序  論

 

 各学校は,その地域の事情や,児童生徒の興味や能力や必要に応じて,それぞれの学校に最も適した学習指導の計画をもつべきである。学習指導要領は,学校における指導計画を適切ならしめるために,これによい示唆を与えようとする考えから編修されたものである。

 学習指導要領は,どこまでも教師に対してよい示唆を与えようとするものであって,決してこれによって教育を画一的なものにしようとするものではない。教師は,学習指導要領を手びきとしながら,地域社会のいろいな事情,その地域の児童や生徒の生活,あるいは学校の設備の状況などに照じて,それらに応じてどうしたら最も適切な教育を進めていくことができるかについて,創意を生かし,くふうを重ねることがたいせつである。

 

1. 学習指導要領の目的

 学習指導要領は,児童や生徒の学習の指導にあたる教師を助けるために書かれた書物であって,教師が各学校において指導計画をたて,教育課程を展開する場合に,教師の手びきとして,教師の仕事を補助するものとして,役にたつものでなくてはならない。したがって学習指導要領の目的は,次のようなものであるといえる。

 

2. 学習指導要領の使い方

 学習指導要領は,学校が指導計画をたて,これを展開する際に参考にすべき重要な事項を示唆しようとするものである。したがって,指導計画の全部を示すものではないし,またそのとおりのことを詳細に実行することを求めているものでもない。教師は常に創意とくふうとをもって,地域の社会の事情や,児童生徒の興味・能力・必要に応じて,これを創造的に用いねばならない。

 次に,学習指導要領を手びき書として,それぞれの学校の事情に応じて使って行く上において,注意すべき重要な点をいくつかあげてみよう。

 以上は,学習指導要領の使い方に対する簡単な示唆である。学校や地域の事情に応じてこれを用いること,児童や生徒の興味・必要・能力に適合して使用法を考えることなどは,学習指導要領の使い方の原則的なことであるといえる。これとともに,教師の教職的能力によって,学習指導要領の用い方は異なってくると思う。児童や生徒と同様に,教師にも経験や能力についての相違があることは事実である。すぐれた教師は,学習指導要領に示されたものよりもいっそうすぐれた指導をなすことが可能であろう。経験の少ない教師は,学習指導要領に示されたものの実行もじゅうぶんできないかも知れない。学習指導要領に示された指導法は,一般の教師に対する一つの示唆であって,個々の教師の創意やくふう,さらにすすんだ研究に制限を加えるものではない。できうるならば,学習指導要領に示されたものよりも,いっそうすぐれた指導計画や指導法を教師が発展させることを希望したいのである。

3. この書の内容

 文部省著作の改訂された学習指導要領は,各教科別に編修されている。そして小学校のものと,中学校のものとはそれぞれ別冊になっている。さらに、中等学校のものは,教科や科目によって,中学校と高等学校とを通じて一冊のものと,別冊に分れているものとがある。本書は,これらのすべての学習指導要領の全体にわたって,総括的に取り扱う必要のある事がらについて述べることになっている。だから本書は,各学校段階のすべての教科の学習指導要領に通ずる序論的な部分ということもできる。

 すなわち,本書は次の事項について取り扱っている。