛んになり、日常の生活言語を用いて、おとな相手にも話せるようになる。語いも豊富になってきて、一方、おしゃべりになる。しかし、まとまった、筋の通った話はなかなかできない。態度も自由でのびのびしているが、きわめて衝動的で落ち着かない。この期では、まず、そうした態度の確立からはじめて、次のような指導の目あてをおく。
2 ゆっくり落ち着いて、語勢や語調に注意しながら、人にわかるようにはっきりと共通語を話すことができるようにする。
3 家庭や社会の簡単なできごとや、また、本を読んだり、人に聞いたりしたことについて、話すことができるようにする。
4 表情や動作をまじえて、見たり、聞いたり、読んだりしたことを劇化することができるようにする。
5 立ったり、すわったりする動作や姿勢に気をつけて、話すことができるようにする。
二年生の言語生活はまだ文字力が少ないので、読んだり、書いたりすることにくらべて、話すことの生活の方がきわめて多い。
したがって、あらゆる話す機会と場を、有効に生かして、話すことを経験させることによって、その技能をたかめていかなければならない。これは、一年生の話すことの学習指導においても述べたことであるが、二年生も、次のようなことが考えられる。
(1) 音読をしたり、詩や文章をあんしょうさせることによって、正しい発音、アクセント、語調などを身につけさせる。
(2) 文の内容について、問答したり、話し合ったり、わからないことを質問させたりすることによって、問答のしかたや、話合いのしかたをわからせる。
(3) さし絵を示して、まとまった、一つの話を構成させるようにする。
(4) 劇や紙しばいをさせることによって、せりふをおぼえたり、ことばを動作化させたりする。
2 書くことの学習の利用。
(1) 口頭作文で、身のまわりの生活について話すことができるようにする。
(2) 題材について見たり、聞いたり、考えたりしたことをのべたり、話し合ったりすることができるようにする。
(3) 黒板にみんなでかいた絵や、文について話合いができるようにする。
(4) 自分の文(メモ・記録・生活文・日記・手紙文など) が音読できるようにする。
(5) 自分の文や、他の人の文を読み合って、反省したり、訂正したりするために相互に話合いができるようにする。
3 社会科やその他の学習の利用。
(1) 話合いを進めたり、話合いの結果を報告したり、また、グループの研究の結果を報告したり、説明したり、質問に答えたりすることができるようにする。
(2) 算数・理科・図画工作では、観察・測量・耕作・栽培・飼育・実験・製作などの活動や作業を通じて、正しいことばの使い方に慣れさせる。
(3) 音楽では、発音・音感を練ったり、歌詞を話させたりする。
(4) 発表会・学芸会・児童会などでは、話しのしかた、話合いのしかた、大ぜいのまえで話す態度などを身につけさせる。
4 朝の話合いの利用。
その日に学習することや、欠席の友だちのことや、登校の途中のできごとや、前の日にあったことなどについて、話合いができるようにする。また、教師に、いろいろな質問ができるようにする。
5 遊びの時間の利用。
(1) 二年生にふさわしい運動や、遊びについて、そのきまりや、約束について話し合うことができるようにする。
(2) 遊びの時間の会話や、話合いは、とかく乱雑になりやすいので、できるだけ、ていねいなことばを使用するように絶えず指導する。
(3) 興味のあることを、はっきりした調子の声で話すことができるようにする。
(4) そのときあった、けがとか、失敗とか、交友関係などについて、機会をつくって話させるようにする。
6 昼食時の利用。
(1) 給食のおかずの名まえや、すき・きらいなどについて話し合うことができるようにする。
(2) 給食の準備のできる間を利用して、自分のしたことや、物語などについて話せるようにする。
(3) そのほか、伸び伸びとした自由な会話の機会を与えてやる。
7 遠足や見学の利用。
(1) 計画について話合いができるようにする。
(2) 目的地について話し合ったり、知っていることが報告できるようにする。
(3) どんな準備をしたらよいかについて話合いができるようにする。
(4) その途中の、のびのびした会話をたのしませる。この場合も、うれしいので、はしやぎすぎて、乱暴になりやすいから、なるべくていねいなことばを使用するように指導する。
(5) 観察したことについて話合いをしたり、まとめて報告したりできるようにする。
(6) すんだあとで感想が発表できるようにする。
8 用事をいいつけた場合を利用する。
(1) よく聞いて、復唱ができるようにする。
(2) 正しく返事ができるようにする。
9 日常のあいさつを利用する。
(1) 登校・下校などのときに、友だちや、教師に正しくあいさつができるようにする。
(2) 他人に迷惑をかけたり、感謝の気持をあらわしたりするときのあいさつができるようにする。
話すことの機会や、場は、きわめて多く、多種多様であるから、そのとき、その場に応じた指導をすることが望ましい。したがって、その時、その場に応じて、話すことの目標のどこに力を入れるべきかをはっきりさせて、指導にあたることが肝要である。
2 「ああそう。」とか、「そう、そう。」とあいづちをうって、教師は、いつも二年生らしい訴えや、報告のじょうずな聞き相手となるように心がける。
3 友だちどうしのよい仲だちとなって、話合いをじょうずに進めていくようにする。
4 教師は、常に効果的な、よい話の模範を示すようにする。
5 快活で、ときにユーモアを交えて親しみぶかい話をする。
6 二年生が実際に使用する生活語に精通する。
7 教師は、いつも児童の運動会や、遊びの仲間いりをし、児童の生活や経験を見究めて、その場、その場にあって、最も適切な指導をする。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
二年生になると、だんだんと、文字に親しみを覚え、読むことに興味をもち、また、その読む範囲が拡大されるので、読むことの目あても多岐にわたるようになるが、要約すると、次のようになる。
2 読むことにだんだん慣れて、かなりの長文でも最後まで読みとおすことができるようにする。
3 考えながら読む態度がたかまってき、また、黙読するとき、くちびるを動かさないで読むことができるようにする。
4 問に答えるために黙読することができ、また、文の荒筋をとらえることができるようにする。
5 文字のほかの諸記号、。「 」などがわかり、それに注意して読むことができるようにする。
6 情報や知識を得るために本を読む度数がますます多くなり、また読んだ本の内容を他人に伝えて喜ぶようにする。
7 絵および文の前後の関係を手がかりにして、ことばが理解できるようにする。
8 かたかなは、そのだいたいが読め、漢字は、だいたい一三〇字ぐらい読むことができるようにする。
児童は、ひらがなを習得すると、読むことによって、聞くことよりもたしかにまた順序だってわかるので、まったく新しい経験が得られることがわかってくる。また文字という抵抗を押しのけて、その内容を探っていく興味もわいてきて、読むことに積極性が増してくる。それでは、このような時期の児童をどう指導したらよいか。
2 黙読をするとき、一年生のとき、多少くちびるを動かしていたものも、この学年では、くちびるを動かさないようにして、ひたすら目で読むように指導する。それには、口を指でおさえさせて読ませることも一つの方法である。したがって、この学年では、目を行から行に正確に、しかも早く移す指導が望ましい。
3 この期の児童の読むことの目あての一つとして、長い文でも最後まで読みとおすことができるようにすることが揚げられているが、この指導にあたっては、教師は、いろいろな準備をしてやる必要がある。たとえば、
(1) 児童がどうしても読まなければならないように、必然的な動機をもたせる。
(2) 児童の興味と好奇心を利用する。
(3) 児童の競争心を利用して、ある程度の競争をさせる。
(4) 児童のひとりびとりの能力にあった読み物を与える。
(5) 長い文でも、ある程度の節に分けて、一まとめとして読ませる。
(6) ある程度内容をわからせておいて、読解していくおもしろみを味わせる。
(7) 読みのための新出の文字や新出の語いをわからせていく。
4 新出の文字や新出の語いを理解させる場合には、その文のさし絵や、文の前後の関係を手がかりとしてわからせていくことも、この学年の読むことの重要な目あての一つであるが、それには、
(1) さし絵を見てお話をさせる。
(2) さし絵のない場合には、教師は、掛図をかけたり、黒板に絵をかいたりして、それについてお話をさせる。
5 この学年においては、一つの文を読むとき、だいたい次のような操作が必要である。
(1) 題について話合いをさせる。
(2) その文のさし絵について話合いをさせる。
(3) 内容の背景として役だつような絵を見させる。
(4) 内容に関連のある経験を思い出させる。
(5) 内容の大要をつかむような質問をする。
(6) 新出文字、新出語いを調べさせる。
(7) 目的を与えて黙読をさせる。
(8) 文の全体の大要をつかませる。
(9) グループで話合いをさせ、内容の理解の不足を補わせる。
(10) 文の山を調べさせる。
(11) 内容を動作化する。
(12) 内容について、質問をもたせる。
(13) 文の内容を絵にさせる。
(14) 適当な声で、人によくわかるように音読させる。
6 音読は次のような場合にさせる。
(1) 読むための準備ができているかどうかを調べるとき。
(2) 内容がつかめているかどうかを調べるとき。
(3) 人に聞かせて楽しませるとき。
(4) 朗読の練習のとき。
7 読むことの指導においては、次のような施設や教具を利用する。
(1) 学級文庫・学校図書館。
(2) さし絵・掛図・ラジオ・紙しばい・幻燈・映画・レコードなどの視聴覚教具。
(3) 他教科の教科書・参考書。
8 読むことを効果的にするために、児童たちと次のような約束をして、読むための基準を与えておく。
(1) よい姿勢で読む。
(2) 頭や、くちびるを動かさないようにして読む。
(3) 目を大きく動かして読む。
(4) 新出のことばをはっきりとわからせる。
(5) 内容をはっきりわからせる。
(6) 読む速度を速くする。
9 かたかなは、だいたい次のような場合に指導することが適切である。
(1) 外国語・外来語。
(2) 外国の地名・人名。
(3) 擬声・擬音。
(三) どんな点に注意したらよいか
2 いろいろな表現形式の文を読ませる。たとえば詩・童話・生活文・よびかけ・対話文・短い報告文・感想・手紙文・日記など。
3 カード遊び・ことばあつめ・かるた遊びなどを計画的にさせていく。
4 五十音図を有効に、興味深く利用して、文字を正しく認知させる。
5 話で伝えられることでも、ときどき回覧板にしたり、黒板に書いたりして一般的に読ませる。
6 読書衛生にじゅうぶん注意する。
(1) 目や耳は達者か。
(2) からだは健康か。
(3) 姿勢はよいか。
(4) 本と目の距離はどうか。
(5) 光のぐあいはどうか。
7 教師は、児童の読書の実態をよく調査しておく。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
二年生は、まだ文字の書写能力がじゅうぶん身についていないし、構想もまとまったものをもっていない。文字で発表するより、話しことばで発表するほうが、生活の場や機会も多い。ごく簡単な短い文や、記録・手紙などから指導し、だんだんと作文に興味をもたせることが肝要である。
2 感情のこもった短い文を書くことができるようにする。
3 身近な生活の報告や、記録を主とした簡単な文を書くことができ、また、順序正しい筋の通った文を書くことができるようにする。
4 親しい友だちや、先生などに、簡単な手紙を書いたり、礼状や招待状を書くことができるようにする。
5 おたがいの作文を読み合って楽しむことができるようにする。
6 文の時の使いわけができ、また、句点やとう点をうつことができるようにする。
作文は、低学年では、話すことと表裏一体のもので、多少の例外はあるにしても、話すことが向上すれば、作文の能力も向上するといわれている。
口頭作文を重視し、作文に興味を起させ、書くことに過重な負担をかけないようにする。
文字や表現にばかりとらわれると、自由にのびのびとした作文を書くことができなくなり、またかえって、作文をきらいにさえする。したがって、この期の児童の作文の指導は、気長にすることが、何よりの根本的な態度といえよう。
2 文字表現の必要な場を与える。
(1) 家庭から学校へもってくるものを忘れないようにノートに書かせる。
(2) 家庭への伝言を書かせる。
(3) 図画や工作の作品に簡単な説明を書かせる。
3 共通した生活である学校行事(遠足・運動会・展覧会・見学など)について、順序よく口頭で発表させたり、文に書かせたりする。
4 いろいろな本を読んで、その簡単な感想を書かせる。
5 厳密な意味では詩でなくとも、感動のこもった短い文を児童のことばで、すなおに表現させる。
6 「郵便ごっこ」を契機に、親しい友だちや、先生に、簡単な手紙文が書けるように指導する。
7 身辺のできごとや、変化を、日記に書かせたり、生活文にしたりする。
8 自分の作文や、友だちの作文を読んで誤字・脱字を見つけだす練習をする。
9 ことばの決まりをだんだん理解させていく。
10 かぎを使用させ、文の中になるべくたくさん会話を入れるように指導し、板書してかぎの使用をじゅうぶんわからせる。
11 この期の児童には、文の時が、まだよくわからないので、簡単な短い文で、しっかりと指導する。また、句点や読点のうてないのが普通であるからしっかりと指導する。
2 他人の文や、教科書、その他の文を模倣して書く児童が多いから、作文は、自分で見たこと、思ったこと、したことを自分のことばで書くのであるということをよく知らせること。
3 推考をいやがらない習慣をつける。(読み返して誤字・脱字などを訂正する)
4 同じ語の重複が多いからじゅうぶん注意し、共同批正をする。
5 すぐれた作品(特に短い文や、詩など)は何回も与えて、あんしょうさせるくらいまで、読ませたり、味あわせたりする。
6 語いを積極的に豊富にするために、ことばあつめ・しりとり・連想遊び・名まえあつめなどを、しばしば機会をつくっては行う。そうしてそのことばのもつ内容も、相互の話合いによって、吟味させる。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
一年間の国語の学習で、文字への親しみが増し、手先の運動も巧みになってくるから、書写の意欲はしだいにたかまってくる。この時期に正しく書くことを、しっかり習慣づける必要がある。
2 ひらがなを正しく書けるとともに、かたかなもそのだいたいが書けるようにする。
3 文字の形が整い、運筆が、やや楽になってくるので、文字のたいせつであることを自覚させ、硬筆手本などを利用して、書写の技術面に関心をもって書くようにする。
4 簡単な文の句点・とう点などを書くことができるようにする。
5 聴写ができるようにする。
(1) 文字は形が整い、字画にまちがいがなく、適切な順で書かれることがたいせつである。
(2) 文字を構成している点や線の位置・長短・曲直・へんやつくりなどの組立に関心をもたせて、語句や文を手本によってくり返し習わせる。
(3) 漢字まじりの文を書く場合は、かなを漢字よりやや小さめに書くようにする。
(4) 自分で書いたものを、手本や、教師の書いたもの、よく書けた友だちのものなどと比較して、正否のだいたいを見分けさせる。
2 姿勢や鉛筆の持ち方、傾け方、筆圧の適度がだんだん身につくよう努めさせ、落ち着いた運筆で正しい文字を書かせるようにする。柔らかく太い鉛筆は、四、五字書いては少しずつまわして鉛筆のしんの新しい稜角を利用して書くことを教え、なお鉛筆の持ち方の不自然さが直しにくいときは、気軽に曲線やまるや、種々の形を書かせて、自分でくふうさせる。
3 かたかな字画は簡単で、漢字のかい書と同じように、やや直線的であるから、ひらがなより書きやすく覚えやすい。しかし字画が簡単なだけに一点一画をはっきり書くように注意させる。
4 ノートの使い力は次の点に注意して書かせる。
(1) ノートは順を追って使い、ページや行をむやみにあけないように、むだなく使用させる。
(2) ノートにらく書きしないようにさせる。
(3) 書き損じたり、破ったりしないようにさせる。
(4) ときどき点検して、個人別に指導する。
5 聴写には、次の事がらを心がける。
(1) 正しく聞き取るように努めさせる。
(2) 意味を知って書くようにさせる。
(3) 字がそまつにならないように落ち着いて書かせる。
6 生活の中で、書く機会をとらえる。それには次のような機会が見出される。
(1) ノートをとる時。
(2) 絵日記をつける時。
(3) 簡単な覚え書きをする時。
(4) お店ごっこや郵便ごっこの看板を書く時。
(5) 広告やポスターを書く時。
(6) 詩や文を書いてはり出す時。
2 批正は目前で行い、ただちに反覆練習の機会をもたせるとよい。
3 一字一字の正しさとともに、常に、全体としてのまとまりに心がけることがたいせつである。
一 この学年の具体的指導目標は何か
(一) この学年の一般的な傾向は何か。
三年生の児童は、小学校の低学年の域を脱して、身体的な面でも、また精神的な面でも、著しく活動的になる。好奇心や探究心がおうせいに働き、新しい知識をむさぼり求める。機械的記憶が正確で、このための練習にも、興味がわいてくる。
社会的意識がしだいに表われ、これまでの自己中心の考え方や行動が、対他的、協同的に発展してくる。ここに、自覚的な道徳性の芽ばえがみられる。こうした、いろいろな傾向は、ただちに国語学習の内容や方法に対する基本となる。
言語生活についてみると、話しことばがひととおり身につき、発音や調子ばかりでなく、その場に応じた話の内容や用語が整ってくる。このために、おとなの仲間にはいって話を聞くことができるようになり、簡単な日常の用をたすには、おとなと話をしても不自由がなくなる。読むことは、文字力・語い力が著しく進み、これを基本として、文章の解釈が正確となり、読書に対する興味も高まってくる。その範囲は、童話・漫画・冒険物語・科学読物・伝記などにひろがってくる。書くことも、ひととおり自由になる。一般には、書くことは、話すこと・聞くこと・読むことにくらべて、文字を習得し、書くという技能を必要とする形式上の負担が大きいために、児童の興味が低く、その発達が遅れるものであるが、三年生になると、読書力がおおせいになるにつれて、この方面もしだいに活動的になってくる。
(二) この学年の具体的指導目標は何か
2 いろいろなできごとや、読んだり聞いたりしたことから、話題を選んで順序をたてて、はっきりと人にわかるように話すことができるようにする。
3 長い文章でも、ひとりで楽しんで読む習慣ができ、黙読の速度が速くなるようにする。
4 いろいろな目的や自分の興味をもっているものを選んで読むことができ、要点をじょうずに読み取ることができるようにする。
5 目次・手びき・注釈などを利用して読むことができるようにする。
6 かたかなも全部読め、漢字もだいたい二八〇字ぐらい読めるようにする。
7 報告・記録・日記など必要に応じて書けるようにする。
8 自分で書いた文の推考ができ、より正確な文が書けるようにする。
9 文字のだいたいの構造がわかり、標準的な筆順で正しく書けるようにする。
10 はがきや手紙、封とうの上書きができ、白紙やけい紙が使えるようにする。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
三年生になると、聞くことの態度の上でも、整った正しいものになり、聞くことの内容についても、ただ楽しむというだけでなく、さらに進んでまた、新しいことを知ろうとする。そうして、これまでの形式的な聞き方から、さらに進んで自覚的な聞き方になってくる。次に、指導の目あてをいくつかあげてみよう。
2 聞いている話の内容がわかるばかりでなく、話の荒筋を順序だてて聞き、たいせつな点をわすれないようにする。
3 話を聞くとき、自分の経験を思いだしながら聞くことができるようにする。
4 話の内容の正しさ、話し方の巧拙、態度のよしあしなどについて、感想や質問をもつことができるようにする。
5 話を楽しんで聞くばかりでなく、進んで新しいことを知るために聞くことができるようにする。
(二) どう指導したらよいか
三年生になると、聞くこと、話すことの分野が非常に広くなり、その興味や欲求が活発となる。これを基本として、次のような取扱を進める。
学校全体の朝会のときの校長の話、週番の話、児童の当番の話などを取り上げて、どのように正確に聞いたか、どのような態度で聞いたかに注意する。教室内では、学習に関すること、経験事項の話合い、教師からの注意など、すべての聞く機会を生かし、いつも正しく聞くように指導する。なお、聞くことの機会には、第一学年の聞くことの指導の場としてあげたものを利用するほか、ここでは特に、お話会・児童劇の会・誕生会・研究発表会・レコード鑑賞会などが取りあげられる。そうして、聞くことの機会を豊富にし、これを有効に進めることがたいせつである。
2 ラジオの聴取を計画的に指導する。
ラジオは純粋に聞くことだけの働きである。学校放送の聴取は、もちろん家庭でもできるだけ利用するようにする。
学校における聴取の指導は、聞くまえに、放送内容を話し合ったり、テキストによって、内容の大要を研究したり、聞く態度について注意し合っておいたりする。聴取後には、要点をまとめ、感想を話し合い、聞いているときの態度について、反省したりするようにする。特に、この期の児童は、個人的な興味や態度の未熟によってさわぎたてることがあるから、いつも静かに聞いて、人の妨げにならないように導かねばならない。そうして、その間に、内容についての感想や質問をもつように導くことがたいせつである。
3 長い話を聞いたり、たいせつな話を聞いたりした場合に、その荒筋を順序だてて聞かせて、その要点をはっきりとつかませるようにする。そうして、その話のたいせつな点は、わすれないようにさせる。
4 聞くことの内容について、広い範囲の興味をもたせるようにする。聞くことにも個性的な興味の差があるが、この時期に話のいろいろな内容に興味をもたせるように導くことは、知識、技能の習得の上からも、人間形成の基底を築く上からもきわめて必要なことである。
5 新しいことを知るために、進んで聞きたがるようにする。新知識を求めるために、どうしても、進んで新しいことを知るために聞くといった態度が養われなければならない。教師の適切な問が、このような態度をのばすのに役立つことが多い。
2 人に接するときには、常に注意深く、人の発言をよく聞き落さないようにさせる。
3 聞いてわからないことがあれば、適当な機会に、聞き返すようにしつける。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
三年生になって、聞くことについての興味が増し、その範囲が広くなるのにつれて、話すことに対しても興味が加わり、態度も自由になり、さらにまた、その内容も豊富になる。そうして、日常の言語生活では、おとなの仲間入りをして話すことができるまでに進んでくる。この学年での目あてとしては、次のようなことが考えられる。
2 自然な態度で、観察したことや計画したことなど、筋の通った話をすることができる。
3 話題を豊富にし、広い範囲の話題に興味をもち、話を続けてとぎらさないようにする。
題材には、経験事項、学習に関する内容、観察についての発表、いろいろな計画、童話・読書内容の発表などが考えられる。
4 正しい共通語であることはいうまでもなく、抑揚のある声で、しかも、その場にあった語調で話すことができるようにする。
5 話合いができるようにする。
話すことは、いつも聞くことと一体となり、常に機会を生かして、自然の間に話すことの要領を習得するように指導することがたいせつである。
日常の生活も、学習の場面も、話すことを抜きにしては、ほとんどなりたたない。三年生に実際に話すことの指導としてあげられるよい機会は次のようなものがある。
(1) 始業時や終業時の話合い。
(2) 学習時の発表や話合い。
国語科の学習はいうまでもなく、他教科のすべての学習は、話すことの指導のよい機会である。
(3) 学校の往復の途上や休憩時などの児童と教師の自由な話合い。
これは、特に話すことの遅れている児童のためには、指導の最もよい機会である。
2 話すことの学習として、いろいろな計画をたて、これを有効に進める。
話すことの機会とともに、計画的に取り上げられるものには、次のようなものがある。
(1) 簡単なできごとや、経験事項を取り上げて、始業時や、昼食後に話し合う。
(2) 読んだ本や聞いた話などを材料にして、お話会を開き、輪番に話をさせる。
(3) 児童劇の実演や、いろいろな会合の機会に、話の要領を習得するようにする。
3 国語科の学習で、話すことを計画的に指導する。
(1) 話すことと朗読の指導によって、発音・抑揚・調子などを指導する。
(2) 文の研究や、作文の指導と合わせて、正しい語法で話すようにする。たとえば、主語を抜かしたり、主語をいくつもつけたりしないで、正しい文で話すようにする。また、助詞を抜かしたり、誤ったりすることのないようにする。
(3) 作文の腹案として、あらかじめその要領を発表することによって、まとまった話や、確かな発表ができるようにする。
(4) 教科書や、いろいろな読み物の文を読んだり、ラジオを聞いたりすることによって、自分の使っていることばの中に、幼児語・方言・なまり・野卑なことばなどのあることに気づかせ、だんだんとよいことばや、共通語を使わせていくようにする。
4 話すことの遅れている児童には、特別の考慮を払って指導を進める。
(1) 学校の往復途上、遠足、学校の清掃、学校園の手入れ、遊び、昼食など自然の機会を利用して、教師が相手となって、いろいろな話をさせる。
(2) 学習時間には、なるべくやさしい問を出して、努めて答えさせたり、話させたりする。
(3) なるべく話す機会を多くする。
(4) 発音の不完全な児童には、特に、正しい発音をよく聞かせたり、正しい口形をつくるように指導したり、基本的発音練習をさせることがたいせつである。正しい口形をつくるように指導するためには、鏡を使うことが効果的である。
(5) どもりの児童には、特にあたたかい心で接し、学級の全体でいたわり育てる気持をもつようにする。
きょう正の方法は、その児童のどもる音群を発見し、それを軽い安心した気持でくり返し練習するようにする。特に、どもる音群をつづった文章を読む練習をすることは有効である。
2 あらゆる機会を生かして使い、正しいことばづかいが身につくように指導を進める。
話すことは、単なる知識的な理解のみでは身につかない。あらゆる機会、あらゆるときに、たゆみなく指導することが必要である。
3 指導にあたっては、態度・話題・用語・発音・語い・内容などについて、常に進歩のあとを評価する。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
三年生になると、一般的には、文字の力が増し、語いが豊富となり、理解力もだんだんと正確になってくる。したがって、初歩的な鑑賞もでき、読書力もさかんになってくる。一部の児童は、一冊の童話の本を一、二日で読み終り、学級文庫の四五十冊の本は一冊残らず続んでしまう。ところが、これに反して、少数の児童の中には、ほとんど読書の興味を発見できないものもいる。したがって、三年生は、読書力の上で、進歩の速いものと遅いものとの間に相当の開きのできる学年で、この学年で、読むことの指導の目あてとしては、次のようなものが考えられる。
2 自分の興味をもっていることについて、読みものを選択することができ、また、いろいろな目的のために、本を読む能力と意欲がだんだん増してくるようにする。
3 文の好きなところや、おもしろいところを抜き出すことができ、また、文の内容をじょうずに読み取ることができるようにする。
4 目次・手びき・注釈などを利用して読むことができるようにする。
5 音読よりも早く黙読することができるようにする。
6 他人を楽しませるために、なめらかに、わかりやすく音読することができるようにする。
読書の興味が増大するにつれて、読書の分量が増大するが、このとき正しい指導が加えられないと、刺激的な漫画、俗悪な探てい物、殺ばつな剣撃物などに走ることがある。このような読書傾向を避けるために、読書を中心とした話合いや、良書の紹介、読書に対する個人的な指導などによって、健全な読書の態度と興味を築いていくことが必要である。
2 資料を豊富に用意する。
読むための資料を豊富に用意して、自由に読むことができるようにし、読むことの興味と必要とを高めるようにする。三年生に好ましい読み物は、童話・初歩的な科学読み物・偉人の伝記・詩・演劇などであり、一方、児童新聞・児童雑誌・初歩の学習書・参考書などがあげられる。
3 国語学習のためのよい環境を整える。
国語学習として環境を整え、よい環境によって、読書の意欲を導き、よい態度を築いていくことがたいせつである。三年生の国語学習のための環境設定としては、たとえば、次のようなことが考えられる。
(1) 学級新聞・壁新聞・学習参考資料を掲示する。
(2) 国語学習のためのいろいろな実物・模型・標本などの資料を並べる。
(3) 漢字表・語い表・気象観測記録グラフ・児童作品などをはる。
(4) 児童郵便のためのポスト・学級日記・共同の観察記録簿・学級作文集などを備える。
(5) 学級文庫をつくる。
こうして、これらを配置よく教室に整備する。これらは、ただちに教室の美化であり、三年生としての教室文化ともいうべき内容があふれてくる。ただし、これらの資料は、教師の手によらなければ整えられないものもあるが、多くは、児童の手によって自主的に整えられるべき性質のものである。というのは、学習の計画は、児童の手によってなされるのが当然のたてまえであると考えるのが一般的であるからである。
4 読書を中心とした話合いをして、正しい読書の方法と態度を指導する。
整備された環境の中では、児童の読書は非常に盛んになる。三年生の児童は、まだすべての児童がかわりばんに読書についての発表ができるまでには至っていないので、すぐれた児童が、
(1) 読んだ本の内容のあらましを話す。
(2) おもしろいところを説明する。
(3) 発表された本や内容について、全体の児童が自由に話し合う。
これに教師も加わって、示唆的・指導的な役目を果していけば、児童の読書興味や読書の方法がしだいにわかってくる。このために、特に時間を設けることも、昼食時などを利用することもよい。
5 読みの初歩的な技術が身につくようにする。
三年生の程度では、だいたい、次のような読書の技術が身につくように指導する。
(1) 黙読が音読よりも速くできるような黙読のしかた。
(2) 文字やことばの意味のとらえ方。
(3) 節意のとらえ方。
(4) 内容の読み取り方。
(5) 読んだことについての、感想のまとめ方。
6 読むことの基礎としての読字力や語法が身につくようにする。
読むことの基礎的なものとして、文字(特に漢字)や語いの習得を確実にさせなければならない。このうち、読む漢字は、三年生では、だいたい二八〇字くらいが適当とされている。また、初歩的な語法を理解させることもたいせつである。文の中によく使われている代名詞や、修飾語がはっきりと理解され、口語の敬体と常体についても見分けられるようになることも、この学年での指導として忘れられないことである。
7 文の特質に応じて、その学習方法を異にする。
(1) 散文では、内容の筋を正確につかむことが肝要であるから、このために、筋の要点を書き取ったり、内容について図解したり、対話、動作化などをさせたり、紙しばいや簡単な脚本を作らせたりするような学習活動が行われる。
(2) 詩では、内容をとらえることは、豊かな想像力、限りない空想力を養うことがおもであるから、このために、絵画化をしたり、擬人化をしたり、動作化をしたりなどして、情景・情感を豊かにすることがたいせつである。
(3) 劇の文では、部分的な動作化から全体の実演、これに伴う舞台装置・ふん装・擬音・音楽などをもくふうされるべきであるが、あくまでことばの表現の研究くふうが生命であることを忘れてはならない。
8 読むことの学習から発した質問や、疑問や、また、新しい研究問題などの見つけ方や解決の方法を指導する。
たとえば、一つの童話を学習したら、それに導かれて、新しい童話が読みたくなる。このとき、教師は、この児童の欲求をただちに満足さすことのできる用意をもつ必要がある。また、このような児童の欲求とともに、読むことによって、いつも新しい問題が生れてくる。また疑問や質問も起ってくる。これには、即座に解決されるものもあるが、グループや学級の研究問題として適当に残されるものもある。この取扱が適当でないと、真の研究心や研究興味を育てることはできない。三年生の時期は、この芽ばえの時代で、これを導き出す最もたいせつな時期である。
9 個人差に応ずる指導をくふうする。
三年生になると、ひとりひとりの国語力の差が目だってくる。遅進児は、このころ救っておかないと、あとでは手のつけようがなくなるし、進歩の速い児童をこの段階で野ばなしすると、片寄った読み物に手をつけたりして、正常な進歩ができなくなる。したがって、読むことの能力を基準として、いくつかの能力別なグループに分けて、能力別グループ学習をさせることが必要である。能力別なグループ学習は、ただ三年生に限ったことではないが、いままで能力別なグループ学習をしなかった児童でも、個人差に応ずる指導の一つとして、特に、必要だというのである。
10 学習ノートの使い方を有効に指導する。
三年生では、簡単な学習計画、文章内容の概要の記帳、主要語句の書き抜き、簡単な図解、絵画化、文字やことばの練習などは、学習ノートに記される主な内容である。
児童の学習ノートには、誤った文字やことば、誤った文がよく書かれている。教師は、これらの誤りを是正するばかりでなく、全体としてのノートの使い方の指導をおろそかにしてはいけない。そのためには、児童のノートを週に一回とか月に二回とかというふうに、定期的に目を通して指導する。
2 学習活動の面として、いろいろの機会を豊富に与える。読書会・児童演劇会・お話会・児童会・誕生会などの会合に利用することが必要である。
3 教師は、児童読み物について絶えず注意を払い、また多くの読み物に目を通して、児童の発表や質問に応じ、またその処置を誤らないようにすることがたいせつである。
4 学級文庫・学校図書室の充実、適切な学習資料の準備は、児童の学習興味を盛んにし、読書活動を効果的に進めることになるので、特に、注意してその充実をはかるべきである。
5 三年生になると、特に読書力に大きな幅がでてくるので、個人差に応じて、むりのない指導をする。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
三年生になると、作文を書くにあたって、目標をはっきりつかんで書くことができ、また、文を詳しくするために、必要なことばを書きたすことができるようになる。記述の形式では、句とう点や、かぎの使い方が確かになり、助詞の使い方もわかってくる。書いたものについて、誤字や脱字を、自分でなおすことができて、文がだんだん整ってくるとともに、長い詳しい文が書けるようになる。この能力の発達にたって、次のような目あてをおいて指導を進めていく。
2 飼育・栽培などの長期にわたる記録や、児童会・クラブ活動に必要な情報や、簡単な紙しばいの台本が書けるようにする。
3 よく推考して、文を詳しくするために、必要なことを書きかえたり、文の筋をはっきりさせるために、不必要なことばを削ったりすることができるようにする。
4 ことばの正しい使い方や、文字のほかの諸記号の使い方がわかり、さらに、新しいことばを使用する興味がでてくる。
5 自分の作文や人の作文についての評価をしはじめるようになり、また、自分の作品を整理したり、文集を編集したりすることができるようにする。
三年生は外面的な変化に富んだものでなければ興味をもたない。この期の児童の興味の対象となるものは、日常生活の上では、家庭でのいろいろなできごと、父母・兄弟・いぬ・うま・やぎ・にわとりなどのこと。登校下校の途上での見聞。学校でのできごと。遊び・けんか・けがなどの友だちとの事件。学校での飼育栽培。行事では、運動会・遠足・紙しばい・お節句・映画会・幻燈会・お祭など。季節に関しては、大風・大水・潮干狩・海水浴・つみ草・きのこ取りなどがある。
この期の児童の題材は、きわめて豊富である。これらが社会科・理科・算数料・音楽科・図工科・体育科の学習と結んで、いろいろな形式の作文となって表わされる。
2 作文に興味をもち、喜んで書くような機会をつくっていく。
どんなに豊富な題材が身辺にあっても、書くことに興味がなければ、作文の題材とはなり得ない。このためには、すぐれた作文を読ませること、友だちの作品をほめること。回覧文集をつくって、家庭とも協力することなどが効果的な方法である。常に書くことに注意を払い、興味を高めるために、作文ノートを用意し、文題や記述の内容をメモすることを指導するのも、この学年ごろから始めてよい。
3 必要に応じて、いろいろな表現形式の文が書けるようにする。
あさがお・かぼちゃ・うさぎ・にわとりなどの飼い方や栽培の観察記録や日記・日常の生活日記・学級日記・友だちの病気見舞・親類やもとの先生への手紙・日常生活・行事・季節を主題とした生活文・社会科・理科などの初歩の研究のまとめ、学級文集や個人文集の編集、学級新聞・壁新聞の編集などは代表的に考えられる作文の題材内容である。
4 じゅうぶんに時間をかけて、ゆっくり自由に書く機会を設ける。
どういう時間でも、書く場合には、じゅうぶんに時間をかけるようにする。書くべき内容がないために、その時間を必要としない児童もあるが、それには題材や書くべき内容を指導するなど、個人的取扱が必要である。
5 書き終ったら、必ず読み返して、内容や形式について推考を加えるようにする。
この習慣は、三年生ごろまでにひととおりできるようにしなければならない。内容にまちがいがないか、うそのことを書いてはいないか。細かに書き表わしているか。文字のまちがいや句とう点の不適当なところはないかなどは、この学年の推考の着眼である。また何回も読み返えさせて、筋の通った文になっているか、あるいは詳しい文になっているかなどに気をつけて、文を詳しくしたり、簡単にしたりするように指導する。
また、友だちどうし作品を交換して、読み合うことも推考のためにも一つの方法となる。これは、作文の興味を高めるためにもよい。
6 共同でまとめて、記録や文集をつくりあげることも指導する。
社会科や理科その他の観察記録や研究記録を共同でまとめること。文集や壁新聞を共同で編集すること、日記を輪番で書くこと、継続観察を共同で進め、その記録をつくりあげることなどは、この期の児童にできることである。
文集の編集は、生活文や詩のみに偏することなく、観察研究の記録、日記、手紙など多方面の内容を盛るようにする。
7 常に正確な文を書かせるようにする。
児童の中には、文の形式のはっきりしない文を書いたり、てんやまるにまるで注意しない文を書いたりするものであるが、あくまでも、主述のはっきりとした、まとまった文を書くように指導することが必要である。
8 作品についての発表や、話合いの機会を多くして、文についての見方を確かにする。
教師は、必ず全体の児童の全体の作品に目を通しておかなければならない。そうして、各児童の題材や作品の一般的な傾向、個人の進歩、個々の作品の長短をつかんでおくことが必要である。これは、児童の発達や話合いを指導する基礎となる。
この期の児童の作品の評価にあたっては、題材の内容が豊富であること、記述の正確さ精細さなどを中心として、細かな用語の問題や、ことばづかいのじょうずへたなどにはあまりこだわらないようにすることが肝要である。もちろん、児童の発達段階に応じて、適当に助言することはいうまでもない。
9 常に個人差に応じ、個人の進歩に注意して、それに応じた指導を進める。
三年生になっても自由に書けない児童がいる。これは文字が自由に書けないこと、書くべき内容が貧弱なことなどが原因である。また反面に、非常にすぐれた児童もいる。これらについては、個々に原因をつきとめて、それぞれの個人に応じた指導を加えなければならない。
2 この期の児童には、楽しんで書くこと、筆まめなこと、こまかに書いた長い文が書けることなどが徹底するように指導する。
3 形式上の欠点をあげたり、かたくるしくものを考えたりしないで、長所をみとめ、よいところをほめることが、この時代の作文指導のこつともいえる。
4 作文指導の成否は、教師が児童の作文にどの程度目を通しているか否かにある。児童の作品は必ず読み通すべきである。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
三年生になると、文字の形の認識、書写のための手指の修練、書くことの必要感などがだんだん高まってくる。このために書くことがひととおり整うようになる。この実態に即して、書くことの指導目標を次のように考える。
2 はがきや手紙が書け、封筒の上書きを書くことができるようにする。
3 文字を組み立てる基本の形(へん・つくり・かんむり)がわかり、標準的な筆順で書けるようにする。
4 文字の形を整えるための能力がだんだ発達してくるようにする。
5 白紙やけい紙が使えるようにする。
この学年の書くことの指導は、社会科・理科その他すべての学習と一体となって進められるのが本体である。
国語学習における書取・視写・聴写・作文・ノートの整理・社会科・理科・算数科などすべての学習のためのいろいろな書く作業が、いつも書くことの学習であり、その機会をとらえて指導する。
特に書くことからみて、教師の板書の正否・巧拙・筆順などが、自然に児童に影響するからじゅうぶんに注意すべきである。
2 「書き方」の手本を用いて書くことを指導することは、効果的であるから、この指導も進める。
手本を使う場合は、手本の選択上、文字がすなおで練習の基本とするに適当であること、書くことの内容やことば文字が三年の学習に適当であること、他の教科との連関や生活とのつながりが密接で、学習上の理解と、興味がたかいことなどに注意しなければならない。
取扱には、手本をよく見ること、書いたあとで手本と見くらべること、何度も練習したあと清書すること、書きあげた文字について教師が評語を加えることなどの取扱を進める。
3 標準的な筆順を理解し、身につけさせるために、次のような指導を進める。
(1) 上から下、左から右、中から外へ、横画を先に、縦画をあとに、字画をつくりやすい順序。
(2) 新出文字の指導にあたっては、教師は必ず、標準的な筆順を示すようにする。
4 実際の生活上、あるいは他教科の学習において、はがきや手紙の書き方を指導する。
はがきや手紙には、通信文を書くこと、あて名を書くことの二つの作業がある。
いろいろな手紙、郵便ごっこの手紙で、書くことの必要と興味をわかせ、手紙本来の目的が達せられるようになる。
5 プログラム・壁新聞・ポスターなどの書く機会をとらえて、特に、文字の大小、配置、絵と文字の配置、図案文字の考え方などを練習する。
6 作品(成績品)について、批評・奨励・展覧・回覧・話合いの機会を多くし、書くことの技能の練習に興味をもち、熱心になるように導く。
書くことについての児童相互の話合い、教師の指導奨励、回覧、展覧などによる父兄の関心などは、効果の多い指導の方法である。
2 三年生の程度では、正確な文字を主体とし速く書くこと、美しく書くことには、あまり力を入れなくてもよい。
3 教師の板書・掲示・名札・作文その他の成績品に記入する評語、家庭への通信など、児童や父兄の目に触れるものすべてが、書くことの手本となるように注意しなければならない。
4 児童の書き癖は、三年のころかたまるものであるから、すなおな正確な文字が書けるよう注意したい。
一 この学年の具体的指導目標は何か
(一) この学年の一般的な傾向は何か
第一に、自己中心的なこれまでの傾向からだんだんと離れ始め、物の見方や考え方が知性的に目ざめてくる。つまり、演えき的に物を考えるようになり、与えられた問題を解決するための思考力が生れるので、問題のはっきりした話を正確に聞き取ったり、問題を解くために読書をするような傾向が見えてくる。想像力も創造力も、このために急速な発達を示すようになり、作文力も伸びてくる。
第二には、社会生活に対する意識の芽ばえがあげられる。集団意識がかなりはっきりしてくるので、組織的なグループによる共同学習ができるようになる。しかも、お互が自主的に、道徳的な協調を心がける態度が見られる。このことは、児童会とか、さまざまなグループ活動の効果をあげるに違いない。
第三の傾向としては、さまざまな運動がこの学年で基礎的な発達を遂げ、これまでよりもさらに、手先の運動が巧みになる。したがって、書写力・記述力が目だって進歩する。
(二) この学年の具体的指導目標は何か
前述のような傾向に注意し、さらにこの学年の児童たちの能力と興味とを考え合わせながら、次のような指導目標をたてることができる。
2 話のよりどころを考えたり、話の主題と内容を考え合わせながら聞くことができるようにする。
3 読んだ本について、簡単な報告をしたり、理由や根拠をあげて自分の意見を述べることができるようにする。
4 方言を使わないで話したり、自分の語法の誤りを認めることができるようにする。
5 文の段落がわかり、その要点をつかむことができる。
6 問題を解決するために読み、読書によって得た知識や思想をまとめることができる。
7 よい詩を読んで楽しむことができる。
8 児童詩をつくったり、物語や脚本を書くことができる。
9 いろいろな報告や説明の文を書くことができる。
10 敬体と常体との使い分けができる。
11 原稿用紙が使え、いろいろな図表や統計表を書くことができる。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
この学年の指導上のねらいは、ただ興味本位に聞くのではなく、話題の焦点をしっかりとつかみ、相手のいおうとする事がらを正確に聞き取るという点にある。そこで、次のような目あてを立てることができる。
2 儀礼的でなく、知識を求めるために聞くことができるようにする。
3 話の主題と内容とを考え合わせたり、話のよりどころを考えながら聞くことができるようにする。
4 音のよくにた語を区別することができ、聞くことによって、語いが豊富になるようにする。
入学式・卒業式を初め、各学期の始業・終業、文化の日・時の記念日のような年中行事、防火週間・読書週間などの催しもののときには、その目的なり、趣意なりをよくわからせようとするために、校長とか、担任教師によって訓話・説明の行われるのが普通である。こうしたときには、あらかじめ聞く態度の徹底をはかるため、訓話の要点や感想について、口頭で発表したり、文に書いたりする機会を多く与える。
2 教科の学習と関連して指導する。
学習を始める場合、新しい計画をいっせいに説明したり、作業のための解説をしたりする場合がある。これをうっかり聞き漏らすと、学習効果があがらない。説明の要点をとらえてノートしたり、聞き取った事がらを口頭で発表させてみたりする。
また、社会科・理科では、たびたび見学に出かける。聞き慣れない人から説明を受ける場合は、まず、説明者の気持をのみこむことである。そうして、適当な時期に質問をしたり、メモを取りながら聞いたりする。また、教室で、ある児童の見学や研究報台を聞くような場合も、これと同じ態度でなくてはならない。
3 日常の生活と関連して指導する。
日常の対話や会話はもちろんのこと、児童会とか、話合いのような意見交換の場合の聞く態度は、なかなかむずかしい。ほんとうに相手の意見を聞き取るのには、相手の心を聞き取るという態度、技術が習慣づけられなくてはならない。相手の気持をよくのみこむこと、話されたことばの場面なり、行動なりを思い浮べてみること、などを常に心がけるべきである。教室、ろうかを手はじめとして、校庭、通学途上などの、ごく日常的な対話の際の聞き方にも、こうした習慣をもたせるように不断の注意を怠らないようにする。
4 聞くことの技能をのばすために、次のような指導をする。
(1) まとまった話は、主題と内容とを考え合わせながら聞くことができるようにする。
これは、話の一くぎり一くぎりを確実につかませるようにし、内容を明確にして、主題と関係づけるようにする。
(2) 相手の話の内容の、場面や行動を思い浮べながら、聞くことができるようにする。
これは、話の終ったあとで、教師から質問を出して、答えさせたり、感想を述べさせたりして、どれだけ、内容がわかり、また、場面や行動を思い浮かべているかをみていく。
(3) 音のよくにた語を区別することができるようにする。
国語には音のよくにたことばが多いが、それらを話し中に、前後の関係や、その場のふん囲気でわからせる。
(4) 聞くことによって、新しい語いを豊富にしていく。新しい語いだと思われるものをノートに書きとめさせたり、それについて問答したりして、確実に与えていく。
2 聞くことは、話すこととともに、あらゆる言語生活の場において行われる。したがって、意識的に特定の時間を設けて練習することもたいせつであるが、常時の心構えをもつように習慣づけるようにしなくてはならない。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
この学年のねらいは、聞き手の心持を考えて、常に話した効果を忘れないという態度を習慣づける点にある。そのために、心の持ち方と話術のくふうに留意させることがたいせつである。
この学年で考えられる指導の目あては、次のようなものである。
2 他人の意見を尊重して、親しみのある態度で話すことができるようにする。
3 適当な速さで、要点をつかんで話すことができるようにする。
4 読んだ本について、簡単な報告をすることができ、また理由や根拠をあげて自分の意見を述べることができるようにする。
5 電話をかけることができるようにする。
6 方言を使わないで話したり、自分の語法の誤りを認めることができる。
7 適当な修飾語を用いて話すことができる。
2 児童会の相談、話合い、新しい計画(学級行事・作業・見学などの計画)に対する協議などにおいてお互が意見を述べ合う場合は、理由や根拠をあげ、聞き手にじゅうぶん納得のいくよう心がける。ひとりよがりな意見は、よい結論を生むのに役だたないからである。理由が理由にならないような場合には、児童たちどうしで注意し合ったり、教師が注意をうながしたりする。
3 日常の話合いで、適当な速さが必要なのは、相手によくわからせようとするためである。したがって、相手の条件に応じて速度がくふうされなくてはならない。対話の場合では、聞く人の心持に合うように話す。聞く人の位置を考えて話す。相手の心がせいているときに、かまわずゆっくり話したり、遠くて聞き取りにくい人に早口で話したりするのはよくない。会話の場合は、聞き手の人数によって速度をくふうする。大ぜいに聞かせるのに、早口では話が徹底しない。これらの適切なくふうを常に心構えとして、相手に親しみをもつことがたいせつである。
4 電話をかけることのできることは、文化生活に応ずるためには必要である。社会科などでは、見学・調査に先だって問合せの電話をかける。家庭で電話の取次をする。家の人に頼まれて簡単な用件の伝言を代弁する。電話のある友だちどうしで、打合せや連絡をする。このような機会は都会の児童には多いが、日常の対話とはやや条件が違うために、慣れないとなかなか要領を得た通話ができないものであるから、機会をとらえては練習すべきである。
5 共通語を意識して使うようにするためには、ことばに対する意識を深めることがたいせつである。したがって、読本や、児童読み物からそういう意識を導き出すとともに、共通語の最も自然に使用される場面に立たせることがよい。たとえば、道路上で旅人に話しかけられた場合、目上の人(ことに先生)に話す場合、訪問先とか公的な席上での対話、転校してきた児童と話す場合などである。必要な場に立たされて習慣づけられること、このための不断の留意を教師がもたなくてはならない。
6 話すことの評価では、特定の練習による効果と、習慣づけられている程度との両面に留意する。そして、その態度や技術は、観察が主とならざるを得ないから、できるだけ客観的な基準を設けて判定することがたいせつである。
2 電話のかけ方の指導と共通語の指導とは、地域によってその必要性を異にする。したがって、その動機づけに不自然さのないよう留意することがたいせつである。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
2 文の組みたてや、文の段落がわかり、その要点をつかめるようにする。
3 問題を解決するために読み、読書によって得た知識や思想をまとめることができるようにする。
4 ことばの構造とか意味について、一段と強い興味ができてくるようにする。
5 前後の意味から、わからないことばの意味をとらえることができ、一つのことばのいろいろな意味について考えることができるようにする。
6 よい詩を楽しんで読み、また、こどものための新聞や雑誌を楽しんで読むことができるようにする。
7 漢字は、だいたい四六〇字ぐらい読むことができるようにする。
2 問題を発見し、それを解くために読む態度がたいせつである。これは、目あてのしっかりした読書の習慣と同じ態度である。このためには、同じ箇所を読み返すこと、調べた要点をノートすること、感想を書くこと、話し合って考えることなどが効果的な学習作業である。
3 文意を正しく読み取るために、文中の語句の特定の意味を考えることがたいせつである。それは、前後の語意のつづきぐあいによって決まる。ただ機械的ないいかえですますといった不用意な指導は避けなくてはならない。めいめいのもっている語い力をじゅうぶんに活用させて、十人十色にいわせ、それから適切な語釈を導き出すようにする。
4 この学年の読書傾向は、少年少女小説・冒険談・科学的な読み物が主である。学校図書館・学級文庫などを大いに活用する。単なる興味本位や時間つぶしでなく、はっきりした目あてをもって、最後まで読み通す習慣をつける。そのためには、読みっぱなしにならないよう、読後の感想・意見を書くとか、それを発表する機会をつくるのがよい。なお、読書の能率を高める技術として、目次や索引の使い方、図書館における図書の借り出し方、読書に関する一般的な注意、図書を取り扱う注意などの初歩的な指導をするとよい。
読むことの技能を伸ばすためには、それについての評価をすることがたいせつである。しかし、この学年の読むことの活動は、黙読を主とする自主学習であるために、なかなか困難な点がある。観察による評価としては、眼球の動かし方、ページの繰り方、ノートの活用程度によって行うことができる。これらは態度が主である。理解の程度を知るには、読後の感想・意見を書かせたり、口頭で発表させたり、あるいは客観的テストによって行う。常にノートを検閲することもたいせつである。
2 読みの能力の低い児童を、常によく観察し、指導する。自分で問題を発見することができない場合には、教師が問題を示してやることもよい。
3 注釈書の利用については、慎重でありたい。それは参考であって、うのみに取り入れてはならない。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
この学年は、取材・叙述両面にわたって、表現力の大いに伸びる時期である。各種の実用文を書く態度と技術、生活反省のための日記・作文を書く態度と技術を、ともによく指導する。なお、共同して何かを、編集するための学習も、また新しい目標である。
2 いろいろな行事のための標語・宣伝文・広告文・見学・調査などの簡単な報告、ゲームの解説や作業計画などについての説明文を書くことができるようにする。
3 児童詩をつくったり、物語や脚本を書くことができるようにする。
4 多角的に取材して、自分の生活を反省し、生活について考えたりする日記・作文を書くことができるようにする。
5 敬体と常体との使い分けができるようにする。また、文の組立を考えて、段落のはっきりした文を書くことができるようにする。
2 衛生週間・交通安全週間・火災予防週間・読書週間・時の記念日・文化の日などの年中行事、運動会・学芸会・遠足会・展示会・誕生会・正月こども会・クリスマスこども会などの学校・学級行事などにポスターを書かせたり、標語をつくらせたりして、趣旨の理解に役だてる。また、あいさつの文や宣伝・広告の文を書かせる。
このような作文活動は、すべて社会的な必要性から生れる。したがって、他人が読んでじゅうぶん効果のあるものでなくてはならない。
3 見学・調査研究の結果を報告する文もまた、実用的な作文である。書く必要性をよくのみこんで書く態度を指導する。技術的には、まず、見学・調査研究の結果が、要点を落さず、簡明にまとまりよく報告されること、必要に応じて図解や表をそう入すること、流し書き、箇条書きを適切に選ぶことなどが考えられる。
4 自分の生活を反省したり、生活について思索したりする日記・作文を書く。しかも、あらゆる生活の場面をとらえて多角的に取材し、まとまりよく、しかも正確な描写をする。両方とも自分の生活態度を表現することにかわりはないが、日記は簡明をねらいとし、作文はじゅうぶんに書き尽すことをねらいとする。実用文の技能を高める一方、こうした作文によって見方・考え方を深めていくことは、はなはだたいせつである。
5 「あります」と「ある」の使い分けは、ことに長文を書く場合に混用しやすい。これを正確に使い分けることは、文法的な技術を習得することでもあり、書く心構えをはっきりさせることである。つまり、読む人の想定のしかたによって、「あります」「ある」を使い分ける必要があるからである。書いた文章について、混用の訂正練習をときどきするとよい。
6 各種の行事にちなんで編集される壁新聞・学級だよりを目的とする新聞の編集・詩集・日記集・作文集など、さまざまな作品を共同で編集する態度と技術とを習得する。この場合、二、三人程度から始めて、順次員数をまし、五、六人程度までのグループをつくって行う。グループの編成にあたっては、個性をよく考えることである。編集の順序としては、まず、個性をじゅうぶんに生かした作業の分担をする。編集会議をする。編集作業にかかる。批評・反省会をするなどである。
7 つくることの評価は、主として、作品によって行われるのが普通である。しかし、とかく主観的な評価に傾きやすいから注意する必要がある。できるだけ客観的な評価基準がたいせつである。
2 能力の低い児童に対する日記の指導は、おもしろかった日だけ書かせるとか、手伝いをしたことだけを書かせるとかいった、便宜的な方法によって、取材の指導をする。要は、その児童に、書く必要をわからせ、進んで書こうとする意欲を起させるよう、個別指導をする。
3 つくることの指導は、いつも個別指導を本体としなくてはならない。しかし、新しい学習事項の指導にあたっては、同一の条件における課題式いっせい指導をし、その作品の比較評価によって学習目標の理解を深めるという方法は、かなり効果のある指導といえる。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
この学年では、かな・漢字を正しく書くとともに、きれいに書くことに重点をおく。用具は、鉛筆・ペン、さらに必要に応じて毛筆を使うように指導する。
2 文字の形、大きさ、配列などに気をつけて書くことができるようにする。
3 いろいろな行事のための標語やポスターなどを書くことができるようにする。
2 漢字は、この学年あたりから読む能力が急速に進むから、それに遅れぬようにする。反復練習の機会を多くして、正しく、きれいに書けるようにする。
3 調査・研究物の一覧表、日記・こづかい帳の書き方、標語・ポスターの字を、毛筆や絵具を使いこなして書く技術を習得させる。このように、実生活に関するものを、見やすく、正しい字で書くことに慣れるという点にある。
4 原稿紙に文字を書く機会は多くなってくるから、次の注意をさせながらじゅうぶんに練習する。
(1) わくの中に正しく入れて書く。
(2) 書き出しでは、一かくあける。
(3) 句点、とう点をはっきりますの中に入れて書く。
(4) 標題や名まえの書きかたや余白のとり方に気をつける。
(5) 字の大きさや書きぶりが、始めと終りとあまり変らないように書く。
書くことの評価は、書く場合の姿勢・態度をよく観察することを忘れないとともに、書いた結末については、一般的な基準に照してみて、そのレベルを判定することがたいせつである。なお、正しく、きれいに、必要に応じて速く書く心構えをもたせ、その評価をも常に忘れてはならない。
2 書いた文字にはそれぞれの個性がある。それが他人に好感を与えない場合は、早く、直させるようにする。
3 姿勢や執筆などが、おろそかになりがちであるから、正しい書写の態度を習慣づけるよう、常に注意を払う必要がある。
一 この学年の具体的指導目標は何か
(一) この学年の一般的な傾向は何か
児童期としての特質が最もはっきり現れるのはこの学年である。たとえば、全身運動では、四年生までにできた、基礎的な発達の上に、さらに技巧化が加えられ、手先の運動では、正確度の発達がみられる。知的な発達においては、今までの機械的な記憶に対し、論理的に考える傾向が著しくなり、思考における自己中心性はほとんどなくなって、抽象作用の発達や推理作用の発達が目だってくる。
また、語いは、量的に発達するばかりでなく、質的にも、飛躍的に進歩する。このことはたとえば、助詞の発達においてもみられることである。
情緒の発達においては、恐怖や心配は、想像的、観念的、精神的なものに対していだくようになり、社会に反し、道徳にもとるようなものに対しては、怒りを感じるようになる。また、友だちに対して愛情の中心が向けられ、自然現象を対象に疑問を投げかけ、討論は社会的な事がらや、知的な経験に関して行われるようになる。男女によって興味の方向に著しい差異を示すのも五年生ごろからであって、たとえば、男児は好んで冒険物語を読み、女児は小説を好むような傾向を示す。
社会的な面では、学級意識が濃厚になり、グループのリーダーのほかに、学級全体のリーダーを中心とするようになる。友だちの結びつきも尊敬・共鳴というような条件で、いっそう緊密になると同時に、教師、父母に対して批判的になり、合理的であり、公正であることを要求するようになる。
以上のような特質は、児童期としての完成を意味しているといってもよく、六年生になって、さらにそれが充実することになる。
(二) この学年の具体的指導目標は何か
2 話のじょうずへた、ことばのよしあし、話す事がらの適否を聞きわけることができるようにする。
3 質問・報告・説明・発表・司会などが要領よくできるようにする。
4 自分の考えをまとめ、話す内容を整理して話すことができるようにする。
5 辞書の使用になれ、多読ができるようにする。
6 文意を読みとり、文の内容や表現について、児童らしい批評ができるようにする。
7 適切な語を選んだり、方言を区別して書いたり、敬語を適切に使って文を書くことができるようにする。
8 簡単な筋書をとったり、補記や省略によって、いっそうはっきりした文にすることができるようにする。
9 ペンを使って字が書けるようにする。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
聞いたことをまとめる能力の充実をはかり、批判的に話が聞けるようにする。そのためには、次のような指導のねらいが考えられる。
2 聞きながら自分の意見をまとめることができるようにする。
3 聞いたことをうのみにしないで、疑問の点は問い返すことができるようにする。
4 要点をまとめながら聞き、必要によっては、メモをとりながら聞くことができるようにする。
5 話のじょうずへた、ことばのよしあし、話す事がらの適否を聞き分けることができるようにする。
それには、「覚え書き帳」とか、「聞き方帳」などを作り、その日の日記を書かせることもできる。
2 児童各自の自由な発表だけに任せず、児童の能力に応じて適当な発言の機会を与え、人の話に耳を傾けて聞けるようにしてやる。たとえば、
甲の続きを乙にいわせる。
甲の話のまとめを乙にいわせる。
甲の話に対する意見を乙にいわせる。
甲の話しぶり、態度・内容について乙に意見を求める。
さらに、そういうことを丙・丁に及ぼすということもできる。
4 会話・談話・そのほかいろいろの計画の話合いの機会をつくり、それに参加して聞くようにする。
5 あとで発表や報告ができるように放送を聞かせる。
6 ことばの違いや音の区別および語法上のまちがいが、わかるように聞かせる。
7 話や放送を聞いたあとで、だれの聞き方が正確であるか調べさせる。
8 聞いたことをそのままにしないで、できるだけ機会をつくって話させたり、理解させたり、評価したりするようにする。
2 近視の児童などはよくこの学年ころから出る傾向があるが、児童の生理面について調べる必要がある。
3 どんな話題や、程度に興味をもつか、常に注意を払うようにする。
4 程度のやや高い話を聞かせる場合には、必要な事がらやことばを板書しながら聞かせる。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
積極的な発表の能力を身につけ、五年生としての望ましい話し方をさせようとするためには、次のような指導の目あてが考えられる。
2 メモをもとにして話したり、話の内容にふさわしい身ぶりや表情ができるようにする。
3 自分の考えをまとめ、話す内容を整理して話すことができるようにする。
4 その場にふさわしい話題が選べるようにする。
5 グループの話題や意見などをまとめて発表することができるようにする。
6 質問・報告・説明・発表・司会などが要領よくできるようにする。
7 敬語が適当に使え、さまざまなことばの使用に慣れるようにする。
8 じょうずに話そうとする心構えができるようにする。
以上の各項にわたっての具体的な指導の方法については、いろいろのくふうがなされるはずだが、次に、一般的な指導法について述べることにする。
2 気の弱い児童のためには、できるだけその場の緊張度を少なくし、ひとりびとりに自信を持たせることが必要である。それには児童の興味と経験とに基いた話題を取り上げたり、能力・友情関係、その他の条件を考え合わせてグループをつくり、自由に話合いのできる機会をつくる。
特に、能力の弱い児童には、前もって教師と話合いの練習をするようにすることも有効な方法である。
3 話合いとか発表とかを、楽しんでできるような機会をたくさんつくる。必要に応じて児童にアナウンスや報告をさせる。そのために計画をさせ、安定した声・聞きよい声・正しいいいまわしで話せるようにする。
電話を使う必要をわからせ、要点をとらえ、聞きよい声で、はっきりした発音で、礼儀をわきまえて落ち着いて話せるようにする。
用事で人に会う場合には、自分を相手に紹介し、用件をはっきりさせ、適当な時間を考え、辞去する時刻をわきまえ、辞去するときの作法に従うことなどを知らせる。
昼食の時間などにおいて、当番のあいさつとか、何人かのテーブル・スピーチを試みさせる。
そのほか、計画・相談など会議の必要を感じさせ、楽しんで話合いができるようにする。
4 一般に、話題とか、話しぶりとか、内容などについて、なるべくそのつど批評をし合い、漸次整ったものにするという心がけがたいせつである。
2 はっきりした発音と語調で話を進めていく。
3 できるだけ語法の正しいことばを使い、俗語または方言を避けるようにする。
4 相手の話をおしまいまで聞き、いわゆる聞きじょうずにする。
5 話し方はいつも自然な場面によって行い、不自然な形式的、機械的学習を避ける。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
五年生としての望ましい読書能力をつけるためには、次のような指導目標が考えられる。
2 良書に対する興味が増してくるようにする。
3 文意を読み取り、文の内容や表現について、児童らしい批評ができるようにする。
4 長文を読みながら、その要点を書き取ることができるようにする。
5 物語文などを脚色して演出することができるようにする。
6 調べるために、参考書や地図などを利用できるようにする。
7 目次や、索引や、凡例などを利用して読むことができるようにする。
8 辞書のひき方になれ、辞書をひいて、新出語の読みや意味をとらえることができるようにする。
9 漢字は、だいたい六六〇字ぐらい読むことができるようにする。
それには、児童が喜んで読むような図書をたくさん備えて、読書の機会をつくってやらなければならない。調べるために読むにも、楽しむために読むにも、修養のために読むにも、多読ができるための指導法を教師がじゅうぶん心得ておかなければならない。
文を読解する場合、無意味な、機械的なくり返し読みは、児童の興味を削減するばかりでなく、それによって、必ずしもほかの文を読解する力がついていない場合が多い。むしろ、多読によって読めない児童を救うように考える必要がある。
2 黙読によって、なるべく早く、正しく文の意味がつかめるようにする。たとえば、自分の読書速度の記録を破ろうとする興味をもたせることも一方法である。
3 文の内容について思考し、判断させるようにする。
(1) 書かれてあることが正しいかどうかを考えさせてみる。
(2) 文の中に出てくる人物の考えや、行いが正しいかどうかを考えさせてみる。
(3) この文が自分にとって役にたつかどうかを考えさせてみる。
4 文の表現について具体的に調べさせる。
(1) 文の組立がどんなふうになっているかを調べさせる。
(2) 書き表わし方について調べさせてみる。
(3) 文意がうまく表わされているかどうかを調べさせる。
5 詩の読みを具体的に指導する。
(1) 理解のための背景をつくってやる。
(2) 詩の音読をする。
(3) ひとりのこどもが朗読しているときは、他の児童は黙読をする。
(4) 児童による自然な話合いをする。
(5) 気に入った節や句などを知らせ合うための音読をする。
(6) 全体を鑑賞するための朗読をする。
(7) 詩の創作を励ます。
6 文の表現や内容を調べるために、話合いをさせる。
7 読むことの学習の興味と活動とを深めるようにする。
(1) 物語や伝説などを脚色する。
(2) 対話・話合い・発表などをする。
(3) 紙しばいにしたり、シナリオにしたりする。
(4) 実験したり、観察したり、実地調査をしたりする。
8 多種多様な文を読んで、いろいろな文形に触れるようにする。
9 読むことの学習に適するように環境を整理する。
(1) たくさんの読み物を備える。
(2) たくさんのよい参考書やよい辞書を備える。
(3) 世界地図・日本地図.郷土地図・歴史年表などを備える。
(4) 名画集・風俗写真帳・絵はがきなどを集めておく。
10 参考書や辞書の使い方に慣れさせる。
(1) どんなときにどんな辞書や参考書を見たらよいかわからせる。
(2) 参考書や辞書は、必要に応じて、教師もいっしょに調べるようにする。
11 児童のための新聞や雑誌に興味を持たせるようにする。
(1) ニュース価値の高いものを読んで話合いをする。
(2) 文学的、科学的な内容および表現をもった品の高いものを読ませるようにする。
2 できるだけ黙読によって、読書を楽しみ、文の意味をすみやかに的確にとらえることができるようにする。音読は、知識や楽しみを分ち合うためにするというように、考えていきたい。
3 読みに対する量や質の個人的進歩と示す図表をつくるということも、一方法である。
4 読書力は、広く多読することによって向上するから、好奇心を起し、読みたくなるような環境をつくり、暗示を与えて、常に指導を心がけることがたいせつである。
5 選んだ読むことの資料を積極的に読ませようとするためには、読書内容に興味を起こさせることがくふうされなければならない。
6 読みや意味のわからない単語については、よく理解するような方法を講じ、また、視聴覚教具模型、実地経験その他これに類するものを利用して、読解するための背景を考えることが必要である。
7 文の意味をはっきり会得させ、また、注意を集中する力を伸ばすために、教師の発問が用意されることが望ましい。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
2 注文・依頼・お礼など、いろいろの用件に応じた手紙や電文が書けるようにする。
3 書いたり話したりするために、素材を整えて、簡単な筋書きをとることができるようにする。
4 一つの文を補記や省略によって、主題のいっそうはっきりした文にすることができるようにする。
5 適切なことばを選んだり、方言を区別して書いたり、敬語を適切に使ったりして、文を書くことができるようにする。
6 小見出しをつけて文を書くことができるようにする。
7 他人の作品を読んで、表現能力を高めることができるようにする。
2 各種の表現を指導する。たとえば、日常生活を題材にして、時・所・人物・事がらなどをよく整えて書くようにする。新しい表現意欲をわかせるために、ひとつの事がらを随筆や記録文にしたり、物語や詩にしたり、紙しばいやシナリオにしたりして、いろいろな形で書かせる。
3 型にはまらないように、できるだけこどもらしい新鮮なことばを使って書くようにする。
4 詩や脚本をつくらせて、生き生きとした表現をくふうさせる。
5 説明図や、さし絵の類を入れて、いっそう具体的な、感覚的な作文を完成させる。
6 学芸会・運動会・展示会・映画会・長期にわたる休暇、その他特殊な機会を利用して、手紙や電文を書くとか、そのほかいろいろな実用的な文を書かせる。
7 見学したり、調査したり、研究したりしたことを記録文にしたり、報告文にしたりする。
8 各種の文をつくり、内容・体裁などをくふうして、文集をつくらせる。
2 口頭作文は作文のたいせつな基礎であり、しかも興味深いものであるから、よく活用するようにする。
3 文字は、できるだけ速く、きれいに書けるようにする。
4 通信文や商用文を書く能力をのばそうとするためには、そのための経験を用意する必要がある。このように、できるだけ経験を用意し、それについての必要と興味とによって、いろいろの文をつくらせることが望ましい。
5 読んだこと、聞いたこと、できごとなどについて、それを解釈し、組織したことをつづらせることは、作文能力をつけるために有効な方法である。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
2 文字のよしあしがわかり、進んで上達しようと努力するようにする。
3 ペンを使って字を書くことができるようにする。
4 名札・表紙・案内・掲示などが書けるようにする。
2 ペンや、毛筆や、鉄筆の使用についても、できるだけいろいろな機会を利用するようにする。はり札・表紙・壁新聞、その他毛筆使用によって効果的な機会をとらえて毛筆書き方の指導をしたり、文集作製とか通知・案内とか、その他同じものを多量につくる場合には、鉄筆の使い方の指導したりする。
3 文字をきれいに、正確に書くために、手本を使って練習することは効果あることである。
4 書いたものについては、ときどき展示会のような催しを開いて、巧拙美醜について話し合ったり、文字のじょうず・へたについて話し合ったりする。
5 視写練習・聴写練習によって、速く、美しく書く練習をしたり、話合いの要点を筆記したり、他人の話を速記したりする練習をする。
2 文字は、各行の頭をそろえ、行がまがらないようにする。
3 字の大きさや書きぶりが初めと終りで変らないようにすることなどがある。
一 この学年の具体的指導目標は何か
(一) この学年の一般的な傾向は何か
小学校最終の学年である六年生は、児童期における最高の発達段階に達するとともに、さらに、次の段階に達するきざしをはらんでいる。
五年生におけるさまざまな力の発達が、あらゆる面で伸ばされ、六年生になると、児童期としてのまとまりができてくる。全身および手先の運動の発達、数意識の発達、思考作用、情緒および興味の発達傾向、社会生活、遊び、道徳性の全体的発達の傾向など、いずれも五年生での発達の方向の延長として考えられる。
言語生活の面においても、語いの量的発達が著しく、語い量は、一年生のおよそ二・二倍になっている。質的方面では、助詞(係助詞・副助詞・接続助詞)の使用が、四年・五年に引き続いて発達する。文章の方面では、四年生のころから量的に伸びてきた傾向が、まとまりのある文章、中心あり統一ある文章となって現れてくる。
言語についての意識もしだいに高まってくるが、生活の社会的なひろがりから、いろいろなことばに触れるために、なまはんかな知識や、よくこなれないことばをふりまわすような傾向も現れてくる。男女の性別による特性もしだいにはっきりとしてきて、それが、言語の上にも現れるようになる。外面的生活からしだいに内面的生活へ、集団生活から個人生活へという傾向も、この期の児童の言語生活にいろいろな影響をみせるようになる。
(二) この学年の具体的指導目標は何か
この期においては、小学校における教育の完成期として、今までの国語学習で欠けているところを補う一方、学習の場をできるだけ広げ、言語活動を活発に行い、能力を個性に応じて伸ばし、国語への理解と関心を深めるようにする。さらに、有効な言語生活を通じて、社会生活を円満にしようとする習慣や態度や、技能を育てみがくようにすることがたいせつである。次に、目標を掲げよう。
2 聞いた話に関係のある資料を集めて、話を役だてることができるようにする。
3 自信のあることだけを話し、自分のことばに責任をもてるようにする。
4 むだのない力強い話ができるようにする。
5 序文や目次を読んで、本を選択して読むことができるようにする。
6 よい文学に対する興味が増し、また、多種多様の文に興味をもつことができるようにする。
7 いろいろなものについて、自分の意見や感想を効果的に表現することができるようにする。
8 自分の生活を反省し、文を書くことによって、思索することができるようにする。
9 学校新聞を効果的に編集ができるようにする。
10 文字の形、大きさ、配列などが整ってくるようにする。
11 行書が書けるようにする。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
六年生になると、聞く態度や能力は一応できあがったようにみえる。しかし、個々の児童について、よく調べると、その聞き方や、話の内容の受取方には、相当の開きのあることがわかる。
ことに、いろいろな人の話を聞き、やや程度の高い話を聞く機会も多くなるので、話の内容を効果的に聞き取り、論理的、批判的な考え方を養うようにしなければならない。
2 話のじょうずへた、話す事がらの適否を聞き分けることができるようにする。
3 話の内容を批判しながら聞くことができるようにする。
4 聞いた話に関係のある資料を集めて、話を役だてることができるようにする。
2 あらかじめ準備をしておいて、いろいろな人の話や、ラジオなどを進んで聞くようにし、その内容や、話しぶりについての感想を記録したり、それをもとにして話し合ったりして、聞くことの興味を増し、ことばの効果的な表現について学ぶ。
3 学習の場合、または児童会などの際、次々にかわる話し手や、話の内容に応じて話を的確に聞き取り、それについての質問や意見を効果的に述べ、討議のしかたをのみこみ、聞くべきときというべきときの区別をよくわきまえるようにする。
4 研究の報告など科学的・論理的思考の伴う話を聞くことによって、筋道をたてて聞くことや、話と事実とを比較対照し、誤りがあれば指摘し、疑問の点は質問のできるような能力や態度を養う。
5 学校新聞を編集する際などに、受持の教師以外、記事を取る必要から、ほかの教師や、社会人を訪問して話を聞き、要点をメモしたり、それを適当に整理したりすることによって、計画的に話を聞く能力や態度、聞き慣れない人の話を聞き取れるような能力を伸ばしていく。
6 いろいろな場所や施設を見学して、違った職場の人の話を聞き、要点を書いたり、話し合ったりして、話すことに慣れていない人の話にも理解と興味をもち、効果的に聞き取るようにする。
7 教師や父母など、長上の人のいいつけや伝言をよく聞き、そのことばどおりに誤りなく実行に移せるように責任のある聞き方の態度や能力を養う。
8 朗読会やお話会などの場合に、内容とともに表現(発音・アクセント・抑揚・調子など)について正しく批判できるようにし、鋭敏な聴覚を養う。
劇のような表現活動を見るときなど、外面的興味的に見るだけでなく、登場人物のことばを動作に関連づけ、ことばを味わいつつ、ことばの表現の演出的効果を批判的に聞き取れるようにする。
9 電話をかけたり、取り次いだりする機会をつくり、電話を通じて相手の話をよく聞いて、それをはっきりと他人に伝えることのできるようによく聞き取る。
10 聞くことは内面的な活動であるから、児童の外形だけでは、聞き取り方のいかんは判定しにくい。そこで、個人的に聞く態度や状態を常に観察記録しておくほか、聞いた話の内容について、理解度のテストを行う必要がある。
また児童の聴取記録やメモなどを参考として、評価を客観化する資料とすることもたいせつである。
2 聞いた事がらについては、なるべく話し合うようにさせ、聞き取り方について児童自身によく反省させ、常に自覚的な聞き方、責任のある聞き方をするように注意しなければならない。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
必要に応じて自分の考えや心持を、はっきりと話すことのできるような能力・態度を養い、自信をもたせるようにすることはいうまでもないが、そのためには、次のような点に目あてをおかなければならない。
2 むだのない、力強い話ができるようにする。
3 話題をじょうずに展開させることができるようにする。
4 自信のあることだけを話し、自分のことばに責任をもって話すことができるようにする。
5 時間を考えて、ほどよく話すことができるようにする。
6 正しい語法に基いた共通語を話し、俗語や方言はできるだけ避けるようにする。
2 時事問題や、その他いろいろなできごとに関心をもたせ、新聞・ラジオなどから話題を取り上げ、それについて互に報告したり、意見を交換したりする機会を随時設ける。そうして、常に話題を豊かにもち、話そうとする意欲を高めるようにする。
3 発言の機会を児童に広く与えるようにくふうする。たとえば、昼食の時間や放課後の時間などを利用したり、毎週または毎月一回ぐらい話合いの機会を設け、共通の話題について輪番に発表し合ったりする。また学習のあとで、その反省や、次の計画について話し合ったりする際、かわるがわる話に参加させるようにする。
発言を広く行きわたらせるために、発言表を利用するのも一つの方法である。この表は教師も児童も常に用意し、教師は発言した児童の氏名にチェックして、指導や評価の参考とし、児童は自分が発言した回数をしるしておき、友だちのと比べて反省するのである。
4 国語科の学習はいうまでもなく、他教科の学習、またはいろいろな催し(学芸会・発表会・児童会・展示会・音楽会・演劇会など)の機会に、教師や友だちの話に耳を傾け、その話しぶりの長所をとって、自分の話し方をくふうし向上させるように努力させる。また、大ぜいの人の前で、落ち着いて話のできる能力や態度を伸ばすようにする。
5 見学した事がらの報告会を聞き、要点をまとめて話すことや、研究発表会などの際に、発表の内容を要領よくまとめ、与えられた時間の中で、適当に効果的に話ができるようにさせる。
6 児童会など討議の機会に、議題をはっきりとのみこみ、適当な機会に効果的に発言したり、またこのような会を司会することのできる能力や態度を養う。
7 読書発表会を設け、読んだ本の内容を紹介したり、読後の感想を発表したりする。また、作文の学習の際、書こうとする文の着想や構想について発表し合ったり、他人の文を批評したりして、話の筋や思想を要約して、効果的に話す練習をさせる。
8 新聞や、文集などを編集する際、その方針や計画について話し合ったり、仕事の分担を決めたり、できあがった新聞や文集について反省や批判を加えたりする話合いを通じて、協調的、建設的に話合いを進める能力や態度を伸ばす。
9 電話のかけ方については、なるべく実際に経験させ、音声や作法、ことばづかいなどに注意する。電話のない場合は、理科の実験や社会科の学習と関連させて行うようにする。
10 友だちを人に紹介したり、また紹介されたりした場合に、自然な態度で、親しみのあるあいさつができるようにさせる。
11 話すことの評価は、その性格上、絶えず個々に観察することに主眼をおき、発表のたびに、その要点を記録しておく。また、前に述べた発言表も一つの資料となる。
また、集団の中での話しぶりだけでなく、教師は個々の児童に接し、話し合う機会をつくって、評価の参考とすることも必要である。
2 児童はとかく話の内容よりもその形式に注意を向けやすい。内容がもとで、それを有効に表現するための形式であることをよく理解させ、充実した生活からよい話の生れることを悟らせるようにする。
3 よい話ができるためには、いろいろな知識や経験と、豊かな語いが必要であるから、その方面に努力を払うとともに、特に読むことの学習を広げ、読んだ本の中から新しいことばを身につけ、それを自分の話の中に自然に取り入れるように心がけさせる。
4 教科書を初め、いろいろな文の朗読、自分の作文の朗読には特に関心をもたせ、単に読むだけでなく、それが自然に話すことの基礎練習ともなるものであることを自覚させ、自然な口調で読むようによく注意させる必要がある。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
読む力の進むにつれて読書の範囲も広がってくる。そのために知識も豊かになり、語いも増大するが、その反面、なまはんかなことばをよく熟さないまま受け入れようとする傾向もみられるから、読む技術や能力を的確にのばすとともに、いろいろな本を読み、有効な読書生活の習慣をつくることに努力しなければならない。
2 叙述の正確さを調べることができるようにする。
3 案内や注意書きによって読み、また、感想や批評を頭の中でまとめながら読むことができる。
4 読む速度がいよいよ速くなるようにする。
5 序文や目次を読んで本を選択したり、また、本を選択して読むことができるようにする。
6 よい文学に対する興味が増し、また、多種多様の文に興味をもつようにする。
7 参考資料・目次・索引などを利用し、また、新聞・雑誌を読む能力が増すようにする。
8 娯楽のためや、知識をうるためや、また、他人を楽しませたり、他人に情報を伝えるために、黙読したり、明確な発音で、なめらかに音読する能力を増大させる。
9 漢字はだいたい当用漢字別表の文字が読めるようにする。
2 文の組立をよく理解させるためには、ときどき、読んでいる文の骨組をノートに書かせてみて、作文発表の場合などについて検討し合うようにする。
3 文の叙述については、一つの文の中で、または、他の文と比較したりして、その正確さと妥当性を調べる機会を与えるようにする。また、叙述の不正確なものや、妥当性を欠くものを、読みながら訂正させてみるのも、一つの方法である。
4 読む前に、その本の序文、読みの案内や注意書きにまず目を通し、それを頭において読んでいくように習慣づける。一つの文章を読む場合でも、文の題目によく注意して読み始めるように導く。
5 読みの発表としての朗読をいつも常時個別的に観察記録し、指導の参考とするとともに、児童自身にも反省させたり、批判させたりして、読みの技術を高めていく。また朗読会を開き、教科書の文やその他適当な材料を選び、それを持ち寄って輪番に読み、相互に読みぶりを批評し合ったり、レコードやラジオの朗読放送を聞いて読み方の参考とする。
6 読むことの機会をできるだけ多くつくり、読んだ文について感想文を書かせたり、内容を補ったり、要約したり、脚色したり、実験・観察・調査したりするなど多角的な作業をさせ、内容やことばを確実に身につけさせる。
7 読書の実態を調査し、読む本の種類、内容、読む分量、本の入手方法などについて、個人的に、また、一般的にその傾向を知り、それに応じた読書指導の方法をたてる。また、読書日記・読書記録をつけさせ、ときどきそれについての発表会を開き、本の選び方や、読み方について指導する。
8 図書館を見学し、読書の社会的施設や、その意義についての理解を深める。また学校図書室などで実際に本を選んで読むことを練習させ、しだいに自発的にこのような施設が利用できるようにする。教室にも、いろいろな読み物・参考書・地図・年表・年鑑、その他の資料を用意し、いつも自由に読ませることが望ましい。
9 作文を推考する際、よく読んで文を直し、また直した文を朗読する機会をつくり、読む力を伸ばしていく。文集によって友だちの文を読み、批評し合うことも批判的な読みの態度を養う上にたいせつである。
10 校内放送の施設を利用し、朗読放送をすることによって、効果的な読みの方法を練習させる。
11 いろいろな標語・ポスター・看板や広告などに現れたことばを収集し、それを読んで、その表現や理解に慣れさせる。
12 家庭と連絡をとり、毎日の生活の中に、読書の時間を決め、きまりよく有効に読書する習慣を養う。ことに、休みの日における読書生活には特に注意して指導する。
13 漢字を読む力については、この学年の間に当用漢字別表の漢字全体について、どの程度読めるか調査をしてみることが必要である。
2 読書における身体的障害は、高学年において著しく現れるようになるものであるから、その原因を調べて、できるだけ早くなおす方法を講ずる必要がある。身体の疲労と読書との関係についても常に留意し、机といすの高さの関係、照明、姿勢(本と目との距離)などについて注意する。
3 読みの遅進児については特に注意し、程度に応じてやさしく読みやすい文を与え、それを確実に読むことによって自信をもたせ、しだいに程度の高い文に進ませるよう心がけることがたいせつである。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
生活が拡充し、読書の範囲も広くなって、いろいろな文に触れる結果、この学年では、表現上の一般的な傾向として、文が内容を離れてやや技術的類型的に陥り、生気を失いがちになる。そこで、文の表現技巧にあまり凝らないように、児童らしい、すなおな個性的表現を重んじるようにしなければならない。同時に、生活そのものを充実させ、そこから深味のある文が自然に生れてくるようにしむけることがたいせつである。
2 自分の意見を効果的に発表するため、その原稿を書くことができる。
3 読んだ本について、紹介や鑑賞や批評の文を書くことができるようにする。
4 学校内外の諸活動に必要な規約や評語などを書くことができるようにする。
5 自分の生活を反省し、文を書くことによって、思索することができるようにする。
6 学校新聞の効果的な編集ができるようにする。
2 映画・演劇・放送などについての感想や意見を文に書くためには、まずその見方、聞き方をよく指導し、はっきりとした感想や意見が生れるようにしなければならない。それを文に書く場合には、あらかじめ自分の感じや、考えをよくまとめ、むだのない表現をするように心がけさせる。書く前に話合いをしたり、書いたものを読み合ったりすることも効果を高めるために必要である。
3 児童会その他の会合に出席して、自分の意見を効果的に発表するためには、発表しようと思うことの原稿を書いておき、それによって話をしてみる。話すとおりに書いてみることから、しだいに要点だけを書くようにし、自分に適した書き方に慣れさせる。
4 読んだ本について紹介や鑑賞や批評の文を書くためには、その内容を要約したり、好きなところを抜き書きしたり、感想の要点を書いておき、それをまとめて文に表現することから始め、まとめ方に慣れるに従って、初めから文に表現するようになることが望ましい。このようにしてできあがった文は、機会あるごとに発表し合い、意見を交換して、感じ方・味わい方、批評の態度、文の表現のしかたなどについて反省するように導く。
5 学習の際の話合いを速記してみたり、教師や、ほかの人の講話の要点を筆記したりすることは、速く書く力を伸ばすのに有効である。
6 学校内外のいろいろな活動に必要な規約や評語などをつくる力をのばすには、そのような機会を随時取り入れ、文をつくることが、社会生活上重要な価値をもつものであることを理解させるようにする。
7 学校新聞の編集・発行については、常に注意して、一定の型にはまらないようにし、紙面に変化をつけたり、記事の表現のしかた、見出しのくふうなどにも意を用いさせ、簡潔にして要を得た文の書き方に慣れさせる。
8 他の教科と関連して、学習したことをまとめたり、その感想や、今後の計画を文に書いてみたりする。たとえば、見学の記録、旅行記、いろいろな調査記録、飼育・栽培の記録や日記、製作日記などがおもなものである。これによって、物事を客観的に精密に書いたり、科学的、批判的な態度で文に表現する力を伸ばすようにしていく。
9 会合への招待状、病気欠席中の友だちへの見舞文、見学の申込文、礼状、学用品などを注文する文、新聞原稿の依頼文など実用的な文章も機会あるごとに書かせ、それぞれの目的や用途に合った表現のしかたを練習させる。
10 文集を編集したり、その「はしがき」や「編集記」を書いたり、連載物語・童話、ユーモアのある話などを創作して載せるようにし、個性に応じた文章をつくらせることも意味のあることである。
小学校六か年の思い出を文に書く。思いきって、いろいろな表現を試み自由に書く。また卒業の際、記念文集や研究記録をまとめてみさせるのも効果的な学習の一つである。
11 文章表現については、文題と内容、精叙と略叙、敬体と常体の関係についてはっきりとした自覚や態度をもつことができるように注意する。また構想の上では、倒置的な方法、その他文章に変化をつけることも一応の理解をもつようにさせたい。
センテンスの長さの度合についても、推考の際よく注意して、ほどよく直し、読みやすく、わかりやすい文章に書きあげるよう努力させる必要がある。
2 ただ文章を書くだけでなく、書く前の用意をじゅうぶん整え、ときには資料を用意したり、書こうとする文の主題や構想を口頭作文の形で発表したり、他人の文章と比べて研究したりする機会を設け、いろいろな角度から、ものの見方・考え方、表現のしかたをくふうし、題材の範囲を広げ、文を書く興味の必要感を深めるように努力しなければならない。
3 多く読ませることも作文学習の上にたいせつなことである。自校または他校児童の優秀作品、児童雑誌に載せられた優秀な作品などを集め、読んだり、感想や批評を述べ合ったりするようにしたい。
4 原稿用紙の使い方については、一応完成させることを目標にし、新聞の編集に関連させて、原稿の字詰と行数と、印刷された活字面のそれとの関係などについて少しずつ理解するようにしむける。
5 文の推考については特に注意させ、その努力がよい文章のたいせつな基礎であること、また、自分の書いた文がすらすらと読めなかったり、それを聞く人、読む人に感動を与えなかった場合、その原因をよく反省して、書き直したり、次の表現の参考としたりするように指導しなければならない。
6 男女の性別の特性がいろいろの形で文に表わされてくる。男の子は理知的に、女の子は感情的に流れる傾向があるから、それぞれの個性に応じた表現をさせるとともに、題材が一方に偏したり、また、表現が観念的、形式的、模倣的にならないように注意する必要がある。
(一) 指導の目あてをどこにおくか
文字を書く機会が広くなり、思想も豊かになるので書く分量も多くなる。そのために、ともすれば、速く書くことに追われ、文字が乱雑に流れやすい。特に男児においては、この傾向が多分に見られるから注意しなければならない。
文字のもつ社会性を自覚させ、他人によくわかる文字を正しく、しかもできるだけきれいに書くように心がけさせるとともに、鉛筆・ペン・毛筆・鉄筆などの用具を、その目的と必要に応じ、効果的に使うことに慣れさせることもたいせつである。
2 速く、自由に書けるようになり、また、行書が書けるようにする。
3 欠席届や願書類などを書くことができるようにする。
4 文字の形、大きさ、配列などが整ってくるようにする。
5 漢字が使えるようにする。
また、点画の連絡、字画の省略など、基礎となる行書の体を書き方手本によって、くり返し練習し、暗写できるようにさせる。行書とかなとを取り混ぜた日用文を練習させ、書写能力をいっそう向上させるように導く。
2 書く態度、手本の見方、文字の可否、用具の扱い方など、児童の実状をよく観察し、個人に応じた指導を行い、癖や、まちがいやすい点は、その原因を見定め、きょう正させることがたいせつである。
3 ペンで書くことの機会をつくり、自然な姿勢ではずみを利用して書く運筆法を身につけさせ、読みやすい文字が自由に書けるように導く。
4 毛筆を課する場合は、さまざまな機会を利用して、それぞれの書式に従って書かせる。教師の手本、街頭の看板・門標・門札・広告なども参考にし、詩文・和歌・俳句を書くことにも興味をもたせ、大小さまざまな用紙に正しくきれいに書くことに慣れさせる。
なお、鉄筆その他の用具で書く場合も、その場に応じ、効果的な指導によって、手慣れた文字が書けるように導く。
5 作文を清書したり、卒業記念に思い出の文を書いたりする機会に、文字をいっそう正しくきれいに書くことに注意させる。
2 自分の書いたものと、他人(教師や友だちなど)のものとを常に比較し、自己批正を行い、自分自身の書写力をみがいていくように努力させなければならない。
3 毛筆で書くことの指導では、中学校の習字への連関を考慮しておく。